著者
樋口 健吾 山口 寿 釜崎 敏彦 有川 康弘 金ヶ江 光生 宮崎 潤 千葉 憲哉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.832-832, 2003

【はじめに】H14年4月1日より大幅な診療報酬改正が施行され、理学療法の請求項目は、複雑・簡単から個別・集団という個別制から単位制に改正された。そこで今回我々は、当院における診療報酬改正前後の6ヶ月間(4月から9月)の患者動向を調査し、1.改正前後の外来患者数の増減について調査すること、2.診療報酬改正が理学療法業務に及ぼす影響について検討することを目的とした。【対象・方法】2001年、2002年の4月から9月までの6ヶ月間に、当院のリハビリテーション科を受診した全患者を対象とした。方法については、毎日の業務日誌より、2001年をA群、2002年をB群とし、一日の外来患者合計数、月別(4月から9月)、曜日別、天候別(降水の有無)患者数を抽出し、それぞれの項目について比較検討した。尚、土曜日については、勤務時間が異なるため除外した。統計処理については、SPSS Ver.10.0の統計ソフトを用い、対応のないt検定にて有意水準5%未満とした。【結果】年別では合計患者数に有意な差(p<0.05)があり、また、月別では4月から8月までは有意な差(p<0.05)があったが、9月においては有意な差がなかった。曜日別では対応する曜日で有意な差(p<0.05)があり、また、A群では火・水・木曜日それぞれの関連に有意差はなく、B群では火・木及び水・金曜日の関連に有意差はなかった。天候別ではそれぞれに有意な差(p<0.05)があった。また、A、B群共に天候別での有意な差はなかった。【考察】当院における年別、月別、曜日別、天候別での一日当たりの合計患者数は、月別における9月の比較を除いて、すべてA群よりもB群の方が有意に患者数は減少しているという結果が得られた。9月に差が生じなかったのは、2002年10月より老人の医療費負担が1割となることでB群9月の老人患者数が増大したことが考えられ、その他の4月から8月に関しては、当院が総合リハビリテーション承認施設であり、点数が175(簡単)点から250(個別)点へと患者の負担が増大するケースもあり、患者一人当たりの来院回数が減少したことが考えられる。また、曜日別においては、最も患者数が多いのはA、B群共に月曜日で、次いで金曜日、少ないのはA群では火・水・木曜日、B群では火・木曜日であった。これにより、週始めの月曜日と週末の金曜日に患者が集中することが示唆された。また天候別では、雨が降ったからといって患者数が少ないということは否定された。個別制から単位制の導入により、我々理学療法士には、患者数を伸ばすことよりも、一日・一月当たりの法定数を考えた事務作業が重要となってきた。日々の理学療法業務を円滑に行うためには、今後、外来患者の動向を予測することが重要となってきているが、対象が個人レベルであるため、非常に困難だと考えられる。今回の結果より、曜日によって外来患者数は変動することが示唆されたため、効率良い事務管理を行うには、患者を分散させ、予約制の導入を検討する必要性があると思われる。
著者
河野 愛史 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 平田 和彦 木村 浩彰 越智 光夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101040-48101040, 2013

【はじめに、目的】 膝関節の靭帯損傷はスポーツで頻発する外傷のひとつであり,なかでも膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷は発生頻度が高い.治療には靭帯再建術の選択が一般的で,術後は関節可動域の改善や筋力増強などの理学療法が必要になる.筋力増強の効果判定のひとつとして大腿周径が用いられるが,臨床では大腿周径の回復と筋力の回復が一致しない症例を経験する.一般に,四肢周径は筋や骨の発達状態の把握に役立ち,筋力と有意な相関があるとされ(渕上ら,1990),筋力の発揮には筋量などの筋的要因や運動単位の動員などの神経的要因が影響し,筋力増強はそれらのいずれか,または両者の変容によるものとされる(後藤,2007).本研究の目的は,ACL再建術後の筋力の回復に筋量の回復がどの程度影響するのかを大腿周径と筋力を測定することで検討し,かつそれらを測定する意義を明確にすることである.【方法】 広島大学病院にてACL再建術(STG法)を受け,術後12ヶ月以上経過した初回受傷患者106名(男性50名:平均27.9±11.3歳,女性56名:平均24.8±11.2歳)を対象とした.大腿周径は膝蓋骨上縁から5,10,15,20cmを術後6,12ヶ月時に測定し,非術側に対する術側の割合(以下,患健比)を求めた.筋力測定はBIODEX System3(BIODEX社)を用いて,術後6,12ヶ月時に60°/s,180°/sの角速度での膝関節伸展,屈曲筋力を測定し,患健比を求めた.統計処理は術後6,12ヶ月の各時期での大腿周径と筋力の関係をPearsonの相関分析を用いて検討し,危険率は5 %未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会,広島大学疫学研究に関する規則に基づき実施した.対象には本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た.【結果】 大腿周径の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は5cmで97.1%,98.1%,10cmで95.9%,96.9%,15cmで95.7%,96.9%,20cmで96.4%,96.9%,女性は5cmで97.2%,98.2%,10cmで96.4%,96.4%,15cmで96.3%,96.6%,20cmで96.5%,97.6%であった.筋力の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は60°/sでの伸展筋力は67.2%,77.1%,屈曲筋力は80.9%,83.7%,180°/sでの伸展筋力は75.7%,81.6%,屈曲筋力は85.3%,86.5%であった.女性は60°/sでの伸展筋力は69.1%,82.6%,屈曲筋力は84.3%,89.8%,180°/sでの伸展筋力は77.5%,86.2%,屈曲筋力は87.8%,92.6%であった.大腿周径の患健比と筋力の患健比は,術後6ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径20cm,女性は180°/sでの伸展,屈曲筋力と周径20cmとに有意な正の相関を示した(r=0.29~0.48).術後12ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,女性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径5cmとに有意な正の相関を示した(r=0.28~0.45).【考察】 男性は術後6,12ヶ月,女性は術後12ヶ月で大腿周径の患健比と膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示したことから,膝伸展筋力の回復に大腿周径すなわち大腿部の筋量の回復が影響し,術後12ヶ月ではその影響が大きいと考える.しかし,女性は術後6ヶ月で大腿周径の患健比と60°/sでの膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示さなかった.これは,女性はもともと男性に比べて大腿部の筋量が少ないため(Abeら,2003),筋量が筋力に反映されにくいことや,術後6ヶ月は筋量の回復が不十分で神経的要因の回復により筋力が回復したことなどの可能性が考えられる.以上より,ACL再建術後に大腿周径および膝伸展筋力を測定することで,筋力の回復のどの程度が筋量の回復によるものかを評価でき,回復状況を把握することでリハビリテーションプログラムの再考につながる.また術後12ヶ月では筋量が筋力にある程度反映しているため,大腿周径がスポーツ復帰の指標のひとつとして有用である可能性が示唆されたが,例外もありこのような症例には注意が必要である.【理学療法学研究としての意義】 ACL再建術を受けたスポーツ選手のスポーツ復帰時期を決定するために筋力の回復は重要で,男性は術後6,12ヶ月と大腿周径および筋力が順調に回復する傾向にあるが,女性は各時期での回復状況に特に注意し運動療法を行うべきである.
著者
須堯 敦史 佐々木 貴之 小宮 雅美 坂井 宏旭 益田 宗彰 植田 尊善
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BaOI2022-BaOI2022, 2011

【目的】我々は第45回日本理学療法学術大会で、当院において高位頚髄損傷者に対する非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)の導入が開始されたことを報告した。高位頚髄損傷者に対するNPPVは、気管切開を介した侵襲的な人工呼吸器管理に比べ、喀痰の大幅な減少や声によるコミュニケーションなど多くのメリットが得られる反面、デメリットとして呼吸器外れなどのリスク上昇が挙げられる。メリットは大きいものの、そのデメリットが家庭復帰の障害になる可能性が考えられる。本邦における高位頚髄損傷者へのNPPV導入は歴史が浅く、家庭復帰後の状況に関する報告はない。今回、NPPVで家庭復帰された高位頚髄損傷者の現況を把握するため、調査をおこなった。<BR>【方法】症例は当院入院中、あるいは当院より転院後にNPPVを実施し、NPPVのまま自宅復帰した高位頚髄損傷者2例である。症例1は20代の男性、診断名は第4頚椎脱臼骨折による頚髄損傷である。受傷後に麻痺の上行があり、運動・感覚機能はともに第1頚髄節以下の麻痺を呈している(ASIA impairment scale:A)。自発呼吸は不可であった。単身で生活している。症例2は50代の男性、診断名は第1頚椎脱臼骨折による頚髄損傷である。運動・感覚機能はともに、第2頚髄節以下の麻痺を呈している(ASIA impairment scale:B)。肺括量は540mlであった。家庭での主な介護者は妻である。症例に対し、家庭におけるNPPVの実施状況について、アンケート調査をおこなった。調査項目は(1)呼吸器離脱可能な連続時間、(2)家に一人でいる時間・頻度、(3)呼吸器外れの経験、(4)緊急時の対応策、(5)社会資源の利用状況、(6)NPPVの満足度、についてであり、自由記述形式とした。アンケート実施時には、症例1は受傷後約6年(自宅復帰後2年7ヵ月)を、症例2は受傷後約3年(自宅復帰後3ヵ月)を経過していた。<BR>【説明と同意】症例には本研究の趣旨について十分に説明し、症例情報・結果を研究報告することに関して、同意を得た。<BR>【結果】アンケートの結果は上記項目順に以下の通りである。症例1の結果は、(1)呼吸器離脱不可、(2)家庭では常時介護者あり、(3)1度経験あり救急搬送、(4)パルスオキシメーターの常時装着とヘルパーに対する緊急時徒手送気方法の指導、(5)24時間365日ヘルパー利用および定期的な医師・看護師・理学療法士の訪問、(6)非常に満足している、であった。症例2の結果は、(1)2時間の呼吸器離脱可能、(2)週に3回程で1回につき1時間程度(外部から状況視聴可能なカメラを設置)(3)経験なし、(4)自発呼吸にて対応可能、ナースコールにて外部へ連絡、(5)定期的な医師・看護師・理学療法士の訪問、週3回のヘルパー利用、(6)非常に満足している、であった。<BR>【考察】アンケート調査をおこなった2例の高位頚髄損傷者は、呼吸残存能力に大きな違いがある。そのため、各症例における家庭でのNPPV実施状況は、特に呼吸器外れに対する監視体制の点で異なっていた。症例1は自発呼吸が不可なため、何らかのトラブルで呼吸器外れが発生した場合、生命に関わる。そのため、家庭では常時他者からの監視が必要で、緊急時の対策についても十分な準備がなされていた。それに対して症例2は自発呼吸が可能であり、短時間ではあるが実際に一人で家にいることが出来る状況であった。すなわち、呼吸能力強化による呼吸器離脱時間の延長が、介護者の身体的あるいは心理的負担の軽減に繋がると考えられ、この点が高位頚髄損傷者に対するNPPV導入のポイントになるであろう。また、NPPVに対して、両症例ともに一定の満足が得られており、NPPVで得られるメリットが、症例の生活や心理に良い影響を与えていることが示唆された。両症例とも、侵襲的な人工呼吸器管理での気管切開に伴う苦痛、発声不可、喀痰の出現を経験しており、それらがNPPVによって解消されたことが、満足を得られた要因であると考える。NPPV導入に関しては、家庭復帰後の生活・介護者の負担などを想定した上で実施するべきであるが、NPPVのメリット・デメリットに対する捉え方は、個々の考え方やニーズによって異なるため、一概にリスクが高まるから導入すべきでないとは言えない。今回報告した症例のように、NPPVが症例の身体に多くの恩恵を与えることは疑う余地がなく、呼吸残存能力に合わせたリスク対策および監視体制を整えれば、高位頚髄損傷者の呼吸管理として推奨すべき方法と言える。<BR>【理学療法学研究としての意義】NPPVで家庭復帰した高位頚髄損傷者は、本邦でまだ数例しかおらず、本研究は今後NPPV導入を試みる医療者および患者にとって、非常に有益なものと考える。
著者
鳥居 昭久 黒川 良望 木山 喬博 林 修司 加藤 真弓 木村 菜穂子 荒谷 幸次 神鳥 亮太 一村 桂子 角田 利彦 水谷 綾子 内藤 克之 神谷 友美 岩瀬 ゑり子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.G0960-G0960, 2006

【はじめに】<BR> 2005年夏、岐阜県海津市の長良川国際ボートコースにて、2005ボート世界選手権大会が、アジアで初めて開催された。この大会は、ボート競技の国際大会としては、種目数、エントリー国数においてオリンピックをしのぐ最大の大会である。今回、大会会場のメディカルセンター付属施設として、理学療法室を開設し、参加選手等に対する理学療法サービスを実施する機会を得たので報告する。<BR>【大会概要】<BR> 世界ボート選手権大会は、オリンピックイヤーを除く毎年夏に開催され、主に欧米にて行われていたが、今回、ボート競技の普及などの意味も含めて、アジアで初めて開催された。<BR> 大会開催期間は2005年8月28日から9月4日までであった。また、会場は8月24日から公式に公開され、それに伴い、メディカルセンターおよび理学療法室は8月24日からサービスを開始した。大会参加国は56カ国、参加クルーは、本戦23種目、Adaptive種目4種目に合計319クルーがエントリーした。ちなみに、日本は、開催国ということもあり、史上最多の15種目にエントリーした。<BR> 会場は、岐阜県海津市の特設長良川国際ボートコース(2000m)であり、岐阜、愛知、三重県の県境にある国立木曽三川公園内に位置する。<BR>【理学療法室概要】<BR> 理学療法室は、長良川河川敷に設置されたメディカルセンターテント内に約25m<SUP>2</SUP>の専用スペースを設け、治療用ベッド4台と物理療法機器などを準備した。物理療法機器は電源、給排水などの問題から、温熱・寒冷療法機器のみとし、その他は、徒手療法、運動療法、テーピングなどで対応した。理学療法士は、愛知、三重、岐阜県理学療法士会へボランティアを公募し、12名の理学療法士が、6時から20時までを、3名常駐、2交替で待機した。<BR>【診療状況】<BR> 台風の影響もあり、実質理学療法室が稼働したのは10日間であった。利用した人は、延べ8カ国、28名であった。対象となった訴えは、頚部、肩、肘、腰部、膝などの痛み、下肢や背部の疲労感や筋の緊張などが主で、疲労性、過使用的な原因が多かった。また、特定部位の治療ではなく、コンディショニングに関する要望もみられた。<BR>【感想・問題点】<BR> 利用者は、予想に反して少なかったが、概ね効果的な理学療法が提供できたことで、利用した選手等には好評であった。一方、一部ではあるが、コミュニケーションの問題や、理学療法に対する理解の差から、選手が希望するセラピーと、用意された内容などの違いがあったり、多様なリクエストに対する対応の制限などの問題があった。特定のチームや選手団の帯同サポートと違い、今回のような国際スポーツ大会や、不特定多数が利用する場合の理学療法室設営の課題が明らかになり、今後、同様のケースの参考になることを多く得られた。<BR>
著者
結城 恵 花崎 加音 西村 文江 宮之原 清江
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.D0550-D0550, 2004

【はじめに】2002年4月より開胸・開腹術後の患者が早期リハビリテーション加算の対象に含まれた。当院においても理学療法士が加わり2003年2月より心臓血管外科手術に対するリハビリテーションプログラムが運用となった。そこで、対象の手術状況や合併症などとプログラムの進行状況について調査し検討を行ったので報告する。<BR>【対象と方法】2003年4月から10月までに開胸術(冠動脈バイパス術、弁置換・形成術、胸部大動脈置換術、先天性心疾患開心術)を施行した111例、年齢68±12歳、男性64例、女性47例を対象とした。開胸術後プログラム期間の14日+3日(allowance)でADL自立した症例を順調群、それ以上の日数を必要とした症例を遅延群と分類し、年齢、手術状況、術後合併症、随伴症および進行状況を比較検討した。なお、解析はt-検定とSpearmanの順位相関を用い危険率5%未満を有意水準とした。<BR>【結果】全症例中、順調群は57例(51%)、遅延群は54例(49%)であった。進行状況において端坐位までの日数は順調群3.4±1.0日、遅延群8.8±7.7日。起立開始までの日数は順調群3.8±1.2日、遅延群9.8±9.4。術後在院日数は順調群12.9±2.2日、遅延群31.7±15.3日であり、それぞれ有意に遅延群が長かった。平均年齢は順調群62.9±11.2、遅延群72.9±9.6であり年齢と術後在院日数には有意な相関がみられた。緊急手術は順調群6例(5%)、遅延群26例(23%)であったが、緊急手術と術後在院日数に有意差は認められなかった。また、緊急例は術後紹介で平均10.4±5.4日間後の紹介状況であった。術中出血量は順調群1130.1±1004.1、遅延群1971.8±1724.0であり有意に遅延群が多く、術後在院日数とも有意な相関を認めた。術後合併症では不整脈は順調群26%、遅延群65%、心合併症は順調群7%、遅延群31%、呼吸器合併症は順調群7%、遅延群41%、その他(消化器・腎・感染・脳合併症など)はそれぞれ順調群が少なかった。随伴症は、順調群と遅延群においてほぼ同数であった。<BR>【考察】今回の検討より遅延例の特徴は年齢層が高く、術中出血量が多く、術後合併症が多かった。在院日数短縮が進められているなか、高齢者、術前、術後ともに多種多様な合併症が存在する術後遅延例が約半数を占めていた。今後、プログラム進行順調群や遅延群それぞれの日数や特徴を踏まえ、順調群ではより早期の退院を目指し、遅延群では合併症の発症に注意し、その時期・状態に合わせ個々のプログラムを作成し効率的に施行できるよう基準の再設定を行い質の高い治療を提供していきたい。また、生活習慣病を多く有する対象であるため、退院後の生活指導や患者教育・運動療法指導など包括的心臓リハビリテーションに向け取り組んでいきたい。
著者
玉井 晃子 大橋 翼
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1263-Eb1263, 2012

【はじめに、目的】 訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の実施にあたり転倒予防は最も留意することの一つであるにもかかわらず、時折発生しているのが現状である。これまでにも在宅高齢者、在宅障害者、施設入所者に対し多くの転倒に関する調査が実施されているが、訪問リハを利用している在宅障害者に関しての調査はあまり見受けられず、今後の検討目的で今回当ステーションでの実態調査を行った。【方法】 対象は2009年10月から2010年9月までの1年間に当訪問看護ステーションの訪問リハサービスを利用した177名(男性85名、女性92名 平均年齢男性70.8±11.1歳、女性75.3±13.9歳)利用者の転倒状況の把握は訪問時に利用者本人、家族からの報告を受けること、および担当者側から積極的に転倒の事実がないかを尋ねることで行った。転倒者に関しては各担当者が転倒調査票に基本情報、疾患、歩行自立度(自立、介助、不可)、転倒状況等を記載することで調査を行った。転倒発生率(転倒率)=(調査期間中に転倒した人数/対象者数)×100とした。統計解析は年齢についてはt-検定、男女の比較にはカイ2乗検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 調査の処理の際には氏名の特定はせずプライバシーの保護に配慮し実施した。【結果】 1年間で30名(35件)の転倒があり転倒率は16.9%であった。男女別には男性19名(転倒率22.4%)女性11名(転倒率12.0%)転倒者の平均年齢は男性71.0±8.0歳、女性76.2±7.8歳であった。疾患および歩行自立度別には転倒率が20%以上となったものは認知症・介助群100%、失調症・自立群50.0%、パーキンソン病、パーキンソン症候群・自立群50.0%、その他内科疾患等・介助群33.3%、右片まひ・介助群31.0%、右片まひ・自立群29.0%、四肢まひ・介助群29.0%、パーキンソン病、パーキンソン症候群・介助群25.0%、左片まひ・介助群20.0%であった。次に転倒状況に関して、転倒が生じたのは歩行時か否かは歩行時17名(男性12名、女性5名)歩行時以外(起立、移乗時等)17名(男性8名、女性9名)不明1名(男性)であった。すべての転倒は家屋内で生じていた。また転倒は日常よく行っている動作の中で生じたか、めったに行わない予想外の動作を行い生じたのかでは日常的な動きの中で18名(男性8名、女性10名)予想外の動きで16名(男性12名、女性5名)不明1名(男性)であった。転倒者の転倒歴は有りが15名(男性9名、女性6名)無しが15名(男性10名、女性5名)であった。転倒時の受傷に関しては無しが18名(51.4%)内出血・切傷8名(22.9%)痛みの持続7名(20.0%)骨折2名(5.7%)であった。統計学的には年齢、男女別において有意差はみられなかった。【考察】 まず転倒者の男女別に関して、一般の在宅高齢者に関する調査では女性のほうが男性よりも転倒頻度が高いとする報告が多いが今回の調査ではその傾向はなかった。一般に女性の転倒が多い理由として筋力の弱化や立位保持能力の低下が男性に比し大きいといわれているが障害者に関しては男女いずれもそれらが低下していると考えられるため男女差は出なかったのではないかと思われる。また転倒時の状況に関して約半数が日常的ではない予想外の行動をとった時に生じていた。(特に男性にその傾向があった)日常的な動作指導、環境整備に比し、この点に関しての改善策を立てるのはなかなか困難であるが色々な場面を想定し対策を立てていくことが必要かと思われる。転倒の内的要因の原因となる疾患として脳血管障害を始め様々なものがあげられており、在宅障害者はほぼ全例そのいずれかに当てはまる状況であると思われる。今回の調査では特に歩行が介助状態にある認知症者は全例転倒しており筋力等身体的な低下に加え認知面での低下があるとより転倒リスクが高まるものと考える。在宅障害者の年間転倒率は50%以上とする報告がみられるが、今回訪問リハ利用者の転倒率は16.9%であった。調査方法の相違等もあるため単純に比較できないにしても低値を示しているのは訪問という形で実際に生活場面への介入が行えるからではないかと思われる。今後この転倒率をさらに下げるべくアセスメント表の作成や身体機能面、環境整備、動作指導等さらなる検討、また他施設とも共同して調査を行えていければと考える。【理学療法学研究としての意義】 今回の調査結果は転倒に関しての一資料になると思われる。
著者
小川 真人 坪井 康典 杜 隆嗣 林 女久美 丸山 孝樹 三輪 雅彦 黒坂 昌弘 平田 健一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D4P1185-D4P1185, 2010

【目的】<BR>近年、急性心筋梗塞(AMI)患者の在院日数は短縮傾向にあるが、一方、二次予防を含めた包括的心臓リハビリテーションが重要視されている。AMIの有酸素性運動の処方強度としては嫌気性代謝閾値(AT)レベルが推奨されているが、これは心肺運動負荷試験による呼気ガス分析を用いなければ判定出来ない。その一方、運動強度が低すぎると効果が十分でないことが言われている。当院では、安全かつ効率的な心臓リハビリテーションプログラムを作成することが重要であると考え、最終的にはBorg Scale13程度でのトレッドミル歩行30分を退院時運動処方の目標としたAMIプロトコルを平成21年5月より運用開始したので、報告する。<BR><BR>【方法】<BR><B>対象</B><BR>平成21年5月~9月に、AMIを発症後、当院において経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行された24名(年齢 64.0±13.6歳 Peak CPK 1940.3±1373.0 IU/l)。 <BR><B>プロトコル進行基準</B><BR>自覚症状の急性増悪/HR<120bpm/Lown分類:4a以内/2mm以上のST低下(水平型・下降型) 著明なST上昇がないこと/立位保持までは収縮期血圧変動<20mmHg(心タンポナーデリスクが高いと判断された場合には、主治医許可があるまで、血圧コントロールは継続すること)。<BR><B>運動負荷基準</B><BR>自転車エルゴメーターを用い、40~60%体重(BW) Watt×20分から開始。進行基準を満たしていることに加えて、運動処方中のSBPが増加しており、Borg Scale 14未満であれば、処方強度を20%BW Watt/日ずつ、処方時間は30分に増加した。エルゴメーター負荷によって確定した、Borg scale13の心拍数(HR)をトレッドミルでの処方強度とした。<BR><B>検討項目</B><BR>トレッドミル歩行達成率、平均トレッドミル歩行速度、平均処方HR<BR><BR>【説明と同意】<BR>対象者には当院の心臓リハビリテーションプログラムについて医師、理学療法士より説明の上、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR>トレッドミル歩行達成率は70.8%(17/24例)であった。未達成理由としては、プロトコル進行基準抵触群が12.5%(3/24例)、患者希望の早期退院群が16.6%(4/24例)であった。トレッドミル歩行平均速度4.4±1.3km/h、平均処方HR 101.2±13.3bpmであった。心事故発生件数は0件であった。<BR><BR>【考察】<BR>呼気ガス分析装置を用いないトレッドミル歩行導入プロセスを作成した。呼気ガス分析による正確な嫌気性代謝閾値の判定が出来なかったが、心事故を起こすことなく、プロトコル運用が可能であった。このことは、当院の運動負荷プログラムは呼気ガス分析を用いることが出来ない環境においても十分に実用的に運用し得るものであると考えられる。今後呼気ガス分析を使用し、現在の運動負荷基準や経時的に変化する主観的運動強度について検討、再考することが必要であると考えられる。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>AMIの早期運動処方に際し、心肺運動負荷試験による呼気ガス分析を用いず、運動負荷プログラムを実施したが、心事故は発生せず、安全にプログラムを遂行し得た。
著者
田中 聡 山神 眞一 金井 秀作 甲田 宗嗣 長谷川 正哉 島田 昇 大塚 彰
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1000-E1000, 2006

【はじめに】<BR> 調整力とは,体力の四大要素(筋力・持久力・柔軟性・調整力)の一つであり,平衡性,敏捷性,巧緻性などをいう.この調整力は加齢により低下するだけでなく,近年児童における低下が懸念されている.今回,我々は調整力を高めることを目的としたバランスボードの開発に関わる機会を得たので,その紹介と効果の検討について報告する.<BR>【バランスボードの概要と機能】<BR> 鉄製のパイプフレームにハンドルと全方向に傾斜可能な合板製の不安定板から構成される.不安定板には一般的なゲームコントローラの十字キー機能を持たせ,ハンドルには押しボタンの機能を持たせている.十字キー機能は,不安定板内部(底面)に不安定板の傾斜角度を計測する検出器を設置し,板の傾きによるアナログ出力をUSBインターフェイスを介してコンピュータにON信号として出力される.その出力により十字キーの8方向全てのON・OFF信号を出力することが可能である.また,専用のトレーニング用ゲームソフトを内蔵したコンピュータを搭載し,ユーザーにあわせたゲームを提供できる.内容は画面上で「射撃ゲーム」,「ボールを上下左右のカーソルを使用して外に出さないようにする」,「箱を傾けて玉をゴールに導く」,「敵の弾を避けながら相手を撃つ」などである.この装置によるトレーニングは,軽くハンドルを握り不安定板上に立ち,画面を見ながら素早く不安定板を操作することと,ハンドルのスイッチを押すことが要求される.<BR>【トレーニング効果の検討】<BR> 男子大学生8名(平均年齢22.7歳,平均身長175.6cm,平均体重66kg)を対象に,本装置を使用してトレーニング中の下肢筋活動をNECメディカルシステムズ社製筋電計サイナアクトにて記録した.被検筋は全員右側の脊柱起立筋,中殿筋,半膜様筋,大腿直筋,長腓骨筋,腓腹筋,前脛骨筋,母趾外転筋とした.解析は,キッセイコムテック社製BIMUTAS2を使用し同一ゲーム課題遂行時の安定した筋活動を用いて3秒毎に積分値(IEMG)を算出し,3回の平均値をトレーニング中の筋活動の指標とした.また各筋の3秒間における等尺性最大随意収縮時の積分値を100%として正規化し,%IEMGを比較した.統計学的処理は分散分析,多重比較を用い有意水準は5%未満とした.<BR>【結果と考察】<BR> トレーニング中の筋活動は,母趾外転筋が有意に高く41.2%を示し,以下腓腹筋(29.2%),長腓骨筋(21.5%),前脛骨筋(17.9%)と下腿筋の活動が大きく,次いで脊柱起立筋(16%),中殿筋(11.3%),半腱様筋(8.8%),大腿直筋(5.3%)の順であった.<BR> 本装置はゲームを利用していることで楽しみながら平衡性,敏捷性,巧緻性に対するトレーニングと併せて下肢筋を中心とした筋力トレーニングも可能であると考えられた.<BR>
著者
大塚 智文 宮下 智 伊藤 元治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.A0750-A0750, 2006

【目的】我々は、アイスホッケー選手のトレーニングとしてスリングエクササイズセラピー(以下、SET)を導入している。我々の先行研究では、ローカルマッスル(以下、LM)をトレーニングすることで、視覚入力に対する体幹運動の正確性が増したことを報告した。アイスホッケーは、氷の上という非常に不安定な状況で、相手とのコンタクトや、状況に応じた加減速、切り返しなど、高度なバランス能力が必要である。そこで、LMトレーニングに加え、実際の競技場面を想定したSETによる高度なバランスエクササイズを行っている。本研究では、準備期と試合期にそれぞれ行っているフィジカルテストの結果から、SETによる高度なバランス課題が可能になった者の、体幹と膝の運動の正確性に関して興味ある知見を得たので報告する。<BR>【対象】関東大学アイスホッケーリーグ1部に所属する部員、男子23名。平均年齢20.2±1.0歳。<BR>【方法】1.SET課題は、1)立位にてスリングロープを両足にかけ(空中で不安定になる)、両手を放して姿勢を安定させる。2)身体を左にねじる。3)正面に戻す。4)身体を右にねじる。5)正面に戻す事を、上肢を使わないままで試行可能(成功者)か否か(失敗者)判定した。<BR>2.MRシステム(Index社製MR Low Back Extension IP-M4000)による体幹及び膝伸展運動の筋協調テストを行い、視覚入力に対する運動出力の誤差(運動正確性)を測定した。<BR> 統計処理は、SET課題成功群と失敗群に分類し、t-検定を用いた。また、体幹伸展と膝伸展運動の相関関係を検討した。有意水準はそれぞれ5%とした。<BR>【結果】1.課題成功者は8名で、体幹運動出力の誤差平均は準備期が9.1±1.8cm、試合期が7.2±2.0cmであった。失敗者は15名、誤差平均は準備期が11.3±3.1cm、試合期が8.9±1.9cmであった。両群とも有意に運動正確性の向上がみられた(p<0.05)。<BR>2.体幹と膝の相関関係はSET課題成功群において正の相関が認められた(r=0.76、p<0.05)。失敗群ではr=0.11であった。<BR>【考察】SET課題の成否に関わらず、トレーニングにより視覚入力に対する体幹運動の正確性が増した。これは、先行研究からも示されていたように、LMトレーニングによって体幹の安定性が保証された結果であると考えることができる。また、SET課題成功者の結果から、体幹運動の正確性に連動して膝運動が正確に行われることが必要であるという傾向が示された。これにより、体幹と膝を個別にトレーニングするのではなく、連動させたトレーニングをすることによって、バランス能力の向上に繋がる可能性が示唆された。アイスホッケーでは無意識的に次の動きを予測し、反応するための高度なバランス能力が要求される。SETによって、競技場面を想定したトレーニングを行うことで、体幹と膝の運動を効率的に連動させ、高度なバランス能力を養うことが、パフォーマンス向上に繋がるように更なる検討をしていく。
著者
田平 一行 原田 鉄也 山本 純志郎 岡田 哲明 前村 優子 山本 みさき
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ae0083-Ae0083, 2012

【はじめに、目的】 運動耐容能の評価として,自転車エルゴメータやトレッドミルを用いた心肺運動負荷試験が行われ,最大酸素摂取量が最も良い指標とされている.これに加えて近年,自転車エルゴメータの漸増負荷試験から得られた最大仕事率(WRpeak)の80%の運動強度での定常負荷試験が実施されている.この試験における運動持続時間(ET)は,薬物や運動療法介入後の効果の反応性が良いとされている.実際の日常生活においても,強い運動よりも長時間運動できることが重要であると思われる.しかしこのETは相対的な運動強度で実施されるため,最大酸素摂取量やWRpeakの影響は受けにくく,影響する因子は明らかになっていない.そこで今回,ramp負荷と定常負荷試験の2種類の運動負荷試験を実施し,ETに影響する因子について検討したので報告する.【方法】 健常男子大学生13名(年齢21.9±0.8歳) を対象に自転車エルゴメータを用いて2種類の運動負荷(ramp負荷,定常負荷)試験を実施した.ペダルの回転数は60回/分を維持させた.その間,呼気ガス分析器(Metamax 3B, Cortex社)を用いて酸素摂取量(VO2),二酸化炭素排出量(VCO2),分時換気量(VE),換気当量(VE/VCO2),死腔換気率(VD/VT)を,組織血液酸素モニター(BOM-L1TRW,オメガウェーブ社)を用いて大腿四頭筋外側広筋部の酸素化ヘモグロビン,脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビン(Total Hb),組織酸素飽和度を,非侵襲的血圧測定器(Portapres, FMS社)を用いて収縮期血圧,1回心拍出量,心拍数を測定した.また運動終了時は修正Borg scaleを用いて,呼吸困難感と下肢疲労感を測定した.ramp負荷試験:3分間の安静座位の後,20w/minのramp負荷にて運動を行わせ,症候限界まで実施した.定常負荷試験:3分間の安静座位の後,ramp負荷試験にて得られたWRpeakの80%の運動強度にて症候限界まで運動を行わせた.運動の中止基準は,85%予測最大心拍数,自覚症状,ペダルの回転数が60回/分維持できない場合などとした.解析方法:ramp負荷試験における各指標のpeak値(運動終了直前の30秒間の平均値)とV-slope法により求めた無酸素性作業閾値AT(VO2)および定常負荷試験における運動持続時間(ET)を解析に用いた.統計処理は,ETと各指標との間の関係についてピアソンの積率相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容および危険性などについて説明し,同意を得てから実施した.【結果】 ETと死腔換気率との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.654, p=0.013).有意ではなかったが,ETはAT(VO2)(r=0.562),換気当量(r=-0.429),下肢疲労感(r=-0.368),Total Hb(r=0.393)と関係する傾向が認められた.しかしその他の指標とは関連を認めなかった.【考察】 同じ最大酸素摂取量を持つ者でも,ETは異なり,ETが高い方がより持久性があると考えられる.今回の結果,ETとAT(VO2),骨格筋のTotal Hbとは正の,死腔換気率,換気当量,下肢疲労感とは負の関係が認められた.AT(VO2)との相関は,定常負荷試験の場合は,ramp負荷のWRpeakよりも負荷量が低いことから,より有酸素的なエネルギー代謝の影響を受けるためと考えられた.Total Hbは末梢において十分に血管が拡張しているかを反映していると考えられ,下肢疲労感との負の相関は最大運動時に下肢筋に余裕を残していることが考えられ,ETは下肢筋の有酸素能の影響を受けるものと考えられた.また死腔換気率,換気当量との関係は,肺内でのガス交換の影響を示しており,呼吸パターンや肺内の換気-血流比に影響を受けると考えられた.以上より,骨格筋の有酸素能を高めるトレーニングや呼吸パターンの修正,また静脈還流量を増やすような水中負荷,弾性ストッキングの使用などにより,同じ最大酸素摂取量を持つ対象者であっても運動時間を延長できる可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 定常負荷試験におけるETは運動療法の介入効果を反映しやすい指標であるとともに,運動の持久性はADL上も重要な要因である.ETの要因を明らかにすることにより,効果的に持久性を高めるためのトレーニング方法など,運動療法のアプローチの再考につながると考える.
著者
小池 朋孝 上田 康久 横山 美佐子 辺土名 隆 芝原 美由紀 川端 良治 岩松 秀樹 佐藤 優子 遠原 真一 安達 まりえ 広瀬 真純
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.369-369, 2003

はじめに<BR>呼吸理学療法(CPT)において、特に肺理学療法と呼ばれる用手的排痰手技は、痰の喀出、1回換気量の増大など、その場での効果の報告は良く見受けることができる。しかし、急性期における介入がどの程度の効果をもたらすかという報告は、特に小児急性期には見当たらない。当院では、小児呼吸器疾患重症例にCPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開している。今回、小児急性期呼吸疾患により重度呼吸不全を呈した症例に対し、第1病日から医師、看護師、理学療法士から構成される小児CPTチームに参入し、CPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開した症例を数例経験した。小児集中治療室(PICU)入室日数、入院日数、再悪化、再入院、人工呼吸器管理中の肺機能の肺コンプライアンスの指標として人工呼吸器の最高吸気圧(PIP)、酸素化の指標としてPaO<SUB>2</SUB>/Fi O<SUB>2</SUB>(P/F比)の推移を数値化し、一定の傾向が見られたので考察を交え報告する。<BR>症例1:1歳男児 クループ 肺炎 二次合併症として気胸を呈する<BR>症例2:6歳女児 ARDS<BR>症例3 4歳女児 ARDS<BR> 気管支喘息以上の3症例に対し可能な限り、早期から参入し、医師、看護師との相互の情報交換によりCPTの施行・非施行を判断し、必要な場合には適宜CPTを行うこととした。抜管後も、吸入時の呼吸介助、用手的排痰法を行い、一般病棟入院中家族指導、退院後外来フォローを行った。<BR>結果<BR>PICU入室日数、入院日数に関しては、病態の相違もあり一定の傾向は見られなかった。再度悪化し、一般病棟から、PICU管理となった症例や、人工呼吸器PIPを上げなければならない症例は認めなかった。P/Fについては悪化の傾向は見られなかった。退院後数ヶ月以内の再入院患者はいない。また、脳血管障害などの二次的合併症を生じた症例はいなかった。<BR>考察<BR>小児呼吸器疾患急性期の呼吸管理において、理学療法士が早期から介入することによる悪影響は示唆されなかった。また、医師、看護師との連帯を密にし、病態理解に勤め、適切な手技を選択することにより、肺二次合併症の予防、治療、肺のコンディションの維持につながると思われた。病態の理解により、CPTが急性期呼吸管理に有用であると示唆され、状態の換気力学的な解釈などの観点から理学療法士の介入に意義があると思われる。
著者
阿波 邦彦 堀江 淳 長江 真弥 村田 伸 林 真一郎 今泉 裕次郎 市丸 勝昭 直塚 博行 白仁田 秀一 江越 正次朗 堀川 悦夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1202-Db1202, 2012

【はじめに、目的】 COPDの骨格筋筋力低下は、全身持久力、ADL、健康関連QOLの低下、予後にも影響している。今回、外出に制限が生じ始める6分間歩行距離400mをもとに、大腿四頭筋筋力を体重で除した体重支持力指数(WBI)のカットオフ値を求めた。そして、そのカットオフ値でCOPD患者を2群に分け、身体機能、身体能力、ADL、健康関連QOLの比較をすることでWBIのカットオフ値の有用性を検討した。【方法】 対象は、研究の参加に同意が得られた男性COPD患者116名であった。平均年齢は74.4±8.7歳、BMIは20.6±3.8、%FEV<sub>1.0</sub>は50.8±23.6%であった。なお、対象の選定は、歩行に支障をきたすような骨関節疾患、脳血管障害や重篤な内科的合併症の有する者、理解力が不良な者、測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。主要測定項目はWBIとした。副次測定項目はmMRC息切れスケール、呼吸筋力検査(PImax、PEmax)、握力、片足立脚時間、5m最速歩行時間、Timed Up and Go Test(TUG)、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、6分間歩行距離(6MWD)、漸増シャトルウォーキングテスト(ISWT)、長崎大学呼吸ADL質問票(NRADL)、健康関連QOLはSt George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)とした。予後指標はupdated BODE indexとした。統計学的解析は、外出に制限が生じ始めるWBIのカットオフ値を6MWD-400m以上群と未満群に分け、ROC曲線にて分析した。また、分析されたWBIのカットオフ値でWBI高値群と低値群に分け、2群間にて副次測定項目の比較をStudents' t-testで分析した。なお、帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、佐賀大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、ヘルシンキ宣言に沿った研究とした。なお、対象には研究の主旨、方法、同意の撤回などについて文書を用いて口頭にて説明したうえで同意を得て実施した。【結果】 外出に制限が生じ始めるWBIのカットオフ値は54.7であった。なお、ROC曲線下面積は0.798、感度は0.735、1-特異度は0.348であった。WBI高値群とWBI低値群における副次測定項目の比較は、mMRC息切れスケール(1.8±1.0vs2.3±1.0、p=0.008)、PImax(85.1±35.3vs56.0±28.8cmH<sub>2</sub>0、p<0.001)、PEmax(82.4±37.5vs54.4±32.1cmH<sub>2</sub>0、p=0.001)、握力(33.5±7.2vs 25.5±7.8kg、p<0.001)、片足立脚時間(67.0±42.0vs 22.7±30.2秒、p<0.001)、5m最速歩行時間(2.9±0.9vs3.9±1.5秒、p=0.001)、TUG(6.0±1.8vs9.1±4.6秒、p<0.001)、CS-30(18.3±4.5vs13.4±5.0回、p<0.001)、6MWD(416.7±110.6vs281.0±139.4m、p<0.001)、ISWT(411.9±170.4vs247.3±149.5m、p<0.001)、NRADL(78.7±20.3vs63.9±26.7点、p=0.001)、updated BODE index(3.7±3.0vs7.4±4.8、p<0.001)に有意差が認められた。しかし、SGRQ(39.3±17.5vs45.9±18.1、p=0.06)には有意差は認められなかった。【考察】 COPD患者における外出に制限が生じ始めるWBIは中等度の予測能を認めた。WBI低値群は、WBI高値群よりも各身体機能、身体能力、ADL、予後指標において有意に低値を認めた。これは先行研究と同様の結果であった。しかし、健康関連QOLに有意差は認められなかった。その原因として、健康関連QOLには筋力などの身体機能以外にも不安や抑うつなどの精神的症状も関与しているためと考えられる。今回の研究では、外出制限を6MWDの測定値で検討しているため、想像の域を脱していないことである。そのため、今後の課題は外出制限の具体的な設定や患者背景を検討してゆく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、外出に制限を生じ始めるWBIのカットオフ値を推定する一つの指標となりうる可能性が示唆された。しかし本研究では検討課題も多く残された。そのため今後も研究を重ねていき臨床の場面にて活用できるような指標に展開したいと考える。
著者
横川 正美 菅野 圭子 柚木 颯偲 堂本 千晶 吉田 光宏 浜口 毅 柳瀬 大亮 岩佐 和夫 駒井 清暢 山田 正仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E3O2227-E3O2227, 2010

【目的】昨年の日本理学療法学術大会において、地域住民を対象に認知症予防として実施した認知機能プログラムと運動機能プログラムの効果を調べたところ、前者のみならず、後者のプログラムでも記憶機能の改善が示唆されたことを報告した。本研究では、同様のプログラムを再度実施し、プログラムに参加していない対照群との比較を行った。<BR>【方法】一昨年度および前年度に地域で実施された脳健診の受診者から、明らかな脳疾患を有する者、および臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)が1以上のものを除いた806名に研究参加を募った。参加への同意が得られた37名のうち、介入前後の評価を実施できた31名を介入法の対象者とした。対照群として、本研究の趣旨を説明し協力の同意が得られたグループデイ参加者20名のうち、介入群と同時期に評価を実施できた13名を対象者とした。グループデイは概ね65歳以上で、週1回以上自主的に運営し活動するグループであり、本研究の介入法には参加していない。介入法では、参加者を無作為に2つのプログラムのうち、次のいずれかに振り分けた。一つは認知プログラム(n=17)で認知症の前段階で低下しやすいと考えられている実行機能を重点的に高める内容であり、具体的には旅行の計画立案と実施を行った。もう一つは運動プログラム(n=14)で認知機能に効果的とされる有酸素運動を主体としており、体調確認の後、準備運動、ウォーキング(10-15分)、柔軟体操を行った。2つのプログラムはどちらも週1回約1時間、合計8回実施した。介入法参加者と対照群には介入前後に認知機能検査としてファイブ・コグを施行した。<BR>【説明と同意】参加者に本研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。本研究は所属する機関の医学倫理委員会の承認を得た。<BR>【結果】参加者の平均年齢は72.8±4.3歳、平均教育年数は10.0±2.0年であった。認知プログラム、運動プログラム、対照群の間で対象者の年齢、教育歴による差はみられなかった。ファイブ・コグの下位項目(運動、注意、記憶、視空間認知、言語流暢性、思考)の各評価得点について、2つのプログラムと対照群のうち、どれに参加したかという「プログラム」因子と、参加前か参加後かという「時間」因子による二元配置分散分析を行ったところ、交互作用が認められた項目はなかった。次に参加前、参加後の各評価得点をプログラム間で多重比較したところ、有意差が認められた項目はなかった。各プログラム内での多重比較では、認知プログラムにおいて、運動(22.4±5.6点→24.8±6.3点; p<0.05)と記憶(13.4±6.5点→17.1±6.1点; p<0.01)の得点が参加後、有意に改善した。運動プログラムにおいても同じく運動(19.4±6.5点→22.7±6.4点; p<0.01)と記憶(12.4±7.3点→15.6±5.7点; p<0.05)の得点が参加後、有意に改善した。対照群では、参加前後で有意に変化した項目はなかった。<BR>【考察】対照群では認知機能検査において有意な改善が認められた項目がなかったのに対し、認知プログラムと運動プログラムでは記憶の項目が改善した。2つのプログラムは昨年も同様の結果が得られている。プログラム間で改善した認知機能に差異がみられる傾向にあるが、どちらのプログラムも有効性が示唆されたことから予防事業で用いる場合に効果が期待できると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】運動療法を用いた認知症予防の方法を提案するためのエビデンスを蓄積する。
著者
藤原 俊輔 石井 裕之 段 秀和
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1454-C3P1454, 2009

【目的】外来初診時において,成長期野球肘の1つである肘関節離断性骨軟骨炎を呈した患者に対し,痛みを感じてから受診までの期間,初診時の病巣の進行程度,内上顆の裂離痕の存在有無を離断性骨軟骨炎の早期発見と予防を目的として調査した.<BR><BR>【対象と方法】平成19年3月より,平成20年8月までの18ヶ月間に,当院を受診し離断性骨軟骨炎と診断された24例を対象とした.全例男性で,発症時のスポーツは全例野球で,平均年齢は12.9±1.8歳であった.なお対象には,事前に本調査の趣旨を説明し理解を得た.方法は,初診時の問診により,投球時痛を発してから受診までの期間を聴取,初診時医師及び放射線技師によるレントゲン,MRI撮影により離断性骨軟骨炎の病期分類及び内上顆の裂離痕の有無,また理学療法士により肘ROM制限と腫脹の有無を確認した.なお,離断性骨軟骨炎の病期分類は,透亮期・分離期・遊離期の3期に分類し,病巣の部位により外側型と中央型に分類した.<BR><BR>【結果】投球時痛を発してから受診までの期間は,最短で1週間,最長で11ヶ月,24例の平均は2.75ヶ月であった.内上顆裂離痕は,24例中17例に存在していた.離断性骨軟骨炎の病期分類は,透亮期11例,分離期10例,遊離期3例であり,外側型16例,中央型8例であった.また,肘関節ROM制限においては,伸展制限が9例,屈曲制限が3例,うち伸展・屈曲共に制限があったのは2例であった.肘関節外側の腫脹は15例であった.<BR><BR>【考察】肘関節外側に発症する離断性骨軟骨炎は投球障害の中での重篤な障害であり,長期間の投球禁止を余儀なくされるばかりか重症例では,変形性肘関節症に進行し,日常生活にも影響をもたらす疾患である.今回調査した症例において,内上顆裂離後に離断性骨軟骨炎に至るケースが多い傾向にあった.さらに,投球時痛を発してから受診までに平均2.75ヶ月を要した原因は,個人因子よりも環境因子(チーム事情・指導者選手間の関係)が大きく関与していると考えられる.受診までの期間が遅くなることで,分離期~遊離期での症例が半数を占めROM制限や腫脹を有していた.透亮期であれば,保存療法の加療で可能となるが,分離期・遊離期では手術に至るケースが多くなる.これを避けるためには早期発見が大切であり,予防のために積極的に環境因子についてのアプローチが必要と考えられる.
著者
門田 正久 寛田 司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0108-E0108, 2005

【はじめに】今回、平成16年9月18日から9月28日までギリシャアテネで開催されましたパラリンピックアテネ大会に本部医務室トレーナーとして帯同活動行い、大会期間中を通じて広く多くの競技団体との交流を持つことができ今後の障害者スポーツをサポートする上でのよい経験を得ることができたのでこれらについて報告する。<BR>【方法】活動日程および活動時間は、平成16年9月11日から9月27日までの16日間。1日の活動時間として、午前6時から午後11時までを原則対応とした。<BR>携帯器具その他消耗品は、治療用ベッド1台・物理療法機器をアルファーメディカル社プロテクノEMS1台、OG技研超音波1台・電気式簡易ホットパック1機用意、テーピング各種、インソール用チップ、アイシング各種用具、ストレッチボード、ストレッチポロ・各種チューブ、高圧酸素オアシスその他パッド等消耗品各種を用意した。<BR>【結果】活動利用者概要としては、アテネパラリンピック選手団ならびに役員関係者72名。男性41名・女性31名うち役員2名であった。競技団体別利用数は、アーチェリー7名、陸上0名、自転車2名、馬術0名、車椅子フェンシング2名、柔道5名、パワーリフティング1名、セーリング1名、射撃6名、水泳14名、卓球6名、車椅子テニス7名、ゴールボール5名、シッティングバレー7名、車椅子バスケット男子3名、車椅子バスケット女子3名、ウイルチェアラグビー 1名、役員2名であった。利用目的としては、疲労回復、競技前コンディショニング、疼痛軽減、テーピング、アイシング、床ずれ防止パッド作成・インソール・グリップパッド作成、排痰理学療法、競技団体トレーナーへのアドバイス、その他であった。利用回数延べは、開会式までの総合計152件。最終総合計450件であった。<BR>【考察】今回、パラリンピックという大きな世界大会で日本選手団本部トレーナーとして活動をおこなった。前回のシドニー大会との単純な比較はできないが、前回大会時の利用者数40名、総利用件数145件を考えるとトレーナーとしての機能を大きくはたすことができたと考えられた。これらは、4年間での競技選手のニーズや状況がトレーナー活動の必要性が高まってきており昨今の障害者スポーツにおける競技性の高まりを表しているようにも思われる。また理学療法士として提供できる事項が競技にだけではなく、日常生活での問題の対応など直接競技には関与していないケアも実施することが多くあった。反省としては、すべての競技内容を熟知しているわけでなく、競技動作と障害状況と競技力向上とのリンクができない競技もあり、対応内容が不十分なことが期間前半にあった。今後は各競技団体での大会や練習会にも積極的に参加していくことで能力を高めていきたいと感じられた。
著者
大澤 智恵子 網本 和 佐藤 信一 安保 雅博 宮野 佐年
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.D0524-D0524, 2004

【目的】近年、高齢者においても食道癌根治術の適応とされる傾向がある。高齢者は呼吸機能の低下から術後肺合併症の発生率が高いと報告され、術前の呼吸理学療法は重要とされている。また、合併症の発生により術後在院日数は長期化するとの見解が一般的である。今回、術後肺合併症と術後在院日数に影響を与える要因を呼吸機能、術前理学療法の観点より分析、高齢群と若年群とで比較し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【方法】1998年から2003年に当院で食道癌根治術を行い術前または術後から理学療法を開始した101名を高齢群(65歳以上)と若年群(64歳未満)とに分類した。さらに呼吸機能の影響を明確にするため、双方より術後肺合併症への影響が強いとの報告が多い要因である腫瘍進行度(stage)、術前アルブミン、術式(開胸・開腹・内視鏡の有無・再建経路)が同じであるペアを29組作成、それぞれ高齢群29名(男性25名、女性4名、平均年齢70.6±5.1歳)と、若年群29名(男性26名、女性3名、平均年齢56.9±4.7歳)を対象とした。高齢群と若年群において(1)%VC(2)一秒率(3)PF(4)V50/V25(5)術前理学療法を肺合併症へ影響を与える要因として、同様に(1)肺合併症(2)既往(3)術前理学療法の実施を術後在院日数へ影響を与える要因として選択した。これらよりSPSSを使用してロジスティック回帰分析を行い、各々に有意に影響を与える要因の抽出を、危険率5%の有意水準にて行った。<BR>【結果】術後肺合併症に有意に影響を与える要因として、若年群では%VC(odds比0.881)が抽出されたが、高齢群では抽出されなかった。また、術後在院日数においては若年群では術前理学療法(odds比18.597)が抽出されたが高齢群では有意な要因は抽出されなかった。<BR>【考察】若年群において肺合併症へ影響を与える要因として%VCが抽出された。これは手術時の全身麻酔により残気量が減少して無気肺が発生するが、肺活量の予備能力が大きい場合には、それを代償する能力が強く、肺合併症予防に有効であるためと考えられる。また、同じく若年群において術後在院日数へ影響を与える要因として術前理学療法が抽出されたが、術前理学療法でのオリエンテーションや退院への目的意識の形成、肺合併症からの回復に術前理学療法が有用であることが示唆された。一方、高齢群において肺合併症や術後在院日数に影響を与える要因が抽出されなかった理由として、高齢者は加齢に伴う各臓器の機能・予備能力の低下や暦年齢と身体年齢の乖離、個人差の顕性化よりわずかな負荷でも合併症のトリガーとなる可能性が高いことが考えられる。従って、高齢者は肺合併症や術後在院日数への影響要因が多様で偏りがなく、若年者と比較して術後経過の予測が困難であることが示唆された。
著者
松本 康嗣 川崎 秀和 鵜飼 啓史 長壁 円 内藤 浩一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2222-C4P2222, 2010

【目的】我々は先行研究において内反捻挫後の背屈動作で足趾伸展を伴う足関節外反と関節軸のずれを報告した。実際に臨床で内反捻挫後の症例をみると足関節機能の低下に加えスポーツ動作時にマルアライメントを呈する例が多い。そこで今回の目的は捻挫による足関節・足趾への影響と動作時アライメントとの関連を検討し、リハビリテーションの一助とすることとした。<BR>【方法】内反捻挫後の症例(うち男性3名、女性7名、平均年齢19.1歳、身長164.6cm、体重59.7kg)を対象としビデオカメラを用いフォワードランジ動作を前額面・矢状面で撮影した。得られた映像をアニマ製二次元動作解析装置に取り込み、動作時アライメントとして足趾伸展角度、足関節背屈角度、舟状骨高、膝関節外反角度を計測した。同時に足関節機能として、背屈・底屈・内反・外反のROM・筋力を測定した。背屈、底屈の筋力に関して、背屈では自然背屈と足趾屈曲位での背屈筋力を、底屈では母趾球と小趾球での底屈をそれぞれ測定した。筋力の測定にはHOGGAN製MICROFET2を用いた。検討項目は足関節機能・動作時アライメントの健側・捻挫側の差と、足関節機能・動作時アライメントの相関関係とした。それに加え、先行研究の結果より内反捻挫後の足趾伸展に着目し、接地時に足趾伸展が見られる例を足趾伸展タイプ、その他の例をノーマルタイプとし、足関節機能・動作時アライメントでそれぞれ2群間の差を検討した。<BR>【説明と同意】被検者にはヘルシンキ宣言に基づき本研究の目的、方法、危険性について十分に説明し同意を得ておこなった。<BR>【結果】足関節機能に関して、ROMでは捻挫側で背屈、底屈、内反、外反すべてにおいて低下が見られた。筋力では足趾屈曲位での背屈、小趾球での底屈、内反、外反で有意に低下が見られた。動作時アライメントでは足趾伸展角度、足関節背屈角度、舟状骨高において有意差は見られなかった。膝関節外反角度に関しては捻挫側で有意に増大が見られた。足関節機能と動作時アライメントの相関では足趾伸展角度と内反ROMとの間に負の相関が見られた(r=-0.79、p<0.01)。舟状骨高と内反筋力・外反筋力(r=0.68・r=0.835、p<0.05)それぞれに正の相関が見られた。足趾伸展タイプ・ノーマルタイプの2群間の比較では足趾伸展タイプで母趾球での底屈筋力と膝関節外反角度が有意に高値を示した。<BR>【考察】足関節捻挫後の影響として足関節外反筋力の低下や腓骨筋反応時間の遅延などが報告されており、今回の結果からも外反筋力の低下が見られた。今回の結果ではそれに加え、内反筋力の低下が見られることや、足趾屈曲位での背屈筋力・小趾球での底屈筋力に低下が見られることから、内反筋の活動低下が著明であると考えられる。<BR>内反筋力と舟状骨高では正の相関が見られており内反筋力が低下することで内側縦アーチの低下に繋がると考えられる。内側縦アーチの低下に伴い、足関節の回内が増大し、捻挫側の膝関節外反の増大に繋がったと考える。足趾伸展タイプではノーマルタイプと比べ、母趾球での底屈筋力で高値を示しており、底屈動作で外反の要素が大きいと考えられる。足趾伸筋は足関節外反作用があることから足趾伸筋の過活動によって足関節外反を伴う底屈が起きていると考える。足趾伸展の過活動が起こる要因としては足関節内反角度の減少が考えられる。今回の結果より、足趾伸展角度と足関節内反ROMに負の相関がみられたことから、内反捻挫の症例では外側組織が炎症・瘢痕化し内反ROMが減少することで、内反時の疼痛が起こり、疼痛回避のため外反位を保持するため、外反の作用を持つ足趾伸筋にスパズムが起こり過活動に繋がると考える。足趾伸筋の過活動により、接地時の背屈筋での遠心性収縮時に前脛骨筋の活動が減少し内側縦アーチの保持が困難となる。アーチの低下により足関節回内が増大し足趾伸展タイプでは動作時の膝関節外反の増大が著明に見られたと考える。以上のことから、足関節内反捻挫後の治療として従来のアプローチに加え、内反筋である前脛骨筋・後脛骨筋へのアプローチが重要だと考える。特に足趾伸展を伴う例においては、足趾伸筋の過活動に注意し足趾や足部アーチの機能低下に対するアプローチを行い、動作時アライメントの改善を行うことが重要であるといえる。<BR>【理学療法研究としての意義】足関節内反捻挫後の理学療法評価、治療を行う際、足関節機能に対するアプローチだけでなく、動作時アライメントや足趾の機能への選択肢が拡大する可能性が示唆された。<BR>
著者
寒川 美奈 山中 正紀 片寄 正樹 大西 祥平
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C1024-C1024, 2004

【はじめに】<BR> スキーは,日本で最も楽しまれているスポーツのうちの1つである.そのなかでフリースタイルスキー(モーグル)は競技としては新しく,コブ斜面を一気に滑走し,2回のエアー(ジャンプ)を組み合わせて行うという種目であり,スキー競技の中でも危険度が高いスポーツであるといえる.<BR> 今回,2003年10月14日から11月1日までスイスにて行われた全日本フリースタイルスキーモーグルチームの合宿に理学療法士として参加する機会を得た.その際実施したメディカルチェックの結果,7名中7名にてOber test陽性,うち3名に膝蓋腱炎(内側)の既往があった.1名は,チェック実施時にも同部の疼痛を有していた.<BR> 我々はフリースタイルモーグルスキー選手にみられた膝蓋腱炎の発生メカニズムについて考察し,若干の知見を得られたので報告する.<BR>【症例】<BR> 27歳女性.モーグルスキー歴9年.4年程前よりスキー練習中膝蓋腱内側に疼痛有し,超音波及び電気治療などを受けていたが,増大時にはステロイド注射にてコントロールしていた.2002年12月右MCL損傷後,膝蓋腱の疼痛増大していた.2003年10月初期評価実施.両Frog eye.右Patella下位.筋力右膝関節伸展筋,両股関節外転筋,内転筋低下.Ober test陽性.大腿四頭筋柔軟性に左右差あり.片脚スクワットでknee in傾向.膝蓋骨可動性低下.圧痛は膝蓋骨下内側部にあり,運動開始時,あるいは疲労を感じてくると疼痛出現.自発痛はなかった.これらの評価に基づき,超音波,腸脛靭帯や大腿四頭筋に対するストレッチング,膝蓋骨に対するモビライゼーション,3 point Straight Leg Raising,片脚スクワット,片脚バランスなどを指導した.また腱炎に有効とされる遠心性収縮を用いての筋力強化も行った.練習後には,必ずアイシングを行わせた.<BR>【結果】<BR> 合宿中であったにもかかわらず,疼痛をコントロールすることができた.疼痛は膝蓋骨下内側部にのみ限局して存在したが,他部位に広がることはなかった.膝蓋骨の可動性も増大した. <BR>【考察】<BR> 疼痛をコントロールできた理由として,アイシング実施による炎症の最小限化,膝蓋骨の可動性が増大,遠心性収縮を利用した筋力強化などを用いたためと考えられた.<BR> スキー滑走姿勢が常に体幹前傾,股関節屈曲・膝関節屈曲位であるため,腸脛靭帯は短縮しやすい肢位であるといえる.その際下肢は外旋位をとり,膝蓋骨は外側変位となり,膝蓋腱内側部にストレスが加わると考えられた.したがって,今後は本症例だけではなく同様の受傷を回避するために,他選手にも腸脛靭帯のストレッチングを意識的に実施させるべきであると考えられた.
著者
鈴木 誠 高橋 一揮 梁川 和也 佐藤 洋一郎 吉田 忠義 小野部 純 村上 賢一 武田 涼子 藤澤 宏幸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P2406-C3P2406, 2009

【目的】<BR>垂直跳び(Vertical Jump:以下、VJ)は瞬発力の測定としてスポーツ現場では簡便に実施できる測定であり、跳躍高はプロサッカー選手の脚伸展筋力と相関が高いことがWisl&oslash;ffら(2006)の報告でもなされている.しかし、これは足関節の機能的・構造的安定性が補償されてはじめて行える動作であり、同部位に障害を負うと十分なパフォーマンスを発揮することが出来ないと予想される.そこで本研究はプロサッカー選手の足関節周囲筋の力時間曲線から得られた時間的指標とVJの跳躍高との関係性を足関節障害の有無によって比較検討することである.これは、足関節に障害を負ったスポーツ選手の競技復帰に向けた理学療法介入の具体的戦略として活用できると考えられる.<BR>【方法】<BR>対象は某プロサッカーチームに所属する選手で、重症度に関わらず足関節に障害を抱えている選手(以下、障害群)4名(22.5±3.3歳)、及び特に障害を抱えていない選手(以下、非障害群)13名(23.23±2.83歳)の計17名について調査を行った.測定の前に十分な説明を行った上で実験参加の同意を得た.測定肢は非障害群の場合、右下肢とした.測定項目は足関節背屈筋の反応時間(RT)・最大トルク到達時間(Max_tq_time)・最大変化率到達時間(MaxVtime)とした.また、VJは上肢を胸部前方で組み、反動を使わず股・膝関節屈曲90°を開始肢位として測定を行った.統計学的検定として、平均値の差の検定には2標本の差の検定を行った.また、VJの跳躍高と足関節筋力指標との関係を調べるためピアソンの積率相関係数(r)を求めた.有意水準は5%未満とした. <BR>【結果】<BR>VJの跳躍高は非障害群:47.1±3.5cm,障害群:46.5±2.9cmであり、有意差は認められなかった.足関節周囲筋の時間的指標は、RT(非障害群:0.14±0.03秒, 障害群:0.14±0.02秒)、Max_tq_time(非障害群:0.70±0.20秒, 障害群:0.49±0.08秒)、MaxVtime(非障害群:0.28±0.05秒, 障害群:0.25±0.03秒)であり、Max_tq_timeにのみ有意差を認めた(p<0.05).また、VJの跳躍高と足関節周囲筋の時間的指標との相関係数は0.5~0.8であり、有意ではないが関係性が示唆された.<BR>【考察】<BR>サッカー選手にとってジャンプ動作は相手選手との競り合いの中でもしばしば見受けられる動作であり、より高い跳躍高が求められる.今回の結果より、足関節周囲筋の最大張力だけではなく、それを短時間で発揮できる能力が足部の安定性を補償し、効率の良い脚伸展筋力の伝達に利用できると思われる.よって、早期より足関節周囲筋の筋力向上に加え、反応性を意識したような理学療法のアプローチを考慮し、下肢全体の協調性を高めていくような戦略をとる必要があると考えられる.
著者
木下 信博 日高 滋紀 塚本 裕二 山崎 伸一 平川 和生 松永 勝也 小野 直洋 志堂寺 和則
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0873-C0873, 2007

【目的】高齢化の進行に伴って、変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患であり、病状が進むと機能的障害を残し日常生活に支障をきたすことが多く、今後高齢者の増加に伴い大きな社会問題になってくる可能性が大きい。膝OAについて、新潟大学大森教授らは、正常な膝伸展時に起こる下腿の外旋:screw home 運動(以下SHMと略す)が膝OAのステージが高くなるに従って出現が低値となっており、ステージ4に至っては、逆SHMが出現していると報告している。このSHMの異常が膝関節の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいと思われる。そこで我々は、九州産業大学大学院の松永教授らとの研究で、健常者と膝OAで歩行時のSHM機能の違いを検討した、更に患者の1日の歩行数の変化もここに報告する。<BR>【方法】大腿と下腿の回旋角度を測定するための装置として、トランスミッタより磁界を発生させ、レシーバはポヒマス社製を使用した。実験は3.5km/hの速度でトレッドミルの上を2分間歩行した、最初の1分間は練習歩行期間とし、残り1分間の内45歩分のデータを解析対象とし、レシーバの位置は大腿部では大腿骨外顆で、下腿部では腓骨小頭とした。そこで本研究では、大腿に対する下腿の回旋角度の傾向を測定することとし、SHM靴(大腿に対する下腿の回旋を促す機能付き靴)の有効性を検証した。<BR>【検証靴の概容】SHM機能が付いていない通常の靴と、立脚期にSHMを発生させるため、靴底に外旋方向の回転トルクを発生させるスクリュー状の弾性体が装着されている靴で比較をおこなった。<BR>【対象】対象者は、膝に障害がない健常者2名と当院に受診中の軽度膝OA患者2名とした。1日歩数の対象者は軽度膝OA患者24名で、SHMなし、1mm、4mmの靴で比較した。<BR>【結果】<BR>結果その1:グラフは縦軸に大腿に対する下腿の回旋を示し、横軸は踵接地からの経過時間を表す。更に、黒の実線が通常の靴で、その他の破線がSHM靴である。これによると健常者における大腿・下腿の回旋運動では、踵接地からスムーズな外旋運動がみられた。<BR>結果その2:軽度膝OA患者2名では踵接地より内旋傾向が見られ、その後に外旋運動が確認された。<BR>結果その3:一日歩数の変化を見ると、SHM1mm群では変化がなく、SHMなし群で若干の歩数の増加が見られたが、SHM4mm群では、3ヶ月目、6ヶ月目と経時的に増加が見られた。<BR>【考察】オープン カイネティックでの下腿の回旋運動は周知の事実だが、歩行時のクローズド カイネティックでの検証を試みた、結果より歩行中で下腿部に外旋の力を伝えることで、膝OA患者の立脚相前期での過度な内旋を抑制する結果となった。我々はこのことによってSHM靴が膝OAに対する効果を発揮し、QOLを改善し歩行距離を伸ばしていると考えられ、このことは、引いては膝OA患者さんが歩行を続けることによって、健康増進につながると思われる。