著者
曽根 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.653-662, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
47
被引用文献数
7 7

神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)は,進行性の神経変性疾患であり,近年まで剖検により診断されていたが,2011年に皮膚生検が診断に有効と報告された後,症例数が増加している.2019年にはNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長が原因であると同定され,遺伝子診断も可能となった.NIIDでは,認知機能障害で発症し,頭部MRIでの白質脳症およびDWIでの皮髄境界の高信号が認められる群と,四肢筋力低下から発症する群の2群が認められる.今後,白質脳症およびニューロパチーの鑑別診断にNIIDを含める必要があり,皮膚生検と遺伝子検査を組み合わせ,NIIDを的確に診断し,病態解明を推進する必要がある.
著者
濱田 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.857-860, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
9
被引用文献数
7 4

Migraine is an episodic and popular headache disorder. Migraine arises from a primary cerebral dysfunction that leads to activation of trigeminovascualr system. In the 1940s cerebral arterial constriction and the following enhanced dilatation was considered to induce migraine attack. Next, the cortical neuronal change that is well linked to the migraine aura was considered to be primary mechanism of migraine attack. Recently, the trigeminovascular system has a main role in the pathophysiological mechanism of the migraine. From the animal studies, cortical spreading depression (CSD) may induce the activation of the trigeminovascular system and may be a trigger of the migraine pathological mechanism. Also the activation or the functional change of brainstem nuclei, involving periaqueductal grey matter, raphe nuclei, and locus ceruleus, may be a trigger of the migraine attack. We have showed that the level of plasma orexin-A in the migraine patients during headache free period is lower than that of control. From the animal experiments, we also showed that intracerebroventricular injection of orexin induces the increase in the cerebral cortical blood flow, and that the intraarterial application of orexin cannot increase the cerebral blood flow. We consider that orexinegic neurons in the lateral hypothalamus may be a generator of migraine.
著者
立花 久大
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.105-111, 2022 (Released:2022-02-19)
参考文献数
75

片頭痛は遺伝的基盤を持つ頻度の高い疾患であり,しばしば生活に支障をもたらす.片頭痛には多くの共存症が報告されており,それらは慢性片頭痛へと進展する危険因子とされている.共存疾患の各々は独自の遺伝的荷重を有し,片頭痛といくつかの共通する特徴を有している.片頭痛共存症の同定は疾患間に共通する遺伝学的や生物学的機序を明らかにする助けとなる可能性がある.片頭痛患者の治療には多面的アプローチが必要であり,リスク因子や共存因子を同定し,減少させることを目指さなければならない.このアプローチは片頭痛の慢性化への進展を阻止し,さらに薬物に対する治療抵抗性を回避することになる.
著者
和田 晋一 津崎 光司 杉山 華子 菊井 祥二 竹島 多賀夫 濱野 利明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.482-485, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
17

症例は41歳男性,35歳時より月1回の頻度で前兆のない片頭痛を経験していた.2020年10月某日に突然同僚の名前を想起できなくなり,その後徐々に側頭部痛と悪心を自覚し当院受診となった.来院時,左側頭部の拍動性頭痛と人の名前を想起できない症状に加えて,失算,左右失認を認めた.発症3時間後の脳MRIではsusceptibility-weighted imaging(SWI)で左大脳半球に皮質静脈の拡張を認めた.発症42時間後までに頭痛を含めた神経症状は経時的に改善し,SWIで皮質静脈の拡張は改善した.本症例ではSWI所見の推移から,前兆のある片頭痛の初発発作が示唆された.
著者
松村 剛 齊藤 利雄 藤村 晴俊 佐古田 三郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.211-217, 2012 (Released:2012-04-25)
参考文献数
18
被引用文献数
20 22

呼吸管理や心筋保護治療により,Duchenne型筋ジストロフィーの生命予後はいちじるしく改善したが,心機能障害の遷延により循環動態の脆弱性が課題となる.われわれは,最近心機能指標が比較的保たれたまま腎不全で死亡した症例を6例経験し,本症における腎機能障害に関心を抱いた.筋萎縮症例ではcreatinineが低下するため,筋量に影響されないcystatin CをもちいてDMD 103例を評価したところ,30歳以上の患者では3割以上が異常値を示し,貧血と腎機能障害の関連も示唆された.本症の医療管理では心腎貧血連関に留意すべきで,適切な水分バランスや貧血に対する積極的治療などが必要と思われる.
著者
廣瀬 源二郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000693, (Released:2015-05-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

上肢Barré試験の手技に関して種々のことなる記載があるが,その大きな原因はBarré論文で“Mingazziniの上肢試験”と紹介しながら彼の原著を引用してないため,彼がおこなったMingazini上肢試験の写真がそのまま利用,流布されて恰も彼の検査法として不完全に伝えられたことにある.ここで今まで日本の論文には取り上げられてなかったMingazziniの原著からそのオリジナルとなる手法の写真を引用して,その手技の原法を説明するとともに,彼らの下腿(下肢)試験についても紹介し,これらの上下肢試験のpriorityを示したい.
著者
北崎 佑樹 浅野 礼 林 浩嗣 山村 修 田邉 佐和香 濱野 忠則
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.874-877, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
10

症例は56歳男性.右上下肢の脱力が出現し,翌日に当科外来を受診.頭部MRIで左内包後脚と橋右側に新鮮梗塞が認められ入院となった.胸背部痛,血圧の左右差はなく,頸部血管超音波で解離を示唆する所見はなかった.D-dimerが2.4 μg/mlと上昇し,胸腹部造影CTを実施したところ偽腔内に血栓を伴うStanford A型大動脈解離を認めた.両側の総頸動脈には異常がなく,第27病日に上行大動脈人工血管置換術を施行した.穿通枝領域を含む複数の血管支配領域に脳梗塞を認め,D-dimerの上昇を伴う場合は胸背部痛や血圧の左右差がなくとも大動脈解離が存在する可能性を念頭に置くべきである.
著者
滑川 将気 荻根沢 真也 木村 暁夫 下畑 享良 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.386-390, 2022 (Released:2022-05-31)
参考文献数
15

症例は,61歳男性.2年前と6か月前に全身けいれん発作を起こし,5ヶ月前からの歩行障害が悪化して入院した.認知機能低下,下肢痙性と体幹失調,自律神経障害を認めた.髄液細胞増多があり,MRIで大脳半卵円中心の点状造影効果を伴う白質病変と長大な頸髄病変を認めた.ステロイドパルス療法で軽快したが2ヶ月後に再燃し,新たに頸髄側索の病変を認めた.髄液の抗glial fibrillary acidic protein(GFAP)α抗体が陽性で,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)と診断した.GFAP-Aは,亜急性で予後良好の経過が多いとされるが,慢性難治性の経過をたどった.
著者
小長谷 陽子 小長谷 正明 渡邉 智之 鷲見 幸彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.109-115, 2014-02-01 (Released:2014-02-28)
参考文献数
29
被引用文献数
3 2

アルツハイマー病患者156人に対して時計描画テスト(clock drawing test; CDT)をおこなった.量的評価の総得点はMMSE(mini-mental state examination)総得点と有意な正の相関を示し,針に関する下位項目の正反応率は他の項目にくらべ低いものが多かった.Rouleauらの方法による質的評価のエラーでは「空間・計画障害」と「概念障害」の割合が高く,エラーのある群はない群にくらべ,MMSEおよびCDT総得点が有意に低かった.認知機能障害が重症になると質的エラーを示す人の割合は高くなった.CDTにより,認知機能障害の有無や全般的重症度だけでなく,概念障害,視空間認知障害,前頭葉機能障害などの個別の認知機能障害のいくつかを評価することができると考えられた.
著者
本岡 里英子 山本 真士
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000926, (Released:2016-09-16)
参考文献数
11
被引用文献数
4 6

症例は39歳女性.1年前より下肢痙性,上下肢異常感覚が出現し,痙性による歩行障害が進行した.神経学的に両下肢痙性,両下肢深部感覚障害,四肢異常感覚を認めた.各種自己抗体,HTLV-1を含むウイルス抗体,腫瘍マーカー,ビタミンに異常を認めず,髄液細胞数,蛋白は正常で,OCB,MBPは陰性であった.頭部MRIは異常なく,頸胸髄MRIで,後索にT2WI高信号を認めた.血清銅,セルロプラスミンが低値であり,銅欠乏性ミエロパチーと診断した.生活歴を再聴取した結果,5年以上前から牡蠣を毎日15~20個摂取するという極端な食生活が判明し,亜鉛過剰摂取が原因と考えた.亜鉛過剰摂取による銅欠乏症の原因として本例のような食餌性は稀である.
著者
畠野 雄也 須貝 章弘 山岸 拓磨 中島 章博 柿田 明美 小野寺 理
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.187-192, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
15

アミロイドβ関連血管炎(amyloid β-related angiitis)では,皮質や皮質下の微小出血や脳表ヘモジデリンの沈着が,脳MRI上の重要な所見である.我々は,治療前にはこれらの所見を呈さなかったアミロイドβ関連血管炎を提示する.症例は75歳女性.右同名半盲と失語で発症し,昏睡に至った.脳MRIでは,びまん性の軟髄膜造影病変と散在性のDWI高信号病変を認めたが,T2*WIでは微小出血は検出されなかった.病理所見からアミロイドβ関連血管炎と診断した.ステロイド治療により画像所見,臨床症状ともに改善した.治療後のsusceptibility-weighted imaging(SWI)では多数の微小出血を認めた.アミロイドβ関連血管炎の非侵襲的診断のために,微小出血以外の画像の特徴を集積すべきである.
著者
稲盛 真人 土井 光 立石 貴久 松岡 健 岩城 徹 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-31, 2009 (Released:2009-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は59歳の女性である.数年にわたる右側頭部痛のため当科を受診した.右側頭部に分枝状の圧痛をともなう索状腫瘤を触知し側頭動脈炎をうたがった.しかし,頭部MRIでは右側頭部皮下に多発性の結節を,超音波では低エコー域をともなう血流のない分枝状,索状腫瘤をみとめた.最終的に,腫瘤生検にて右耳介側頭神経に発症した孤発性神経線維腫と診断した.腫瘍は経過観察とし,疼痛は薬物療法にて著明に改善した.頭蓋外皮下組織に孤発性に発生した神経線維腫はまれであり,側頭動脈炎との鑑別や,三叉神経痛様の疼痛の原因として考慮する必要がある.
著者
宮崎 由道 佐藤 健太 小泉 英貴 佐光 亘 浅沼 光太郎 梶 龍兒
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1074-1076, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
9
被引用文献数
4 4

Although there are some newly-developed options to treat dystonia, its medical treatment is not always satisfactory. Zolpidem, an imidazopyridine agonist with a high affinity to benzodiazepine receptor subtype ω1, has been reported to improve clinical symptoms of dystonia in some cases. We conducted an open-label study to assess the efficacy of zolpidem in 34 patients with primary dystonia patients, The Burke Fahn Marsden Dystonia Rating Scale (BFMDRS) scores in the patients were decreased from 7.2±7.9 to 5.5±5.0 after zolpidem therapy (P=0.042). Next we evaluated 55 patients with primary and secondary dystonia, 16 of 55 patients (29%) responded to zolpidem, and secondary dystonia, particularly post-traumatic dystonia, was more responsive than primary dystonia (5 of 11 [46%] vs 11 of 44 [25%]). The efficacy of zolpidem was comparable to that of other oral medications in our previous study; 33 of 89 dystonia patients (37%) responded to trihexyphenidil, 13 of 53 (25%) responded to clonazepam, and 4 of 21 (19%) responded to baclofen. In conclusion, our large scale study suggested that zolpidem may be a therapeutic option for dystonia, particularly post-traumatic dystonia.
著者
島津 智一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1125-1127, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
8

群発頭痛は不明な点が多く病態は明らかにされていない.これまで視床下部generator起源説,ニューロペプチド変化より三叉神経血管説,内頸動脈周囲起源説そして三叉神経過剰興奮が副交感神経活性化説などの仮説が提唱され,PET研究で発作時に視床下部の興奮が報告された.最近,群発頭痛は自律神経症状を呈することから,国際頭痛分類第2版において,「群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」に分類された.TACsの機序として三叉神経系活動が高まり,この興奮が上唾液核に達して,翼口蓋神経節から頭蓋内の大血管や涙腺・鼻粘膜にいたる副交感神経系が興奮し自律神経症状を呈すると考えられている.
著者
山田 美穂 津川 潤 新居 浩平 井上 律郎 坪井 義夫 東 登志夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.801-804, 2022 (Released:2022-10-22)
参考文献数
8

症例は79歳男性.一過性の右片麻痺を繰り返すため当科に紹介入院した.神経学的に異常はなく,血液検査で腎機能障害を認めた.少量の造影剤で左内頸動脈撮影のみを行い,左内頸動脈分岐部にNASCET 86%の狭窄を認めた.血管内治療を行う方針となったが,造影剤による腎機能悪化が危惧されたため,診断脳血管撮影時に取得した3Dイメージのfusion画像を使用し,B-modeエコーなどを併用しcarotid artery stenting(CAS)を行った.治療後は良好な拡張が得られ,神経症状の再発なく経過している.3Dイメージを用いることで造影剤を使用せず血管内治療を安全に行うことができた.

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出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.S1-S197, 2015 (Released:2015-12-26)

第56回日本神経学会学術大会会 期:平成27年5月20日(水)~5月23日(土) 会 場:朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)・ホテル日航新潟 大会長:新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野 西澤 正豊
著者
田邊 政裕
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1139-1141, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

研修必修化から8年を経て,本制度についての見直しが検討されている.到達目標や研修プログラムについての論点が指摘された.研修の質を保証し,社会に対する説明責任を果たすためにも現行の研修体制をアウトカム基盤型に再構築することが望まれる.その際,経験目標,行動目標をコンピテンシーとして再定義し,評価法はコンピテンシーの評価として真正性のある診療現場での評価(workplace-based assessment)であるminiCEXなどの新しい評価法の導入を検討すべきである.
著者
高附 磨理 荒木 俊彦 菅野 陽 安本 篤史 森下 英理子 塩田 宏嗣
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.487-491, 2022 (Released:2022-06-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

基礎疾患のない48歳男性.ChAdOx1 nCoV-19ワクチン1回目を接種した10日後より頭痛を自覚.血液検査で,血小板数の低下,Dダイマーの上昇を認め,DICも合併していた.頭部単純CTにて左頭頂部に微小出血,造影CTにて左横静脈洞,左S状静脈洞に静脈洞血栓を認めた.その後施行した頭部MRIにて,左頭頂部に静脈性出血性梗塞,くも膜下出血,全身造影CTにて門脈血栓症,腎梗塞の所見を認めた.新型コロナワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症(thrombosis with thrombocytopenia syndrome,以下TTSと略記)と診断し,手引きに準じて治療を行い,自宅退院となった.本症例は,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンに伴うTTSの国内1例目と考えられる.
著者
関 守信 栗原 可南子 今野 卓哉 藤岡 伸助 坪井 義夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001733, (Released:2022-09-30)
参考文献数
76

パーキンソン病(Parkinson’s disease,以下PDと略記)患者の痛みは代表的な非運動症状である.痛みは病期を問わずPD患者を悩ます症状の上位に位置付けられており,他の症状や生活の質に影響を及ぼす一方で,適切に評価,治療されていないことも多い.PD患者が訴える痛みは,PDの疾患と関連する痛みと関連しない痛みがあり,また,原因となる障害部位に応じて中枢性と末梢性に分けられるなど非常に多彩である.痛みの診療の際にはKing’s PD pain scaleなどのPD特異的な評価尺度を用いて痛みの種類や程度を評価し,病態に応じてエビデンスに基づいた治療方法を検討することが重要である.