著者
周 倩
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.15, pp.57-72, 2018-03

Haruki Murakami is a well-known Japanese writer who has consistently used the first person, boku, in his most novels and stories. Lexington Ghosts taken up in this paper is also a work which is narrated primarily in the boku first person. This thesis compares the two versions of Lexington Ghosts, namely the short version (group version) and the long version (paperback version). This paper attempts to identify this novel in Murakami's work history from the point of view of the first person, boku, who appears in the novel and the person function perspective,.The emphasis of this novel is focused on the father-son relationship in the paperback version. Unlike Tony Takitani, which was published at the same time, Lexington Ghosts is a novel which is narrated neither from a simple first person viewpoint nor the third person viewpoint. The narrator, boku, cleverly switches the position between the first person viewpoint and the third person point of view according to the scenes, which depicts a more complicated father-son relationship.In addition, the uses of the first person "I" in Lexington Ghosts is different from the uses of boku that have appeared in Murakami's other works. Through such person expression, this work mixes the first person, boku, and Casey's view point together which affects the existence of the first person "I". As a writer, Haruki Murakami makes this novel present a self-explanatory structure by using both the father's and son's perspectives. Furthermore, after Lexington Ghosts, Murakami has further embodied the author's continuous trial and error in person expression in other works, such as All the children of God dance, Sputnik's lover, and so on. In short, Lexington Ghosts has shed light on the changes in person function which can be said to be a work of significance in Murakami's work history.村上春樹は一人称「僕」を一貫して使う作家であるとされる。本稿で取り上げる「レキシントンの幽霊」も主に一人称「僕」により語られている作品である。本稿は,「レキシントンの幽霊」のショート・バージョン(群像版)とロング・バージョン(単行本版)を比較しながら,作品中に登場した一人称「僕」のあり方や人称機能の点から,この作品の村上作品史における新たな位置づけを試みるものである。 単行本版では,加筆によって,物語の力点が父子関係へと変化したことが読み取れる。ほぼ同時期に発表された「トニー滝谷」とは異なり,「レキシントンの幽霊」は,単純な一人称視点や三人称視点とは異なり,語り手「僕」が場面に応じて,位置取りを変え,一人称視点と三人称視点が巧妙に切替ってゆくことによって,より複雑な父子関係を描く物語となっている。 また,「レキシントンの幽霊」に登場している「僕」という人称表現は,これまでの村上春樹作品に出てきた「僕」と異なる人称表現のあり方を示している。こうした人称表現によって,この作品は,ケイシーと「僕」との視点の交錯を通じて,語られざる「僕」自身の在り様が浮かび上がる物語であり,息子の立場にあるケイシーとその父親の双方を同時に見渡していく「小説家」である「僕」の自己言及の物語という構造であることを論じた。 そして,「レキシントンの幽霊」以降,「神の子どもたちはみな踊る」,「スプートニクの恋人」などの作品では,人称表現に関して試行錯誤をする作者の姿がより顕著に現れている。つまり,「レキシントンの幽霊」は, 村上作品史において,人称機能が変化する兆しが初めて明確にあらわれた作品と位置付けられ,その意味で,重要な意義を持つ作品と言えよう。
著者
岡部 悟朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
法学論集 (ISSN:03890813)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.5-18, 2011-03
著者
依 柏州 秋山 邦裕
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.65, pp.7-12, 2015-03

近縁では、サジーの副産物は主なサジー種油、サジーの実、サジーの食物繊維などである。世界では、サジーのブランド商品が迅速に発展している。サジーの副産物の利用が多くなっており、より多くの消費者に認められている。サジー副産物の利用が年々増加している。サジー実に作られる薬品と商品は良く売られている。しかし、サジー実を収穫するのは難しく、今は供給不足の状態にある。本研究では、中国東北地区におけるサジーの流通実態を明らかにした。サジー副産物の供給状況を考察した。
著者
伊藤 晶文
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 自然科学編 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-8, 2006-02-28
被引用文献数
3

仙台平野の浜堤列は従来4列に大別されるが,最も海側に位置する第III浜堤列は,さらに細分できる。本研究では,細分した浜堤列の形成時期について,放射性炭素年代測定,テフラおよび史跡の分布状況に基づいて推定した。さらに,浜堤列の分布や形成時期から,歴史時代における海岸線の変化を考察した。第III浜堤列は,陸側から順に,第IIIa浜堤列,第IIIb浜堤列,第IIIc浜堤列に細分され,それぞれの形成開始時期は,約1,300cal.BP,約1,100cal.BPおよび約350cal.BP以前である。歴史時代以降の海岸線の変化には地域差があり,阿武隈川以南の地域において海岸線が顕著に前進した。第IIIa浜堤列形成期には仙台平野全域で海岸線が急速に前進しており,その要因として,流入河川および平野南方からの土砂供給量の増加,もしくは供給される土砂の質の変化が考えられる。
著者
大和 修 矢吹 映
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

トイプードルの家族性成犬発症型運動失調症については、特定のゲノム領域に1遺伝子全域を包含する広域(約50 kb)の欠失を見出した。この欠失を簡易に判定する遺伝子型検査法を作成し、これまでに蓄積した発症例(約30頭)および非発症例(同家系メンバー)で調査した結果、本家系内においては完全に遺伝子型-表現型の一致を確認できた。本疾患については、これまで実施してきた臨床所見、病理組織学的所見、ゲノムワイド関連解析、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析、RNAシーケンス解析等、すべてのデータをまとめて論文公表を準備中である。犬のオロット酸尿症およびメチルマロン酸尿症については、前者は特に尿素サイクル異常症に関わる遺伝子群、後者はメチルマロン酸尿症に関わる遺伝子群のエクソンおよびエクソン-イントロン結合領域を調査したが、候補となりうる配列異常は認められなかった。今後は、イントロン領域およびプロモーター領域にも検索範囲を広げて調査する予定である。また、全ゲノム解析を終えた犬のエーラス・ダンロス症候群、神経セロイド・リポフスチン症およびカロリ病、ならびに猫のライソゾーム蓄積病については、カロリ病においてPKHD1遺伝子に、家系内で表現型-遺伝子型の一致する候補変異を同定した。一方、今年度の計画に挙げていなかったが、新たに犬のムコ多糖症(MPS)ならびに猫のポンペ病(糖原病II型)およびニーマンピック病の解析を開始した。その結果、犬のMPSについては、以前に解析したMPS VI型のARSB遺伝子の他、MPS VII型のGUSB遺伝子のエクソンおよびエクソン-イントロン結合領域に候補となる異常配列は認められなかった。猫のポンペ病およびニーマンピック病では、それぞれGAA遺伝子およびNPC2遺伝子に候補変異となる異常配列が認められたため、現在、その変異についての集団内調査を実施している。
著者
"鹿児島大学国際島嶼教育研究センター "
出版者
鹿児島大学
雑誌
島嶼研だより
巻号頁・発行日
vol.65, pp.1-8,

南太平洋島嶼沿岸域における「人と自然の連動システム」に関する学融的研究 / 河合渓〔学生奮闘記〕うっちん研究奮闘記! / 枦木琢磨 (鹿児島大学大学院農学研究科)国際島嶼教育研究センター研究会発表要旨〔第131回 2012年9月20日〕爆発的水底噴火とその噴出物 / 鹿野和彦 (鹿児島大学総合研究博物館)〔第132回 2012年10月15日〕南島先史時代社会変化の構造 / 新里貴之 (鹿児島大学埋蔵文化財調査センター)〔第133回 2012年11月5日〕奄美諸島の系図はなぜ焼き棄てられたという理解が始まったのか-近世から近代の歴史と関連して- / 弓削政己 (奄美市文化財保護審議会)〔第134回 2012年12月3日〕インドネシアのパプア州・西パプア州における森林資源:その問題と挑戦 / ヘルマン・ヒダヤット (鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)〔第135回 2013年1月28日〕言語復興現代思想における比喩としての《島》―ドゥルーズの「島」概念についての一考察―」 / 近藤和敬 (鹿児島大学法文学部)〔第136回 2013年2月18日〕熱帯林の生態:40年間で観えたこと / 米田健 (鹿児島大学農学部)お知らせ最近の出版物〔フィールドこぼれ話〕雨の野外調査 / 川西基博 (教育学部)〔連載〕とうがらしに旅する : 第6回「クロタネトウガラシ」 / 山本宗立
著者
山口 武志
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 教育科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Studies in education (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.11-27, 2012

近年の数学教育における認識論的研究では,構成主義や相互作用主義,社会文化主義の協応(coordination)が議論されており,各種の認識論における社会的相互作用の機能のとらえ方が論点の1つになっている。こうした研究動向をふまえ,本研究は,文献解釈的方法によって,Vygotsky 論を中心とする社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の位置づけに関する考察を目的とするものである。本稿では,Vygotsky 論の鍵概念として,(V1)高次精神機能の発生と発達に関する基本的な視座としての「文化- 歴史的発達論」,(V2)高次精神機能の記号による被媒介性:媒介された(mediated)行為,(V3)高次精神機能の社会的起源:間精神的機能の内精神的機能への転化,内化(internalization)と専有(appropriation),(V4)発達の最近接領域の4つを指摘した。その上で,社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の重要な機能や特性として,次の3つを指摘した。(SC1)「間精神機能の内精神機能への転化」を基盤とする「文化- 歴史的発達」にとって,社会的相互作用は必要不可欠であり,認知発達の質に影響を与える。(SC2)社会的相互作用は,「発達の最近接領域」の創出において重要な役割を果たす。(SC3)心理的道具に媒介された社会的相互作用を通じて,子どもは高次精神機能を発達させる。
著者
中富 葆造 岩水 哲夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学工学部研究報告 (ISSN:0451212X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.89-100, 1962-09

Since the thermal Power Plants in the Kyushu Districts are obliged to use low quality coal for fuel, they have no alternative but to utilize combustion of pulverized coal. The Unit System Tube Mill is a low costing Pulveruzer, but this system has its difficulties with automatic coal feeding. The reason being that as the feed control is carried out by interlinking the draft of the exhauster which blows the pulverized coal into the furnace with the feed rate of the coal feeder, after operation over a long period,excessive quantities of coal accumulates within the mill causing Mill-over or shortage of pulverized coal comes about decreasing the load of the Power Plant. With such difficulties constantly happening, perfect automatic combustion cannot be obtained. These defects can be corrected by disconnecting the interlink between the coal feeder and the exhauster, and controlling the feed rate of the coal feeder so that a fixed quantity of coal is constantly retained within the Tube Mill. Since a detector is necessary to determine the quantity of coal retained in the Tube Mill, the Author has invented and developed an Electro-acoustic Mill Level Meter which is quick responding and enables the operator to accurately detect the quantity of coal retained within the Mill. Recently the Unit System Tube Mill coal feeding system of the No. 2 Minato Power Plant of the Kyushu Power Company was completely switched to automatic operation by the use of this invention. Following this, the same automatic coal feeding system was installed at the Ainoura Power Plant which brought about excellent operating results. This thesis reports on the outline of this Invention.
著者
長岡 良治
出版者
鹿児島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

ADHD児(3名)の注意力や集中力の改善にどのような運動が効果的かを調べるために、閉眼歩行、無酸素運動(100m走)、有酸素運動実施前後に計算テスト、CRT(選択反応時間)測定、ペグボード検査を実施した。ペグボード検査では有酸素運動後と閉眼歩行後に、計算テストでは有酸素運動後に、CRTは有酸素運動後や閉眼歩行後に時間が短縮すう傾向にあることから、有酸素運動や閉眼歩行は注意力や集中力の改善に良い効果をもたらすことが示唆された。無酸素運動は運動後の呼吸の乱れにより一般に集中力は低下するが、ADHD児の中には良くなる子もいた。ADHD児には、動作のぎこちなさや不器用,さがみられるため、筋緊張の調節を司る大脳基底核に発達障害があるのではないかと考え、感覚統合運動を取り入れた8種類の身体運動を5名に3ヶ月間実施した。8種類のうち閉眼歩行と手拍子は毎日行わせ、的当て、ビーンズバッグ、風船バレー、ボール運動、ビーズ通しおよび後出しじゃんけんは週に1回行わせた。注意力・集中力をみるためにAPP検査、計算テスト、タッピング、ペグボード、CRT測定を行った6トレーニング後はAPP検査で問題のあった自己統制、動作の安定の項目が改善された。タッピングとペグボードの検査項目では改善が見られなかったが計算テストとCRTに改善の傾向がみられたことから、今回負荷した運動課題が脳の処理機能に有効に作用したと推察された。
著者
AJISAKA Tetsuro
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究=South Pacific Study (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-6,

The specimen, collected from New Caledonia in December 1987, was identified as Cladosiphon novae-caledoniae KYLIN. As KYLIN (1940) has not made its description, this is the first one presented in paper. It's morphological characters were compared with those of the "type specimen" in the BotanicalMuseum, University of Lund and some species of Cladosiphon collected in Pacific Ocean. It has a potential for a new mariculture resource in New Caledonia.
著者
太田 一郎 宇都木 昭 太田 純貴
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

アニメ声優が演じる「声」の音響的独自性が人びとの「感覚」に内面化した社会文化的な制度として確立している様子を主に言語学とメディア論の観点から複合的にとらえることを試みた。(1) 女性声優のアニメの声と一般女性の声を比較した結果,アニメの声にはより多くの倍音成分が含まれるなどスペクトル包絡に関わる特性が見られる,(2) アニメと声をめぐる状況は 声優とキャラの間の「演技」,キャラとファンの間の「受容(消費)」,ファンと声優の間の「情的関与」が考察の対象となる, (3) アニメ・声・身体の関係の議論についての重層的な声の受容を論じる聴覚文化論や「音象徴」などの言語学的知見が有効なことなどを示した。
著者
友清 貴和 脇田 正恵 原 しのぶ
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学工学部研究報告 (ISSN:0451212X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.51-56, 2003-11

An patient habitation space is what thing furthermore about how the Hansen's disease medical-treatment institution changed in Okinawa Prefecture, as for the purpose of research, and it is showing clearly how it changed. And it aims at grasping the feature by comparison with the Hansen's disease sanatorium (National Sanatoria Hoshizuka Keiaien) of a mainland.
著者
山下 高明
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

眼球形状は顔形と同じように個人差があり、身長と同様に成長期に大きくなる。大きな眼球は近視になり、小さな眼球は遠視となる。今回の研究では、栄養状態の良い児ほど、眼球が大きくなることが判明した。このことから、日本における近視増加の一因が、栄養状態の改善により身長とともに眼球も大きくなったことであることが裏付けられた。さらに眼球の形状にはパターンがいくつか存在し、緑内障、黄斑円孔などの眼疾患の発症・診断に影響することがわかっているが、小学生の時点ですでに眼球形状のパターンは決定していることも判明した。