著者
岡田 誠 才藤 栄一 水野 元実 藤野 宏紀 伊藤 三貴 西尾 美和子 余語 孝子 織田 幸男 林 正康
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.B0126-B0126, 2007

【目的】調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具(APS-AFO)は、外観性・機能性・調整性という臨床の3つのニードを同時に満たした装具であり、モジュラーパーツである後方平板支柱(4剛性)、ヒンジジョイント(3タイプ)を適切に選択することにより、幅広い歩行能力に適応可能な装具である。今回、連続歩行による多数歩採取可能、定常速度設定可能という、トレッドミル歩行分析法の利点を生かした計測方法でAPS-AFOの歩行分析を行った結果、一般的な平地歩行分析では困難と思われる、再現性の検討やパターン分析が可能となったので報告する。<BR>【対象と方法】対象は、APS-AFOにて歩行が修正自立の脳卒中片麻痺者10例とした。方法は、トレッドミル上を約20秒間連続歩行した時の歩行を3次元動作解析装置(3D解析)で分析した。3D解析には、キッセイコムテック社製Kinema Tracerを使用した。APS-AFO、裸足の2歩行について同一歩行速度(裸足の快適歩行速度)で歩行分析を行い、それぞれの時間・距離因子の再現性、関節角度変位(特に、足部内反の角度変位)、進行方向の重心移動速度、連続歩行による歩行パターン分析を比較検討した。なお、本研究は藤田保健衛生大学倫理委員会において認証されており、データ計測の際には被験者より同意書を得て行った。<BR>【結果】トレッドミル上を連続歩行する多数歩計測によって、各因子の平均値、標準偏差、変動係数(ばらつきの指標)などの統計的手法が可能となった。APS-AFO、裸足の時間・距離因子、関節角度変位は、APS-AFOの方が、裸足よりもばらつきが少なく、運動の再現性が高い結果となった。また、関節角度変位は、APS-AFO、裸足の順に歩行時の関節コントロールが良好であった。特に、遊脚期の足部内反はAPS-AFO、従来型装具が著明に減少した。進行方向の重心移動速度では、APS-AFOの重心移動は両脚支持期でスムーズに行われており歩行効率の向上につながった。<BR>【考察】トレッドミル歩行分析法では、多数歩採取、定常速度設定という計測方法が可能なため、一般的な平地歩行による2~3歩による歩行分析では困難な統計的手法が可能となった。すなわち、1歩1歩にばらつきが生じやすい片麻痺者では、トレッドミル歩行で採取した約15歩分の平均値を算出することによってより信頼性の高い結果が得られ、また、変動係数を利用することによりそのばらつき程度の評価も可能となった。APS-AFOの効果判定おいても、トレッドミル歩行分析法による足部内反や重心移動速度などが有効であったと思われる。これらのことから、トレッドミル歩行分析法による歩行評価は、片麻痺者など障害を呈した症例の装具効果判定を行う際の新しい指標となると思われる。<BR><BR>
著者
永井 良治 金子 秀雄 黒澤 和生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102011-48102011, 2013

【はじめに】本学科は2010年より大学関連施設においてクリニカルクラ-クシップ(以下:CCS)を導入している。CCSを導入するにあたり数年前より関連施設の臨床実習指導者(以下:SV)と技術習得のために重要項目を挙げ「見学・模倣・実施」のチェックリストを作成した。CCS導入は、学生がある段階で解決困難な問題が生じるとそこから先には進めなくなり、評価段階だけとなることや、急性期病院では評価のみとなり、理学療法を「実施」する経験が非常にすくない。業務終了後に学生指導に時間がかかり思うように学習効果向上しないことなどが挙げられCCSを導入した。認知領域偏重の指導ではなく、精神運動領域を中心にチェックリストを作成した。チェックリストは検査測定40項目、治療技術40項目の合計80項目からなる。臨床実習は8週間で週1回は教員による学生指導を実施している。今回はSVに対してCCSに関するアンケ-ト調査を実施し現状と問題点ついて報告する。【方法】臨床経験4年目(平均7.8±3.3年)以上の41名を対象とした。臨床経験4~9年目30名(平均6.2±1.9年)、10年目以上11名(平均12.1±2.3年)であった。アンケ-ト内容は1)、従来の実習形態より経験値は高まるか。2)、能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。3)、技術領域の習得は従来の実習形態より高まるか。4)、患者の不安、リスク、また指導者の不安は軽減しているか。5)、「見学」・「模倣」・「実施」のプロセスから学生の理解度を把握できるか。6)、ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。7)、SVと一緒に診療参加することで理学療法全体に関する理解度は高まるか。8)、「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで問題解決能力は向上しているか。9)、SVの学生指導の負担は軽減しているか。10)、CCSを支持するかの10項目である。各項目の回答は「そう思わない」「どちらでも言えない」「そう思う」とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、本研究の目的と方法を文章と口頭にて十分に説明し同意を得た。【結果】CCSの支持は臨床経験10年目以上では72.7%であり、全体では48.8%であった。 10項目において「そう思う」は、1) 53.6%、2) 26.8%、3) 58.5%、4) 39.0%、5) 36.6%、6) 34.1%、7) 56.1%、8) 26.8%、9) 56.1%、10) 48.8%であった。「そう思わない」が「そう思う」より割合が大きい項目は2) 能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。 6) ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。8) 「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで、問題解決能力は向上しているか。 以上の3項目であった。臨床経験10年目以上では、1) 100%、2) 36.4%、3) 81.8%、4) 63.7%、5) 72.7%、6) 54.6%、7) 54.6%、8) 27.3%、9) 72.7%、10) 72.7%であった。【考察】CCSの臨床実習形態に変更して2年経過した。現在、当学科では約半数学生が関連施設でCCSの実習と外部施設での実習を経験する。指導体制は各関連施設の方針に従っている。作成したチェックリストの「実施」になる項目数はすべての関連施設で平均75%以上は到達できるものである。教員は「見学」・「模倣」・「実施」のチェック状況とその内容の理解の把握と指導をしている。CCS導入の目的であった経験値の向上、技術領域の習得、理学療法全体に関する理解の向上は「そう思う」の割合が高く有効な臨床実習に進みつつある。また業務時間外の指導がないことでSVの負担軽減にも繫がっている。CCSはSVの経験年数により、捉え方は異なりSVと連携して学生指導方法についてさらに検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】当学科では関連施設においてCCSを実施している。協会の理学療法教育ガイドラインでは、実習形態は学生が主体となって患者を担当する形態を排除し,クリニカル・クラープシップを基本とすることを提言するとしている。協会の方針に従う我々の取り組みが少しでも参考になれば幸いである。今後も方法論について報告していきたい。
著者
西山 知佐
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E3O1166-E3O1166, 2010

【目的】リハビリテーション(以下リハとする)医療における今後の展開として、訪問リハサービスの提供量を増やし、かつ質も高めることで国民により認知されるよう働きかける動きがある。一方で鍼灸マッサージ師等が訪問マッサージを行っているが、なかには「訪問リハビリマッサージ」と称して機能訓練も行う業者も存在する。介護保険制度においては利用者本位の観点から必要でかつ適切な介護サービスが選択できることが理念の一つとして謳われている。我々現場で携わる者としては質の良いサービスを提供しないと利用を中止され、さもないと経営面にも大きく影響する場合もある。このような状況下にありながらも、どの程度サービスを利用されているのか実態を調査した文献はなかった。そこで訪問リハと訪問マッサージの併用利用について調査し、現状を把握することを目的とした。<BR><BR>【方法】対象者は平成20年10月から21年9月までの間で当院理学療法士(以下PTとする)が提供する訪問リハを1か月以上利用した76名とした。サービス利用状況は調査期間内の対象者のサービス提供票から集計した。必要に応じて担当PTやケアマネージャー、利用者およびその家族からの情報を参考にした。さらに愛知県介護サービス情報公表センター、社団法人愛知県鍼灸マッサージ師会のホームページを参考に、当院が存在する名古屋市南区および隣接する5区の資源の分布状況を調査した。<BR><BR>【説明と同意】訪問リハ開始にあたって契約時に個人情報の取り扱いについて説明を行い、文書で同意を得た。個人情報取り扱いに関する院内規定に則り実施した。この中には質の向上のための研究が使用目的の一つに挙げられている。<BR><BR>【結果】対象者76名のうち訪問マッサージを利用しているのは10名、過去に利用していたのは3名、加えて接骨院等へ通っているのは2名であった。うち訪問マッサージを利用した13名の介護度は要介護2が3名、要介護3が1名、要介護4が2名、要介護5が7名であった。該当する利用者の障害像は要介護2、3の場合は疼痛が強く日常生活に何らかの支障を来していた。ADLのほとんどは自立もしくは一部介助レベルであるが、外出は諸々の事情により困難であった。一方要介護4、5の場合は関節可動域制限や疼痛のあるケースがほとんどであり、寝たきりでおおむね全面的に介助が必要な状態であった。訪問マッサージ利用者が他に利用している介護保険サービスとその人数は訪問介護8名、訪問入浴6名、訪問看護9名、通所介護2名、通所リハ1名、短期入所3名であった。当院が存在する名古屋市南区および隣接する5区のサービスの分布状況は訪問リハが11箇所、リハを提供している訪問看護ステーションが15箇所であった。また従事者数は訪問リハのPT38名、訪問看護ステーションのPT24名に対して、鍼灸マッサージ師会の登録者は164名であった。<BR><BR>【考察】今回当院訪問リハ利用者の中における訪問マッサージ利用者の割合は19.7%であったが、他事業所との比較については言及できない。あくまで当院利用者における傾向を知るものであり、この研究の限界である。また資源の分布状況についても公表されているデータを用いたため、妥当性に欠けるところがある。ある文献にて「近隣に訪問リハサービスがなかったため、訪問マッサージを導入した」という報告が散見されたが、当院近隣の状況はこれとは違い決してサービス量は少なくない。だが訪問リハに従事しているPTよりも鍼灸マッサージ師の方が圧倒的に多く、提供できるサービス量の上でも後者の方が多いと思われた。しかし単純に量だけでなく、併用しているケースが存在することを考えるとリハとマッサージを使い分けて利用していることが示唆された。その背景として訪問マッサージは医療保険を使用できること、訪問リハよりも自己負担が少ないこと、ケアマネージャーの中で「リハは運動、マッサージはリラクゼーション」というイメージを持っていることが挙げられる。特に要介護4、5の利用者は利用限度枠近くまでサービスを利用しており、それに伴い経済的負担も大きく困っている利用者も少なくなかった。さらに関節拘縮予防の目的で短時間でもよいので運動頻度を増やしたい思いが利用者の中にあり、訪問マッサージも導入したのではないかと考えられた。またこれ以外のケースにおいては疼痛緩和やリラクゼーションの目的でマッサージを選択し、リハは運動や生活指導の目的で利用していると考えられた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今後PTの職域の拡大を目指し、PTをはじめ多くの人々が努力している。さらなる発展のためには我々の置かれている現状とそれを取り巻く周囲の様子を把握しておく必要があると考える。
著者
竹山 和宏 橋場 悠一 武隈 智子 常田 衛 宝泉 百合香 笹原 英希
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100538-48100538, 2013

【はじめに、目的】 バランスト・スコアカード(以下、BSC)とは財務、顧客、学習・成長、業務プロセス、という4つの視点から企業活動全体を把握する経営管理手法であり、近年、病院で導入し業績が改善されたとの報告も多くされている。しかし、介護老人保健施設での報告は少ない。今回、BSC導入後の結果と今後の課題を報告する。【方法】 以前より経営管理手法の必要性は十分に認識していたが、知識不足もありリハビリ部門のマネジメントは戦略的に行われていなかった。そのため、効率的なマネジメントや業務内容の改善を図るために平成23年4月よりBSCを導入した。年度初めに、財務の視点など4つの視点においての目標、成果指標、実施内容、及び年間事業計画を立案した。まずは、リハビリ職員全員でリハビリ部門の理念を明文化し施設内に掲示した。月一回の会議(約30分間)ではADLの改善率(新規短期集中リハ加算者のうち、初期評価時と3ヶ月後のBarthel index:BIの値を比較し改善した者の割合)等の成果指標や実施状況等について確認を行った。内部研修は年間事業計画に基づき業務時間外に45分間実施した(自由参加)。アンケート調査として、リハビリ職員5名に対して無記名・5段階方式での職員満足度調査を行った。 なお、利用者に対する満足度調査は、毎年1回実施している支援相談員が行った調査を活用した。平成24年3月に総括を行い、その結果に基づき新たな目標設定、事業計画の立案を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の報告にあたり、入善老人保健施設こぶしの庭、施設長、米澤高明の承認を得た。【結果】 前年度と比較が可能であった成果指標は、(1)財務の視点は、リハビリ総収益(45%増加)新規短期集中リハ算定者数(30%増加)であった。(2) 顧客の視点は、リハビリに対しての利用者(入所者)の満足度64%(3%増加)、通所リハビリの内容について「良い」と回答した者の割合30%(4%増加)であった。 (3) 学習・成長の視点は、内部勉強会回数14回(17%増加)外部研修への参加数7回(37%減少)、学会発表(東海北陸理学療法学術大会1名)、個人の目標設定2回(維持)、関連資格取得名1項目(認定理学療法士取得1名)であった。ADLテスト(BI)改善率は、16%(前年度は五ヵ月分の値16.5%)であった。(4)業務の視点は、在宅復帰率20%(6%減少)であった。その他、他職種との情報交換、他職種への具体的なアプローチの提案を実施したが、実績値での比較はできなかった。職場環境に関して、リハビリ職員満足度調査の実施から、職場の雰囲気・人間関係、精神的な不安、仕事の成果、の得点が全国平均と比較し低いことがわかった。そのため、平成24年度の目標・事業計画では、新たに働きやすい職場作りといった目標を掲げ、定期的な面接や職員ストレス調査、疲労蓄積度チェックリストを事業計画として立案した。【考察】 永山は、著書の中でBSCの効果を、財務面、業務面での改善が可能となる。BSCを構築する際に問題及び課題を明確にするため、コミュニケーションが活発になり納得性が得られ組織の意識が変わる(永山、2004)。といった点を指摘している。今回も、財務面での飛躍的な改善が見られた(前年度比45%増加)。これは、成果指標を短期集中リハビリ加算者と明確にしたことで、重点的に20分以上の個別リハビリに取り組めたことや入所担当職員が少ない時は、通所担当職員が協力する等の体制が整ったことが大きかったと考えられる。業務面では、バランス良く詳細に各業務を確認した結果、業務量の偏りや各個人それぞれの課題、メンタルヘルス面での課題を明らかにすることができた。今後は、各種調査や新たな事業計画を実施することで改善を図っていきたい。在宅復帰率が減少したことは、その年の入所者や家族の特性に影響される部分もあると考えられる。また、今回はリハビリ部門のみでのBSC導入であったため、在宅復帰といった明確な目標が施設職員全体に浸透しなかったことも要因と感じている。今後、施設全体のBSCや全老健協会のR4システムを導入することも必要と考えられる。介護老人保健施設では、著明にADLが向上する者は少なく、利用者の機能改善を図るといった点においては仕事の成果が生じにくい。そして、介護職との役割の違いが曖昧になりがちでモチベーションを維持しにくい状況がある。だからこそ、自己の存在意識や役割を明確にする理念の明文化やBSCをマネジメントに取り入れることは大変重要である。【理学療法学研究としての意義】 介護老人保健施設でのリハビリ部門にBSCを導入した事例を報告することで、他施設におけるマネジメントの参考になる。
著者
大山 盛樹 横山 茂樹 重松 康志 谷川 敦弘 中尾 利恵 竹ノ内 洋 塩塚 順
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0060-C0060, 2004

【はじめに】平成15年7月28日から8月24日に、長崎県下で全国高等学校総合体育大会「長崎ゆめ総体」が開催された。この大会において(社)長崎県理学療法士会では「社団法人という公益性のある職能団体として地域社会への貢献する」という趣旨から支援活動を展開した。今回、その支援活動の実施状況について報告する。<BR>【活動概要】(目的)選手がよりよいコンディショニングで安全にかつ安心して試合に挑める環境を提供する。(対象競技)サッカー競技・男女バスケットボール競技の2種目3競技とした。(支援体制)競技期間中に、各競技会場に救護班として県士会員を2名ずつ派遣した。(活動内容)参加選手を対象に1)試合前後におけるリコンディショニング、2)RICE等の応急処置、3)医療情報の提供を中心に行った。<BR>【活動状況】(バスケットボール競技)8月2日から7日に男子は4会場、女子は5会場で開催された。参加チームは男女各59校、計118校、試合数は男女とも各々58試合、計116試合であった。派遣した県士会員は延べ64名、実人数50名であった。(サッカー競技)7月29日から8月4日まで6会場で開催された。参加チームは55校であり、試合数は計54試合であった。派遣会員は延べ51名、実人数36名であった。<BR>【実施状況(バスケットボール競技)対応件数は、男子で延べ件数81件、実人数33名、女子で延べ件数32件、実人数25名であった。利用件数は大会前半に集中した。痛みを訴えた選手が最も多く、男子では39件(48%)、女子では26件(81%)であった。傷害部位は、男女とも足関節が最も多かった(30%前後)。施行内容は、男女ともテーピング施行が最も多く(40~50%)、次いでアイシングが占めた。(サッカー競技)対応件数は延べ件数71件、実人数50名であった。利用件数は大会前半戦に集中していた。主訴は痛みが最も多く、56件(78.9%)であった。傷害部位について足関節が33件(44%)と最も多かった。施行内容は、テーピング施行が39件(48.8%)と最も多く、次いでストレッチ、アイシングの順であった。<BR>【今後の課題】利用件数はいずれの競技でも大会前半に多かった。これは大会前半に試合数が多いことや、後半戦に勝ち残る強豪校には帯同トレーナーが存在していたことが要因と考えられ、帯同トレーナーと連携が課題であった。またスポーツ現場では急性外傷への対応が求められることから、医師との連携体制や応急処置、テーピングに関する知識と技術の研鑽に努める必要があると思われた。今回のように県士会による支援活動はこれまでに前例がなく、長崎ゆめ総体における新たな試みであった。この活動を通して、痛みを持ちながらも競技に参加する選手の実状とスポーツ現場におけるニーズの高さを再認識できたことは有益であった。
著者
川上 貴弘 村山 尊司 佐藤 仁俊 石原 未来 大塚 栄子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P3090-B4P3090, 2010

【目的】外傷性脳損傷(以下TBI)は急性期に意識障害をはじめとした多様な障害像を呈する。そのため受傷後の短期的な医学的リハビリテーションでは治療効果や長期的な予後予測が困難な事例が多い。今回、発症後25ヶ月経過した慢性期TBI例を経験した。本例は当センター医療施設及び障害者支援施設にて19.5ヶ月の加療の結果、入院時ADL全介助から屋外歩行にてADL自立レベルまで改善を認めた。本例の臨床経過の特徴と慢性期における包括的リハビリテーション支援の必要性について述べる。<BR><BR>【方法】<症例>33歳 男性 右利き。診断名:TBI。現病歴:2006年1月飲酒後階段より転落。頭部CTにて急性硬膜下血腫を認め、減圧開頭血腫除去術施行。同年3月にV-Pシャント術施行。意識障害・四肢麻痺・嚥下障害が遷延し、同年5月某リハビリテーション病院転院。その後、12月に療養病院にて加療するも改善認めず、2008年2月更なるリハビリ目的にて当センター転院。同年9月障害者支援施設へ転所。2009年10月現在、同施設入所中。<BR>既往歴:特になし<BR><BR>【説明と同意】今回の発表にあたり患者の同意を書面にて得た。<BR><BR>【結果】<入院時所見(発症後25ヶ月)>神経学的所見:意識清明。コミュニケーションは言語にて可能。著明な自発性低下あり。運動麻痺はBr-stage両側上下肢6にて分離運動良好、感覚障害は認めず。両側上下肢に固縮様の筋緊張亢進を呈した。両下肢に著しい関節可動域制限及び筋力低下を認めた。神経心理学的所見:全般知能はMMSE;19/30点。FAB;13/18点。TMT:Set1;1597秒誤り10,Set2;実施不可。Kohs立方体:実施不可。WCST:実施不可。動作所見:起居動作・坐位保持は介助にて可能であったが、立位を伴う動作は両下肢の拘縮とクローヌスが著しく困難であった。歩行は平行棒内全介助レベル。ADL:FIM;48/126点(運動項目28点、認知項目20点)。<医学的リハビリテーション経過>発症後25ヶ月~31.5ヶ月の期間当センター医療施設にて医学的リハビリテーションを実施。退院後は関連施設である障害者支援施設更生園への入所を目的としていた。入院時より頭部CTにて脳室拡大を認めた為、入院後1ヶ月に水頭症改善を目的としたV-Pシャント術を施行。並行してPT,OT,STによる運動療法及び認知訓練を実施した。V-Pシャント後自発性改善を認め、それに伴い身体・認知機能も向上した。発症後28ヶ月の時点でMMSE30/30点、歩行器歩行軽介助レベルに至った。退院時(発症後31.5ヶ月)の状況は、基本動作は自立、歩行は歩行器歩行監視レベル、階段昇降も監視にて可能となった。高次脳機能障害に関しては、対人関係トラブルを頻発するなど社会的行動障害がみられるようになった。ADLはFIMにて101/126点(運動項目74点、認知項目27点)。<社会的リハビリテーション経過>発症後31.5ヶ月~44.5ヶ月の期間当センター障害者支援施設にて社会的リハビリテーションを実施(現在も継続)。本例は両親との同居を目標に社会生活プログラムに沿った機能訓練及び生活訓練を実施した。発症後38.5ヶ月で実用的な移動手段は車いすから歩行へ移行し、屋内T杖歩行自立となる。発症後42.5ヶ月でADL自立、屋外(施設敷地内)独歩自立に至った。発症後44.5ヶ月でのADLはFIMにて114/126点(運動項目85点、認知項目29点)。身体機能については著明な改善を認めたが、脱抑制・易怒性のような社会的行動障害が強くなり、間食や対人関係トラブルといった施設生活上の問題が顕著となった。退所後は地域の就労支援センターへ移行する予定。<BR><BR>【考察】TBIの長期経過として運動機能の改善は良好とされる一方、社会的行動障害のような高次脳機能障害は遷延することは橋本らが報告しており長期的なリハビリテーションフォローの必要性を指摘している。本例においても、発症後25ヶ月から19.5ヶ月のリハビリテーション介入により身体機能は著しく向上し歩行及びADL自立に至ったが、高次脳機能障害は残存した。これは一般的なTBI患者の長期経過の特徴を示すものであった。しかし、本例は発症後25ヶ月が経過していたのにも関わらずADL全介助から自立に至るという良好な経過を示した点が特異的であった。この背景には、V-Pシャント術による自発性の向上に加え、医学的リハビリテーション及び継続した社会的リハビリテーション支援の効果を示すものであった。TBI例では、慢性期においても積極的な医学的治療と長期リハビリテーション支援の必要性が示唆された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】慢性期TBIにおいて積極的な支援により良好な結果が得られた。本報告は、TBI例に対するリハビリテーションの可能性を示唆した。
著者
佐藤 史子 吉尾 雅春
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.528-528, 2003

【目的】身長は様々な指標において基礎となる変量である。一般に身長の計測には身長計が用いられる。しかし、拘縮を伴う者や直立不能な者の身長の計測方法についての報告は、海外では様々な研究が行われているものの日本では少ない。今回、拘縮を伴う成人の身長の計測方法について検討したので報告する。【方法】対象は、20歳代の健常男性40名、女性40名の計80名、内訳は立位身長が150cm代、160cm代の女性が各20名、立位身長が160cm代、170cm代の男性が各20名であった。計測項目は、立位身長、水平身長、指極、頭頂大転子間距離、頭頂外果間距離、大腿長、下腿長、上腕長、前腕長、外果足底間距離とし、メジャーを用いて行った。身長の日内変動による誤差を最小限にするため、計測時間は10:00から14:00とし、被験者一人につき所用時間は10分程度とした。これらの計測値を用いて、立位身長との関係について回帰式を導き出した。統計学的検討は、有意水準5%として、一標本t検定、2変量の関係について回帰分析、ピアソンの相関係数を使用した。 【結果および考察】指極と立位身長との間に有意な相関を認め、上肢に拘縮のない場合には有効な方法であると確認できた。各計測値から求めた回帰式と立位身長との関係では、Haboubi N.Y.による計算式でも使用されている上肢長(上腕長+前腕長)と膝足底間距離(下腿長+外果足底間距離)で他計測部位に比べ、相関係数0.736、0.777とやや高い関係を示した。Haboubi N.Y.による計算式を利用して算出した身長と計測した身長との間には有意な誤差が認められたため、修正を加え、上肢長を用いた式1)身長=1.56×上肢長+sex、(sex:男性83.07、女性78.52)、膝足底間距離を用いた式2)身長=2.08×膝足底間距離+sex、(sex:男性75.18、女性71.70)を導き出した。各計算値と立位身長との相関は、式1)0.8342、式2)0.8364であった。特に上肢長から求める式1)は、上肢長が関与する指極と立位身長との間に有意な相関が認められたこと、立位・臥位の両者で身長に対する上肢長の割合に変化がなかったこと、日本人の100年前と現在との体格差の比較において下肢の割合は1.2%増加しているのに対し、上肢は0.2%であることから、年齢を問わず比較的正確に身長の算出が可能であり、拘縮を伴う場合の身長計測の一手段として有効であることが示唆された。
著者
萩原 文子 堀 七湖 中村 さち子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 三枝 南十 上甲 博美 佐藤 幸子 小川 美緒
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G3O1233-G3O1233, 2010

【目的】育児休業(以下、育休)が男性も取得可能な制度である中で実際の取得率は大変低くなっている(平成19年度育休取得率:女性89.7%、男性1.56%)。当部では育児経験のある男性理学療法士(以下、PT)に育児に関する意識や環境についてアンケート調査を行い、実際に育休の取得経験があるパパPT及び作業療法士(以下、OT)より経験談や意見を聴取した。今回はパパPTの実態を踏まえ、育休取得パパPT・OTの経験談と比較し問題点や改善点を見出すことを目的とした。<BR>【方法】2008年12月の1ヶ月間に20~40代のパパPT107名にアンケート用紙を使用し、家庭環境・職場環境や育児支援制度の認知度などの実態調査を行った。回答は無記名・多選択方式で得た。また、育休の取得経験があるパパPT3名・OT1名(平均年齢34歳)に調査票を使用し、家庭環境・職場環境・育休取得について面接又はメールにて調査をした。<BR>【説明と同意】調査依頼文にて目的や学会での公表を明記、もしくは口頭にて説明を行い、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。<BR>【結果】家庭環境は共働き家庭が67%、育児援助者がいない家庭が72%と半数以上であった。子供と接する時間は平日で毎日30分以上が63%、また何らかの家事を行っている人が97%であった。職場は総合病院が最も多く43%、職場のPT数は1~56名、職場での育休の有無は「なし・わからない」が20%、育休取得環境の有無は「わからない」が43%であった。育休取得率は0.93%で、取得しなかった理由は「妻が取得した」という意見が多く、次いで「職場の環境」「仕事への影響」「必要なし」「制度不明」が挙げられた。パパになってからの変化としては経済的な責任や家庭を持つことで仕事以外にも役割が増え、休まざるを得ないことが増えたり、自分の時間が少なくなったと感じている人が多いが、同時に仕事のやりがいが向上し、PTとしての広がりや生活の充実を感じている人も多かった。パパPTの39%は出来れば育児支援制度を利用したいと思っていた。<BR>育休を取得したパパPT・OTの家庭環境は妻が出産を機に退職1名・共働き3名であり、育児援助者がいる1名、いない3名であった。職場は公的・準公的施設でPT・OT数は2名~28名、休業中の代替者の確保は「あり」2施設・「なし」2施設。職場での女性の育児休業取得は「取り易い」3施設・「退職圧力なし」1施設、リハビリテーション部門の対応は4施設とも協力的であり、そのうち3施設では代替者の募集が行われた。事務の対応・反応は「権利なので可能」「制度はあるが事務職員の認識がなく、自分で制度を調査し担当者の上司へ説明を求めるなどの対応を必要とした」「事情に詳しい他職種の上司が直属の上司や事務方への対応をしてくれた」が挙げられた。育休取得期間は2~12カ月で3名は妻の育休取得後、1名は妻の出産直後に取得した。困ったことは全員が「特になし」、良かったこととして「子供や家族との関係の向上」「人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上」を挙げており育休取得によるメリットが大きいことがわかった。<BR>【考察】両調査において共働き・育児援助者なしが多く、夫婦が助け合って仕事と育児を両立していく必要性が高い家庭が多かった。その中でも日本人男性が家事や育児に関与する時間は約1時間という報告がある中が、パパPTは家事や育児に協力している傾向が見られ、さらにパパが育児に関与することは仕事面・家庭面において親として・人として・職業人としての向上などのメリットが挙げられた。しかし、育児支援制度に関してはパパPTの39%が出来れば利用したいと思っているが、実際に育休を取得した人は0.93%であり、育児・介護休業法にて取得権利が認められているといっても制度の利用には課題があることがわかった。パパの育休取得に関してはまず、今回の結果からパパの育休に関する情報不足を感じ、さらに職場の環境としては代替え要員の雇用支援や人材バンクの整備、上司や事務職への制度に関する理解と啓発の必要性を感じた。また、公的・準公的施設や女性が取得しやすい職場などの環境も育休取得に影響していることがわかった。今後は会員のみならず職場への育児支援制度の情報提供・支援サービスの整備などを進めていく必要性を感じ、今後の活動へ生かしていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】ライフワークの中で就業が継続できる働きやすい環境を支援することでPTの質の向上にもつながると思われる。
著者
山本 亮 佐々木 直美 中島 由美 橋本 康子 伊勢 昌弘 吉尾 雅春
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.B0277-B0277, 2005

【はじめに】<BR> 今回,脳梗塞による注意障害は徐々に改善し,院内生活では問題とならなくなったが,自動車運転において障害が表面化し,結果的には運転を断念した症例を担当した.その注意障害を,テスト上や院内生活時と自動車運転時との差について検討し報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 46歳女性,右中大脳動脈領域の広範な梗塞により,左片麻痺・半側空間無視を呈した.発症後約2ヶ月で当院へ転院,理学療法を開始した(以下,初期評価時).発症後4ヶ月頃より1ヵ月半かけて自動車学校にて教習を4回行った.教習終了時では,Brunnstrom stage左上肢2・下肢3,感覚障害は中等度鈍麻であり,日常生活自立度はFIMにて101点で,清拭動作と階段昇降で3~4点,その他は6~7点と自立レベルであった.<BR>【注意障害の変化について】<BR> 半側空間無視:初期評価時は,線分抹消テストでの消し忘れは無かったが,院内生活において左側の部屋や人・物を見落とす場面を認めた.教習終了時には院内生活での空間の障害はみられなくなった.しかし自動車運転時は,左折時に左折した先の左車線を見落とし,大きく膨らんで反対車線に侵入する等を認めた.<BR> 選択性の障害:初期評価時は,日常動作が会話等で容易に中断される場面が多く認められたが,教習終了時の院内生活では行動の一貫性は保たれ特に問題は見られなくなった.自動車運転時では,車の発車時に周囲の確認ばかりを行い,自分でなかなか動き出せない等を認めた.<BR> 分配性の障害:Trail Making Testでは,初期評価時Part A 1分45秒,Part B 4分30秒,教習終了時Part A 1分18秒,Part B 3分5秒と改善を認めた.院内生活では,調理場面にて複数の動作を並行して行えるようになった.自動車運転時では,ハンドル操作に集中すると足でのペダル操作がおろそかになる等の場面を認めた.<BR> また,4回の教習にて運転動作の向上は認められたが,注意障害の改善はほとんど認められずに同じ失敗を何度も繰り返し,最終的に教官の判断にて運転を断念した.<BR>【考察】<BR> 方向性注意については,院内生活には身体動作や時間の余裕があり,意識付けにより代償しているが,自動車運転時では動作が重複することや時間の経過が速いことから,その代償が十分に行えないのではないかと考えた.<BR> 全般性注意については,自動車運転時は院内生活に比べ,対象とする「空間の広さ」や必要となる「情報量の増加」と,その「情報処理の速さ」が同時に要求されるために,注意障害があたかも増悪したような結果になったと思われる.<BR> これらのことより,院内だけで評価やアプローチを行うには注意機能面だけにおいても限界があり,自動車運転などのように,より実際的な場面での評価の重要性を認識させられた.
著者
佐々木 紗映 平栗 優子 岩井 一正 松崎 恭子 皆川 邦朋 畦地 良平 平川 淳一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2120-C3O2120, 2010

【目的】当院は、身体障害を合併した症例を対象としたリハビリテーション科を併設している精神科病院である。身体・精神の各々の専門スタッフがチームとして患者の治療にあたっている。そのための情報共有を目的として、ドイツ語圏で編み出された精神科の記録と評価のシステムであるAMDPシステムの運用を開始している。AMDPとは、全140項目からなり、各項目を「なし」「軽度」「中等度」「重度」「不明」の5つの段階で評価を行いその結果について分析する手法である。当院では、Berlinグループの方法を採用しており、140項目を「妄想幻覚症候群」「うつ症候群」「躁症候群」「器質症候群」「敵意症候群」「自律神経症候群」「無力症候群」「強迫症候群」の8群に分類し、グラフなどで可視化できるようにしている。<BR>我々は、これまで精神症状が身体リハの進度やアウトカムに影響を及ぼすことを経験してきた。原因については、様々な理由が考えられるものの、精神・身体両方の治療効果について評価を続けてきたことで、それらの関連について多少の知見を見出すことができた。そこで、本研究は、精神機能向上に伴う身体機能への影響のうち、"できるADL"と"しているADL"の相違について考察することを目的とした。<BR><BR><BR>【方法】2008年3月から2009月5月末までに評価した32名について、BerlinグループのAMDPシステム各症候群(妄想幻覚・うつ・躁・器質・敵意・自律神経・無力・強迫症候群)の獲得点数と、ADL指標であるBarthel Index(以下、BI):訓練でできるADL("できるADL")と、functional independence measure(以下、FIM):実際に病棟で行っているADL("しているADL")との関係について解析を行った。解析は統計ソフトSPSSを使用し、Peasonの相関係数にて算出した。<BR><BR>【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の審査を受けている。<BR><BR>【結果】AMDP 症候群(以下、S)とBI、FIMとの間に負の相関が認められた。特にFIMとの相関が強く、強迫を除いたAMDP症候群(幻覚妄想、うつ、器質、躁、敵意、自律神経、無力)でそれぞれ改善がみられるとFIMの点数が有意に向上していた。BIについては、BI食事とAMDP器質Sに強い相関、BI排便自制・排尿自制とAMDPうつS、器質Sが中等度の相関を示していた。FIMについては、FIM歩行車椅子とAMDP無力S、FIM理解とAMDP躁S、FIM表出とAMDPうつS、FIM社会的交流とAMDP妄想幻覚・無力S、FIM記憶とAMDP無力Sに中等度の相関、FIM更衣(上)とAMDP妄想幻覚S・無力S、FIM更衣(下)とAMDP敵意S、FIMベッド移乗とAMDP無力S、FIM歩行車椅子とAMDP妄想幻覚・うつ・敵意S、FIM理解とAMDP自律神経S、FIM表出とAMDP妄想幻覚S、FIM社会的交流とAMDPうつ・器質・躁・敵意S、FIM記憶とAMDP器質Sに中等度の相関が見られた。<BR><BR>【考察】今回の結果から、精神機能の回復に伴って身体機能も向上しているが、精神症状は特にFIM、すなわち"しているADL"動作の自立度・能力へ強く影響していることがわかった。これは、精神症状の影響を受ける量について、BIとFIMとの間に相違があることを示していると思われ、訓練室で獲得された動作が病棟ADLに反映しにくい理由であるとも考えられる。また、FIMに関しては、13項目の運動項目とAMDPとの間に9つの項目に相関関係が見られたことに留まったが、5項目の認知項目とAMDPとの相関関係は12項目に見られ、認知項目と精神症状の関係性の深さが示唆された。しかしながら、その相関関係を示す理由については今後考察・検討を重ねていく必要があり、症例数を重ねながら原因追求をしていきたい。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】精神症状精神症状と身体症状との関連性については先行研究が存在するものの、既存の評価及び汎用性の高い評価方法を用いて行った今回の調査は、精神科病院内だけでなく、一般的なリハ場面においても汎化しうる可能性を示唆している。
著者
上原 隆浩 泉尾 佳苗
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2138-B4P2138, 2010

【目的】重症心身障害児/者の中でGMFCSレベル5を示す児/者は姿勢コントロールが困難で姿勢変換に介助を必要とし、1日を通して取れる姿勢が限られ、背臥位で過ごす時間が多くなる。背臥位で長期間過ごすことにより脊柱側弯、胸郭変形、風に吹かれた股関節などの変形が起こり、非対称姿勢を呈するようになる。非対称姿勢は重力の影響を多く受けており、非対称姿勢の改善には重力を考慮したポジショニングの提供が必要であると考えられる。背臥位での下腿下垂法は下肢の重量を軽減させることで、変形予防、体圧不均等軽減等が可能であるが、重症心身障害児施設入所者の場合、介助者は複数で多職種となり、ポジショニングの統一が難しい場合が多く、また下腿を下垂させる為の設定も必要となり、日常生活への導入が難しい。今回、当園入園の男性に対し24時間姿勢ケアの一つとして背臥位での下腿下垂法を実施。重力の影響を考慮したポジショニングを円滑に日常生活へ導入する一手段となることを目的とし、病棟職員との協動により24時間を考えたポジショニングが定着した症例の取り組みの内容について報告する。<BR>【方法】症例は37歳男性、小頭症。平成13年10月当園入園。捻れを伴った脊柱左凸側彎あり。GMFCSレベル5。頚部の軽度随意回旋はみられるが、その他の自発運動は乏しい。声かけにより笑顔を見せ、発声することもある。食事は胃瘻より摂取。日常的に取る姿勢は背臥位が多く、その他に食事時は右背側臥位、午後より1時間程度腹臥位にて過ごす。平成20年11月、評価項目として背臥位での体圧分布、回旋モーメントの評価。1時間ごとの24時間の写真による姿勢の評価を行った。評価後理学療法時間を利用し、下腿下垂法を実施。病棟内プレイルーム、ベッド上で実施する為に、牛乳パック、すのこを使用した台を作成。その上で背臥位をとるようにした。日中過ごすプレイルーム内、移動、活動場面で使用する車椅子上、夜間ベッド上で下腿下垂法を取れるようにし、病棟看護師長、担当看護師に方法、効果を説明、理解を得た後、平成21年1月、病棟職員へ伝達。統一したポジショニングを提供した。<BR>【説明と同意】今回の発表にあたり、症例の保護者への内容の説明を口頭及び文章で行い、同意を得ている。<BR>【結果】数回の病棟職員への伝達後、24時間を通してのポジショニングが統一して出来るようになった。体圧の不均等が軽減し、下肢の脱力や持続的は脊柱の伸張が可能になった。下腿下垂法実施前は左大転子部に褥瘡があったが、実施後約2ヶ月で治癒となった。また保護者から「外泊時同様のポジショニングを行ったが以前と比べ、力が抜けやすくなり夜間もよく眠るようになった」との意見もあった。<BR>【考察】下腿を下垂させることで不安定な下肢を安定させることが出来、下肢の重量による骨盤、脊柱へのねじれ、体圧分布不均等が軽減出来た。また頭部に使用していた枕を低くすることで、頭部の床への押しつけも軽減し、全身的に脱力することが可能になったと考えられる。統一したポジショニングの実施については、まず病棟看護師長、担当看護師といったキーパーソンに方法や効果を説明し、十分な理解を得た上で病棟に伝達したことで、理学療法士が確認できない時間のポジショニングの確認が徹底出来。またプレイルーム、車椅子上、ベッド上で行うポジショニングのクッションを統一することで、ポジショニング内容及び実施が定着しやすかったと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】重症心身障害児/者の変形を進行させる要因である重力や支持接触面の影響はあらゆる姿勢、場面で常時受けているものであり、生活を支援する上で重要な要因である。その中でポジショニングは変形予防や自発活動の促通を行うことが可能であり、24時間を通して支援する必要があると考えられる。今回の報告により多職種、複数の職員へ24時間を考えたポジショニングを伝達し、また使用物品を安価で手に入れやすいものを使用したことは介助者の知識、技術や場所に関係なくポジショニングを提供する方法が提示できると考えられる。今回の24時間のポジショニングについて、今後その経過を追うことで下腿下垂法及び24時間姿勢ケアの効果,問題点を検証できるのではないかと考える。
著者
平林 弦大 真塩 紀人 白石 和也 田口 祐介 神山 真美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ga0191-Ga0191, 2012

【はじめに、目的】 社会構造の変化に伴い,リハビリテーションの果たす役割は大きくなり,疾病対策・健康増進・介護予防など多分野での活動が求められている.それらに伴いセラピスト養成校も比例的に増加し,現状は需給バランスを欠く状況へと変化しつつある.今後の就業状況は多様化し求人が減少傾向に向くことが予測され,養成施設においても就職活動の方略を見直す必要性がある.そこで今回は,セラピストを目指す学生が現状の就職状況をどのように考え,就職先には何を望んでいるか,就職選定要因を把握するため調査を行ったので報告する.【方法】 3年制専門学校にて,臨床実習を含めたすべての学事が終了した理学療法学科3年生35名,作業療法学科3年生21名,合計56名を対象とした.学生へは今後の就職の見通しと、就職先へ望むものについて質問紙法によるアンケート調査を行った。就職の見通しについては「今後セラピストの就職は厳しくなるか」という問に対し,「かなり厳しくなる」から「かなりしやすくなる」の4段階で回答を求めた。就職先に求めるものについては,就業志向尺度(若林ら,25項目)を用い実施した。この尺度は,仕事に求めるものや結果,期待に関する項目に対し,「普通以下でよい」から「非常に沢山あってほしい」まで5段階で回答するものである.統計処理にはSPSS(Ver.16)を使用し,見通しについてはχ<sup>2</sup>検定,就業志向尺度については因子分析を用い学生が就職先に望む要因について検討を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 対象となる学生へは学内承認のもと,今回の研究について目的・方法・倫理的配慮など口頭および文書にて十分説明を行い,同意を得た上で実施した.【結果】 アンケートの回収率は100%(56名),有効回答率100%であった.1)今後の就職の見通しについて「今後セラピストの就職は厳しくなるか」という問に対し,「かなり厳しくなる」.「どちらかといえば難しくなる」と回答した学生が51名であり,有意に多い結果となった.(p<0.01)2)職業志向尺度因子分析には,一般化した最小2乗法を用いて,因子の回転にはバリマックス回転を用い,因子数は第6因子まで有効であった.なお、抽出された中には単独の変数かつ他の項目との関連性が低い因子があり,24項目の変数から再解析を行った。抽出された因子の命名は過去の研究を参考に行った.第1因子は,「自分の能力が試される,専門性,独創性・創造性」などの因子負荷量が高く,「職務挑戦」と命名した.第2因子は「職場の雰囲気,環境の快適さ」などの因子負荷量が高く,「職場環境」と命名した.第3因子は「福利厚生・昇進の可能性」などから構成され,「労働条件」と命名した。第4因子は単独となり,「高い給与やボーナス」が抽出された.第5因子には「社会の役に立つ,安定した会社」から構成され,「社会貢献」と命名した.第6因子は「仕事の自由度」が抽出され,「自由度」と命名した.なお,上位3因子の累積寄与率は52.8%であった。【考察】 今回の研究から,卒業を控えた学生は就職に対し今後厳しくなると考えており、就職先には因子負荷量から「職務挑戦」「職場環境」「労働条件」を特に重視している結果となった.大多数の学生が今後の就職が厳しくなると感じていることについては,実習や就職活動から現状の需給バランスを欠く状況を認知していることが理由であると考えられた.先行研究と比較し学生が就職先に望むものは,抽出された因子に変化は無いものの,「労働条件」などの外発的報酬よりも「職務挑戦」という内発的報酬に重きを置いている結果となった.このことは,学生は就職に関する現況を正しく理解し,セラピストという職業に対して自己実現や社会貢献という「やりがい」を中心とした職業観を持つためであろう.諸氏らの先行研究では,就職先を決めるにあたり給与や通勤などの労働条件や職場環境に重きが置かれていると報告されている.しかし,今回の研究結果から学生は内発的な要因であるキャリア形成に重きを置いており,近年は現状を反映し選定要因が変化していると考えられた.これら学生が求めているものについては,求人票や施設見学,ホームページから把握することが困難であり,リアリティショックや早期離職が危惧される.養成施設としては他業種同様,より早期からの働きかけを行い,キャリア形成のための専門的人材配置など就職方略を修正することが必要である.【理学療法学研究としての意義】 理学療法士の質の低下が論議される中、現状は需給バランスを欠く状況へと変化し求人が減少傾向に向いている.本研究は近年の学生の職場に対するニーズから,新たな就職指導を検討するために意義のあることと考えられる.
著者
山口 裕之 脊戸 英臣 岸本 崇
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.851-851, 2003

【はじめに】高齢者は加齢により筋力やバランス機能などの低下が起こるため、転倒の発生率が高くなる。転倒により、身体的、心理的、環境的に変化が起こり生活での活動が減少してしまうことも少なくない。このことに対して、自治体・病院等では介護予防の観点から転倒予防教室などの取り組みが行われている。しかし、要介護や要支援状態にある通所リハビリテーション(以下デイケア)利用者に対して転倒予防教室を行っているという報告は少ない。今回、デイケアでの体操を主とした集団的な転倒予防教室(以下「ころばん塾」)の取り組みとその効果について報告する。【「ころばん塾」の対象と内容】当介護老人保健施設デイケア利用者のうち、歩行で屋内移動をしている方で、希望された81名に対し、自主的な運動習慣をつけるための転倒予防体操・転倒に対する講義等を行った。参加者の利用日に一回30分程度、2ヶ月のうち各曜日4回ずつ行った。内容は一週目:自宅でできる自主体操の練習、二週目:自主体操の復習と日常生活での留意点の講義、三週目・四週目:バランスを取り入れた踊り、とした。【研究の目的】利用者の転倒状況、転倒予防に対する意識を調査、バランス機能の検査などから、デイケアでの転倒予防教室の位置付けや効果を検討する【研究対象と方法】日常生活の状況を調べるためのアンケートと機能の変化をみるためのバランス検査を行った。実施前後にアンケートは実施前と終了2ヵ月後にデイケア利用者全員に対して過去2ヶ月間の転倒の既往と転倒状況・日常での運動習慣の有無などについて質問した。なお、ころばん塾参加者には実施直後にもアンケートを行った。ころばん塾参加者のうち30名に対しては、バランス検査としてBerg Balance Scale(以下、BBS)と歩行能力検査として10m歩行時間測定をころばん塾前後と終了3ヶ月後に行った。【結果】BBS平均総得点は実施前45.7点、実施直後48.3点であり、実施後に有意に改善し、3ヶ月後もほぼ維持されていた。10m歩行時間は平均で実施前13.5秒、実施直後12.7秒と短縮傾向を示し、10m歩行の平均歩数も実施前25.2歩、実施後23.9歩と減少傾向を示した。転倒回数は実施後アンケートで減少していた。【考察:デイケアでの転倒予防教室のあり方】集団的な転倒予防教室は、実施直後においては運動習慣をつけるきっかけになっており、今回、BBSの改善がみられたことにより、効果が見られたといえる。一方、自主体操を継続するためには期間をおいて複数回教室を実施するなどの工夫が必要と思われた。また、個々人の転倒危険因子への対策については個別的な評価と取り組みが必要であり、今後は個別リハビリとの組み合わせ方や小グループでの対応、在宅生活の評価について工夫していきたい。
著者
西村 純 市橋 則明 日下部 虎夫 奥田 良樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0297-C0297, 2006

【目的】ラグビーは短距離走を繰り返す競技であり、ハムストリングスに大きな負荷が生じるため、肉離れの発生頻度は高い。その主原因は膝屈曲筋力低下、膝屈伸筋力のバランス不良、すなわち伸展筋力に対して屈曲筋力が低い、あるいは膝屈曲筋力の左右差が大きくなると発生率が高くなるとされている。本研究の目的は、肉離れを生じたラグビー選手の運動能力・膝関節屈伸筋力・下肢柔軟性に他の選手との違いがあるかを明らかにすることである。<BR>【対象および方法】対象はラグビー部(関西大学Bリーグ)に所属する男子学生22名(平均年齢20.2±1.1歳、身長171.9±5.3cm、体重72.8±7.7kg)とした。体力測定として筋力測定、運動能力テスト、長坐体前屈テストを行い、さらに測定後の1年間での肉離れの発生の有無を追跡調査した。筋力測定には等速性筋力評価訓練装置MYORET(川崎重工業株式会社製RZ450)を用い、角速度60、180、300deg/secでの等速性膝屈伸筋力を測定した。3回の膝屈伸動作の最高値をピークトルクとし、さらにトルク体重比(ピークトルク/体重)および屈曲筋力と伸展筋力の比(H/Q比)を求めた。運動能力テストは片脚垂直跳び、片脚幅跳び、片脚三段跳びの3種目とした。また、長坐体前屈を下肢柔軟性の尺度として用いた。また、アンケート調査により体力測定後の1年間で、ハムストリングスの肉離れを生じた群(St群)と生じなかった群(Con群)に分類し、膝関節屈伸筋力(ピークトルク、トルク体重比、H/Q比)、運動能力テストおよび長坐体前屈の結果を比較した。統計処理にはt検定を用い、有意水準は5%とした。<BR>【結果および考察】肉離れを生じたのは22名中6名で、ポジションはバックスが5名、フォワードが1名であった。生じなかったのは16名で、バックスが8名、フォワードが8名であった。両群間で年齢、身長、体重に差は無かった。膝屈伸筋力では、ピークトルクには有意差は認められなかったものの、60 deg/secでの屈曲トルク体重比は、St群(1.50±0.37 Nm/kg)はCon群(1.86±0.34Nm/kg)より有意に低い値を示した。また、180 deg/secでのH/Q比は、St群(0.71±0.08)はCon群(0.82±0.15)より有意に低い値を示した。St群で屈曲筋力の左右差を比較すると、受傷側と反対側との間には全ての角速度において有意差は無かった。運動能力テストでは3種目とも両群間で有意な差は認められなかった。長坐位体前屈は有意な差は認められなかったものの、St群(28.3±4.6cm)はCon群(33.5±6.5cm)に比べ低い傾向を示した。今回の結果から、肉離れを生じる選手は運動能力に大きな差はないが、膝関節屈曲筋力のトルク体重比の低下とH/Q比の低下を認めることが示唆された。
著者
近藤 崇史 福井 勉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100264-48100264, 2013

【はじめに、目的】我々は,昨年の第47 回日本理学療法学術大会において健常者の歩行踵離地(以下:HL)のタイミングが遅れるほど,歩行時の立脚中期から立脚後期にかけての足関節底屈モーメントの活動が高まり,股関節屈曲モーメントの活動は低くなるといった足関節と股関節が相互に代償している可能性について報告した.その際,足部内の力学負担に関しては足部を1 つの剛体として捉えたため,その詳細は明らかにできなかった.アキレス腱炎,足底筋膜炎に代表される足部に関するスポーツ障害ではアキレス腱炎では足関節底屈モーメント,足底筋膜炎では中足趾節関節(以下:MP関節)屈曲モーメントが高まり,繰り返しのメカニカルストレスが障害に結びつくと予想される.従来の光学式手法による運動解析では,足部を1 つのセグメントとして捉えるもの,または複数のセグメントからなる足部モデルにおいても関節角度のみを算出しているものが多く,足部内の力学作用に関する検討は少ない.そこで今回は,剛体リンクモデルではなく,矢状面内での足関節およびMP関節の関節モーメントを算出し,HLのタイミングとの関係性を検討することを本研究の目的とする.【方法】対象は健常成人21 名(男性:17 名,女性:4 名,年齢:28.9 ± 2.5 歳)とした.測定には3 次元動作解析装置(VICON Motion system社)と床反力計(AMTI社)を用いた.標点はVicon Plug-In-Gait full body modelに準じて反射マーカー35点を全身に添付した.動作課題は自由歩行を7 回行った.得られた下肢の力学データは左右分けることなく採用し,解析に用いた.計測にて歩行速度,歩幅および矢状面上の足関節・MP関節の関節モーメントを算出するため,足関節中心,第2 中足骨頭背側マーカー,床反力作用点の位置座標,床反力データを得た.矢状面内での足関節およびMP関節の関節モーメントは,宮崎ら(1994)の先行研究の方法を参考に算出した.解析項目として1 歩行周期中の算出した足関節底屈モーメントおよびMP関節屈曲モーメントの最大値とHLのタイミング(歩行周期中の百分率;%)の関係を分析した.統計分析は統計ソフトSPSS 18J(SPSS Inc.)を使用した.統計手法には偏相関分析を用い(制御変数;歩行速度,歩幅),有意水準は1%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】文京学院大学大学院保健医療科学研究科倫理委員会の承認を得たうえで,対象者には測定前に本研究の趣旨を書面及び口頭で説明し,参加への同意を書面にて得た.【結果】全対象の自由歩行から立脚期の力学データを抽出した左下肢68 肢,右下肢79 肢であった.HLのタイミングが遅れるほど立脚中期から後期にかけての足関節底屈モーメントは大きく(r=0.54,p<0.01),MP関節屈曲モーメントも大きかった(r=0.36,p<0.01).【考察】健常者の歩行動作では,HLのタイミングが遅れるほど足関節底屈筋,足趾屈曲筋(特にMP関節屈曲作用の筋群)による力学的負担がともに大きくなることが確認された.このような力学的負担はアキレス腱炎,足底筋膜炎につながるメカニカルストレスとなり得ることが示唆された.Wearing(2004)らによるfluoroscopyを用いた運動解析によれば足底筋膜炎の症例では歩行立脚後期の第1 中足趾節関節伸展角度が低下していたとされる.よって,本研究の結果とWearingらの先行研究を踏まえて考えるならば,MP関節伸展制限および踵離地のタイミングが遅れることによるMP関節屈曲モーメント増加といった力学的負担が足底筋膜炎へとつながる可能性が推察された.上記の理由から臨床場面でのアキレス腱炎,足底筋膜炎の症例においての評価・介入の指標として歩行時のHLのタイミングを考慮にいれた解釈を行うことの重要性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より歩行観察時にHLのタイミングを指標とすることにより,立脚中期から後期にかけての足関節底屈モーメントおよびMP関節屈曲モーメントによる力学的負担(メカニカルストレス)を解釈できることが明らかとなり,アキレス腱炎,足底筋膜炎の症例に対しての理学療法評価および介入の効果判定などの臨床推論に活用できることが本研究の意義であると考える.
著者
田中 幸子 平岩 和美 武本 秀徳 岡崎 満樹 大塚 和宏 霜井 哲美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0556-G0556, 2005

【はじめに】理学療法士を目指し胸膨らませて入学して初めに学ぶことは,理学療法士教育の第1ページとなる重要な意味を持つ。しかし,実際には1年前期のカリキュラムは専門分野が少なく,基礎分野がほとんどの時間を占める。本校ではできるだけ早い時期に専門分野に触れられるよう,生活環境論を1年生で教えてきた。今回アンケートをもとに,1年生で取り組む利点と今後の課題を紹介したい。<BR>【経過】生活環境論は1年生前期に行われた。その内容は講義形式とグループ発表形式で構成した。グループは,日本社会が抱える生活環境・居住環境・子供の生活環境・障害者の生活環境・女性の生活環境・高齢者の生活環境・介護保険・生活習慣病と生活環境,の中から希望を募りグループ割をした。発表は1時限(90分)に2グループとし,その中に質疑応答も含めた。発表終了時には各グループの発表に対して無記名にてアンケートを取り,グループへのコメントを記入させた。コメント部分は切り取って発表者に渡し,フィードバックし,最後に発表者の感想を提出させまとめとした。<BR>【対象と方法】対象は本校理学療法学科1年生全員。アンケート調査を生活環境論の授業終了後に無記名で行った。回収率は100%であった。調査は2年間,同様に行われた。アンケートの内容は授業開始前にどれくらいキーワードを知っていたか,グループ活動に費やした時間と場所,積極的に参加できたか、についてであった。<BR>【結果と今後の課題】1年生で授業を受ける前に知っていた言葉は,バリアフリー(99%),QOL(47%),ADL(27%),ユニバーサルデザイン(27%)の順であった。このことより1年生から生活環境論に対する学習レディネスはあると言えよう。授業に積極的に参加できましたか,との問いには,「はい(55%),いいえ(5%),どちらでもない(35%)」,と半数以上が積極的に参加できたと答えた。1回のグループ学習の準備に要した時間は11時間以上38%,6-10時間29%,1-5時間33%であった。<BR> 1年生から生活環境論を学ぶ意義としては,以下のことがあげられる。日常生活(活動)に制限が生ずるとき,患者に原因があるとする医学モデルの考え方と生活環境に原因があるとする社会モデルの考え方があるが,理学療法の講義はほとんどが,医学モデルとなっている。早い時期に社会モデルの考え方を知ることは幅広い視野にたった理学療法士育成に役立つ。1年生で教えることの課題としては疾患についての知識が乏しく,各論が理解しにくいことがあげられるが,これは後に「日常生活活動」(3年次)を教える教師が1年次の生活環境論も担当することによって,卒業までに理解できるように設定し,解決している。<BR> 今後さらに学生が積極的に学習に取り組める授業を模索していきたい。
著者
齊藤 雄大 佐藤 文雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G3O1222-G3O1222, 2010

【目的】理学療法・作業療法学生の臨床実習では様々なストレスを受ける機会が多く、指導者は学生の心身の健康状態を把握し、過度なストレスにならないよう管理すべきである。しかし、これまでストレス管理は指導者の経験と、実習生とのコミュニケーションに依存されることが多く、経験の浅い指導者や、指導者・学生間の人間関係が構築されていない場合、適切になされていないことが多くあったものと思われる。そこで客観的な数値を示すことができる検査法を用いてのストレス管理について、その有用性、利用方法などを検討することを本研究の目的とした。<BR>【方法】対象は2008年4月から2009年10月までに当院での臨床実習を修了した学生12名(23.5±3.1歳)、このうち理学療法学生10名、作業療法学生2名、男性7名、女性5名であった。方法は、被験者のおかれた条件により変化する一時的な気分・感情の状態を測定できるという特徴を有するProfile of Mood Stats検査(以下:POMS)を、実習開始日、毎週末、及び実習終了1週後に行い、感覚尺度(緊張・不安:以下TA、抑うつ・落ち込み:以下D、怒り・敵意:以下AH、活気:以下V、疲労:以下F、混乱:以下C)毎に標準化得点に換算した。当院では実習期間によらず3週目に初期発表、4週目に中間成績評価、最終週に最終発表を行っている。被験者の実習期間は7週~9週とばらつきがあったため、6週目以降は最終発表の日程を基準とし、開始時、1週目、2週目、初期発表、中間評価、5週目、最終発表前週、最終発表、終了後としてデータを扱い、一元配置分散分析及び多重比較検定を行った。有位確率は<U>p</U><0.05とした。<BR>【説明と同意】参加する学生に対し、本研究の目的と方法、個人情報の守秘義務に関して十分な説明を行い、参加・不参加の選択権を与えた。また途中で不利益なく参加の取りやめが可能であることを伝えた上で同意を得た。なお結果を本研究及びストレス管理にのみ利用し実習の成績に影響することはないこと伝えた。<BR>【結果】一元配置分散分析の結果、TA、D、V、F、Cにて有意差が認められた。多重比較検定の結果は、TAは終了後が最低値で開始時・1週目・2週目・初期発表・5週目・最終発表前週との間に有意差が認められた。Dは終了後が最低値で1週目・2週目・初期発表・5週目・最終発表前週との間に有意差が認められた。Vは最終発表前週が最低値で1週目との間に有意差が認められた。Fは最終発表前週が最高値で開始時・最終発表・終了後の間に、また2週目が2番目に高値で終了後との間に有意差が認められた。Cは終了後が最低値で1週目・2週目・初期発表・中間評価・5週目・最終発表前週との間に有意差が認められた。AHは常に低く変化の傾向は認められなかった。<BR>【考察】POMSの感覚尺度のうち、TA、D、AH、F、CはNegativeな尺度で、高値を示すほどストレスが高いものと捉えられる。このうちTA、D、F、Cでは終了後がもっとも低値を示し、実習中との有意差が認められることが多かった。このことから実習中の学生は常に何らかのストレスを抱えていることが予測できる。このなかでD、Cは標準化得点の平均値にて初期及び最終発表前週に向け漸増し、その後落ち着く傾向が認められているため、発表に向けての評価及びそのまとめ作業を行う過程で、抑うつ・落ち込み・混乱が伴うことが窺える。またTAは開始時が最も高く、その後はD、Cと同様の傾向が認められているため、実習開始に対して緊張・不安が強いことが予測される。TA・Dに関しては終了後と5週目に有意差が認められず、Cにおいても標準化得点の平均値が低下していることから、他の時期との有意差が認められているわけではないが、初期発表を終えた安堵感や、指導者からの中間評価によるストレスの緩和が窺える。Fに関しても初期及び最終発表前週と他の時期との有意差が認められており、精神的・身体的に疲労・ストレスが高まっていることが予測される。一方Positiveな尺度であるVに関しては、1週目が最も高く、最終発表前週に向け徐々に低下していく傾向が見られ、1週目と最終発表前週との間に有意差が認められている。緊張とともに活気を持って実習に望むが、ストレスの蓄積とともに活気が低下していく様子が窺える。<BR>【理学療法学研究としての意義】今回の結果から実習中を通して常に高いストレスを受けていて、その中でも初期及び最終発表の準備の負担が強いことが窺えた。あわせて実習終了後に、実習中のストレスとなった要因・ストレスの緩和に役立った要因に関してのアンケートを行ったが、その結果や上記の中間評価後にストレスが緩和している傾向から指導者の指導の重要性が窺えた。今後はどの時期にストレスが強いかを明確にしていくこと、どの時期にPOMSを実施していくべきかを検討すること、POMSの結果からどう指導に結び付けていくかを検討することが必要と考える。
著者
山本 洋史 河島 猛 岩田 裕美子 森下 直美 宗重 絵美 西薗 博章 平賀 通 好村 研二 前倉 亮治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DcOF1083-DcOF1083, 2011

【目的】<BR>胸部CTで上肺優位の気腫化と末梢肺底部優位の線維化所見を認めるCPFEは、肺機能上軽微な混合性障害と著明なガス交換障害を示す。重症化すると肺高血圧症が進行し、生命予後を悪化させる(Cottinら 2005、2010年)。そのため労作時の低酸素血症と息切れによりADLは制限されるため、PTやOTの介入が必要と考えられるが、その臨床像や治療実施とその効果に関する報告は少ない。そこで本研究では、retrospectiveであるがCPFE患者の肺機能や運動負荷心肺機能検査(Cardiopulmonary exercise testing ;CPET)、PT実施前後の6分間歩行検査(6MWT)の結果を、運動耐容能を一致させたCOPD患者と特発性肺線維症(IPF)患者とで比較することにより、CPFEの運動生理学的特徴を理解し、今後のPT治療の方針を考案することを目的とする。<BR>【方法】<BR>全身状態が安定したCPFE患者で、PT前に肺機能検査とCPETをおこない、PTとその前後で6MWTを実施した10例を対象とした。肺機能検査の項目はVC、FEV<SUB>1</SUB>、FEV<SUB>1</SUB>/FVC、%DL<SUB>CO</SUB>を選択した。CPETはTreadmillを用いた3分毎漸増負荷を症候限界まで実施し、呼気ガス分析、A-Line留置での動脈血ガス分析、Brog Scale(BS)を各ステージで記録した。6MWTはPT実施前後の2回、日常歩行でのSpO<SUB>2</SUB>、脈拍数、BSを把握するためマイペースとし、1分毎に各々記録した。PTはCPETの結果を基に酸素吸入の有無とその吸入量、安全に運動ができるSpO<SUB>2</SUB>と脈拍数を示したSafe rangeを症例毎に医師から処方され、それを遵守しながら呼吸練習、運動トレーニング、ADLトレーニングなどを計20回以上実施した。また同条件で検査をおこなったCOPD患者とIPF患者で、CPFE患者のCPETでpeak VO<SUB>2</SUB>を合致させた各々14例と9例を抽出し比較した。各検査結果について3群間の比較を、TukeyのHSD検定をおこなった。なお、有意水準を5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>CPET実施前に全症例に対して検査方法と研究のためのデータ使用に関する説明と同意を書面にておこなった。<BR>【結果】<BR>CPETにおける運動継続時間とpeakVO<SUB>2</SUB>は3群間で差はなかった(CPFE/COPD/IPF:493/410/354秒、15.2/13.9/14.7 ml/min/kg)。年齢とMRC scaleも差はなく(72.7/72.5/73.2歳、2.7/2.9/3.0)、BMIはCPFEが他2群より高値であった(23.1/19.8/18.4 kg/m<SUP>2</SUP>)。肺機能検査では、%VCはIPFが他2群より低値(102/98/60%)、%FEV<SUB>1</SUB>はCOPDがCPFEより低値(76/42/58%)、FEV<SUB>1</SUB>/FVCはIPF、CPFE、COPDの順で高値であり(63/40/92%)、%DL<SUB>CO</SUB>はCOPDよりもCPFEが低値であった(40/66/48%)。運動終了時のV<SUB>E</SUB>はCPFEが他2群よりも高値で(47.9/31.2/31.1 ml)、換気制限を示す指標であるV<SUB>E</SUB>/MVVはCOPDが高値であった(74.4/93.1/67.1)。最大運動時の心拍数は差を認めなかったが、CPFEが高値である傾向を示した(140/126/117 bpm)。さらに運動終了時のPaO<SUB>2</SUB>はCPFEとIPFで低酸素血症を示した(49.8/63.2/58.7 mmHg)。PT前のマイペース6MWTでは、歩行距離に3群間で差はなく(286/253/258 m)、歩行終了時のSpO<SUB>2</SUB>、脈拍数、BSにも差は認めなかったが(88/91/91%、108/104/105 bpm、2.3/1.7/3.3)、歩行開始から終了時のSpO<SUB>2</SUB>低下はCPFEが大きかった(-8.4/-5.0/-6.1%)。PT実施前後でのマイペース6MWTの距離はCPFEで短縮したが(-39/41/8m)、歩行終了時のSpO<SUB>2</SUB>は88%から90%に改善した。<BR>【考察】<BR>CPFEの運動制限因子として、COPDやIPFと比較して、換気に余力を残すが、ガス交換障害に起因する低酸素血症が大きいと考えられた。またマイペース歩行検査から日常生活でも低酸素血症をきたしながらも、換気制限が著明でないため息切れを強く感じずに歩行していた。長期にこの状態が続くと肺高血圧症の進行に悪影響を及ぼすことが示唆された。したがって、PTにおいては低酸素血症をきたさないように、動作速度や方法を指導する必要があると考えた。PT後の歩行距離の短縮はその結果である。これらの結果から、CPFEはCOPDよりもIPFに近い病態を示していると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>CPFEの運動生理学を理解することは、EBMに基づいたPTプログラムの立案が可能となる。
著者
内山 恵典 森上 亜城洋 西田 裕介
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0042-A0042, 2008

【はじめに】理学療法の対象となる高齢者の栄養問題の1つに蛋白質・エネルギー低栄養状態(PEM)が挙げられる。PEMは創傷治癒の遅延を招くだけでなく、入院期間の延長や死亡率にまで関係するとされている。これまでの研究で、日常生活動作(ADL)と血清データやBody Mass Index(BMI)との間に関係性は確認されている。一方、高齢者は脊柱の変形などの身体特性から身長を正確に測定することが困難であることが多い。また、ADL状況による栄養状態の変化は、対象者の生活の質にも大きく関わってくると考えられる。そこで本研究では、身長の予測式を用いてBMIと血清アルブミン値との関係性について、ADLの指標であるBarthel Index (BI)を用いて重症群と軽症群に分類し、比較検討した。<BR><BR>【対象と方法】対象は、65歳以上の磐田市立総合病院および公立森町病院における入院患者24名(男性10名・女性14名、平均年齢80.7±6.6歳)とした。対象者(家族含む)には本研究の同意を文書及び口頭で得た。また、本研究は、それぞれの病院に設けられた倫理委員会により承認を得て実施した。主な測定項目は、栄養状態の把握に血清アルブミン値(Alb)をカルテより調査した。また、栄養状態を反映する身体組成の評価として予測身長を用いたBMIを算出した。予測身長は、久保らによる回帰式「身長=2.1×(前腕長+下腿長)+37.0」を用いた。前腕長は、肘90度屈曲位で肘頭部近位部から尺骨茎状突起遠位部を計測し、下腿長は、腓骨頭近位部から外果遠位部までを測定した。データの比較には、対象者をADLの状態からBIが60点未満の者を重症群、60点以上の者を軽症群の2群に分類し、それぞれの群においてAlb、BMIの関係性をピアソンの積率相関を用いて分析した。また、各測定項目の群間の比較には、対応のないt検定を用いて比較した。有意水準はともに5%未満とした。<BR><BR>【結果とまとめ】BIの平均は、全体で60.6±33.4点、重症群で27.0±19.0点、軽症群で84.6±15.4点であった。Alb値の平均値と標準偏差は、全体で3.3±0.53g/dl、重症群で3.09±0.50g/dl、軽症群で3.57±0.47g/dlであった。BMIの平均値と標準偏差は、全体で20.8±3.4、重症群で20.1±3.0、軽症群で21.2±3.6であった。群間の比較では、BIが重症群で有意に低くなった以外は、全ての項目で有意差は認められなかった。一方、AlbとBMIとの関係性ついては、軽症群で、r=0.47と有意な関係性が認められ(p<0.05)、全体と重症群での関係性は、それぞれr=0.2、r=0.36と有意性は認められなかった。以上のことから、栄養状態を評価する際、予測身長を用いたBMIは軽症例に対して応用することが可能であると考えられる。
著者
奥田 邦晴 樋口 由美 増田 基嘉 林 義孝 南野 博紀 山西 新 川邊 貴子 灰方 淑恵 喜多 あゆみ 田中 美紀 高橋 明 小西 努
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0786-E0786, 2005

<B>【目的】</B><BR> 近年、競技やレクリエーションとして積極的にスポーツ活動に参加する重度の障害者が増加してきている。理学療法の目標の一つに障害者の生活支援がある。この生活支援に焦点を当て、重度の障害者の生活遂行過程においてスポーツが果たす機能ならびに理学療法学との接点を明らかにすべくインタビューによる調査を行った。<BR><B>【対象と方法】</B><BR> 本調査の主旨に同意を得ることができたスポーツを行っている重度障害者76名(A群)およびスポーツを行っていない重度障害者24名(B群)の計100名とした。スポーツ群の障害内訳はC5・6頸髄損傷39名、脳性麻痺(CP)30名、筋ジス他7名、スポーツ選手群はC5・6頸髄損傷11名、CP12名、他1名であった。上記対象者に面接による聞き取り調査を実施した。面接時間は平均約1時間、ボイスレコーダーでの録音および口述筆記を行った。<BR><B>【結果】</B><BR> 医療機関の受診状況はA群76%、B群95.8%であった。特にリハ科の受診率はA群の11.8%に比べB群では39.1%と高率であり、内容も理学療法目的がほとんどで日常的なリハ医療への依存性が高い傾向が見られた。スポーツを始めたきっかけは友人・知人の紹介が多く(43.4%)、医療従事者からの情報提供は極めて少なかった(3.9%)。リハセンター等のスポーツ施設を併設する医療機関に入院できるかどうか或いは障害者のスポーツに精通している指導者に出会えるかどうかが後のスポーツ活動に大きな影響を与えていた。スポーツを行う目的について71.1%が競技であり、レクリエーション、リハは各々11.8%であった。楽しみである、生き甲斐であると答えた者が約半数あった。スポーツ開始時期について、CP者では養護学校での体育の授業が45.2%、残りの41.9%の人は早い人で19歳、遅い人では54歳(平均29.8歳)であった。有職率はA群46.1%、B群16.7%であった。A群は給与、年金等すべての収入を合わせた年収について回答を得た70名は54.3%が200万円未満であったが、14.3%は年収400万円以上を得ていた。B群の20名は約8割が年収200万円に満たない状態であり、低所得層であることが伺えた。<BR><B>【考察】</B><BR> スポーツをするかしないかは本人の選択であるが、せめてスポーツに関する情報提供は早期から行われるべきであり、理学療法士は社会参加の一手段としてのスポーツの機能について認識を深めることが重要である。スポーツ場面において、選手同士は新たな自己を再発見・再認識することができるだけでなく、自己および他者の存在や役割を客観的に理解し合うことができ得る。また、スポーツはセルフヘルプグループに類似する機能、エンパワーメント機能等、重度障害者が充実した自立生活を送ることや自己実現を可能にする一手段として、また社会に踏み出す一歩としての重要な役割を有していることが明らかになった。