著者
酒井 良忠
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

RA滑膜細胞ではミトコンドリア生合成が低下しており、その改善はRA滑膜細胞のアポトーシスを亢進させ、細胞増殖能およびMMP3/RANKL分泌を低下させた。CIAマウスへのAICARの投与は、手足の厚さ、関節炎スコアを有意に低下させ、滑膜炎症細胞浸潤、滑膜増殖、軟骨変性及び破骨細胞増勢を抑制し、骨破壊の抑制とともに、関節破壊抑制の効果をin vivoでも証明した。RA滑膜でのミトコンドリア低下は、炎症時のミトコンドリアのアポトーシスを低下させ、滑膜細胞の増殖を亢進させ、関節破壊の引き金となっている可能性があり、ミトコンドリアをターゲットにした治療の可能性が示唆された。
著者
横小路 泰義
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,人の手と同様に多様な把持と操作が可能な多指ハンドの実現を将来目標に据え,安易な人の手の外観の模倣ではなく,人の把持動作の詳細な観察や内在筋と外在筋を有する人の手の筋骨格構造の本質的理解に基づき,様々な形状の物体のピッキングが可能な二指ハンド機構を開発した.人のピッキング動作の観察から,重量物等の「つかみ」と小物の「つまみ」加え,薄物の「すくい」が必要であることを見出した.開発したハンドは,この3つの把持様式を可能とする5節・4節複合リンク機構を有する2自由度示指と5節1自由度劣駆動の拇指から構成される二指ハンドである.
著者
舩山 日斗志
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、散開星団に属する恒星の高分散分光観測を行って、恒星が持つ鉄の存在度(金属量)を測定して、散開星団の金属量の一様性について調べた。その結果から、太陽系外惑星をもつような金属量の高い恒星の形成過程を探ることを目的としている。以下に本年度の成果を挙げる。1.2007年度までに行った高分散分光観測で取得した、プレアデス星団に属する恒星とプレセペ星団の恒星のスペクトルから、天体の金属量を測定した。特に、プレアデスについては、単一研究としては過去最大数の22天体の金属量を測定した。結果、プレアデスで属する恒星のもつ金属量は一様であることがわかった。この結果は、金属量の測定精度が高い先行研究で得られた値と一致しており、このごとからプレアデスに属する恒星は一様な金属量をもつことが示唆された。また、プレアデスには系外惑星をもつような高い金属量を示す恒星は存在しないととが示唆された。プレセペについては11天体の金属量の測定を行い、この11天体が一様な金属量をもつことがわかった。2.各星団の金属量の一様性について、より定量的な議論を行うため、観測天体数を増やすことを目的として、2009年1月・2月に岡山天体物理観測所と県立ぐんま天文台で高分散分光観測を行った。そして、プレアデスに属する恒星をあらたに6天体、プレセペの13天体のスペクトルを取得した。また、対象とする星団の数を増やすことも重要であり、あらたにコマ星団に属ずる恒星10天体の観測もあわせて行った。3.鉄以外の元素についても測定可能であるか、模索した。結果、これまで取得したスペクトルがらα元素や鉄族元素の測定を行うととが可能であるととがわかり、特にSiやNiのような可視波長域に吸収線が多い元素については、十分な精度で存在度の測定できることがわかった。これまで、プレアデスの11天体について13元素の存在度の測定を行った。
著者
高橋 昌明
出版者
神戸大学
雑誌
文化学年報 (ISSN:02868105)
巻号頁・発行日
no.19, pp.33-102, 2000-03
著者
福田 敦子 花岡 澄代 喜多 淳子 津田 紀子 村田 惠子 矢田 眞美子 中村 美優 鶴田 早苗 松浦 正子 伊藤 佳代子 古城門 靖子
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-45, 2004
被引用文献数
1

本研究の目的は、リアリティショックの潜在構造を明らかにして新卒看護職者の傾向を示し、今後の看護教育への示唆を得ることである。方法は、病院に就職した新卒看護職者275名を対象に、独自に作成した質問用紙を用いた調査を行い、因子分析により潜在構造を求めた。質問紙において用いたリアリティショック23項目に対する因子分析より、6因子『患者・家族との複雑な関係・対応』『職場における協働の仕方とシステム』『未経験の機器やケア』『ナースコールや電話への対応』『生命監視装置等のある環境』『患者の死亡や急変』が抽出され(α係数0.898)、『未経験の機器やケア』『ナースコールや電話への対応』『職場における協働の仕方とシステム』で各因子における平均得点が高かった。今回、各因子における平均得点が高かったのは看護実習においても経験することが難しい因子であった。今後は在学中の看護基礎教育および継続教育を含めて、臨床的なリアリティ認知を高める取り組みの必要性が示唆された。
著者
齋藤 政彦 山田 泰彦 太田 泰広 望月 拓郎 吉岡 康太 Rossman W.F 野海 正俊 大仁田 義裕 三井 健太郎 佐野 太郎 小池 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本年度は、代数曲線上定義された放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間の代数幾何学的構造の研究を継続して行った。また、付随するリーマン・ヒルベルト対応の幾何学、モノドロミー保存変形の微分方程式のパンルヴェ性などについても研究を行った。特に、現在残された一般の分岐的不確定特異点を持つ場合のモジュライ問題の設定、モジュライ空間の構成、次元公式、非特異性、シンプレクテック構造などについては、稲場がすでにプレプリント「Moduli Spacs of irregular singular parbolic connections of generic ramified type on a smooth projctive curve」において、肯定的な解答を得ている。また、確定特異点でスペクトル型を固定したときのモジュライ空間の構成、モノドロミー保存変形に関わる方程式のパンルヴェ性の証明についての論文を出版する予定である。岩木・小池は位相的漸化式とWKB解析の関係において、具体例による研究を進め、新しい例を構成しつつある。名古屋は、第6q差分パンルヴェ方程式のタウ関数がq共形ブロックでフーリエ展開で得られるという結果を得て、論文を発表した。また、この分野の国際研究集会を11月に神戸大学で開催した。望月は、円周と複素直線上の特異モノポールについて、色々な角度から研究し、新たな結果を得た。大仁田は、微分幾何学と可積分系の関係、特に調和写像の分類問題を研究した。山田は、多変数モノドロミー保存変形について、パンルヴェ方程式の退化や、パデ法の応用研究を行った。入谷はトーリック軌道体の標準類を保たない双有理変形の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した。また高種数グロモフ・ウイッテンポテンシャルの保型性を調べた。細野は、カラビ・ヤウ多様体のミラー対称性について詳細な研究を行った。
著者
宇野 雄一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

チップバーンは、カルシウム欠乏時に発生する野菜の生理障害であり、収穫物の商品価値と収量を低下させる.本研究では,レタスのチップバーン抵抗性の簡易評価法を確立し、同方法により選抜した感受性品種が栽培時の指標品種として利用できることを確認した.また,チップバーンの原因遺伝子として、カチオン/H^+アンチポーターをコードするCAX遺伝子を一候補とみなし、レタスから4種類の遺伝子(LsCAX2, 3a, 3b,および5)を単離し解析を行った。そのうち、2種類の遺伝子がコードするタンパク質にはCaの輸送特異性に関与する2つの領域が高度に保存されていた.さらに、CaCl_2によるLsCAX遺伝子の発現誘導において、抵抗性品種と感受性品種との間に差異があり、同遺伝子がチップバーンと関係している可能性が推察された。AtDREB1Aを別の原因遺伝子候補と考え、同遺伝子を過剰発現させたレタスのチップバーン抵抗性をコントロールと比較した結果、チップバーン発生葉率が有意に高いことが明らかとなり、ストレスとチップバーンとの関連性が示唆された。
著者
西尾 瑞穂
出版者
神戸大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) トライアウト トライアウトタイプ(標準)
巻号頁・発行日
2021

本提案では比較的感度の低いPCRの代わりに胸部単純レントゲン写真を用いて新型コロナ肺炎を高感度に短時間でスクリーニングできる自動診断技術を開発する。このために、申請者は少量の医用画像データに異ドメイン画像の学習データを混在させて深層学習が可能になるソフトウェアを作成し、新型コロナ肺炎の自動診断を試みている(関連文献の論文1、2)。本申請では、複数の病院から収集した胸部単純レントゲン写真を用いて深層学習を行うソフトウェアを作成し、医師の診断結果との対比により性能評価および改善を行う。薬機法承認を見すえた産学連携共同研究に展開し、診断結果が医師と遜色なく実際の医療に有用な自動診断技術の開発を目指す。
著者
宋 建華 福島 春子 胡桃澤 伸 田中 究
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.145-177, 2001-03-31
被引用文献数
1

精神分裂病患者で成育歴に心的外傷体験を持つものは少なくないが, このような患者には精神分裂病固有の症状に加え, 心的外傷に起源をもっと考えられる症状を認めることがある。著者らは, 神戸大学精神神経科外来に通院する90名の精神分裂病患者に対して, 解離症状質問票 (Dissociation Questionnaire ; DIS-Q) および解離体験尺度 (Dissociative Experience Scale ; DES) を用いて, 心的外傷に関連した症状とその頻度を調査し, 検討した。さらに簡易精神症状評価尺度 (Brief Psychiatric Rating Scale ; BPRS) を用いて解離と精神症状の関連について調査した。この結果, 精神分裂病患者においても, 健常群や他疾患群と同様に解離傾性を認めた。高解離群では精神分裂病の発症年齢が有意に低く, 心的外傷後ストレス障害にみられる症状を認めた。また, 心的外傷を有する群は解離傾性が高く, 心的外傷のない群より, 離人感, 現実感喪失および行動, 思考, 感情の制御不全が生じやすく, 心的外傷のない群では情動の平板化, 感情緊張の低下, 感受性や興味, 関心の欠如といったいわゆる陰性症状が優位に見られた。また, DESとDIS-Qは強い相関を認め, 精神分裂病の解離傾性を解析するのにDISQはDESと同様, 有用な検査法であることが示された。現象的に精神分裂病症状の中に心的外傷起源の幻聴 (解離性フラッシュバック) が含まれ, 言語的あるいは非言語的な刺激, 特定の状況, それにともなう感情を想起したときに, 思路障害が生じる場合があることを示し, 精神病理学的な検討を試み, 心的外傷を考慮した精神分裂病治療が必要であることを述べた。
著者
田中 究 前田 潔 北山 真次 高田 哲 富永 良喜 加藤 寛
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

被虐待児童の評価として、既に十分に確立している精神疾患概念(診断基準)を用いて評価し、被虐待児童の精神症状、心理的影響について、その成育史上の特徴との関連を明らかにすることは有用であると考えられ、調査を実施した。本調査は兵庫県児童擁護連絡協議会および神戸市養護施設連盟に加盟する児童養護施設(28施設)において行ったものである。その結果、児童養護施設には高率に被虐待児が入所しており、また何らかの精神症状、精神疾患を持つものも高率におり、児童養護施設はもはや生活施設としてではなく、療育・治療の施設としての位置づけがなされなくてはならない状況であった。また、2施設においては悉皆調査を行い、児童の精神医学的診断を質問紙法(子ども用面接(ChIPS))でおこない、加えて児童の観察および診察および事例検討を通して精神科医および小児科医、臨床心理士が評価を行った。また、この評価と生活状況、養育環境および虐待体験の有無、虐待の種類などについて検討し、統計学的解析を行った。この結果、児童養護施設入所時のうち被虐待児の割合は70%認め、何らかの精神症状を持つ児童が74.7%認めた。その内訳は反応性愛着障害35%、注意欠陥多動性障害23%、反抗挑戦性障害28%、行為障害28%、全般性不安障害16%、気分変調・抑うつ状態16%、遺尿(夜尿)18%、解離症状24%、感情コントロール不全16%、知的障害19%などを認めた。さらに、乳児院を経て入所した児童は、反応性愛着障害、注意欠陥多動性障害、反抗挑戦性障害で有意に多かった。これらの児童への治療は、身体医学的治療(薬物療法)および精神医学的治療を医師らがあたり、心理学的治療(遊戯療法、芸術療法、認知行動療法、など)は臨床心理士等に業務依頼し、経時的にこれらの症状評価を行った。研究協力者として加藤寛氏(兵庫県こころのケア研究所研究部長)、井上雅彦氏兵庫教育大学発達心理臨床研究センター准教授)に評価、治療等へのご協力を頂いた。
著者
Grecko Valerij
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ロシア・アヴァンギャルドの特徴のひとつは、芸術実践が科学理論と密接に関連していることである。具体的なモチーフのレベルでは、共産主義社会における「新しい人間」の創造が特に重要なものとして科学と芸術に共通して現れる。生理学・遺伝学その他の分野における科学の発展によって、アヴァンギャルド芸術においてもこのモチーフに対する関心が高まった。イデオロギーと世界観のレベルでは、ユートピア思想が科学と芸術の双方に見られる。記号論を援用してメタ・レベルで考察した場合、芸術と科学は世界を認識する方法として相互補完的であり、一方の言語/概念を他方の言語/概念に「翻訳」することが非常に生産的な成果を生むことがわかる。
著者
土佐 弘之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

地質学的「人新世」という危機的局面が突きつけている気候変動問題は、解決困難な「超意地悪問題(super wicked problems)」であるとも言われている。つまり、一見すると科学技術問題のようでいて、基本的には利害関係者が複雑に絡み合っている社会的な集合行為問題ということである。そのような解決困難な事態に直面しての反応を、いくつかのパターンに分け、特に気候変動仮説否認(リスク過小評価)の態度をとるグループの反・再帰性(reflexivity)の政治に焦点を当てて、その政治経済的メカニズムと社会心理学的メカニズムについての解明を行った。
著者
渡部 昭男
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

高等教育費負担を巡り、日韓はともに家族負担主義、高授業料・低補助の国に分類されてきたが、転換しつつある。両国は、共通した国際人権法(A規約13条:教育への権利、漸進的無償化義務)、類似した憲法(能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利)等を法規範として有する。独自開発した「漸進的無償化プログラム(高等教育版)2017」の枠組みを用いて、経済的負担軽減及び修学支援に係る制度・行財政(国家政策・地方施策)を把握し、その意思決定過程を分析する。その上で、日韓の政策転換の特徴(共通性・相違点)を明らかにするとともに、法規範を源泉とみる「法規範⇒意思決定⇒制度・行財政=政策転換」という「問い」を検証する。