- 著者
-
西村 欣也
- 出版者
- 筑波大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1994
繁殖行動(繁殖の時期、産卵場所の選択、産卵する子の大きさなど)は、子孫を残すことに密接に関係をしている。そのため、繁殖行動は自薦選択によってどの様にデザインされてきたかを考えることは、行動の進化を研究する上で重要となる。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフの関係があるとき、産卵行動はそのトレードオフによってどの様の影響を受けるだろうか。寄生蜂(Dinarmus vasalis)を用いた実験から、寄生蜂の寄主選択は、産卵する雌が、交尾を受けているかどうかによって変わることが明らかになった(Nishimura,in MS)。生活史進化の数理生物学的解析によると、産卵のこめのコストと、産卵された子どもの適応度のバランスによって、寄主選択の仕方は左右される。寄生蜂は、未受精卵は雄となり受精卵は雌となる。卵の大きさに雌雄で違いはないので,寄主の条件が同じであれば、産卵のためのコストは、受精を受けた雌、未受精の雌の間で違いはない。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフがあるような2つのタイプの寄主(一方は、産卵しやすいが産みつけられた子どもの適応度が低くなる、他方はその逆)の利用の仕方は、産卵にかかるコストによって現在の生存率が減ることと、産卵のコストをかけることによって子どもの適応度が上がる事のバランスによって決まる。交尾を受けた雌では、よい発育条件のもとで、より適応度が上がる雌を産めるので、産卵に、よりコストをかけ、子どもの適応度が高くなるような寄主に産卵する、一方、未交尾雌では、よい発育条件のもとで雄の子が適応度を上げる利点よりも、産卵コストの少ない寄主に産卵して、生存率を高めた方が進化的に有利は方法となる。寄主選択は、生活史進化の解析から、交尾の有無、産卵にかけるコスト、産みつけられた子どもの適応度よって変化することが分かる。