著者
岡 靖哲
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.994-996, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10

認知症患者では睡眠障害が高頻度にみられる.睡眠覚醒調節機構の障害に加え,感覚器からの入力低下,社会的活動の減少も加わり,概日リズム睡眠障害を生じやすい.加齢にともなって増加する睡眠障害や,中枢神経病変にともなうレム睡眠行動異常症も共にみられる.概日リズムと深く関連するメラトニンは,認知症患者においては分泌ピークが偏移し,振幅も低下しており,体内時計機構に即したアプローチが求められる.光環境を調節し,日中の活動性を高めることが治療の基本となるが,メラトニンも夜間の睡眠に改善に有効である.認知症患者の睡眠の改善は,認知症のマネジメントの上でも重要であり,対処可能な睡眠障害を的確に治療することが望ましい.
著者
野村 哲志 井上 雄一 中島 健二
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.987-990, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)患者は,睡眠障害を生じることが多い.原因としては運動症状,夜間諸問題や精神症状だけでなく,その他の睡眠障害である日中の眠気(Excessive daytime sleepiness; EDS),レム期睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder; RBD),下肢静止不能症候群(Restless legs syndrome; RLS),睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome; SAS)などが挙げられる.とくに,RBDはPDの病前症状として注目されている.PDの1/3にRBD症状をみとめる報告があり,運動機能障害,自律神経機能,認知機能の増悪因子であるという報告もある.PDの睡眠障害の原因は多様なので,詳細を充分検討した上で対処する必要がある.しかし,PDでのそれぞれの睡眠障害の対応についてはエビデンスが不足しており,データーの蓄積が必要である.
著者
杉浦 美恵子 柴田 興一 斉藤 聡志 西村 芳子 高橋 浩一 佐倉 宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.530-535, 2019 (Released:2019-08-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は41歳女性.腰痛の後,突然,起立時の頭痛が出現し,1週後,右耳閉塞感,めまい,1か月後に右手から始まり,同側の腕,側胸腹部,下肢へ広がるしびれが20~30分間出現し,同症状を繰り返すため入院した.頭部MRIで,円蓋部くも膜下出血(convexal subarachnoid hemorrhage; cSAH),脳皮質静脈血栓,硬膜肥厚,硬膜下血腫を認め,脊髄脳槽シンチグラフィーとCTミエログラフィーで髄液漏出像がみられ特発性低髄液圧症候群(spontaneous intracranial hypotension; SIH)と診断し,ブラットパッチを施行し症状は改善した.SIHは,症候が多彩で診断が困難なことがあるが,本例でみられた繰り返す片頭痛様前兆は,合併したcSAH,脳皮質静脈血栓症に関連し発現した重要な徴候と考えられた.
著者
永田 栄一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1014-1017, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
7

The diagnosis of migraine can be difficult, even for headache specialists, because some patients do not necessarily fulfill the International Headache Society criteria for migraine. Hence, reliable disease markers of migraine are required for accurate migraine diagnosis. We performed "Omics" analysis such as transcriptomics, proteomics, and genomics utilizing the lymphoblast cell lines and serum obtained from migraineurs. We verified that αfodrin, which was among the identified 15 genes that were differentially expressed in lymphoblasts originating from patients with migraine, increased after cortical spreading depression in an animal model. We also investigated the alterations of protein expressions induced by migraine attacks using proteomics analysis. Notably, in two migraineurs, the level of apolipoprotein E protein expression during attacks was significantly higher than pre-attack levels. Recently, we have found a novel family lineage with migraine. They also exhibit severe myalgia with arms and legs. GC binding protein which binds to vitamin D was identified as the product of the causative gene in this family. Our omics approach will contribute to a better understanding of migraine pathophysiology.
著者
菊井 祥二 宮原 淳一 柏谷 嘉宏 竹島 多賀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.824-826, 2014-10-01 (Released:2014-10-24)
参考文献数
10

症例は51歳男性である.約3週前より左眼窩から前頭部への頭痛が持続し,頭痛増強時に眼充血,流涙をともなった.神経学的所見,脳MRIは異常なく,インドメタシン(75 mg/日)で頭痛が完全に抑制され,国際頭痛分類第2版から持続性片側頭痛(hemicrania continua; HC)と診断した.インドメタシン減量で頭痛が再燃したので,プレガバリン(150 mg/日)を併用したところ,インドメタシンは25 mg/日まで減量可能で,忍容性も良好であった.HCはインドメタシン反応性頭痛の一つであるが,インドメタシンの連用により,胃腸障害などの副作用で,忍容性が低下し,減量や中止が余儀なくされることがあり,インドメタシンに代わりうる薬剤療法が必要である.
著者
垂髪 祐樹 佐藤 健太
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.178-181, 2018 (Released:2018-03-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は32歳男性.16歳から数秒持続する左眼窩部から側頭部に刺し込むような軽度の痛みが間欠的に生じる一次性穿刺様頭痛の既往があった.32歳時,ムンプス髄膜炎に罹患し入院した.入院2日目に充血,流涙を伴う刺し込まれる耐えがたい痛みが左眼窩部から側頭部にかけて出現した.痛みの持続時間は数秒程度で,間欠期も数秒から1分程度と短かった.三叉神経・自律神経性頭痛を疑いnon-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs),酸素投与,スマトリプタンと投与したが改善なく,リドカイン点滴持続静注を開始後にすみやかに改善したため,short lasting unilateral neuroralgiform headache attack with conjunctival injection and tearing(SUNCT)と診断した.一次穿刺様頭痛を既往に持つ患者がムンプス髄膜炎を契機にSUNCTに罹患した貴重な症例である.
著者
大貫 英一 朝山 真哉 朝山 知子 中道 一生 西條 政幸 小坂 理
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.705-708, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

症例は83歳男性,慢性腎不全のため血液透析中であった.亜急性に進行する右片麻痺のため紹介入院した.頭部MRIではT2強調画像で両側中小脳脚と左前頭葉深部白質に高信号病変を認めた.病変は経時的に拡大し,1H-MRSではChoの上昇とNAAの低下を認め,脳生検ではglioblastomaが疑われた.しかし髄液JCウイルス(JCV)検査が陽性と判明し,脳生検組織を再検したところ,免疫染色でJCVに感染した異型アストロサイトを認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)と診断した.メフロキン,ミルタザピンによる治療を開始したところ,髄液JCVの陰性化を認め,またMRIでの病変の拡大も停止した.基礎疾患,臨床経過において稀少と考え報告した.
著者
古和 久典
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1223-1224, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
7

頭痛の臨床において,現在もっとも解決すべき問題のひとつが‘慢性化’である.欧米の報告では,慢性片頭痛の有病率が2%,年間発症率が2.5%で,片頭痛慢性化の危険因子として,年齢,性などの介入不可能な因子と,薬物乱用やいびき,ストレスといった介入可能な因子など複数の項目や,共存症の関与が指摘されている.片頭痛慢性化の実態に関する国外からの報告が散見されるのに比して,本邦からの報告はきわめて少ない.自験例によれば,頭痛専門外来における慢性片頭痛の頻度は,2~3割であった.慢性化と関係する危険因子として,発作頻度,薬物乱用,親・同胞の頭痛歴のほか,鼻炎やアトピーなどの共存症の存在が示唆された.
著者
代田 悠一郎 大友 亮 花島 律子 寺尾 安生 堤 涼介 辻 省次
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.356-359, 2012 (Released:2012-05-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

セフェピム塩酸塩(CFPM)投与後に意識障害・不随意運動・脳波異常を呈した腎不全症例2例を経験した.脳波検査において,症例1では3Hz程度,症例2では1~2Hz程度の全般性周期性放電ないし全般性律動性デルタ活動をみとめるものの簡単な従命が可能であり,臨床所見と脳波所見の解離がうたがわれた.CFPM中止により症状・脳波所見ともすみやかに改善し,明らかな後遺症も残さなかった.薬剤性の脳症では時に原因薬剤の同定や他の代謝性脳症との鑑別が困難であるが,CFPM投与により生じる意識障害においては脳波所見が原因薬剤の同定に有用である可能性が示唆された.
著者
柴田 護
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1012-1013, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Chronification of migraine occurs in approximately 3% of entire cases annually. Some risk factors, like obesity and affective disorder, exacerbate the migraine disease conditions. The incidence of migraine chronification is dependent on the baseline frequency of migraine attacks. Functional MRI data support that dysfunction of the descending anti-nociceptive systems plays an important role in the development of migraine chronification. Moreover, several studies employing voxel-based morphometry have revealed morphological alterations of gray matter density in various brain regions, some of which are irrelevant to the sensory or limbic systems. It remains to be determined whether such organic changes are either causative of or attributable to migraine chronification. A preclinical study showed that cortical spreading depression can activate matrix metalloproteinase-9, potentially leading to disruption of blood-brain barrier and subsequent parenchymal damage. We demonstrated that TRPV1 (transient receptor potential vanilloid subfamily, member 1) stimulation in the trigeminal nociceptors induces morphological changes of microglia and astrocytes in the trigeminal nucleus caudalis. Recently, botulinum neurotoxin type-A (BoNT-A) has been approved for patients with chronic migraine. The primary action of BoNT-A is inhibition of regulated exocytosis at the peripheral nerve terminals, raising the possibility that certain peripheral factors are implicated in the development of migraine chronification.
著者
角田 亘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.181-186, 2020
被引用文献数
10

<p>脳卒中リハビリテーション(以下,リハ)については,様々な新しいコンセプトや治療的介入が考案されている.その安全性と有用性が確認されている急性期リハは,さらなる普及が待たれる.脳の可塑性を高める非侵襲的脳刺激,脳内神経伝達物質に作用する薬剤,迷走神経刺激は,リハ訓練と併用されるべきである.ロボット・リハの導入により,リハ訓練の効率向上が期待される.脳卒中後片麻痺に対するニューロフィードバックは,運動イメージに対する治療的介入である.再生医療の効果を高めるためには,それに引き続いてリハ訓練も導入されることが望ましい.これらを積極的に導入することで脳卒中患者の機能予後が全般的に改善されるであろう.</p>
著者
久米 明人 久米 英明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.385-392, 2010 (Released:2010-06-24)
参考文献数
30
被引用文献数
3 4

目的:日本人特発性レストレスレッグス症候群(RLS)の特徴を明らかにすること.方法:国際RLS研究グループ診断基準と治療アルゴリズムにしたがってRLSの診断と治療をおこない検討した.結果:RLS症状を訴える151例のうち113例が特発性RLS,16例が二次性RLSと診断,22例がRLSから除外された.特発性RLSは平均50.1(SD 20.0)歳,63%が女性,31%に家族歴,85%は下腿に異常感覚を有し,81%に不眠,49%は日常生活に71%は気分に影響あり,ドパミン製剤により73%が改善,33%で寛解をみた.結論:日本人特発性RLSの臨床的特徴は欧米の報告と一致した.
著者
山口 裕美子 合馬 慎二 野々熊 真也 長町 茂樹 坪井 義夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.407-413, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
17
被引用文献数
2

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)とレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)の鑑別における心理検査と脳画像の感度,特異度を77名の患者において,MMSE(Mini-Mental State Examination)からAla Scoreを算出,脳血流99mTC-ECD SPECT統計画像解析よりCIScoreを測定し年齢別に検討した.その結果Ala ScoreとCIScoreの値は79歳以下群で相関が見られ(r = 0.485, P = 0.002),80歳以上群では相関はなく鑑別が難しくなることが示唆された.両群ともAla Score,CIScore両者を用いると単独より特異度とAUC(area under the curve)が高く日常診療で可能なこれらの検査を用いて疾患鑑別の感度,特異度が向上する可能性が示唆された.
著者
五十嵐 久佳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1225-1227, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

片頭痛は支障度の高い疾患である.慢性片頭痛群(頭痛日数が月に15日以上もの;CM群)と頭痛日数が15日未満の反復性片頭痛群(EM群)を比較したばあい,CM群は日常生活への支障度が高く,生活の質が低下していた.またCM群ではEM群に比し,生産性の損失が大きく,フルタイム雇用が少なかった.医療経済学的には受診・検査・治療にかかる費用はCM群ではEM群の2~3倍多く,これらの直接経費と生産性の低下による間接経費を合わせると片頭痛慢性化による多くの経済学的損失が考えられた.
著者
北川 泰久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1000-1002, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10

片頭痛と脳梗塞の関係について従来の報告をレビューし,自験例について検討した.従来,片頭痛性脳梗塞は前兆のある典型的片頭痛の経過中に発生する脳梗塞のみがその基準を満たすが頻度は低い.欧州でのMRI研究では前兆のある片頭痛でおこる脳梗塞は後方灌流領域に好発し,虚血性脳卒中のリスクは約2倍である.45歳未満の前兆のある片頭痛をもつ女性は,経口避妊薬を避けて禁煙することで,このリスクを避けうる.片頭痛は古典的な脳梗塞のリスクである高血圧,糖尿病などにくらべれば影響の少ない因子である.われわれの検討では片頭痛患者の白質病変は前方灌流領域に好発し,欧米とはことなった結果であった.本邦での多数例での検討を要する.片頭痛の白質病変の病態の1つにRCVSが関係している可能性がある.
著者
小西 宏史 田口 芳治 山本 真守 温井 孝昌 道具 伸浩 中辻 裕司
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.223-228, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
13

症例は63歳男性.左臀部から左下肢のしびれ,下肢筋力低下,膀胱直腸障害などの馬尾症候群を発症し,亜急性に症状が進行し入院した.腰仙髄造影MRIにて馬尾下部領域に造影効果を認め,神経伝導検査では両側脛骨神経の導出が不良で,腓骨神経はF波潜時の延長を認めた.M蛋白血症を認め,多発性骨髄腫を疑ったが,血清可溶性IL-2受容体が4,490 U/mlと著高で,FDG-PETにて椎体,馬尾の集積増加を認めた.L4椎弓根生検にてび漫性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断し,R-CHOP(rituximab, cyclophosphamide, hydroxydaunorubicin, oncovin, prednisone(prednisolone))療法を行い症状の改善が得られた.M蛋白血症を伴う馬尾症候群の場合,悪性リンパ腫の可能性も考慮すべきである.
著者
長沼 亮滋 矢部 一郎 高橋 育子 松島 理明 加納 崇裕 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2

3,4-diaminopyridine(3,4-DAP)を投与した9例のランバート・イートン筋無力症症候群患者の治療効果について後方視的に検討した.3,4-DAPは筋力低下と自律神経異常症に対し有効である一方,傍腫瘍性小脳変性症の小脳性運動失調に無効であった.有効例8例の投与期間は15~149ヵ月であった.3例が10年以上投与しており,長期間安全に投与できた.2例が小細胞肺癌(small cell lung carcinoma; SCLC)により死亡し,1例がSCLCの悪化で投与中止した.副作用が生じた2例のうち1例は投与中止したが1例は減量し投与継続した.維持用量や副作用の生じた用量には個人差があり,慎重な用量決定を必要とした.
著者
横山 淳 山口 浩雄 重藤 寛史 内海 健 村井 弘之 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000834, (Released:2016-03-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

症例は24歳の男性.夜間飲酒した翌朝に痙攣を認め当院救急部に搬送された.到着後に痙攣重積を呈して人工呼吸器管理となった.脳幹反射の異常や病的反射,髄膜刺激徴候は認めなかった.頭部MRIの拡散強調画像で異常信号はなく,左後頭葉に陳旧性梗塞様の所見を認めた.入院直後より横紋筋融解症による高CK血症と急性腎不全を呈し持続血液透析濾過法を開始した.髄液中L/P比の著明な増加よりミトコンドリア病を疑い,末梢血にてミトコンドリアDNAのA3243G変異(ヘテロプラスミー20%)が判明しmitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes(MELAS)と診断した.本症例はMELASとしては非典型的な経過を辿ったため貴重な症例と考えられた.
著者
高橋 海 山原 可奈子 伊藤 浩平 岩岡 和博 後藤 雄一 寺山 靖夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001292, (Released:2019-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は30歳女性.25歳頃から数回にわたり皮質盲症状を呈し近医を受診した.脳梗塞様の画像所見と糖尿病の病歴からミトコンドリア病が疑われたが,血清および髄液乳酸値が正常,筋病理に異常を認めないことから確定診断には至らなかった.30歳時に意識障害と皮質盲症状,頸部および右上肢の不随意運動を呈して当院を受診.頭部MRIで両側大脳基底核の異常信号とMRスペクトロスコピーで乳酸ピークの増大を認め,髄液乳酸値の高値,ミトコンドリア遺伝子解析でm.4296G>A遺伝子変異を認めたことからミトコンドリア脳症と診断した.成人発症のm.4296G>A遺伝子変異の報告は非常に稀であると考え文献的考察を行い報告する.
著者
宮本 雅之 鈴木 圭輔 宮本 智之 平田 幸一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.991-993, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

慢性頭痛と睡眠関連疾患は相互に関連があり,その病態の解明と治療介入は慢性頭痛患者の生活の質の向上を図るうえで重要である.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の症候のひとつにmorning headacheがある.国際頭痛分類第2版(ICHD-2)のsleep apnoea headacheと必ずしも一致しないがICHD-3βにより診断の精度が向上すると思われる.またOSASにおいて片頭痛や緊張型頭痛など他の慢性頭痛の併存にも注意が必要である.片頭痛において,下肢静止不能症候群,ナルコレプシー,睡眠時随伴症との関連について報告されており,これらと共通する病態基盤が存在するものと思われる.