著者
小川 彰 伊藤 陽子 森原 寛子 金棒 優美 黒川 賢三 國廣 和恵 橋本 展幸 小泉 幸毅 宮岡 秀子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0981-E0981, 2004

【目的】回復期病棟に入院する患者は発症から間もない方が多い。そのため身体機能面の問題に加え、心理的問題も抱えていると推測される。そこで今回、回復期病棟における入院患者の心理状況を把握する目的で調査・分析した。<BR>【対象】H15年11月19日時点の当院回復期病棟入院患者40名(当該病棟料非算定者、失語症により有効回答不能、HDS-R20点以下、アンケート実施による心理面への影響が予測される者は除外)を対象者とした。40名(男21名、女19名)の平均年齢は64.9歳、主疾患は脳血管疾患29名、整形疾患9名、その他2名であり、発症から調査日までの期間は平均97.2日、Barthel Index(以下B.I)は平均81.1点、日常生活自立度はJランク10名、A19名、B11名であった。<BR>【方法】1.精神心理面を把握する指標として、意欲低下の程度はSDS(自己評価式抑うつ尺度)、生活の質はQUIK(自己記入式QOL質問表)でアンケート調査した。SDSは20の質問(満点80点)からなり、点数が高い程うつ状態は重い。QUIKは50項目(満点50点)からなり、点数が高い程生活の質が低く、その程度は「きわめて良好」から「きわめて不良」までの6段階に分類され、更に身体関係、情緒適応、対人関係、生活目標の4尺度に分類されている。なお、身体関係尺度のみ20点満点のため10点満点に換算した。2.SDSを基にうつの有無で年齢、発症からの期間、疾患、麻痺別、B.I、日常生活自立度等からなる基本情報とQUIKを比較、分析した。3.うつの程度を正常、軽度うつ、中程度うつの3段階で比較、分析した。【結果】1.SDS平均42.9点、正常13名(32.5%)、軽度うつ16名(40%)、中程度うつ11名(27.5%)であった。QUIK平均17.1点、6段階のうちきわめて良好0名、良好2名(5%)、普通8名(20%)、いくぶん不良11名(27.5%)、不良16名(40%)、きわめて不良3名(7.5%)であった。項目別の平均は身体関係尺度3.4点、情緒適応尺度3.5点、対人関係尺度2.7点、生活目標尺度4.1点であった。2.SDSを基にうつの有無で比較すると平均年齢は無68.8歳・有63歳、発症からの期間は無89.7日・有100.8日、QUIKは無10.4点・有20.3点であった。片麻痺ではうつ無9名中右片麻痺4名(44.4%)、うつ有22名中右片麻痺14名(63.6%)であった。3.うつの程度で比較するとB.Iは正常85.4点、軽度うつ84.4点、中程度うつ71.4点。QUIKは正常10.4点、軽度うつ16.8点、中程度うつ25.5点であった。<BR>【考察】40名の7割弱がうつ状態にあり、また7割強が生活の質を不良と感じていることが確認された。QUIKの4尺度では大差無く、多種多様の悩みを抱えていることが分かった。うつ状態は年齢が比較的若く、発症から3ヶ月以上、右片麻痺の者、また能力が低い者ほどうつの程度が重く、生活の質も低い傾向にあった。またうつ状態でない者でも、生活の質は低い傾向にあった。以上より回復期病棟では、身体機能面への治療のみならず、誰もが心理的不安を抱えているという視点での関わりが必要である。
著者
永野 新太 加藤 太一 井部 賢吾 川越 潤一 安井 清彦 矢野 幸彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1409-Bb1409, 2012

【はじめに、目的】 自己身体部位失認についてFrederiks(1985)は「身体図式」の異常に起因すると報告した.しかし,身体部位失認という多義的で曖昧な概念に対しては,呼称の障害であるのか,空間定位の障害であるのか,あるいは他者身体各部位の呼称・空間定位障害も含めた障害であるのかについて依然多くの論議がなされている.鶴谷・大東(2007)は,失語症を伴わない自己身体失認症例に対し詳細な評価を行った結果,自己中心座標系を利用してターゲットとなる部位の位置をオンラインで処理する過程の問題として理解可能であるとした.今回,失語症を伴った左頭頂葉・側頭葉出血の症例に対し,身体部位失認様の症状を認めたため評価を行った.その方法と結果を報告する.【方法】 50歳代左利き.画像所見ではCT上で左頭頂葉・側頭葉に出血を認めた.JCS1-1,Brunnstrom Stage右上肢2・手指2・下肢3レベルで座位保持可能,立位保持は非麻痺側優位であり,麻痺側踵部は床面から浮いた状態であった.触覚については「触っているのは何となくわかる」とのことであったが,その他の感覚については右上下肢とも重度鈍麻,感覚全般において中枢部より遠位部に強く障害されていた.高次脳機能障害としては,流暢性失語を認め,聴理解は良好だがジャルゴン様の発話を認めた.自画像描写課題では身体像の欠落を認め,保続や失算,失書,左右失認,手指失認症状を呈した.トイレ動作では非麻痺側上肢にて手すりを把持し立位保持できるものの,麻痺側足底の接地位置不良,下衣の上げ下げに介助を要した.評価として,身体部位14か所(頭・首・胸・腹・左右の肩・左右の肘・左右の腰・左右の膝・左右の手)を刺激としたPointing課題(鶴谷・大東、2007)を行った.Pointingについては1)言語提示,開眼・自己身体条件2)言語提示,閉眼・自己身体条件3)言語提示,開眼・他者身体条件4)視覚提示,自己身体条件5)視覚提示,他者身体条件6)触覚提示,閉眼条件を設定条件とし,正答率と誤反応(近接エラー,概念エラー)について検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき患者,家族に症例報告より評価の妥当性について第47回全国理学療法学術大会にて報告することを説明し,同意を得た.【結果】 部位別では,頭・首・左肩・胸・左膝で正答率100%,右肩・腹・右腰・右膝で正答率83%,左腰で正答率66%,右手で正答率50%,右肘・左肘・左手で正答率33%であった.設定別では,1)正答率64%,誤反応概念エラー2)正答率57%,誤反応近接エラー3)正答率87%,その他エラー4)正答率79%,誤反応近接エラー5)正答率71%,誤反応近接エラー6)正答率93%,誤反応近接エラーであった.また,左右の身体部位における正答率は両側共に66.4%であり左右差を認めなかった.モダリティー別の正答率は,言語69%視覚75%触覚93%であった.【考察】 両側性の身体失認について大東(1983)は,身体中央部よりも外側部においてより強いと報告している.臨床所見に加え,左右の身体部位における正答率に差を認めなかったこと,部位別の正答率が身体遠位で優位に低下していたことから本症例は両側性の身体失認を呈していると判断した.部位の位置・範囲等・身体一般の構造的知識である視空間性表象(視覚提示条件),部位名・機能的定義等の命題的知識である意味性表象(言語提示条件)が低下していたのに対し,現在の姿勢・外空間と身体の位置関係のオンライン処理である動的身体表象(閉眼での触覚提示条件)は比較的良好であった.失語症の影響のみで意味性表象が低下していると考えるならば,部位別の正答率は一様に低下するはずである.同様に,誤反応は概念エラーではなく近接エラーが多く観察されたことから,本症例においては失語症の影響のみによる身体部位失認の可能性は低いことが示唆されたが,鶴谷・大東(2007)が報告した自己身体に限定された空間定位の病態とは一致しなかった.したがって,自己身体部位失認の病態については,自己身体における空間定位の障害に加えて,視空間性表象・意味性表象での処理過程と動的身体表象での処理過程の双方をつなぐシステムに何らかの障害が発生していることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 自己身体部位失認については症候論的理解にとどまることが多く,その病態についての定義は依然確立されていない.今回の評価結果を踏まえ,今後は,簡素な評価法の確立・アプローチ方法の検討を行っていきたい.
著者
Kazunori Sato Eku Hirai Tomomi Sukigara Tsukasa Yoshida Noriaki Aita Eriko Kitahara Yoshihide Hokari Toshiyuki Fujiwara
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
pp.E-141_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【Background/Purpose】 The deep brain stimulation of subthalamic nucleus (STN-DBS) is a surgical treatment for Parkinson's disease (PD) to reduce off-state. There have been scarce reports that indicate the effectiveness of postoperative rehabilitation on the axial symptoms. The purpose of this study is to examine the effectiveness of postoperative rehabilitation in PD patients.【Methods or Cases】 The data of 31 postoperative PD patients who received 2 week physical therapy from May 2017 to May 2018 were extracted from a prospectively maintained database, and were analyzed retrospectively. Outcome measures were the Mini-Balance Evaluation Systems Test (Mini-BESTest), Trunk impairment scale (TIS), Leg extension torque, 10 times toe tapping (10TTT) and Treadmill gait analysis. The patients were evaluated at pre-operation, post-operation and discharge period. One-way repeated measures analysis of variance (ANOVA) and post-hoc Paired t-tests with Bonferroni adjustment for multiple comparison were used to analyze the data (P < 0.05).【Results】 The ANOVA showed that all clinical data had the significant differences among three periods. The post hoc test revealed that there were significant differences between pre-operation and discharge periods in the Mini-BESTest (P < 0.0001), TIS (P < 0.0001), Step length on the Treadmill (P=0.004) and 10TTT (P=0.009), but the lower limb extension torque (P=0.11). There was only significantly different between pre-operation and post-operation in the Step length on the Treadmill (P=0.032). 【Discussion/Conclusion】 The results showed that postoperative rehabilitation has a positive effect on the balance ability, trunk function, gait function and limb akinesia of the PD patients. These facts might indicate that STN-DBS and postoperative rehabilitation provide different effects on the PD patients.【Ethical consideration】This study was conducted with the declaration of Helsinki. This study was approved by the institutional ethics review board (JHS 18-007).
著者
Gaston Ariel Nishiwaki Yukio Urabe Kosuke Tanaka
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
Journal of the Japanese Physical Therapy Association (ISSN:13441272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.21-26, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6 9

The purpose of this study was to come across an exercise that increases the Hamstring contraction levels so that it may protect the anterior cruciate ligament (ACL). Previous studies have postulated that changing the projection of the center of gravity behind the feet will decrease the translation of the tibia, therefore protect the ACL. Muscle activity of the quadriceps, hamstring and soleus muscles in healthy subjects was measured with an EMG during three different squat tasks with differences of support of body weight and the center of gravity. The subjects were nine healthy female recreational athletes with no history of any pathological knee condition or musculoskeletal system disorder. There was no significant difference in the activities of the four muscles (Vastus Medialis; Hamstring: Semitendinosus and Biceps Femoris; and Soleus); and there was a similar pattern in the activity between those muscles in the exercises. In addition, VM values were considerably higher than the Hamstring and soleus activity levels. There was no significant difference between one squat from another and among the phases (0-30°, 30-60° or 60-90°) of knee flexion. These results suggest that even when changing the projection of the center of gravity, the activity of the quadriceps is high compared to the hamstring and soleus muscles.
著者
山下 久実 細井 匠 武田 秀和 牧野 英一郎 玉木 裕子 石山 大介
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.B0904-B0904, 2005

【目的】 わが国の精神科医療機関では,数ヵ月の入院を繰り返す短期入院者と,10年を超える長期入院者との二極化が進んでおり,高齢化に伴う様々な問題が指摘されている.現在,精神病院に勤める理学療法士(以下,PT)は,PT総数の0.5%以下と非常に少ない.そこで,わが国の精神科医療機関における運動プログラム(以下,運動)の実態把握を目的にアンケートを行った.この結果,他施設の詳細な内容を教えてほしいとの要望が多く寄せられ,再調査を行った.今回,再調査の結果と精神科における理学療法士介入について報告する.<BR>【方法】先行調査で回答のあった228施設の中から,30施設に再度依頼し,運動の詳細な実施状況(対象,プログラム内容,工夫点,問題点他)を回答していただいた.対象者は,A:高齢者グループ,B:活動レベルの異なるグループ,C:積極的に実施できるグループ,D:活動性や意欲の低下しているグループの4つに分けた. <BR>【結果及び考察】今回のアンケート回収率は56%であった.<BR>回答者はほぼ作業療法士(以下,OT)で,PT1施設,レク指導員1施設であった.運動の対象は,B:活動レベルの異なるグループが31%と最も多く,次いでC27%,A18%,D9%となっており時間や曜日を決めて実施している.運動頻度は週に1回が57%と最も多く,週3~5日の実施は18%と少ない.1グループの参加数は10~40名と多い.内容をグループ別に見ると,Aはレクリエーションや散歩,Bは勝負性と活動性兼ねた球技,Cはソフトボールやテニス等のより活動性の高い球技と,自転車エルゴメ-タやトレッドミル等を使用,Dは風船バレー,ストレッチ,リズム体操,自転車エルゴメータ等その場から動かずに出来る活動を中心に実施している.<BR>運動を実施するうえで,対象者の活動度や症状,年齢,性別を考慮してルールを変更するなど,個別性が重要視されてきている.半面,個別対応の難しさに対する回答も多く,高齢化に伴う安全性や内容(運動種目)の問題が指摘された.<BR>【PTの介入について】精神科OTの基準では,2時間25人以内をOTRと助手の2名で算定可能であることから,集団活動が中心に行われる.例えば,対人関係や社会性へのアプローチを考えると,個別対応し難いことが分かる.この点,理学療法は個別,集団とも短時間で算定できること,運動はPTの主たる療法でありプログラムや目標設定の選択に幅がある等の介入のし易さが挙げられる.また,精神面に触れずに身体面へのアプローチが可能であることや,閉鎖的な入院生活による廃用性症候群の予防にも効果があることが分かっている. PTが精神科に介入することは,精神症状や抗精神薬の作用副作用等について理解を深め,精神疾患患者の身体特性を明らかにし,精神科の運動プログラムを治療活動として,方法論や評価法を確立することにつながると考える.
著者
深木 良祐 髙田 雄一 奥村 宣久 松岡 審爾 内山 英一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102091-48102091, 2013

【はじめに,目的】 ヒトの立位バランス能力は生活を営む上で重要な能力の一つである.転倒の要因には筋力や協調性などの運動要因,深部覚や視覚・聴覚などの感覚要因,注意や意識や学習などの高次脳機能要因,床や照明や障害物などの外的環境要因があるが,立位バランスにはこれらが大きく影響していると考えられる.外的環境要因への介入に,インソール療法があげられるが,近年,立方骨サポート理論を基に作成されたBMZ社製インソール(以下BMZ)が注目されている.しかし,既存のインソールとBMZについて重心動揺を比較している研究はない.よって本研究の目的では,平地及び片斜面上でのインソールなし時,既存のインソール(インパクトトレーディング社製インソール 以下SUPER feet),BMZについて重心動揺を計測し,効果を明らかにすることとした.【方法】 対象者は足部形状に問題のない(以下通常足)学生20名(男性10名,女性10名),足部扁平足(以下扁平足)の学生20名(男性10名,女性10名)の計40名(身長164.4±8.2cm,体重56.8±7.9kg,靴のサイズ25.2±1.1cm)とし,扁平足の分類にはbony arch index(以下BAI)を用いた.計測には多目的重心動揺計測システムzebris(インターリハ株式会社製)を平地と右片斜面(15度の傾斜台)で計測した.紐なし運動靴でインソールなし,SUPER feet,BMZの総軌跡長と外周面積を計測し3条件で比較した.計測肢位は足間を10cm広げた立位とし,目線上に設置したマークを注視させた.計測は平地,片斜面の順とし,インソールの順はランダムとした.計測時間はそれぞれ30秒とし,条件変更の際1分間の休息を与えた.計測回数は各3回とし,平均値を解析に用いた.各条件での3回の測定値の平均を代表値とし,統計ソフトIBM SPSS statistics Version 19による,2要因に対応があり,1要因に対応のない3元配置分散分析を行い,各統計処理の有意水準は5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】 全対象者に対して,事前に書面および口頭で本研究の方法と目的を説明し,研究協力の同意を得た上で実施した.【結果】 総軌跡長では,平地時,通常足でインソールなしは381.0±73.5mm,SUPER feetは365.8±76.2mm,BMZは369.1±73.5mmであり,扁平足でインソールなしは449.2±60.1mm,SUPER feetは412.2±57.9mm,BMZは417.6±73.5mmであった.片斜面時,通常足でインソールなしは1038.2±231.0mm,SUPER feetは1090.0±345.0mm,BMZは1001.4±240.3mmであり,扁平足でインソールなしは1150.9±308.4mm,SUPER feetは1168.5±434.1mm,BMZは1069.8±287.0mmであった.平地と片斜面で有意差が認められたが,インソールと足部環境の間に交互作用が発生した.平地では普通足,扁平足ともにインソールなしと比較し,SUPER feet,BMZ挿入後に有意に減少した(P<0.05).また,片斜面ではインソールなし,SUPER feetと比較し,BMZで有意に減少した(P<0.05).外周面積では,平地時,通常足でインソールなしは72.7±31.0mm²,SUPER feetは71.5±38.6mm²,BMZは82.4±51.1mm²であり,扁平足でインソールなしは103.3±56.5mm²,SUPER feetは91.1±40.0mm²,BMZは99.8±52.8mm²であった.片斜面時,通常足でインソールなしは108.6±70.4mm²,SUPER feetは118.6±109.1mm²,BMZは107.0±76.1mm²であり,扁平足でインソールなしは139.1±70.2mm²,SUPER feetは131.2±88.6mm²,BMZは133.0±71.5mm²であった.平地,片斜面ともにインソール挿入による有意差は認められなかった.【考察】 総軌跡長において,先行研究より内側縦アーチへの適度な圧が平地での重心動揺を小さくするという報告がある.内側縦アーチをサポートするSUPER feetではこれにより総軌跡長が有意に減少したと考える.しかしBMZは3つの足部アーチを1つの連動した足ドームとして捉え,これを支えている立方骨を支持する.よってSUPER feetの挿入による平地での重心動揺が安定した機序とは異なる影響である.片斜面ではインソールなし,SUPER feetと比較し,BMZで有意に減少した.SUPER feetでは片斜面に対して下方の足は足部回外がさらに増加するため,不安定になるのに対し、BMZではSUPER feetと比較し足部のアライメントをより中間位に保持できたものと考えられる.今後インソール挿入後のアライメントの変化についても検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 本研究より,BMZには不整地における重心動揺距離のコントロールを容易にする効果が示唆された.
著者
山本 進
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0321-E0321, 2008

【目的】<BR> 鯖江市において、市民に対する健康増進、メタボリックシンドローム予防・改善のための健康体操を考案し、普及ならびに実践活動を行っている。今回、理学療法士の視点からの運動内容の選択、メディア媒体を活用した普及活動の効果などにおいて、若干の知見が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR> 今回、家庭における運動習慣の継続に主眼を置き、短時間で、効率よく、意味のある運動を、楽しくできる、簡単な健康体操「メタボリック55」を考案し、普及・実践を図った。住民アンケートをもとに、体操は5種類とし、それぞれを1分間ずつ行い、合計5分で終了することにした。内容は、1良い姿勢を作るための背筋強化 2膝関節周囲筋のコーディネーションを目的としたクウォータースクワット 3心肺機能の向上を目的とした腕振り運動 4下肢の筋力強化を目的としたレッグレンジ(アイーンのポーズ) 5大腿四頭筋、腸腰筋の強化による解糖能力向上を目的としたラルゲットゲイトを用いた。<BR> 普及方法として、講座・イベント等での直接指導、ペーパー資料の配布、鯖江市ホームページでの動画配信による紹介等を積極的に行なった。<BR>【結果】<BR> 鯖江市ホームページによる動画配信には、配信開始2ヶ月で約2万件のアクセスがあり、市内外、県外からの問合せが多く寄せられた。各種ブログやホームぺージでの紹介や新聞7社、テレビ3社、ラジオ2社からの取材を受け、町内出前講座の依頼も前年比の3倍となり、市民の関心をおおいに高める結果となった。運動後の爽快感と心地よい疲労感が好評となり、「これなら続けられる」と、家庭や職場で継続した実践を得ることができた。加えて、体重や血糖値・コレステロール値の改善、関節痛緩和などの効果も多く寄せられた。<BR> 高齢者などインターネット環境が整っていない状況にも対応し、DVD等のメディア媒体を作成し配布した。また小学校等での取組みもあり、幅広い年齢層に浸透した。<BR>【考察・まとめ】<BR> 運動習慣づくりには、最初の「きっかけ」と継続への「仕掛け」、実践による「効果」が必要であると考える。そのためにも、理学療法士としての視点からの効果の出る環境設定、説明力、表現力、企画力等が求められていると考える。今後も情報媒体を選択しながら、わかりやすく、意味のある、楽しい健康づくりを推進していきたい。<BR> 鯖江市ホームページ http://www.city.sabae.fukui.jp/ (ちかもんくんと一緒に健康体操)
著者
田中 康雄 山本 智章 遠藤 剛 岡邨 直人 関根 裕之 西澤 岳之 大野 健太
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1155-Cb1155, 2012

【はじめに】 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)は重症化しやすく,野球選手生命を奪う恐れがある.OCDは早期発見・治療にて完治されることが報告されている.新潟県ではOCDの早期発見を目的に平成19年より野球肘検診を実施している.また成長期の投げすぎは投球肘障害の要因の一つとして重要である.平成20年から学童軟式野球新人戦での投球数報告を義務付け,現在1投手80球の努力目標を掲げている.今回,平成23年の野球肘検診結果,指導者に対するアンケート調査,平成23年の学童軟式野球新人戦の投球数調査をまとめ,今後の障害予防活動の一助とする事を目的とした.【方法】 対象は学童軟式野球新人戦に参加し検診を希望した37チーム485名(5年生271名,4年生153名,3年生49名,2年生9名,1年生3名).大会会場にてPTによる理学所見(肘関節の関節可動域検査,圧痛・外反ストレス時痛検査),医師・検査技師による肘関節の超音波診断を実施した.異常のあった選手に医療機関の受診を勧めた.検診に参加したチームの指導者に対してアンケートを配布し,指導経験,投球数制限,日本臨床スポーツ医学会の提言の認知などについて調査した.また大会期間中の全試合投手の投球数報告を集計し解析した.統計学的分析は対応のないt検定を用い有意水準を5%以下とした.【説明と同意】 事前に文書と口頭で各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し同意を得ている.【結果】 超音波によるOCD疑いで医療機関への受診を勧めた選手は485名中13名(2.6%)であり,そのうち現在肘の痛みがある選手は3名(23.1%),肘関節可動域制限のある選手は4名(30.8%),腕橈関節の圧痛のある選手は0名(0%),外反ストレス陽性は2名(15.4%)であった.指導者アンケートは29チーム(78.4%)より回答があり,年齢43.6±8.4歳,指導経験7.3±6.8年で,試合における投球数制限を必要と考えている指導者は25名(86.2%),日本臨床スポーツ医学会の提言を知っている指導者は3名(10.3%)であった.大会で計測できた全84試合の1試合平均投球数は79.2球,5回成立試合(時間制限,コールドを除く)29試合83.3球,時間制限試合26試合88.4球,コールド試合29試合66.7球であった.コールド試合の平均投球数は5回成立試合,時間制限試合と比較し有意に少なかった(p<.001).投手一人あたりの投球数をみると,完投投手の平均投球数は67.9球,途中交代をした投手は44.6球で,完投投手の平均投球数は途中交代をした投手の平均投球数と比べ有意に多かった(p<.001).日本臨床スポーツ医学会の提言の認知の有無で投球数をみると,知っているチームの平均投球数は先発投手一人あたり77.2球,中継ぎ投手一人あたり31.0球,知らないチームでは先発投手一人あたり65.4球,中継ぎ投手一人あたり26.8球であった.【考察】 今回,小学5年生を中心にした野球肘検診を行い13名(2.6%)のOCD疑い選手を早期発見できた.腕橈関節の圧痛症状のある選手が0%,そのほかの理学所見も30%程度であることから,初期には無症候性で進行していることが考えられる.症状が出現し病院受診する頃には重症化していることが考えられる.またOCDは小学5年生前後に発症するといわれており,OCDを早期発見するためにはこの時期に野球肘検診が必要である.一試合投球数ではコールド試合が5回成立試合,時間制限試合と比較して有意に少なく,一人あたりの投球数は途中交代をした投手が完投投手と比較し有意に少なかった.過剰な投球数を抑えるためにもコールド試合は有効であり,一試合での投球数の上限を決めた上で複数投手での継投が望ましいと思われる.今回の調査では一試合の平均投球数は目標の80球以内に収まっていた.しかし,今後更に投球数制限を徹底するためには投球数と障害の関係を示すエビデンスを蓄積していくことが求められる.【理学療法学研究としての意義】 小学5年生において野球肘検診を広く実施しOCDを早期に発見することは,OCDの重症化を予防するために重要である.また成長期の選手を指導する指導者に対してスポーツ障害に対する意識調査を行うこと,大会での投球数を調査することは,野球を継続する子供たちを守るための障害予防の一助となると考える.
著者
青山 満喜 松尾 歩
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3232-E3P3232, 2009

【はじめに】軽費老人ホームにおいて,日常生活動作(以下,ADL)維持,健康維持,運動習慣のために「機能訓練教室」と称した運動を実施している.今回,理学療法士による運動の選択,効果などに関して若干の知見を得たので報告する.報告については,施設長ならびに参加者に対し書面および口頭で説明し同意を得た.<BR>【目的および方法】ADL維持ならびに運動習慣を着眼点とし,楽しく,無理なく運動できるよう実践している.内容として上下肢の運動,バランス訓練,ストレッチングとし,運動時間は毎回60分,月に2回実施している.1.上肢の筋力維持・向上を目的とした運動2.下肢の筋力維持・強化を目的とした運動3.立位バランス維持・向上を目的とした片脚ならびにタンデム立位保持4.四這い位での上下肢挙上のバランス練習5.柔軟性を維持するためのストレッチング<BR>【結果】機能訓練教室を毎月2回,1年間に計24回実施している.平成19年度中に参加した延べ人数は175人であり,参加者の最高年齢は93歳であった.参加者の意見として,「運動して汗をかくのは気持ちがいい」,「運動後に身体が温まる」,「運動後に身体が軽く感じ動きやすくなる」など肯定的なものが多く,更に,痛みの緩解や柔軟性の向上などの効果も寄せられた.その他として,「冬は部屋に閉じこもりがちになるが,『機能訓練』の時は部屋から出ようと思う」,「他の人と話をする良い機会になる」,「一人では運動できなくても皆で運動するとやる気が出て続けることができる」などの意見もあった.<BR>【考察・まとめ】軽費老人ホームに入所し続けるには,起居動作,移動動作,食事動作,更衣動作,整容動作,トイレ動作,入浴動作,コミュニケーションの自立が必要最低条件とされている.機能訓練教室の参加者は皆このことを承知しており,ADL自立の重要性を認識している.一日三度の食事は施設内の食堂で提供されるため,生活関連動作である炊事は自立していなくても入所は可能であり,広義のADLとされる洗濯,買物,掃除等に関してはヘルパーを利用することも可能である.施設内は段差も少なく,移動しやすく設計されてはいるものの,施設内を移動できる歩行能力(歩行補助具の使用を含む)が要求される.軽費老人ホームでは,毎月さまざまな「○○教室」と称する活動が行われているが,これらは華道,茶道,書道,というsedentaryなものが多いため,入所者の現在のADL能力を維持・向上させ,さらに運動を習慣付ける必要がある.現在の「機能訓練教室」を続けるにあたり,「きっかけ」,「継続」,「効果」の3要素が必要であると考える.そのためには,理学療法士の観点による環境設定,表現力,説明力などが今後さらに求められてくるものと思われる.今後も楽しく,わかりやすく,入所高齢者に無理のないADLおよび健康維持のために運動を習慣づけるような「機能訓練」を推し進めていきたい.
著者
藤縄 理 近藤 公則 立川 厚太郎 地神 裕史 廣瀬 圭子 松永 秀俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O3043-C3O3043, 2010

【目的】<BR>水泳飛び込み選手で肩関節脱臼による腱板損傷受傷後4週で競技復帰を果たし、国体高飛び込みで準優勝した症例を経験した。そのアスレチックリハビリテーション(リハ)における理学療法(PT)経過を分析して報告する。<BR>【方法】<BR>選手の記録を元に損傷と機能異常についてのPT評価とプログラムを後視的に分析した。損傷はMRIにより確認され、整形外科的治療と病院でのPT経過およびプールサイド(PS)でのPT経過を検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本研究は埼玉県立大学倫理委員会に承認され、対象者には研究の内容を口頭ならびに文章で説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR>(1)受傷状況:8/16入水時に左上肢が外側に離れて受傷。直後腫脹と疼痛が強く、三角巾で吊ろうと肩甲帯部を保持して体幹を起こしたら自然に整復された。(2)診断と病院でのPT経過:MRIにて左棘上筋の大結節停止部の損傷が確認された。8/22よりPT開始、9/8まで15回実施。(3)病院での治療方針:1)バストバンド固定中は安静重視、2)固定中は、頸部、体幹、両股関節、両足関節の可動性拡大と筋力向上を中心とする、3)固定中の左肩関節筋力維持は右上肢の筋力トレ-ニング(筋トレ)での同時収縮を実施、4)固定解除後はできるだけ無痛の範囲で、左肩関節の可動域(ROM)拡大を重点的に実施、5)左肩関節のROM拡大と痛みの軽減に応じて骨運動を伴う筋トレを実施。(4)PT経過:8/22~バストバンド固定。左肩関節以外のROM訓練、筋トレを中心に行う。8/29バストバンド終了、他動ROM訓練が許可。左肩関節ROM屈曲120°、外転90°、外旋20°、内旋35°。棘上筋、三角筋中部に痛み。筋トレは左肩関節を固定して左肩甲骨の内外転を実施。9/1国体合宿開始。プール内歩行練習許可。左肩関節ROM屈曲145°、外旋30°、内旋30°。筋トレはセラバンド(黄色)でのinner muscle運動を開始。9/3プール内で水泳練習開始。左肩関節ROM屈曲170°、外転140°。練習後プールサイド(PS)初回:肩前方に痛み、時々自発痛あり、自動運動ROM外転 90°で痛み(P)、外旋30°P、内旋 80°P、水平内転60°P、他動運動ROM外転90°P・120°で筋性防御(+)、関節副運動検査は筋性防御のため不可、触診で棘上筋、棘下筋、肩甲下筋スパズム・過敏、Mulligan 法の運動併用モビライゼーション(MWM)により外転全ROM無痛で可能。プログラム-MWM、テープ、自己治療(セラバンド運動継続)。9/4左肩が挙げやすい、平泳ぎ可能とのこと。筋トレは左肩関節各方向に軽い徒手抵抗を加え実施。PS2回目:プログラム-自己MWM追加。9/7コーチの判断で7.5Mからの飛び込みを実施。PS3回目:前方からの飛び込み無痛、後方からは痛み。プログラム追加-PNF、MWM(300gの重りを持ち)。9/8コーチの希望で病院でのリハ終了。左肩関節ROM屈曲170°、外転170°、外旋60°、内旋70°。左肩周囲筋MMTは3~4。9/9PS4回目:速い外転-外旋運動で痛み、プログラム追加-深部マッサージ、機能的マッサージ、PNF、MWM (500gの重りを持ち)。9/11PS5回目、試合前日:プログラム継続。9/12PS6回目、試合当日:肩の痛み無し、腰痛出現、プログラム追加-腰部Mulligan手技。<BR>【考察】<BR>症例は入水時両手が離れ、肩が外転し強力な水圧が加わって脱臼と腱板損傷を起こしたと考えられる。受傷2週後よりプールで泳ぎの練習を開始し、練習後のPS初回評価では、時々自発痛があり、外転でインピンジメント、筋スパズムにより運動を防御していたため、亜急性期と考えられた。しかしMulliganのMWMで上腕骨頭を後下方に滑らせて外転すると無痛であった。また、触診により筋スパズムは損傷した棘上筋よりも肩甲下筋により強く、外旋ROMを制限していた。そこで、骨頭が後下方に軽く牽引されるようにテーピングをして、肩甲骨と骨頭の位置関係を常に意識して、インピンジメントを起こさないような挙上運動の学習に重点を置いた。同時にセラバンドで骨頭を正しい位置に保持する運動を継続してもらった。最終的には軽い重りを持ったMWM挙上運動とPNFにより、インピンジメンとを起こさないような運動パターンを学習させた。コーチも肩関節に負担がかからない演技のパターンを工夫し、好成績に結びつけることが出来た。医師、PT、コーチが連携し、選手が意欲を持ってアスレチックリハとトレーニングに取り組んだ成果と考える。<BR>【理学療法研究としての意義】<BR>アスレチックリハにおいて、PTは運動機能を適切に評価し、適切な時期に最良のプログラムを実施することで、スポーツ現場で貢献できるエビデンスを本報告は提示している。<BR>
著者
木村 文佳 藤田 智香子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0489-A0489, 2008

【目的】<BR>現在、接遇教育を充実させる病院・施設が多く見られ、言葉遣いとしては敬語使用が推奨されているように思える。本研究では言葉遣いに着目し、理学療法士(以下PT )が実際使用している言葉遣い、患者が希望する言葉遣い、常体と敬体、方言と標準語で受ける印象の違いについて調査し、今後のコミュニケーションの一助とすることを目的とした。<BR><BR>【方法】<BR>平成18年9月7日~10月25日の期間、津軽地方のリハビリテーション科を有する病院5箇所で60歳以上の高齢入院患者(質問内容の理解困難な方、長谷川式簡易知能スケール20点未満の方を除く)を対象に、独自に作成した調査票を用い、20分程度の聞き取り調査を行った。質問内容として社会的属性(年齢、家族構成など)を尋ねたほか、挨拶や説明などの状況において患者が実際PTに言われている言葉遣い、希望する言葉遣いを尊敬語・謙譲語・丁寧語・常体から選択してもらった。また各言葉に対する印象を「よい、まぁよい、あまりよくない、よくない」から選択してもらい、津軽弁と標準語における印象の違いについても調査した。統計解析にはSPSS、解析方法としてΧ<SUP>2</SUP>検定を用い、p<0.05を有意水準とした。<BR><BR>【結果】<BR>52名にアンケート調査を実施し、有効回答数は43名(男性15名、女性28名、年齢74.0±7.9歳)だった。全項目で丁寧語を希望する人が最も多く、実際のPTの言葉遣いと希望する言葉遣いの間に関連性が認められた。言葉の印象に関しては、丁寧語を「よい」、「まぁよい」とする人が多かったのに対し、尊敬語に関しては「あまりよくない」とする意見が多く聞かれた。しかし、説明の場面では尊敬語の印象を「よい」と答えた人が多く見られた(37.2%)。方言の項目では、標準語希望者が36名(83.7%)だったのに対し、津軽弁希望者は6名(14.0%)、どちらでもよいと答えたのが1名(2.3%)だった。<BR><BR>【考察】<BR>丁寧語の希望者が最も多かったのは、日常的にPTから丁寧語で話しかけられていることが大きな要因だと考えられる。各項目で尊敬語の印象は「あまりよくない」が大半だったが、説明や依頼時などは尊敬語や謙譲語に対する印象をよいとする人が多かったのは、PTが動作主体となり患者がその受け手となるため、挨拶などに比べてより丁寧な応対が求められるのであろう。方言に関しては、標準語希望者が多かったが、「標準語と津軽弁どちらで理学療法を受けたいか」という問いには、津軽弁の回答(18名,42.9%)が約半数を占めた。このことから、語句としては標準語を望み、なまりや語法としては津軽弁を希望する傾向があると考えられる。<BR><BR>【まとめ】<BR>患者が希望する言葉遣いは主に丁寧語で、患者が受け手となるよう場面ではより丁寧な言葉遣いが求められることがわかった。
著者
門田 正久 鳥居 昭久 池畠 寿 半田 秀一 花岡 正敬
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2132-C3O2132, 2010

【目的】今回、アジアパラユースゲーム東京大会にて、本部トレーナー活動を実施することがきましたので、障害者スポーツ大会のサポート活動を広く周知していただき、より多くの理学療法士の方々に障害者スポーツをサポートしていただくための情報発信として報告をさせていただきます。<BR>【方法】2009年9月8日から13日(大会期間9月10日から13日)の期間中、アジア地区ユースパラゲーム東京大会に参加された選手および役員へ本部トレーナーサービスを実施。実施内容について種目別・部位別などの対応実績を調査。また、利用者からの聞き取りによる障害者スポーツにおけるユース世代における課題について考察をする。<BR>【説明と同意】<BR>【結果】今大会競技種目は、水泳、陸上、卓球、ゴールボール、ボッチャ、そひて車いすテニスの6競技で開催、選手役員700名の参加があった。その中でトレーナーサービス利用総件数167件。競技別利用状況としては、水泳12名ゴールボール10名、陸上5名、テニス5名、卓球4名、ボッチャ2名であった。部位別状況としては、肩関節が最も多く32件、次いで腰部12件、頚部11件となっており前腕・手等を入れると上半身中心の部位が多く認められた。また実際のトレーナーサービスの中で、障害問題の解決だけでなく、トレーニング方法やコンディショニングについての説明指導を実施することも多くあった。<BR>【考察】今回、国際大会でのユース選手へのトレーナーサービス活動を実施した。利用者はほとんどが日本選手であったが、サービスを実施する中で、基礎疾患となる運動機能障害と競技による機能障害の混在がほとんどであり、日常管理の中で競技練習内におけるコンディショニングの必要を強く感じられた。部位別で見ると上半身の問題が多く、切断や術後の脊柱アライメントの問題やバランス対応としての頚部の障害も多く認められた。また利用者全員への聞き取りはできなかったが、多くの選手の場合はどこでコンディショニングを指導してもらえるかわからない、もしくは通常のトレーニングジム等の施設や施術院では対応してもらえない現状も知ることができた。これは、健常者の運動器疾患対応についてはトレーニングジムや施術所での対応は一般的であるが、障害のあるスポーツ選手を受け入れる土壌がまだ未整備であり、今後の日本における障害者スポーツサポートシステムの構築の必要性を感じるものとなった。またその中で、理学療法の活用がさらに大きな意味があるものと再認識することができた。今後は、大会のみならず強化練習サポート体制作りや地域活動へのサポート体制の構築を進めていき、より質の高いサービスを提供できるように努力していきたいと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】障害者のスポーツは、近年競技志向の高まりにつれて参加選手のサポート体制も変革期を迎えています。障害者スポーツの代表的な大会ともいえるパラリンピック大会においても2001年にIOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)との協力関係が話し合われ、2008年北京パラリンピックからIOCの支援体制が始まっています。日本においても2000年シドニー大会より本部トレーナー帯同が始まり、その後2004年アテネ大会1名。2008年北京大会には1名増員、2名体制で本部対応することができ始めています。また各競技団体においても、専任トレーナーをつける競技団体も増えてきています。その中でも理学療法士の資格を持っての参加トレーナーが多くなっており、今後もより競技サポートのニーズが増えてくると思われます。<BR>
著者
石濱 裕規 井出 大 渡邊 要一 八木 朋代 松岡 恵 荒尾 雅文 小林 正法 高橋 修司 安藤 高夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E2Se2076-E2Se2076, 2010

【目的】都内介護保険施設・病床を利用されている認知症を持った要介護高齢者の家族・病院職員を対象とし、介護状況・福祉用具利用状況を調査すること。特に、認知症が問題となる方における身体拘束・行動制限の要因を明らかにし、その改善のために必要な取り組みや福祉用具を検討すること。<BR><BR>【方法】東京都内の72介護保険施設(介護療養型病床(以下、介護療養)・老健・特養)を対象とし、認知症をもった要介護高齢者の介護状況に関する調査を、職員・家族・施設責任者に実施した(平成21年1月10日~平成21年3月10日)。対象者は、認知症高齢者の日常生活自立度(介護認定調査)の評価が自立・I以外の方とし、全対象者調査と無作為抽出方式を併用した。職員調査の内容は、介護認定調査票項目による対象者の心身状況の評価と福祉用具利用・介護状況調査からなるものであった。本報告は、厚生労働省平成20年度老人保健健康増進等補助事業として東京都療養型病院研究会が実施した調査に基づくのである。<BR><BR>【説明と同意】職員調査は、施設責任者に目的等を説明し、ご了解頂いた施設責任者には、調査協力承諾書に署名・提出頂いた。調査責任者からの指示を通じ、各調査担当者には調査にあたり利用者様への同意を協力依頼文書または口頭で得た。本調査は、個人情報保護法に準拠し実施した。回収は郵送方式とした。<BR><BR>【結果】1)回収状況および基本集計 回収数は、職員調査2733件(介護療養2015件、老健369件、特養349件)であった(自立、I、不明を除く2583名を分析対象とした)。主診断名は、脳血管疾患(39%)、認知症(32%)が2/3を占め、平均年齢83.5才、性別は女性74%、要介護度5が約半数(49%)となり、介護療養は要介護度5が最も多く、老健は要介護度3、特養は介護度4が最も多かった。<BR>2)行動制限につながる福祉用具利用の要因の分析 行動制限につながる福祉用具利用の有無と介護認定調査における心身状況、および利用者に感じる行動上の不安、転倒等の危険度との関連を検討した。「柵・介助バー等で四方を囲む」、「抑制帯(Y字型安全ベルト)」、「車いす用テーブル(食事時のみ使用以外)」をそれぞれ使用の有無で区分した2群に対して、年齢、要介護度、介護保険認定調査票の各項目(2.移動、3.複雑な動作、4.特別な介護、6.コミュニケーション等、7.問題行動、10.廃用の程度)、行動上の不安(5段階)、危険度(転倒・ベッドからの転落・車いすからのずり落ち)(各3段階)を説明変数として選定し、有意差があるかをMann-WhitneyのU検定を使い分析した。認定調査票の各項目は、認定調査員テキスト2006に示される順序尺度による得点化方法を用い、統計処理には、SPSS.Ver17.0を用いた。その結果、各3項目において、有意差(p< 0.05)がみられた説明変数を用い、変数減少法を用いたロジスティック回帰分析により、さらに変数選択を行った。その結果、「柵・介助バーで四方囲む」「抑制帯」「車いす用テーブル」の各物品利用の有無を説明するうえでの判別的中率の高い予測式が導かれた。すなわち、「柵・介助バーで四方囲む」物品利用の有無に関しては、起き上がり、立ち上がりといった移動関連項目と問題行動関連項目、そしてベッドからの転落が説明変数として選択された(8変数、判別的中率72.8%)。「抑制帯」利用の有無に関しては、じょくそう等の皮膚疾患、排尿、といった体動、移動の要因となりうる項目と目的もなく動き回る、転倒、車いすからのずり落ちの危険度が選択された(5変数、判別的中率92.0%)。「車いす用テーブル」利用の有無に関しては、暴言や暴行、ひどい物忘れと行動上の不安が説明変数として選択された(3変数、判別的中率98.1%)。すなわち、3種の物品利用の説明変数として、認知症の問題行動に関連する項目が共通に説明変数として選択され、危険度も「柵・介助バーで四方囲む」および「抑制帯」利用の有無の説明変数として選択された。<BR><BR>【考察】身体拘束・行動制限につながりうる物品利用を減らすには、転倒・転落・ずり落ち予防、認知症の行動障害面への対応を含めた身体拘束・行動制限のための取組みと生活環境整備が必要であることが示唆された。柵・サイドレールの利用が却って転落時の危険度を高めるという報告もあり(Catchen, 1983 等)、利用群/非利用群間での危険度の差の追跡的・継続的検討など今後の課題である。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】認知症の行動障害面への対応、転倒等の予防、アクシデント時の骨折等の危険度軽減のため、リハ職種の取組が求められている。また、本調査事業において、座位能力に適した車いすが用いられていないという福祉用具の不適合が抑制帯使用に影響しているという結果も出ており、福祉用具適合技術の向上も求められている。
著者
和田 孝明 吉田 昌平 吉川 信人 豊島 康直 秋本 剛 杉之下 武彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101699-48101699, 2013

【はじめに、目的】 従来の自転車エルゴメーターを用いた体力テストで求められる最大無酸素パワー(MAnP)はペダル負荷が重く、低回転数で得られるパワーのみの評価であった。それに加えて吉田らは、ペダル負荷が軽く、高回転で得られるピーク回転数を評価することで動作の特異性を予測することが可能なPrediction of Instantaneous power and Agility performances used by pedaling test(PIA pedaling test)を考案した。 本研究では、大学生男子サッカー選手と高校生男子サッカー選手においてPIA pedaling testを実施し、それぞれの世代のパフォーマンスの特異性について検討することを目的とした。【方法】 大学生男子サッカー部(関西1部リーグ)53名(年齢19.4±1.1歳、身長173.5±7.2cm、体重167.6±17.4cm、体重62.4±8.7kg)と高校生男子サッカー部(京都府ベスト4)40名(年齢16.2±0.7歳、身長167.6±17.4cm、体重62.4±8.7kg)を対象とした。 自転車エルゴメーターにおけるパワー発揮能力の評価はcombi社製PowerMaxVIIを使用し、十分なウォーミングアップの後に体重の5、7.5、10%の各負荷でそれぞれ10秒間の全力ペダリングを実施し、中村らの方法にて最大無酸素パワー(MAnP)を求めた。セット間の休息は2分とした。パワー発揮能力の指標はMAnPにおける体重当たりの仕事量(HP)と、5%負荷におけるピーク回転数(HF)とした。大学生と高校生のパワー発揮能力について検討した。統計処理には大学生と高校生のHPとHFのそれぞれの比較に対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の研究において対象者に研究内容を十分に説明し同意を得た。【結果】 大学生はHPが13.4±1.3watts/kgであり、HFは187.6±10.1rpmであった。高校生はHPが13.7±1.6watts/kgであり、HFは178.8±12.5rpmであった。大学生と高校生のHPに有意差はないが(p=0.34)、HFでは大学生が高校生より有意に高かった(p<0.01)。【考察】 PIA pedaling testで評価されるHPは、股関節伸展筋力を中心とした脚伸展筋力を主動作筋とし、実際の動作における垂直跳びと相関を認めた(吉田ら、2007)。また、HFは股関節屈曲筋力を中心とした脚屈曲筋力を主動作筋とし、実際の動作におけるアジリティーと相関を認めた(吉田ら、2009)。したがって、同じ自転車エルゴメーターにおける全力ペダリングであっても、負荷の違いによりその主動作筋は変化し、評価の対象となる筋やパフォーマンスは異なる。このことからPIA pedaling testは、狭義の体力要素の中でも瞬発力やアジリティーといった動作の特異性を客観的に評価が可能になると考える。 本研究の結果は、大学生と高校生を比較し瞬発力に有意差は認められなかったが、アジリティー能力において大学生が有意に高値を示していた。Hiroseら(2010)は、成長段階であるユース年代のフィールドテストにおいて20mや40mスプリントのような単純課題のパフォーマンステストでは成長に伴う順位変動が低く、シャトルランのような複雑な課題によるフィールドテストでは、成長に伴う順位変動が大きいことを報告している。つまり、瞬発力の要素が大きくなる20mや40mスプリントでは、そのスピードがタレント的素因に影響していると考えられるが、アジリティーの要素が大きくなるシャトルランのような複雑な動作では、成長過程によるトレーニングやそれに伴う環境的な要因に左右されることが考えられる。したがって、ユース年代のトレーニングではアジリティーに対するトレーニングを積極的に行わせることや、その主動作筋と考えられる脚屈曲筋力に対するアプローチを行うことが、パフォーマンスの向上の一要因となると考えた。【理学療法学研究としての意義】 今回の我々の結果から大学生、高校生サッカー選手の基本的体力要素である瞬発力とアジリティーについてその特徴が明確となった。また成長段階であるユース年代の選手ではアジリティーを向上させるトレーニングを導入することで、パフォーマンス向上に寄与できると考える。
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 禰占 哲郎 岩本 幸英 河村 吉章 小野 雄次郎 山下 正 渡辺 睦 林山 直樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1086-E1086, 2007

【目的】我々は株式会社ナムコ(以下,ナムコ)と共同で,高齢者でも安全かつ容易に下肢・体幹筋トレーニングが可能なゲーム機「ドキドキへび退治RT」(以下,へび踏み)を開発した。今回,ゲームプレイ中の脳血流変化を測定し,ゲームによる脳機能活性化について検討したので報告する。<BR>【方法】被験者は健常成人男性8名(平均年齢38.8歳)であった。脳血流変化は,前頭前野における酸素化ヘモグロビン(以下,oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビンの初期値からの変化量を,近赤外分光法にて測定した。測定機器は島津製作所製OMM-2001で,測定用プローブを前頭部に装着した。解析は,oxy-Hbの最大値および最小値から脳血流変動値を算出し,その値について比較検討した。実施したタスクは,「ワニワニパニックRT」(ナムコ製,以下ワニ叩き),「へび踏み」及び下肢筋力増強運動(以下,下肢筋トレ)とした。測定肢位は,「ワニ叩き」では立位,「へび踏み」及び下肢筋トレでは椅坐位であった。測定時間は,タスク実施60秒,タスク実施前に安静20秒,タスク実施後に安静40秒の計120秒とした。下肢筋トレは,重錘負荷による膝伸展運動であり,頭位の変化による影響を最小限にするため,被験者にはいずれのタスクにおいても可能な限り頭を動かさないように指示した。なお,被験者には事前に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施した。<BR>【結果】前頭前野における脳血流変化は,個人差が大きく一般化できる特徴は見いだせなかったが,下肢筋トレに比べゲームにおいて,より大きな脳血流変化を生じる傾向が認められた。また,ゲーム経験の程度により,被験者間の特徴の違いも認められた。<BR>【考察】従来の業務用ゲーム機の多くは主に上肢を使うものがほとんどであるが,「へび踏み」は開発当初より下肢・体幹筋の活発な活動を狙っている。介護予防対策の一つとして,腸腰筋や前脛骨筋の強化が重要であるが,「へび踏み」は,楽しみながらこれらの筋肉をトレーニングすることが可能である。前頭前野は意欲や感情の中枢とされ,前頭前野の活性化は認知症予防対策としても注目されている。今回,脳血流変化に個人差が認められたことから,一律にゲーム機を使用するのではなく,個別対応としてゲーム機選択を行うのがよいのではないかと考える。<BR>【まとめ】ナムコと共同で開発したゲーム機の効果について,脳血流変化の観点から検討した。今後,本ゲーム機使用による介入効果についても研究を進めたい。
著者
福山 勝彦 福山 ゆき江 丸岡 裕美 原田 悦子 鎌田 幸恵 細木 一成 矢作 毅 丸山 仁司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0213-Ca0213, 2012
被引用文献数
2

【はじめに、目的】 近年、足趾が床面に接地せず、歩行時に趾先まで体重移動が行われない「浮き趾」についての報告を散見する。これまで浮き趾例では足趾把持力の低下や前方重心移動能力低下、床面からの感覚入力の低下がみられることを報告してきた。また浮き趾の状態が継続されることで歩行時において体幹のアライメントの崩れや傍脊柱筋、大殿筋などの筋活動の乱れが生じ、腰痛の出現につながる可能性があることも示唆されている。我々はこの浮き趾の抽出、評価として、自作のPedoscope撮影による画像から「浮き趾スコア」による点数化を試み検討している。これは左右10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,接地不十分なものを1点,まったく接地していないものを0点とし,20点満点で評価するものである。しかしこれらの方法による信頼性、再現性については検討されていない。本研究ではPedoscopeを使用し、浮き趾スコアの検者間、検者内の信頼性について確認することを目的とした。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人98名を対象とした。男女の内訳は男性48名、女性50名、年齢は22.3±2.9歳であった。足底画像を自作のPedoscopeにて撮影した。Pedoscopeは、床面から30cmの高さのステージ上面に強化ガラスを固定し、この上に被検者を起立させる。ステージの側面に斜めに固定した鏡で足底を反映し、デジタルカメラで撮影する構造になっている。被検者をステージの強化ガラス上に、開眼で2m前方の目の高さに設定した目標点を注視した状態で起立させた。足幅は両足内縁が5cm開くように枠を用いて開脚した。趾先に力を入れたり重心を移動したりせず安楽な姿位を保持した上で、身体の動揺が落ち着いている状態での足底画像を撮影した。初回の撮影に引き続き、その1時間後、1週間後の同じ時間帯で同様の撮影を行なった。得られた画像を前述した方法で10本それぞれの足趾に対し、完全に接地しているものを2点、不完全なものを1点、接地していないものを0点とし20点を満点とする「浮き趾スコア」を求めた。初回時の画像に関しては3人の経験者(これまでの研究に参加し画像評価していた者)と3人の未経験者、計6人の評価者で評価した。3人の未経験者については、事前に評価の方法を説明、サンプルを用いて採点の練習を行なった。1時間後および1週間後の採点については筆者が行なった。初回時のデータから評価者6人全員による検者間信頼性ICC(2,1)、経験者3人、未経験者3人それぞれの検者間信頼性ICC(2,1)を求めた。また初回、1時間後、1週間後のデータから検者内信頼性ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し、事前に本研究の趣旨および方法を説明、また本研究への協力は自由意志であり辞退、途中棄権しても何ら不利益がないこと、得られたデータは個人が特定できないよう管理し本研究以外に用いないことを説明し同意を得た。【結果】 全評価者のICC(2,1)は0.858、経験者3人のICC(2,1)は0.895、未経験者3人のICC(2,1)は0.829であった。初回、1時間後、1週間後のICC(1,1)は0.927であった。【考察】 我々が用いている浮き趾スコアの評価者間における信頼性は、Landisの基準から経験による差は若干あるものの、Almost perfectの結果が得られた。不完全接地1点の評定にばらつきがあるのではないかと思われたが、完全接地趾、足根部、踵部との接地画像の比較により近似した値を得ることができると考える。また検者内信頼性についてはかなり高い信頼性を得ており、それぞれの被検者の足趾接地の再現性が確認できた。我々は本スコアをもとに、18点以上かつ両側第1趾とも2点のものを「正常群」,10点以下のものを「浮き趾群」と分類し、正常群と浮き趾群における機能の比較研究を行なっており、その基礎となる群間分類上の信頼性が得られたものと思われる。しかし接地画像の形やどの趾が接地していないかという分類はできず、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 最近「浮き趾スコア」は、他の研究者の間にも導入されており、Pedoscopeでの撮影以外にフットプリントやフットスキャンなども使用されている。いずれも床面と足底の接地状態を反映するものであり、自作によるPedoscopeやフットプリントの使用は比較的安価で簡便なものである。この信頼性が得られたことは「浮き趾」の抽出、分類、理学療法の効果判定に役立つものと思われる。
著者
猪股 伸晃 坂本 雅昭 山路 雄彦 中澤 理恵 宮澤 一 金城 拓人 中川 和昌 富澤 渉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0313-C0313, 2006

【はじめに】<BR>我々は,群馬県高校野球連盟(以下:県高野連)からの依頼により,平成14年度の第84回全国高校野球選手権群馬県大会(以下:大会)からメディカルサポート(以下:サポート)を開始し4大会を経験した.本研究の目的は,平成17年度に開催された第87回大会サポート結果を整理し,現サポート体制についての課題を明らかにすることである.<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は第87回大会の3回戦以降に進出したチームであった.サポートを行うため,群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じ,本県内の理学療法士(以下:PT)にボランティア参加を募った.サポートの内容は,3回戦以降の試合前および試合中のアクシデントに対するテーピング・応急処置,4回戦以降の投手及び野手別のクーリングダウン(軽運動・ストレッチング)であった.投手の連投を考慮し,投球数,肩および肘関節の痛みの有無,疲労感等に関するチェック表を使用し状態を把握した.対応方法については内容を統一するため,事前に講習会を行ったが,加えて新規参加者に対してはアスレティックリハビリテーションの基礎に関する講習会への参加を促した.準決勝・決勝戦を除き試合会場は2球場であり,各球場に投手担当2名,野手担当4名以上が常駐するようにスタッフを配置した.また,大会終了後にPTスタッフによる反省会を実施し,現サポート体制の問題点について議論した.<BR>【結果及び考察】<BR>クーリングダウンは投手に対しては延べ29校41名に,野手に対しては延べ28校に実施した.投手の中では下肢の柔軟性が低下している選手が多く認められ,日頃のトレーニングあるいは大会中のストレッチングを含めたコンディショニングの重要性が示唆された.また,肩痛や肘痛は各々10%程度に認められた.応急処置対応は延べ54件(32名;選手14名,審判1名,観戦者17名)であり,デッドボール等による打撲への対応の他に,応援席観戦者の熱中症に対するクーリングや安静指導が多かった(14件).サポートに参加したスタッフは延べ74名(実数57名)であり,投手担当は15名,野手担当は41名であった.前年度までのサポート経験者が32名,新規参加者が25名であった.反省会ではPTの質的な部分,すなわち技術だけでなく現場での態度やサポート活動に対する姿勢に関して,スタッフ間に差があることについての問題提起がなされ,単に知識・技術レベルを向上するだけでなく,意識の均一化も重要であることがわかった.また,来年度からは1回戦からのサポートが決定されており,より効率的な新規参加者の育成システムの確立が必要と考えられた.<BR><BR>
著者
三村 健
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P2264-E4P2264, 2010

【目的】2002年、大田により提唱された高齢者における終末期リハビリテーション(以下、終末期リハ)は、その重要性が叫ばれているにも関わらず、その概念がリハビリテーションの領域で十分認知されているとは未だ言えない。高齢者における終末期リハは癌患者等に用いられるターミナルケアとは異なる意味あいで用いられるが、過去5年の本学術大会においても終末期という用語は癌患者やALSにおけるターミナルケアの意味で用いられるのみで、高齢者における終末期リハをキーワードとしている演題は皆無に等しい。大田は終末期リハの具体的目標として八つの項目を挙げているが、中でも関節可動域(以下、ROM)の維持は、他の目標に影響を与えるという意味でも、また、最期まで人間らしい身体の状態が維持されるためにも重要である。在宅高齢者における終末期リハ、特に関節可動域の維持の重要性について検証を行うことが本研究の目的である。<BR>【方法】高齢者における終末期リハに関し、訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を行っている2例について報告を行う。<BR>【説明と同意】紹介する2ケースに関しては、ヘルシンキ宣言に基づきコミュニケーション困難なご本人に代わり、ご家族に対して研究に関する説明を行い同意を得た。<BR>【結果】ケース1:76歳男性。平成11年脳梗塞発症。1年半の入院を経てADL全介助の状態にて在宅を開始。以降、妻による献身的な介護、訪問看護、通所介護等の在宅サービスにより、肺炎、胃瘻造設目的などによる短期の入院以外、在宅を継続してきたが、その間に徐々に四肢の拘縮が進行。現在、persistent vegetative stateにて要介護5。平成20年12月より訪問リハ開始し、四肢のROM ex施行。両手指の重度屈曲拘縮に対しては主治医と協議の上、手指屈筋群の腱切り術が施行される。両膝の屈曲拘縮により、車いす座位の際に脚をさらしで固定する必要がある、右踵部と臀部の接触による褥創の危険性がある、左側臥位が取れない、等の問題がある。本ケースは退院直後よりROM維持を目的としたアプローチが何らかの形で継続して行われていれば、現状のような拘縮の進行はなかったのではないかと思われる。 今後も拘縮の進行の予防を目的として週1回、2単位の訪問リハを継続予定である。<BR>ケース2:85歳、女性。要介護5。平成17年9月に脳梗塞を発症。同年11月よりご家族の介護による在宅療養を開始し、同時に訪問リハを開始。現在まで週1回の訪問リハを継続。訪問時はROM ex、リクライニング式車いすに全介助にて移乗。1時間ほど車いす上でテレビを見て過ごされる。部分的には拘縮が認められるが、全体としては著しい拘縮を生じることなく経過されている。日によって変動はするが、追視やわずかながら会釈や笑顔が見られる等、コミュニケーションも保たれている。ご家族での春のお花見を現在も継続されている。<BR>【考察】高齢者の終末期には、在宅に限らず特養等の施設においても全てのケースに対してリハビリテーションの知識、技術を踏まえたケアが継続的に行われるべきである。理学療法士が必ずしも直接ROM exを行わずとも、家族や他職種による協力により拘縮の進行を防げるケースもあると思われるが、まずは我々理学療法士が在宅、施設、病院、いずれの場においても、終末期のケースにこれまで以上に関わりを持ち、尊厳ある終末を迎えるにはどのような支援が必要とされるのか、検討すべきである。急性期、回復期、維持期に続く終末期のリハは一連のリハビリテーションの帰結ともいえる。リハビリテーションのどのステージにおいても他職種との連携の必要性は常に謳われているところであるが、最後の連携は、きれいなご遺体を納棺師(おくりびと)に引き継ぐことではないかと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】超高齢社会を迎えたわが国において、まずは理学療法士自身が終末期への関心を高め、その研究を行うことにより、国民が安楽で尊厳ある終末を迎える支援を行うことが可能となると考える。
著者
高橋 静恵 大塚 功 山崎 慎也 高井 浩之 両角 淳平 原 寛美 山口 浩史 安井 匡
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BcOF1034-BcOF1034, 2011

【目的】<BR>脳卒中患者が使用する下肢装具には、正常歩行に近似した歩行動作を獲得するための代償的機能が求められる。今回Shoehorn Brace(以下SHB)使用し自立歩行を獲得した回復期脳卒中患者に対し、Gait Solution Design (以下GSD)を使用し歩行練習を実施することで、正常歩行により近い歩行動作を獲得した症例を経験した。その歩容評価と装具療法に関する新しい知見を得たので考察を加えて報告する。<BR>【方法】<BR>症例は47歳の女性。平成21年11月21日、脳梗塞発症。右片麻痺・失語症を呈した。I病院搬送。t-PA施行するも再開通せず、血栓溶解療法を追加したが、頭部CT上左内包から放線冠にかけて梗塞を認めた。31病日、回復期病院へ転院、SHB作製。屋外自立歩行を獲得した。166病日自宅退院。182病日CI療法目的にて当院入院。入院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢9手指5下肢6、右足関節関節可動域背屈0°。下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scale(以下MAS)3。MMT右下肢股関節屈曲3・伸展2、膝関節屈曲2・伸展4、足関節背屈2・底屈2。FIM126/126点。踵ロッカー機能に伴う底屈モーメント(1stピーク)4.06Nm、前足部ロッカー機能に伴う底屈モーメント(2ndピーク)0.24Nmであった。196病日当院退院。平成22年7月2日より当院外来リハ通院。当院入院当日よりSHBからGSDへ変更し、評価として、歩行周期中にGSD足継手が発揮する底屈制動力と足関節の関節運動の測定を可能とするシステムであるGait Judge(安井ら、2009)を使用し、1stピーク(踵接地時の前脛骨筋による底屈モーメント)と2ndピーク(踵離地~足趾離地時の下腿三頭筋のStretch Shortening Cycle)の底屈モーメントを測定し、その平均値から歩容を数値化し入院時から退院時かけての変化を比較検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本症例には症例報告をさせていただく主旨を説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>退院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢10手指5下肢7、右足関節可動域背屈5°。下腿三頭筋の筋緊張MAS1 。MMT右下肢股関節屈曲4・伸展3、膝関節屈曲4・伸展5、足関節背屈3・底屈3。1stピーク3.93Nm、2ndピーク1.15Nmに改善した。しかし、足趾離地からの足関節底屈が持続しており、Extention thrust putternが出現し、足関節分離運動の不十分な波形となっていた。<BR>【考察】<BR>SHBの様な足関節固定式短下肢装具は、足関節底背屈運動が妨げられる。しかし、GSDは底屈制動・背屈フリーであるため、立脚初期では踵接地から滑らかな足底接地となり(踵ロッカー)、立脚中期では足関節背屈運動を妨げずに下腿三頭筋の筋収縮を可能とし(足関節ロッカー~前足部ロッカー)、遊脚期ではクリアランスの確保が可能となる。よって、本症例に対し、入院初期よりSHBからGSDへ変更した。しかし、入院時評価では2ndピークが0.24Nmであり、前足部ロッカーが機能していない数値となった。この結果となった原因として、下腿三頭筋の筋短縮による右足関節の背屈可動域制限と、足関節底屈・背屈筋群の歩行周期中の筋活動が不十分であることと考えた。<BR>この原因に対し、物理療法(低周波)を含めた足関節可動域訓練、足関節底屈・背屈筋群や下肢伸展筋群に対する筋力強化訓練を行い、下腿三頭筋の筋活動を得るために、段差を利用したステップ訓練等を行なった。さらに、退院後の自主訓練として、セラバンドを用いた下肢筋力強化、超音波機器やストレッチボードを利用した下腿三頭筋のストレッチを指導した。上記のリハビリテーションプログラムを施行したことにより、退院時のGait Judge評価結果では2ndピーク1.15Nmとなり、入院時と比較して向上した。つまり、前足部ロッカーの出現が認められた。また、Gait Judgeのデータから得られた歩行周期中の底屈モーメントの波形を視覚的フィードバックしながらの運動学習が可能となり、歩行練習に対するモチベーション維持につながったものと思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本症例においてGSDを使用することで、歩行中の前足部ロッカー機能が再獲得された。片麻痺患者に対する歩行練習では、正常歩行に見られるロッカー機能を阻害しない装具の使用と、正常歩行に近似した下肢アライメントの筋活動を引き出す歩行練習を実施することが重要と思われる。さらに、視覚的フィードバックを活用した動作訓練をすることにより、対象症例に自らの歩行動作を確認しながら正常歩行に近い歩行動作を学習することが可能であることが分かったことは今回の研究において意義のあるものとなったと考えられる。
著者
斎藤 均 萩原 章由 北川 敦子 小川 明久 溝部 朋文 石間伏 彩 金子 俊之 福王寺 敦子 熊木 由美子 阿部 成浩 渡邉 沙織 尾﨑 寛 前野 豊 山本 澄子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B0701, 2008

【目的】我々は,三次元動作解析装置を用いて,片麻痺者の立ち上がり動作を主に重心・COPの左右方向の動きと麻痺側・非麻痺側の荷重に着目し分析を行ってきた.今回,過去に94回測定した中から,同一測定中に立てたときと,立てなかったとき(離殿したものの立ちきれずに座っていた台に殿部をついてしまうこと)があった6例を対象に,この動作の成否における重心の動きを,床反力鉛直成分との関係から明らかにすることを目的とする.<BR>【方法】<対象>左片麻痺・男性5名,右片麻痺・女性1名.随意性Br.StageIII:3名,IV:2名,V:1名.(全例,本研究の主旨を説明し同意を得た)<測定条件>下腿長に合わせた台からの上肢を使用しない自由な立ち上がり動作.<測定装置>三次元動作解析装置(Vicon512),床反力計(KISTLER社製).<解析項目>重心の左右方向の動き,両側の床反力鉛直成分(Fz).立てたとき(成),立てなかったとき(否)の重心・Fzを比較・分析した.<BR>【結果】開始から離殿までの重心の左右方向の動き:(否)では開始位置より非麻痺側方向が2例,4例は麻痺側方向.(成)では1例を除き開始位置より非麻痺側方向.この1例は開始位置で非麻痺側にあった重心が離殿時,麻痺側方向(ほぼ正中)に動いた.離殿時の重心位置(開始位置を0とする):各対象の(否)と(成)の比較では,(成)では上記1例を除き離殿時の重心位置は,(否)より(1.4,2.7,3.6,3.7,4.2cm)非麻痺側方向であった.離殿時のFz:静止立位の麻痺側・非麻痺側の合計を100とした時のFzの値を(麻痺/非麻痺側)で示す.<U>(否):(成)</U>,<U>(47/55):(45/59)</U>,<U>(45/55):(26/79)</U>,<U>(34/71):(33/76)</U>,<U>(48/63):(49/66)</U>,<U>(37/71):(40/72)</U>,<U>(35/60):(29/81)</U>.各対象の(否)と(成)の比較では,(否)では麻痺側Fzは4例で大きく,また,非麻痺側Fzは全例で小さかった.<BR>【考察】離殿時の重心の動きを左右方向から見ると,(成)では非麻痺側方向であった.(否)では概ね直進か麻痺側方向であり,そのまま動作が継続すると麻痺側に能力以上に荷重しなければならなくなり,非麻痺側の力も十分に使えず立つことは困難である.また,離殿時,重心が麻痺側方向であった例は,ほぼ正中での離殿となり,非麻痺側の力も弱く麻痺側の力も使わないと立てなかった症例と考える.今回の対象のような立ち上がり動作に成否があり,麻痺側下肢の支持能力が不十分な段階では,非麻痺側方向に重心を動かし,非麻痺側に多く荷重をして立つほうが動作の失敗が少ないといえる.また,立てたときではFzが非麻痺側で大きかったことから,非麻痺側からのさらなる力が加わることで,重心が上方に向かい立ち上がることができたと考える.<BR>