著者
西村 欣也
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

繁殖行動(繁殖の時期、産卵場所の選択、産卵する子の大きさなど)は、子孫を残すことに密接に関係をしている。そのため、繁殖行動は自薦選択によってどの様にデザインされてきたかを考えることは、行動の進化を研究する上で重要となる。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフの関係があるとき、産卵行動はそのトレードオフによってどの様の影響を受けるだろうか。寄生蜂(Dinarmus vasalis)を用いた実験から、寄生蜂の寄主選択は、産卵する雌が、交尾を受けているかどうかによって変わることが明らかになった(Nishimura,in MS)。生活史進化の数理生物学的解析によると、産卵のこめのコストと、産卵された子どもの適応度のバランスによって、寄主選択の仕方は左右される。寄生蜂は、未受精卵は雄となり受精卵は雌となる。卵の大きさに雌雄で違いはないので,寄主の条件が同じであれば、産卵のためのコストは、受精を受けた雌、未受精の雌の間で違いはない。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフがあるような2つのタイプの寄主(一方は、産卵しやすいが産みつけられた子どもの適応度が低くなる、他方はその逆)の利用の仕方は、産卵にかかるコストによって現在の生存率が減ることと、産卵のコストをかけることによって子どもの適応度が上がる事のバランスによって決まる。交尾を受けた雌では、よい発育条件のもとで、より適応度が上がる雌を産めるので、産卵に、よりコストをかけ、子どもの適応度が高くなるような寄主に産卵する、一方、未交尾雌では、よい発育条件のもとで雄の子が適応度を上げる利点よりも、産卵コストの少ない寄主に産卵して、生存率を高めた方が進化的に有利は方法となる。寄主選択は、生活史進化の解析から、交尾の有無、産卵にかけるコスト、産みつけられた子どもの適応度よって変化することが分かる。
著者
宮前 健太郎
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

明治期に年間10万人を超える死者を出した伝染病・コレラは高い致死率と感染力、患者の凄惨な病状から、当時の人々にかつてない恐怖をもたらした。それゆえに、伝染病としてのコレラそのものと並んで問題化したのが、伝染病をめぐる流言蜚語である。日本各地で発生した地域住民による隔離病院襲撃や警察との衝突、いわゆる「コレラ一揆」も、元々は「隔離された患者は生き肝を奪われる」、「警察官は消毒と称して病原菌を散布している」といった流言の流布によって起きたものである。申請者は今後これまでの研究内容を踏まえつつ、コレラをめぐる流言の特徴や成り立ち、背景、それを解消するために行われた啓蒙活動の諸記録を検討していく。
著者
齊藤 康典
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

クロイソカイメンの自己・非自己認識機能を調べた結果、同所的に生息するダイダイイソカイメンの個体と接触すると、非自己と認識して拒絶することが明らかとなった。一方、同種個体間の認識においては、約10m四方の狭い範囲に生息する成熟個体間の接触で、ほとんどの組み合わせで拒絶反応を示し、癒合する組み合わせはほとんど無かった。一方、同一母親から生まれた幼生を固着変態させた幼体間での自己・非自己認識を調べると、固着変態直後から認識能を示し、さらに、拒絶反応の様式が成熟個体とは若干異なることが明らかとなった。拒絶反応の様式の詳しい記載や、個体間で拒絶が出現する頻度などから遺伝的な支配についてについて考察した。
著者
角田 肇 吉川 裕之
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

子宮頸部に発生する扁平上皮病変(扁平上皮癌を含む)はその原因としてHPV(Human papillomavirus)が関与していることが明らかにされているが、腺癌においても同様に発癌関与している可能性がある。子宮頸部腺癌におけるHPV陽性率は報告によって30〜90%とばらつきがあり、また腺癌病変の周辺にはしばしば扁平上皮病変を伴うため、これまでの報告が腺癌部の感染の状態を正確に反映しているか、あるいは扁平上皮に感染したHPVを観察しているのかははっきりしない。本研究ではLaser capture microdissection法により、子宮頸部腺癌部のみのHPV感染を厳密に確認することで、腺癌においても扁平上皮癌と同様にHPV感染が発癌の契機となっているのかを検討した。子宮頸部腺癌症例60例(類内膜腺癌19例、内頸部型37例、腸型1例、低分化腺癌2例、未分化腺癌1例)についてLaser capture microdissection法を用いて腺癌部のみを扁平上皮部、間質と別に採取し、コンセンサスプライマーを用いたPCR-RFLP法によりHPVのタイピングを行った。腫瘍部のHPV感染の有無を検討すると60例中38例(63.3%)でHPV感染を認めた。内訳は内頸部型37例中21例(56.8%)、腸型1例は陰性、類内膜型19例中15例(78.9%)、低分化腺癌2例中1例、未分化腺癌1例中1例であった。陽性例38例中32例が18型に感染していた(複合感染7例を含む)。一方、扁平上皮病変(CIN)では検討が可能であった16例中5例(31.3%)でHPV18型に感染していた。腺癌部と扁平上皮部で異なる型のHPVに感染している症例はなかった。以上より扁平上皮の混入をなくした頸部腺癌細胞そのものにHPV感染が認められることが明らかとなり、18型感染が優位であることが確認された。また、共存する扁平上皮病変と同一の型のHPV感染であることを証明した。
著者
前田 清司 秋本 崇之 下條 信威
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、①睡眠質が競技パフォーマンスに及ぼす影響、②睡眠質が低下する機序、③睡眠質の低下がもたらす競技パフォーマンスの低下を改善する方法を検討した。睡眠質は比較的強度の高い運動中の認知機能に影響を与えることが示された。また、メタボロミクスによる網羅解析にて、睡眠質の低下にはカルノシンやオルニチンなどの代謝産物の低下が関与する可能性が示された。さらに、カルノシン含有のイミダゾールジペプチドの摂取により睡眠改善と競技パフォーマンス向上の可能性が示された。
著者
小薮 大輔 小林 耕太 福井 大 飛龍 志津子 目黒 史也
出版者
筑波大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2022-10-07

哺乳類の頭蓋骨は種に関わらず同じ数のパーツ(骨要素)によって構成されていることから,進化上極めて保守的な構造であるとされている.しかし応募者は他の哺乳類には見られない新奇な骨が一部の動物の耳にあることを発見した.この骨は従来の比較解剖学の体系上どこにも当てはまらない全く未知の骨である.予察的研究からこの骨は他の哺乳類では舌器の一部に当たる部位が転じて化骨したものであるという仮説を立てている.本仮説の検証を目指し,本研究ではどの部位が分化してこの骨が形成されるのか,どういった遺伝子とゲノム基盤が関わっているのかを解明する.
著者
山本 英弘 竹中 佳彦 海後 宗男 明石 純一 関 能徳 濱本 真輔 久保 慶明 柳 至 大倉 沙江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、経済的・社会的不平等の拡大への政治的対応が求められている。しかし、政治への参加や政策による応答に格差があるとしたら、かえって不平等を助長するおそれがある。そこで本研究では、政治参加と政策応答という2つの点から政治的不平等の実態を捉え、さらに経済的・社会的不平等と関連付けながら政治的不平等の生成メカニズムを解明する。具体的には、1)大規模質問紙調査に基づく個人と団体の政治参加における不平等の把握、2)個人や団体の政策選好と実際の政策との照合による政策応答における不平等の把握、3)事例研究に基づく具体的な政策争点における参加と応答をつなぐプロセスの把握、という3つの調査研究に取り組む。
著者
鶴田 文憲
出版者
筑波大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2017

新生児期の脳は、時期領域特異的に精密なRNA代謝が行われている。近年、このプロセスが破綻すると発達障害につながることが示唆されている。これまでに我々は、脱ユビキチン化酵素USP15の機能が破綻すると、スプライソソームの機能低下につながり、グローバルなスプライシングエラーを引き起こすことを見出してきた。本課題では、USP15破綻によって産生されるSparcl1変異体の解析を行い、Sparcl1異常と小胞体ストレスの関連性を発見した。USP15やSparcl1は自閉症の責任遺伝子としても報告されていることから、本研究成果は、RNA代謝のみならず発達障害のメカニズム解明にもつながると期待している。
著者
角田 幸彦
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1993

筑波大学博士 (文学) 学位論文・平成5年3月25日授与 (乙第845号)
著者
小松 英雄
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1979

【要旨】
著者
小幡谷 英一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

木材の物理・化学加工技術を組み合わせ、枯渇が危惧されるグラナディラ材の代替材を、持続可能な汎用木材や天然樹脂を用いて製造する技術を開発する。具体的には、化学処理(寸法安定化)と樹脂含浸圧密(緻密化)を複合することで、グラナディラ材に匹敵する高い力学性能と寸法安定性を達成する。グラナディラ材のストックが払底する数年以内の実用化が求められることから、第1段階として、薬品を用いた化学処理と合成樹脂を用いた樹脂含浸圧密を組み合わせ、速やかに実用化できる材料を開発し、第2段階として、天然化合物や天然樹脂を用いた、持続可能な加工法を検討する。
著者
高橋 阿貴
出版者
筑波大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 創発的研究支援事業
巻号頁・発行日
2022

怒りの爆発による過剰な攻撃行動は大きな社会問題である一方、攻撃性を特異的に抑制する薬物は存在しません。本研究提案は、マウスを用いて過剰な攻撃行動を誘発する神経回路の全貌を明らかにするとともに、その性差を明らかにします。そして、内分泌系や免疫系、腸内細菌などの末梢因子が、どのように過剰な攻撃行動の神経回路の働きに影響を与えるかを明らかにすることで、その介入法の開発につなげることを目指します。
著者
五十嵐 立青
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2007

付: 参考資料: 1.第2次首都圏基本計画(昭和43年) 2.第3次首都圏基本計画(昭和51年) 3.第4次首都圏基本計画(昭和61年) 4.筑波研究学園都市経過年表 5.運輸政策審議会第7号答申「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(昭和60年) 6.大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法(平成元年)
著者
石井 英也 小口 千明 大濱 徹也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

青森県の下北半島に位置する脇野沢村は、江戸時代に能登半島を中心とする北陸の漁民や商人が、ヒバや鱈を求めてやってきて定住したしたことによって、その建設が促進された村である。そのため、脇野沢に住む住民達は、当初から明治初期頃までは水主を業とするものが多く、いとも軽々と周辺地域での他所稼ぎに従事してきた。その後、明治維新による山林の国有地化などによって、脇野沢住民の生業は鱈漁への傾斜を強めるが、鱈漁の季節性を埋め合わせるように、幕末以降発達しつつあった北海道鰊漁への他所稼ぎが多くなった。脇野沢村では、大正期以降に鱈漁が興隆し、それに北海道鰊場への他所稼ぎを組み合わせる一種の複合経営が成立する。それとともに、他所稼ぎの弊害も見られるようになるが、しかし、昭和戦前期までの他所稼ぎは、むしろ地域経済に利をもたらすものと肯定的にみられる傾向が強かった。第二次世界大戦後、脇野沢の鱈漁や、まもなく北海道の鰊漁も壊滅する。しかし、北海道はその開発が国の緊急課題となり、さまざまな基盤整備が行われるようになる。こうして脇野沢住民は、北海道での土木出稼ぎに従事するようになり、思いがけずに失業保険も手にするようになる。その出稼ぎは、高度経済成長期になると、とくに東京を中心とする関東にも向かい、まさに「出稼ぎの村」が形成される。この頃になると出稼ぎの量も質も、出稼ぎを引き起こすメカニズムも変質し、とくに昭和40年代以降にはさまざまな社会問題が注目されるようになった。その重要な問題の一つが、持続的社会の崩壊、つまり出稼ぎ者や年金生活者の増大に伴う地域そのものの空洞化であった。出稼ぎは、諸問題の発生や出稼ぎ者の高齢化や「出稼ぎは悪」という風潮のなかで、昭和末期以降急速に減少してきたが、村の再建が急がれる。
著者
酒井 健太郎
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2006

付: 参考文献
著者
Charles Christophe
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1996

筑波大学博士 (デザイン学) 学位論文・平成8年3月25日授与 (甲第1593号)
著者
高桑 守史
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1992

付:参考文献