著者
東北大学附属図書館
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
vol.32, no.(118), 2007-06-30
著者
渡辺 建彦 目黒 謙一 谷内 一彦 一ノ瀬 正和 小野寺 憲治 前山 一隆
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ヒスタミンH3受容体は、中枢ヒスタミン神経系のシナプス前部に存在するオートレセプターで、ヒスタミンの遊離、合成を調節している。最近、末梢にも、また、他の神経系にも存在するといわれている。本研究では、ヒスタミンと関連する病態として喘息と痴呆をとりあげ、H3リガンドのこれらの疾患モデル動物での効果を検討した。まづ、老化促進モデルマウスを用いて、シャトルボックス法で学習・記憶能を評価した。異常老化系(P/8)は、正常老化系(R/1)に比して、学習獲得が遅かったが、H3アンタゴニスト、チオペラミドの投与で、R/1マウスと同じレベルまで改善した。しかし、R/1マウスの学習能が更によくなることはなかった。スコポラミン投与によりアセチルコリン系を障害した痴呆モデル・マウスにおいても、elevated plus maze testで評価したところ、チオペラミド投与が改善を示した。種々の喘息モデルに対するH3作動薬(R)-α-メチルヒスタミン、イミテットの効果を検討したが、明確な効果は得られなかった。より適したモデル系の確立が必要である。新規H3アンタゴニスト、AQ0145(ミドリ十字社)は、マウスの電撃痙攣に対する抑制作用においてチオペラミドとほぼ同程度であった。6-ヒドロキシドパミンをラットの片側線条体に注入する除神経において、障害側の線条体と黒質ではヒスタミンH3受容体の密度は上昇した。この上昇は、ドパミンD1アゴニスト、SKF38393処置で対側レベルまで低下したが、D2アゴニスト、キンピロールは影響しなかった。即ち、ドパミン神経系の障害に伴う神経可塑性において、D1受容体を介してヒスタミンH3受容体のアップ・レギュレーションが制御されていることが判明した。チオペラミド、(R)αメチルヒスタミンのラットにおける体内動態を検討したが、いずれも脳への移行性がわるいことが判明した。本研究の過程で、H3アンタゴニストに抗痙攣作用が有ることが判明し、今後に期待を抱かせた。結論として、H3アンタゴニストは、てんかん、痴呆の薬物となりうることが示された。そのためには、なお一層の基礎的知見の集積が必要である。
著者
杉浦 栞理
出版者
東北大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)超伝導は、BCS超伝導の枠組みを超えた「エキゾチック超伝導」のひとつとして盛んに研究されている。近年の精力的な研究によってFFLO相転移磁場や相内部の構造がいくつかの超伝導体で明らかにされつつあり、特に有機超伝導体では先導的な研究が行われてきた。FFLO超伝導の発現には電子系のクリーンさが必要とされるがFFLO超伝導に対する乱れの効果を系統的に明らかにした実験例は未だ無い。本研究ではX照射によるFFLO超伝導体への乱れの導入という新たなアプローチと精密輸送・磁気特性測定から、定量的かつ系統的に乱れの効果を明らかにする。
著者
平川 新 寺山 恭輔 畠山 禎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、幕末開国以前の日露関係を研究するために、主としてロシア側史料の収集を行った。日本における日露関係史の研究は、言語の壁もあって日本側の記録でおこなわれることが多かったからである。まだ日本の学界に紹介されていないロシア側史料を収集し、それを翻訳刊行して日露関係史の研究条件を改善しようというのがプロジェクトのねらいであった。2004年に出版した『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第1集に引き続き、本研究期間に次の2冊の続編を刊行した。*『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第2集(2007年3月刊行)1760年代から1790年代までの49点を収録した。内容は、ロシアが千島列島を南下して日本に接近してくる過程の史料が中心。帝国ロシアや毛皮商人によるアリュート人やアイヌ支配の進展なども具体的に把握可能であり、日本人漂流民大黒屋光太夫を根室に送還した遣日使節ラクスマン関係の史料も収録した。*『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第3集(2008年3月刊行)1701年1762年までの史料54点を収録した。ロシアがカムチャツカ半島を征服し、北太平洋地域へと雄飛していく時期である。これまでに発見された日本人漂流民のもっとも古い記録をはじめ、コサック隊がカムチャツカを足場に千島列島を南下してくる過程の報告書、ロシアの版図を一挙に拡大させたべーリング探検隊の準備過程からの記録、その分隊として組織されたシパンベルグの日本探検隊の記録など、日本の北方世界で展開した特徴的な動きを知ることができる。
著者
高橋 美由紀
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2001

博士論文
著者
羽生 貴弘 夏井 雅典
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究課題では,設計マージンのリラックス化,ならびに総合的なVLSIの高性能化・高歩留り化を実現する新概念VLSI設計技術の構築を目的とし,不揮発性記憶素子とシリコン集積回路を組み合わせることで製造後および動作中に集積回路の特性を調整できるPVTバラつきフリー回路方式,ならびに上述したバラつきを十分小さくする回路パラメータ自動調整技術に関する研究を行った.
著者
野田 文香
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

学位や資格など高等教育を含む教育訓練機関から生み出されるあらゆる「qualifications(資格)」について、その保有者に期待するコンピテンスの内容や水準を明確化し、さらに学術あるいは職業モビリティの促進などを図る「国家資格枠組み(National Qualifications Frameworks:NQF)」が、現在、世界的に拡大している。一方で、その背後にある政治社会的課題や運用の実態については明らかにされているとは言い難く、NQFを有しない日本において策定の是非を議論する根拠情報が十分に揃っていない。本研究は、現行のNQFの動向研究を踏まえ、NQFの策定プロセス・枠組み・活用状況を分析し、運用の課題を整理・類型化する。さらに具体的事例として、特に非職業系の学問分野と労働市場との接続に社会的ジレンマを抱えるフランスのNQFを取り上げ、学術・実践の両面から日本版NQFの策定可能性に関する議論に資する示唆を得ることを目的とする。平成30年度は、各国のNQFの情報が記述されているインベントリを基礎資料とし、本研究の焦点となるフランスNQF(RNCP)の活用状況を相対的に捉えるため、ドイツNQF(DQR)やアメリカNQF(CF)といった異なる設置形態、活用の動機や課題をもつ事例についても調査を進め、NQFに期待する役割や機能における国による違いを整理した。成果は著書(分担)にまとめるとともに、講演会においても発表した。
著者
細井 義夫 漆原 佑介 橋本 拓磨
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

Muse細胞を用いて、① 正常組織の放射線障害を軽減するための研究と、② 低酸素で成り立つ幹細胞ニッチによる放射線抵抗性や多分化能の原因を解明し、癌幹細胞等での放射線抵抗性の克服に役立てると共に、Muse細胞の多分化能を高めて正常組織の放射線障害の治療に役立てるための研究を行なう。具体的には、放射線照射後に静注したMuse細胞が、骨髄幹細胞、小腸腺窩細胞、肺胞上皮細胞、皮膚上皮細胞に分化するかどうかを明らかにする。放射線感受性に関してはDNA2本鎖切断修復関連遺伝子、多分化能に関してはFbx15、Nanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycなどの遺伝子の発現と活性について調べる。
著者
丹羽 伸介
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

キリンのように長い軸索を持つ生物の分子モーターはそれにあわせて高速化しているかどうかを解析するために、全ゲノムシークエンスが完了しているキリンの全ゲノム情報を解析し、シナプス小胞の軸索輸送キネシンKIF1Aを探索した。RNAseqのデータがないために解析は難航したが、幸いKIF1A遺伝子は非常によく保存されていたため、KIF1Aの全長配列を得ることに成功した。キネシン型モータータンパク質はモータードメインと呼ばれる部位によって微小管上を歩行する。モータードメインの配列を解析したところ、ネックリンカーのような速度に重要な働きを持っている部位にアミノ酸置換が起こっていることがわかった。キリンKIF1Aの速度を計測するために、そのDNA配列を合成した。私が得意とする線虫を用いた解析を行うためにコドンはあらかじめ線虫に調節した。この配列を線虫で発現してシナプス小胞の軸索輸送の速度変化を計測するためのプラスミドベクターを作製した。また、in vitroの解析を行うために大腸菌でキリンKIF1Aのモータードメインを発現するためのベクターも作製した。KIF1Aに加え、KIF5Aキネシンについても岡田康志東京大学理学部教授との共同研究によって解析を行った。KIF5Aの線虫ホモログであるUNC-116はミトコンドリアの軸索輸送に関与していることがわかっている。キリン型KIF5Aが軸索輸送s九度を変化させるかどうか解析するため、UNC-116のモータードメインをKIF5Aに置き換えたキメラ遺伝子を作製した。
著者
海保 邦夫 大庭 雅寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

多細胞動物の台頭期であるエディアカラ紀から多細胞動物の爆発的進化期であるカンブリア紀初期に渡る海洋溶存酸素環境をバイオマーカーのプリスタン/ファイタン比により、stormwavebaseより浅い水深と深い水深に分けて求めた。海洋溶存酸素は、遺伝子からみた多細胞動物の多様化期、大型のエディアカラ生物群の出現、カンブリア紀の多細胞動物の爆発的進化期で増加した。酸素が生物の進化をコントロールした。
著者
水野 紀子 河上 正二 早川 眞一郎 渡辺 達徳 小粥 太郎 久保野 恵美子 米村 滋人 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、先端的医療・医学研究の実施に際して、患者・被験者等の利益を保護し、生命倫理の観点から逸脱した行動を規制しつつ、適正な範囲での先端的医療・医学研究の発展を可能にすべく、その法的規律を明確化することを目指した。アドホックな個別の利益衡量ではなく、民法の一般法理論との関連において、生殖補助医療やヒト生体試料の法的地位などの具体的問題について分析・検討して,解決に向けた具体的指針を提供した。
著者
新妻 邦泰 冨永 悌二 Rashad Sherif 坂田 洋之 伊藤 明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

高齢に伴う認知症患者の急増は、患者と家族の生活の質の低下、医療費や介護費用などの増加を招き、大きな社会問題である。現状では認知症には根本的治療はないが、細胞治療は今までの治療法とは一線を画する治療になると考えられ、その発展が期待されている。Muse細胞は、生体に存在する自然の多能性幹細胞であり、安全性と組織修復性を両立している有望な細胞である。本研究では、Muse細胞を用いた認知症の細胞治療を開発するため、臨床応用の前段階として細胞や動物を用いた検証を行う。認知症へのMuse細胞治療が確立すれば、要介護者の減少、患者や家族の生活の質の向上、医療費削減等、大きな社会的波及効果が生じる。
著者
徳田 幸雄
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

当該年度は、一般に「回心」という語で括られる宗教的な新生あるいは再生の体験、具体的にはタウバ(イスラーム)とコンバージョン(キリスト教)、廻心(仏教)を、それぞれクルアーン、聖書(ヘブライ語旧約聖書、ギリシャ語新約聖書、ラテン語訳聖書)、『浄土真宗聖典』に基づいて比較考察し、そこに宗教の相互理解に資するような共通構造を取り出すことに取り組んだ。結論を先取りして言えば、その共通構造とは、人(自力)の転換と神(他力)の転換とが同時に成り立ち、そこにおいて人(自力)と神(他力)とが相互に回帰し、両者が逆説的に接するという構造である。これを明らかにするために、アラビア語のタウバと英語のコンバージョンの共通の語源であるヘブライ語のシューブやギリシャ語のエピストレフォーにまで遡って考究した。およそ一千か所にも及ぶ膨大な参照個所をふまえつつ、先の共通構造を浮き彫りにさせたことは、これらがいずれも各宗教の核心部分を構成するがゆえに、宗教一般を理解するうえでも大きな意義をもつ。とりわけ、宗教をもっぱら人間側の現象としてのみ捉えることの限界を示唆したことは、従来の宗教研究のあり方に一石を投じることになろう。なおこの研究成果は、『東北宗教学』第6号に掲載予定の論文「イスラームにおけるタウバとキリスト教におけるコンバージョン、そして仏教における廻心-各聖典を中心とする比較考察-」において発表することになっている。
著者
安元 健 NOELSON Raso NORO Ravaoni 佐竹 真幸 NOELSON Rasplofonirina RASOLOFONIRI ノエルソン RAVAONINDRIN ノロ
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

マダガスカルにおける現地調査の結果、近年になって高死亡率の魚介類食中毒が多発していることが明らかになった。サメを原因とする食中毒は1993年以降に6件発生し、980名の患者と65名の死者の発生が判明した。ウミガメによる食中毒は1993年以降に5件発生し、414名の患者と29名の死亡者を出している。ニシン科に属する小型魚のミズンを原因とする食中毒(クルペオトキシズム)では、1名が中毒し死亡している。中毒原因となった有毒試料の入手は極めて困難であり、サメ、ウミガメ、ミズンのそれぞれについて1検体ずつ、数十グラム以下の試料しか得られなかったが、入念に解析を行い、以下の成果を得た。[サメ中毒]原因毒はシガトキシンと同様にNaチャネル活性化作用を有するものの、マウスの症状及びHPLCの挙動が異なることを明らかにし、主要毒2成分を単離してカルカトキシンAおよびカルカトキシンBと命名した。僅か数十ミクログラムの量であるが、化学構造の追究を継続している。[ウミガメ中毒]アオウミガメの内臓と推定される部位90グラムを得た。ヒト中毒症状及び毒のクロマトグラフィーにおける挙動から、らん藻の有毒成分であるリングビアトキシンとの類似性を指摘し、さらに追究を行っている。[クルペオトキシズム]中毒検体の頭部1個から微量の毒を検出し、クロマトグラフィーにおける挙動、細胞毒性、溶血性、抗体反応の結果からパリトキシンと同定した。
著者
安倍 敏
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

MRSA、HIVあるいは肝炎ウイルスなどの院内感染が社会問題になっている。歯科治療時には、出血の頻度が高いことから、血液を介する感染性疾患に対しては十分な感染予防対策が必要である。また、近年、易感染患者に歯科治療を行う頻度が高くなり、歯科治療室環境の改善が必要である。本研究では酸化電位水、すなわち蒸留水あるいは水道水に0.07%NaClを添加した後、電気分解して得られる、pH2.6、酸化還元電位(ORP)1,100mV、有効塩素濃度16ppmの水を用いて、消毒剤としての有効性について検討し、次の結論を得た。1. 酸化電位水を口腔内に用いると、塩素臭や酸味のため不快感がある。そこで、酸化電位水:ペパーミント:キシリトールを1.0リットル:0.025ミリリットル:8.0グラムに調合することにより、従来の酸化電位水と同等の消毒力が得られ、不快感も消失した。2. 酸化電位水に金属製医療用器具を浸漬すると、腐食が生じる器具がある。セラミックやチタンを用いて耐腐食性を高めた、試作歯科用タービンに細菌を付着させ、エタノール、次いで酸化電位水に浸漬し超音波洗浄した結果、除菌率99%以上と有効な成績が得られた。3. 酸化電位水の有効塩素濃度に応じて、細菌の消毒効果に差異が認められた。従来はORPとpHが酸化量位水の指標として用いられてきたが、ORPが1,000mV以上であっても、有効塩素濃度が低下するとその殺菌効果は著しく消失した。
著者
岩崎 達哉
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本研究は,高校生とその親がもつ大学進学への認識を,社会階層や高校生の通う高校の特性との関連において明らかにする。従来,日本において大学進学という行動は経済学的に分析がなされてきたが,それらは経済学が分析に際して暗黙裡におく仮定の元で研究が行われてきた。そのような分析上の仮定の存在ゆえに,従来の大学行動分析は社会学的視座との交流が十分になされてこなかった。しかし,本当に大学進学行動に経済的要因以外は影響をもたらさないのか。本研究は,従来の分析の仮定レベルまで立ち返り,その妥当性を検討することで,大学進学の意思決定メカニズムを再考するものである。