著者
竜田 庸平 福本 礼 橋本 俊顕 岩本 浩二 宮内 良浩 小川 哲史 藤元 麻衣子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3012-A4P3012, 2010

【目的】<BR> 広汎性発達障害の原因説にはミラーニューロン(以下MN)障害説があり,MNは模倣と運動学習に関連している.今回,MNの存在する44野付近の運動模倣中の賦活状態を計測することを目的に光トポグラフィー(以下NIRS)を用いて測定し,広汎性発達障害児と健常児との間に差があるか検証したので報告する.<BR>【方法】<BR> 広汎性発達障害児群は20名(11.7±3.53歳) 障害別内訳(高機能自閉症10名・アスペルガー症候群10名)男児19名,女児1名であった.健常児群は,健常児10名(12.3±2.95歳),男児8名,女児2名であった.なお,対象は全員右利きであった.NIRSの測定は近赤外光イメージング装置OMM-3000シリーズ;島津製作所を使用した.測定は,Czより11cm側方3cm前方の44野付近を測定した.NIRSのプローペパッドを2枚用意し両側に貼り付けた. 課題には田中の改訂版随意運動発達検査を用いた. 30秒×3を1セット,合計2セット行った.1番目,3番目の30秒は休憩,2つ目の30秒は課題を行った.課題は健常成人の右手のb-4,b-5,b-6を動画撮影し,PC画面に呈示した.対象には動画上の運動を模倣してもらった.分析方法として,ビデオによる行動分析と,ピーク振幅を求めU検定を行った.加えて, 44野付近の平均加算を2群それぞれグラフ化し,目視にて分析を行った. <BR>【説明と同意】<BR> 対象者には十分に説明を行い,同意を得た後測定した.なお,本研究は当校倫理委員会の承認を得た.<BR>【結果】<BR> 広汎性発達障害児群には何らかの異常な模倣行動が認められ,健常児群には認められなかった. 異常な模倣行動の内訳として,課題施行中の集中力低下8例・鏡像模倣1例・左右逆模倣4例・鏡像模倣だが鏡になっていない模倣5例・動画と非同調な模倣13例であった.U検定の結果,課題の1セット目では,24個中10個のチャンネル(以下CH)で,2セット目では24個中8個のCHで広汎性発達障害児群が健常児に比べ有意に低かった. 中でも,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は44野付近の12CHと23CHが1セット目2セット目にわたり,有意に低下していた. 44野付近の平均加算の結果,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は,平坦なグラフとなり,44野付近の活動が確認できなかった.健常児群では課題施行中にoxy-Hbが上昇するグラフとなり,44野付近の活動が確認できた.<BR>【考察】<BR> 模倣は6歳前半に完成するとされている.模倣には身体図式が関係しているため,広汎性発達障害児群も身体図式に障害があったのではと考える.人が身体図式を利用するにはMNが関係し,広汎性発達障害児の場合,MNに障害があるために身体図式を用いたdirect matchingがうまく機能していないことが考えられた.実際に広汎性発達障害児群は,44野付近のCHで有意差が見られ,平均加算データも,健常児群と比較して平坦になっていた.このことはdirect matchingの機能をうまくコントロールできていない状態をリアルタイムに採取できたと考える.運動学習は3段階に分けられ,このなかでも初期の認知段階では教示・示唆・運動見本の提示が重要となる.この初期の認知段階には模倣を必要とし,模倣を行うことによって運動学習の見本を自己にインプットする.Meltzoff(1989)によると模倣行動は新生児より出現するとの報告があり,新生児の時期からの模倣行動の重要性が伺える.しかし,これら模倣に関連した44野を含むMNシステムに障害があるとされる広汎性発達障害児において,運動学習には不利な状況であることが今回の研究により考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 模倣とコミュニケーション能力,模倣とMNの研究,模倣と身体図式等,いろいろな方面から模倣に対する研究が盛んに行われており,模倣を理解することは,運動学習を教示する立場である私たちにとって有益なものになると考える.
著者
横地 雅和 高山 茂之
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O1135-C3O1135, 2010

【目的】人工膝関節置換術(以下TKA)は関節リウマチ(以下RA)や変形性膝関節症(以下膝OA)患者の除痛効果が得られ、ADLやQOLの向上につながり、近年広く施行されている手術法である。当院においてもTKAは多く施行されているが、その術後の特徴として膝関節屈曲時に大腿内側部痛を訴える症例が圧倒的に多い。今回、TKA術後の大腿内側部痛の解釈とその運動療法について考察したため報告する。<BR><BR>【方法】当院で平成21年4月から9月までにRA又は膝OAと診断され、TKAを施行し、演者が理学療法を担当した12例13膝について検討した。RAは4例5膝(両側TKA例1例)、膝OAは8例8膝であった。年齢は38歳から85歳(平均年齢71歳)で、性別は男性2例、女性11例であった。TKAは全例でDepuy社製P.F.Cシグマ人工膝関節システムを用い、進入法はmid vastus法にて展開した。検討内容としては膝関節屈曲時に大腿内側部痛の割合について検討を行った。また、大腿内側部痛を訴えた症例については1,疼痛の発現時期2,知覚・感覚鈍麻の有無3,圧痛所見の有無4,股関節の肢位における膝関節屈曲可動域と疼痛の変化5,運動療法の効果についても検討を行った。<BR><BR>【説明と同意】本研究を行うにあたり対象者に研究の主旨を説明し、同意を得た。<BR><BR>【結果】TKA術後に大腿内側部痛を訴えた症例は13例中10例(76,9%)に認めた。疼痛の発現時期は全例が術直後よりみられ、膝関節屈曲時に疼痛は増強し、VASで7~9と耐え難い疼痛を認めた。知覚・感覚鈍麻を認めた症例は10例中9例であり、膝関節内側から下腿の内側部に知覚鈍麻を認めた。また、圧痛所見としては、内側広筋に全例に認め、内転筋結節には9例認め、そのうち7例は大腿内側に鋭い疼痛を訴え、大腿から下腿の内側にかけて広範囲に放散痛を認めた。股関節の肢位における膝関節屈曲可動域の変化は全例に股関節内転位にて屈曲可動域の増大を認めた。また、股関節内転位にて疼痛が軽減し、外転位にて疼痛が増強するものは9例に認めた。運動療法は大腿内側部痛を訴えた群には浮腫除去や内側広筋のリラクゼーション、大内転筋のストレッチング、伏在神経の滑走訓練を重点的に行い、その後、膝関節可動域訓練を実施した。その結果、退院時(術後3週)における大腿内側部痛は全例に軽減(VAS0 ~3)を認め、そのうち6例は消失した。<BR><BR>【考察】TKA術後は炎症による疼痛や可動域制限を認め、苦痛を伴うことも稀ではない。当院でのTKA術後の膝関節屈曲時痛は圧倒的に大腿内側部に多く、その割合は76,9%と多くの症例に認め、安静時にも疼痛を認めることもある。また、膝関節から下腿の内側にかけてしびれや感覚鈍麻を合併していることが多いことから、疼痛の原因としては伏在神経が関与していると推察した。伏在神経は膝関節内側から下腿の内側の皮膚神経支配をしている。走行としては大腿神経から分枝し、大腿内側を走行し、内転筋管を通過して下腿内側を走行するといった解剖学的特徴をもっており、股関節外転、膝関節屈曲にて伸長される。股関節外転位での膝関節屈曲時に疼痛が増強し、内転位にて疼痛が軽減することからも膝関節屈曲時痛は伏在神経が関与していると考えられた。石井によると伏在神経は内転筋管での絞扼神経障害が生じやすいとしている。TKAの進入法はmedial parapatella法やsubvastus法、midvastus法で展開されることが多く、当院でのTKAの進入法はmidvastus法を用いている。midvastus法は大腿四頭筋腱の付着部まで展開し、内側広筋の筋線維に沿って筋膜を展開する方法で他の進入法に比べて内転筋管の近くにまで侵襲が及ぶ進入法である。術後には浮腫や腫脹により内圧が高い状態に加え、内側広筋やその周囲へと炎症が波及することで伏在神経の絞扼障害と滑走障害が生じていると考えた。運動療法については伏在神経の絞扼・滑走障害を起こしている因子を一つずつ改善することを目的に浮腫除去や内側広筋のリラクゼーション、大内転筋のストレッチング、伏在神経の滑走訓練を実施した。その結果、膝関節屈曲時における大腿内側部痛の軽減・消失し、改善したと考えた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】当院におけるTKA術後の膝関節屈曲時痛について検討した。疼痛の誘発と軽減する条件や圧痛所見などから伏在神経が関与していると推察した。疼痛因子を把握することは運動療法を進めていくには重要であり、ROM制限因子ともなりうる。今回の検討によって膝関節屈曲可動域訓練時における過分な疼痛を軽減することができたと推察される。進入法を考慮した運動療法を展開することで、疼痛軽減につながる経験を得たことは、理学療法学研究として意義があると考える。
著者
沖住 省吾 竹内 文夫 土屋 幸代
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1155-E1155, 2006

【はじめに】当通所リハビリテーションでは個別療法導入後、過半数の症例において日常生活自立度の維持・改善を認めたが、社会参加の向上には至らなかった事を第40回全国理学療法学術大会で報告した。そこで今回、屋外造園作業(以後、造園活動とする)を療法の選択肢として導入し、活動能力や社会参加におよぼした影響を検討したので報告する。<BR>【造園活動について】造園は利用者を交えながら、介助・監視下で種々の活動を実施するものである。活動の内容は、1、庭園整備:デザイン・造園、草むしり、芝刈り、枯れ草集め、石拾い、花壇作りなど。2、畑作業:菜園収穫、園芸、水撒き、木実の収穫など。3、生き物飼育。4、運動:庭園散策による歩行耐久性、不整地歩行、運動会などである。<BR>【対象および方法】追跡期間は、平成15年4月から平成17年4月までの約24ヶ月間であり、造園企画は平成15年11月に発足した。対象は通所リハビリテーション利用者のうち、個別療法を併用し且つ追跡できた75例である。この75症例中造園活動が併用できた症例は47名であった。活動能力の指標はBarthel index(以下BIと略)と老研式活動能力指標(以下活動指標と略)を用いた。活動指標は「自治会や老人会への参加」と「生きがいあるいは宗教」の2項目を加え15項目で評価し、BIと比較しやすいように百分率で表した。新たな療法が選択でき、期待される内容も変化したのでニーズの変化も合わせて調査した。<BR>【結果】75例のBIは改善27名36%、26名35%が維持され、21名28%が低下していた。屋外造園活動を併用した47名の内BIが低下した例は13%であり、その他は維持・改善の経過をたどった。更に造園活動併用者の内BI改善群を抽出するとBI平均79点から93点へと有意に向上し、活動指標も29%から38%に向上した。一方、ニーズ変化では次の特徴を示していた。造園活動前は活動性に関するニーズは皆無であり、シビレや除痛、麻痺肢の回復などの機能的ニーズが多くを占めていた。しかし、造園活動導入後は、屋外活動や趣味・余暇活動などが全ニーズの24%を占めるようになった。興味深いのは、造園活動の有無に関わらず、立ち上りや移動手段が全ニーズの30%以上を占め最も多かった事である。<BR>【考察】造園活動は、活動能力に加えて社会参加の向上、生きがい作りとしても好影響をもたらした。造園活動を開始する前は、室内の限られた環境での活動がほとんどであったが、活動範囲の拡大により運動量の増加と感情抑揚や動くことに対するモチベーションに変化をもたらしたものと考える。また、以前は環境安全面などに障壁があり、趣味や余暇活動をあきらめざるを得なかった境遇の人たちが多かったが、今回のアプローチ導入によって、これまで成しえなかった事が安全な環境と適切な介助量のもとで実行できるようになり、生活意欲や趣味・余暇活動に対する更なる動機付けに結びついたものと思われる。
著者
米田 浩久 實光 遼 松本 明彦 岩崎 裕斗 金子 飛鳥 守道 祐人 鈴木 俊明
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101928-48101928, 2013

【はじめに】課題指向型の運動学習条件としてpart method(分習法)とwhole method(全習法)がある(Sheaら,1993)。このうち分習法は獲得する動作を構成する運動要素に区分して別々に練習する方法であり、全習法は獲得する動作をひとまとめに練習する方法である。全習法は分習法と比較して学習効果が高く、運動学習の達成度は早い。これに対して分習法は学習した運動の転移が可能なことから難易度の高い運動に有用であるが、獲得から転移の過程を経るため全習法よりも時間を要する。一方、理学療法では早期の動作再獲得を図るため障害された動作の中核を構成する運動を選択的かつ集中的にトレーニングする分習法を採用することが多く、1 回あたりの治療成績は全習法よりもむしろ分習法の方が良好であり、早期に改善する印象がある。そこで今回、分習法による早期学習効果の検討を目的にバルーン上座位保持(バルーン座位)による下手投げの投球課題を用いて全習法と分習法による運動学習効果を比較検討した。【方法】対象者は健常大学生24 名(男子19 名、女子5 名、平均年齢20.4 ± 0.4 歳)とした。検定課題は以下とした。両足部を離床した状態でバルーン(直径64cm)上座位を保持させ、2m前方にある目標の中心に当てるように指示し、お手玉を非利き手で下手投げに投球させた。バルーン上座位は投球前後に各5 秒間の保持を要求し、学習課題前後に各1 回ずつ実施した。目標から完全にお手玉が外れた場合と検定課題中にバルーン座位が保持できなかった場合は無得点とした。目標は大きさの異なる3 つの同心円(直径20cm、40cm、60cm)を描き、中心からの16 本の放射線で分割した64 分画のダーツ状の的とした。検定課題では最内側の円周から40 点、30 点、20 点、10 点と順次点数付けし、その得点をもって結果とした。学習課題は3 種類の方法を設定し、それぞれA〜C群として無作為に対象者を均等配置した。全群の1 セットあたりの練習回数は5 回、セット間の休憩時間は1 分とした。A群では検定課題と同様の方法でバルーン上座位保持による投球をおこなわせた。実施回数は主観的疲労を感じない回数として12 セット実施した。B群は、まず椅座位での投球を6 セット実施した後、バルーン上座位を6 セット実施した。C群では椅座位での投球とバルーン座位を交互に6 セットずつ実施した。学習課題ではお手玉が当たった分画の中央の座標を1 試行ずつ記録し、中心からの距離と方向とした。得られた結果から、検定課題では学習前後での得点の比較をおこない、学習課題では各群の成功例を基に投球結果座標による中心からの平均距離を標準偏差で除した変動係数とセット間の平均距離の比の自然対数を基にした変動率による比較をおこなった。統計学的手法は、検定課題では学習前後の結果比較に対応のあるt検定を用い、A〜C群の比較として検定・学習課題ともにKruskal-Wallis検定とBonferroni多重比較法を実施した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮】対象者には本研究の趣旨と方法を説明のうえ同意を書面で得た。本研究は関西医療大学倫理審査委員会の承認(番号07-12)を得ている。【結果】学習課題前後の検定課題の平均得点(学習前/学習後)は、A群11.3 ± 16.4/26.3 ± 15.1 点、B群6.3 ± 9.2/33.8 ± 7.4点、C群10.0 ± 15.1 点/18.8 ± 16.4 点であり、B群で有意な学習効果を認めた(p<0.01)。学習課題中の投球結果の変動係数はA群19.67 ± 1.06、B群8.42 ± 0.49、C群13.50 ± 1.24 で、A群に対してB群で有意な減少を認めた(p<0.05)。また、学習中の投球結果の変動率は群間で有意差は認められなかったものの、他群に対してB群で安定する傾向を認めた。【考察】Winstein(1991)は、分習法はスキルや運動の構成成分を順序付ける過程の学習であるとしており、運動全体の文脈的な継続性を考慮して動作を学習させる必要があるとしている。本研究ではB群によって検定・学習課題とも他群に比べて良好な結果を得た。B群では分習法により投球とバルーン上座位を各々別に集中して学習したが、運動学習中の変動係数の減少と変動率の安定化を認めたことから、バルーン上座位での投球の重要な要素である動的姿勢を集中的に獲得できたことが全習法に対して効果が得られた成因であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から運動学習課題の設定によっては、全習法よりも学習効果が得られる事が示唆された。特に運動時の姿勢の改善を目的とする学習課題を分習法に組み込むことによって学習効果が向上する可能性があり、理学療法への分習法の応用に有用であると考えられる。
著者
戸渡 敏之 久野 雅彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0692-D0692, 2005

【はじめに】糖尿病(以下DM)患者の運動療法においてwalkingを指導する機会は多い。当院では8日間の入院DM教室において、理学療法士が1回の講義と5回の運動療法の一種目としてwalkingを実施している。講義内容は運動療法の目的、注意点に加え、脈拍触診法、自覚的運動強度の説明などであり、運動強度の処方は個別に換気性作業閾値(VT)もしくはKarvonen法により算出した脈拍数の80~100%として設定している。またwalkingは病院敷地内に1周450mのコースを作成しており、カロリーカウンターを装着して実際に25分程度運動を体験してもらっている。そこで今回、今後の参考とする目的で、walking実施状況に関する実態調査を行い、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】平成12年5月~平成16年4月までのDM教室にてwalkingに3回以上参加し、コースを3周(1,350m)以上可能であった者136名(男性96名、女性40名、年齢55.1±12.6歳;以下平均±SD)を対象とした。調査方法はPT実施記録よりretrospectiveにデータを調べた。統計処理は、解析ソフトDr SPSS II for Windowsを使用し、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】対象者の入院時HbA1cは、10.8±2.4%であり、DM発症から6.4±6.8年経過していた。合併症については、網膜症:35名(25.7%)、腎症:23名(16.9%)、神経障害:25名(18.4%)にみられた。walking実施回数は4.8±1.6回であり、歩行距離は1831.5±239.9mで、歩数は3075.7±423.4歩となっていた。また運動時間は27.3±4.1分であり、消費カロリーは102±26.7kcalであった。さらにwalking指導中に低血糖や胸痛発作はなかった。脈拍触診法については、可能97名(71.3%)、不能39名(28.7%)であり、触診可能群と不能群との比較では、年齢:可能群52.4±12歳、不能群61.9±11.6歳(p<.001)、発症からの期間:可能群5.3±6年、不能群8.9±8.1年(p<.05)、性別:可能群(男性74名、女性23名)、不能群(男性22名、女性17名)(p<.05)で有意差を認めた。そして処方脈拍数と実施脈拍数の差は、処方範囲内115名(84.6%)、超えた者15名(11%)、下回った者6名(4.4%)となっており、3群の比較で統計学的有意差はなかった。<BR>【考察】参加者に脈拍触診法を指導しているが、自己で触診できる者は約7割程度であり、残りの3割は脈拍により運動強度を判断することができなかった。触診ができないケースの特徴として、年齢が高く、罹患期間が長く、女性に多い傾向がみられており、触診能力を早期より把握し不能な場合、自覚的運動強度の指導を積極的に行う必要性が再認識された。また処方脈拍数との差異については、処方範囲内が約85%となっており、残りの約15%は適切な運動強度に達していないと考えられ、運動強度の指導方法を再検討する必要性が示唆された。
著者
塚越 累 大畑 光司 福元 喜啓 沖田 祐介 高木 優衣 佐久間 香 高橋 秀明 木村 みさか 市橋 則明
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101012-48101012, 2013

【はじめに、目的】Honda製リズム歩行アシスト装置(以下,歩行アシスト)は,歩行時の股関節の屈曲伸展運動を補助するトルクを負荷することによって歩行障害者の歩行の改善を目指すものである。これまでの我々の研究から,歩行アシスト使用中は下肢関節の角度範囲の増加や関節モーメントの増加が認められているが(日本臨床バイオメカニクス学会:2012),歩行アシストの効果が使用後に残存するか否かは明らかではない。本研究の目的は,若年者および高齢者における歩行アシスト使用後の歩行変化を動作解析および下肢筋活動分析の側面から検証することである。【方法】若年者17名(平均年齢25.1±3.8歳,男性9名)および日常生活と外出が自立している高齢者13名(平均年齢76.9±4.3歳,男性7名)を対象とし,歩行アシスト使用前および使用直後の自由歩行時の三次元動作解析と筋電図解析を行った。歩行アシストが発生させる股関節へのアシストトルクは,屈曲・伸展方向とも6Nmとし,使用時間は3分間とした。三次元動作解析装置および床反力計を使用し,歩行時の下肢関節角度,内的モーメントおよびパワーを測定した。筋電図解析の対象筋は右側の大殿筋,中殿筋,大腿直筋,外側広筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,ヒラメ筋とした。得られた筋電図生波形を全波整流し50msのRoot mean squareを求めた後,最大等尺性収縮を100%として正規化し,それぞれ立脚期と遊脚期の平均値を算出した。歩行課題は各3回測定し,分析には3回の平均値を使用した。各測定項目について,測定時点(使用前,使用後)と群(若年群と高齢群)を2要因とした二元配置分散分析を行った後,交互作用が認められた場合には群内での比較を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究計画は本学倫理委員会にて承認されており,対象者には研究実施前に研究内容について十分に説明し,書面にて同意を得た。【結果】歩行アシスト使用後に歩行速度は有意に増加した(全体;使用前1.19±0.15m/s,使用後1.27±0.13m/s)。ステップ長には有意な交互作用がみられ,高齢群のみ使用後に有意な増加が認められた(若年群;前0.64±0.06m,後0.65±0.05m,高齢群;前0.58±0.06m,後0.63±0.06m)。歩行率には有意な変化は見られなかったものの,若年群において増加する傾向にあった(若年群;前118±7steps/min,後121±9steps/min,高齢群;前116±11steps/min,後115±12steps/min)。歩行アシスト使用後は,使用前に比べて初期接地時の股関節屈曲角度,立脚後期の股関節最大伸展角度(全体;前12.6±7.2度,後14.6±8.4度)および遊脚期の股関節最大屈曲角度が有意に増大した。また,荷重応答期における股関節伸展モーメントと股関節伸展筋求心性パワーはアシスト使用後に有意に増加したが,立脚後期の股関節屈曲筋遠心性パワーの増加は高齢群のみに認められた。膝関節では,荷重応答期の屈曲角度および伸展モーメントの増加が認められ,遊脚中期の最大屈曲角度も使用後に増大した。一方,遊脚後期の膝関節屈曲モーメントは高齢群のみ有意な増加がみられた。足関節の角度にはアシスト使用前後における有意な変化は無かった。筋電図解析では,立脚期の大殿筋の筋活動が使用後に有意に増加していた。また,立脚期の大腿直筋に有意な交互作用が認められ,高齢群のみ有意な活動増加を示した。【考察】本研究の結果から,歩行アシストは使用直後の歩行速度の増加に対して効果的であることが明らかとなった。統計的に有意ではなかったものの若年者では歩行率が上昇する傾向にあり(p=0.07),高齢者ではステップ長の有意な増加が認められた。このことから,若年者では歩行率,高齢者ではステップ長の増加が歩行速度上昇の主な要因と考えられた。運動学的・運動力学的変化としては,立脚後期の股関節最大伸展角度や荷重応答期の股関節伸展モーメントおよび股関節伸展筋求心性パワーがアシスト使用後に増加していることから,これらが歩行速度の向上に大きく影響した可能性がある。この股関節伸展モーメントの変化と関連する筋活動変化として,大殿筋筋活動が増加したと考えられた。これに加えて,高齢者では立脚後期の股関節屈曲筋遠心性パワーが有意に増加しており,高齢者のみにみられたステップ長の延長に寄与していると思われた。歩行アシスト使用後に歩行動作の変化が見られたことは,この歩行補助装置の有用性の一側面を明らかにしたものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】近年,研究開発や臨床応用がすすめられているロボティクスリハビリテーションは,将来的には理学療法の重要な手段となる可能性がある。本研究の結果は,歩行補助ロボットが高齢者や有疾患者の歩行能力の改善を促進させる可能性を示しており,理学療法の発展に寄与すると思われる。
著者
笠原 千絵 遠藤 惇 中村 絵理
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1278-Eb1278, 2012

【はじめに、目的】 当院回復期リハビリテーション病棟では、診療報酬改定により創設された休日リハビリテーション提供体制加算を、平成22年6月よりPT・OTの日曜出勤を開始した事で取得している。休日リハビリテーションを開始した事による効果を調査し、その必要性を患者および家族に理解してもらうため、リハビリテーションの効果判定の1つのFIM変化を中心に開始前後を比較した研究を行い報告する。【方法】 平成22年4月~平成23年3月の間に、当院回復期リハビリテーション病棟を退院した患者の内、休日リハビリテーション提供体制加算(以下:加算)を取得開始した6月をまたいで入退院のあった患者を除外した114名(開始前群17名、開始後群97名)を研究対象とした。加算取得開始前群(以下:A群)および開始後群(以下:B群)について、性別、年齢、疾患区分、高次脳、退院時HDS-R得点、同居人数、リハ単位数(1ケ月の総単位数/入院人数)、入院期間、退院先、入院時FIM得点、入退院時FIM得点変化、FIM利得(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点)、FIM効率(FIM利得/入院日数)について比較した。統計処理として、Welchの二標本t検定、一標本t検定、対応のあるt検定を用い、有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、データ収集後個人情報を除去し、個人を特定できないよう処理した上で行った。【結果】 性別は、A群は男性8名、女性9名、B群は男性46名、女性51名であった。平均年齢は、A群は76.8±8.0歳、B群は74.8±13.6歳であり、群間での差は無かった(p値0.4223)。疾患区分は、A群は脳血管疾患23.5%、運動器疾患52.9%、廃用症候群23.5%、B群は脳血管疾患44.3%、運動器疾患37.1%、廃用症候群18.6%であった。高次脳機能障害の有無は群間での差は無かった(p値0.4893)。退院時HDS-R得点は、A群: 29~21点4名・20~11点3名・精査困難10名、B群:30点11名・29~21点30名・20~11点18名・10~0点15名・精査困難23名であり群間での差があった(p値0.02561)。同居人数は、群間での差は無かった(p値0.2622)。リハ単位数は、群間での差が無かった(p値0.1198)平均入院期間は、A群は70±45.6日、B群は81.8±52.8日であり、群間での差は無かった(p値0.3601)。退院先は、A群は自宅52.9%、施設17.6%、病院29.4%、B群は自宅54.6%、施設28.9%、病院14.4%、死亡2.1%であった(特養は施設に分類している)。入院時FIM得点は、排尿コントロールのみ群間での差があった。入退院時FIM得点変化では、A群では排尿コントロール、移乗(トイレ)、移動(階段)、理解、社会的交流に有意差があった。B群では、排尿コントロール以外の全ての運動項目、社会的交流、問題解決、記憶に有意差があった。FIM利得、FIM効率については、有意差は見られなかった。【考察】 入退院時FIM得点変化で、入院時FIM得点に差のあった排尿コントロールを除いた項目で、変化に差のあったものは、A群で4項目、B群で15項目であり、特にB群では運動項目での差が多かった。これは、当院ではPT・OTとも運動項目での介入を行う場合が多く、そのため運動項目での差が出ていたと考えられる。退院時HDS-R得点、疾患別割合に差があった事は結果に影響している可能性がある。リハ介入日数は休日リハ開始により増加しているが、リハ単位数に差は無かった。先行研究において、総運動量が同じならば毎日のリハ提供がADL改善に効果的であるとの報告がある。日曜にリハビリテーションが休みで、臥床傾向にあった患者に対して、PT・OTが介入する事により、離床およびADL練習等に積極的に介入できたためであると考えられる。入院期間に差が無かったのは、当院では入院時に疾患別の入院期間を提示されており、その期限を目安に退院準備をしているためと考えられ、FIM得点向上が入院期間短縮に結び付くためには、早期からの多職種による退院支援が必要と考えられる。今回の研究では、FIM得点向上のみでは入院期間短縮や自宅復帰率向上に結び付かないという結果であった。FIM向上に加えて、何の要因が入院期間短縮や自宅復帰率向上に結び付くのかを、今後の調査で明らかにし、対策をしていく必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 休日リハビリテーションによる効果について検証する事は、その必要性を患者および家族に理解してもらうために必要であると考えられる。
著者
松居 和寛 井上 達郎 戸口田 武史 村上 まゆ 土田 和可子 波之平 晃一郎 河原 裕美 藤村 昌彦 弓削 類
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0014-A0014, 2008

【目的】<BR>近年,笑いが身体に与える影響についての報告がみられる.その多くは,免疫などにおける身体的影響,感情プロフィール検査(Profile of Mood States,以下POMS)などの気分尺度を用いて精神的影響について検討されている.しかし,笑いを定量化した論文は極めて少ない.そこで,筋電図(以下EMG),リアルタイム笑顔測定ソフト(OMRON,以下ソフトウェア)を用いて笑いを定量化し,分泌型免疫グロブリン量(SIgA),POMSによる気分尺度を比較した.さらに,EMGとソフトウェア間の相関についても検討を行った.<BR>【方法】<BR>本研究に同意の得られた男女20名(男性10名,女性10名,平均年齢22.4±0.5)を対象とした.EMGによる定量群10名(男性5名,女性5名),ソフトウェアによる定量群(男性5名,女性5名)の二群に分けた.1施行につきEMG群2名,ソフトウェア群2名の計4名で実験を行った.コントロール群として,風景スライド視聴による安静の後、ドキュメンタリービデオを視聴させた.ドキュメンタリービデオの前後で,唾液採取,POMSの記入を行ってもらった.ビデオ視聴後は,ビデオに対する反応をVASを用いて評価した.介入群として,ドキュメンタリービデオを笑いのビデオに替えて視聴させた.以上の施行に関しては,コントロール,介入の順番をランダムとした.ビデオは,すべて8分19秒で統一した.筋電図の電極の貼付位置は,頬骨突起と口角を結ぶ線の中央とした.唾液の採取は,サリベットを用いてサンプリングし,-70°C~-80°Cで冷凍保存した後,ELISA法にて計測した.筋電図による定量は、ビデオ視聴後の積分筋電図をビデオ視聴前のもので除し求めた。さらに、介入群で求めた値を,コントロール群の値で除すことで笑いの増加量とした.ソフトウェアによる定量化は,安静時の値からの増加量を笑いの量とした.<BR>【結果】<BR>EMG増加量の平均値は1.7±0.8であった.ソフトウェアの増加量の平均値は38(%)であった.笑いのビデオの面白さに関するVASの平均値は6.3±2.1であった.POMSにおいて,「活気」の値は,笑いのビデオ視聴後に増加傾向を,それ以外の項目に関しては減少傾向を示した.<BR>【考察】<BR>これまでに筋電図を用いて笑いを測定する報告はみられる.本研究では,ソフトウェアと筋電図におけるデータを比較検討することで,笑いの定量化が出来る可能性が示唆された.
著者
清岡 学
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G4P2321-G4P2321, 2010

【目的】<BR>昨今の医療情勢を鑑みると、理学療法士に求められる専門性や社会性については、個人はさることながら高知県理学療法士会(以下、県士会)としても質の向上と改善策を打ち出してゆく必要性がある。そこで、県士会職能部において県士会会員の就業している施設の人事担当者を対象に、理学療法士に対する専門意識と就業状況を調査し、現状把握と課題の抽出を目的として実施した。<BR>【方法】<BR>県士会会員789名が勤務している161施設の人事担当者に対し、アンケート方式で調査を行った。<BR>【説明と同意】<BR>アンケートは県士会職能部で作成し、理事会にて倫理的問題が無いか精査して実施した。配布にあたっては目的を明示するとともに、可能な範囲での無記名回答とし、催促は行わないことで実施した。実施後の苦情・クレームは無かった。<BR>【結果】<BR>161施設中103施設から返送があり、回収率は63.9%であった。<BR>会員の分布は、103施設789名中、485名が県の中央区域に就業している。求人数については平成19年度161名から平成21年度112名と減少している。就業体制で日曜・祝日勤務を実施している施設は16施設10%と少なく、73施設45%は未実施である。休日出勤の手当てについては80%の施設で支給されていない。<BR> 人事担当者の考える、理学療法士に不足している専門意識としては、課題解決能力、協調性、多職種との連携、マネージメント能力等が挙げられ、強く改善を求める意見が大半である。自由記載でも理学療法士の意識改善の要望が多かった。<BR>【考察】<BR>今回の調査の結果、県内の理学療法士の分布には地域格差があるにもかかわらず、求人数の減少傾向が現れ始めている。県士会としては理学療法士の必要性について、より積極的に啓蒙するとともに職域拡大を真剣に考えなくてはならない。また、日曜・祝日出勤についても実施施設は少ないが、今後拡大の可能性は高い。施設の状況に応じた対応が重要であろう。<BR> 人事担当者の理学療法士に対する専門意識は総じて評価が低い。個人的な要因も大きく県士会としての対応は難しいが、新人教育のあり方を含め、対策は必須の状況である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>理学療法士の需給バランスが崩れつつある中、県士会としての対応を真剣に考える機会となった。また、信頼される専門職となるべく教育・育成体制の構築が急務となった事が明白となった。今後の理学療法士の発展を左右する非常に重い課題として受け止めた。
著者
筧 重和
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1477-GbPI1477, 2011

【目的】性同一性障害とは,医学的な疾患名である.性同一性障害の定義は,生物学的には完全に正常であり,しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知していながら,その反面で人格的には自分が別の性に属していると確信している状態,とされている.治療としては,第1段階(精神療法),第2段階(ホルモン療法),第3段階(手術療法)の順で行なわれる.精神療法では,これまでの経過や今後の人生において,どちらの性別で暮らすのが良いのかを検討する.精神療法は,ホルモン療法や手術療法の前,あるいは継続中,終了したあとにも引き続き行なわれる.第2段階のホルモン療法は,十分な精神療法が行われた後に行なわれる.身体的,精神的な安定感を得るためにはホルモン療法が必要と判断された場合は,ホルモン療法を行なう.男性が女性性を望む時は女性ホルモンを,女性が男性を望むときは男性ホルモンが投与される.第3段階の手術療法は,外性器形成,乳房・内性器切除が必要とされた時に行なわれる.今回,入学試験合格通知後,性同一性障害である事の報告を受け対応を行なったので報告する.<BR><BR>【方法】平成15年秋より大学病院にて,3~6ヶ月毎に精神科医師との面談治療を受け,並行して染色体検査や心理検査などを受けていた.翌年春より,院外の美容形成外科にてホルモン治療を開始した.ホルモン治療は,2週間隔で筋肉注射を行っていた.同年夏,同病院にて美容形成手術を行った.改名については,家庭裁判所へ申し立てを行い受理されていた.その後,理学療法士を志し平成16年入学試験受験に至った.入学後,戸籍変更を行うために性別再判定手術を受け,その後書類を家庭裁判所へ提出・受理を経て戸籍変更が認められた.<BR><BR>【説明と同意】第45回日本理学療法士学術大会で発表を行うにあたり,本人の同意を得ている.<BR><BR>【結果】入学に際し,厚生労働省(以下厚労省)に確認を行った.確認内容は,入学時の戸籍の性別と卒業時の戸籍の性別が変わる可能性があり,このような場合においても国家試験受験資格および国家資格取得に問題は生じないか、という点である.厚労省より,学校が入学を認めれば特に問題はないが文部科学省(以下文科省)にも確認をして欲しい,との返答であった.文科省に確認した所、厚労省との返答と同じであり,学校が入学を許可すれば問題ない,との事であった.問い合わせ,返答についてはすべて電話で行なった.厚労省,文科省の返答後,入学を希望する受験生と現在の状況確認を行なった.受験生よりの希望は,次の2点であった.戸籍上の性別ではないトイレの使用,更衣室の利用,であった.この点に関して,学校で協議し使用の許可を認めた.<BR>学校より受験生には,カリキュラムの中で体表解剖学実習や徒手筋力検査の演習講義があり,学生同士でも体に触れる事がある事を伝えた.この点に関しては,受験生より戸籍上の性別ではない学生とペアを組ませて欲しい,との要望があった。この点に関しては,教員がペアの組み合わせを配慮する事により,特に問題なく演習講義を受講することができた.入学後,特に大きな問題は起きず卒業している.<BR><BR><BR>【考察】今回,性同一性障害により,入学後戸籍が変わることは国家試験受験資格,国家資格取得に際して何の問題もなかった.学内の対応としては,教員が学生の状況を把握し,教員と学生が綿密に対応を検討する事で学内生活に支障をきたさないようにすることができた.養成施設として受入を行う際には,本人と綿密な打ち合わせを行い,入学後問題が起きないように対応することが重要であると考える.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】さまざまな疾患や障害がある中でも,理学療法士を志す者は少なくない.理学療法士が医療技術者の一員として,またリハビリテーションに携わる中では,これらの者に対し門戸を開いていく必要がある.養成施設として入学を許可していく中では,理学療法士資格取得までの対応を今後更に検討する必要があると考える.
著者
三浦 雅史 川口 徹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1152-Cb1152, 2012

【目的】 シンスプリント(過労性脛部痛)は多くのスポーツ選手に出現する慢性スポーツ外傷の一つである。主な症状としては脛骨内側部の圧痛や運動痛が挙げられる。2004年、著者はこの脛骨内側部の疼痛軽減を目的に「シンスプリント用装具(以下、本装具)」を開発した(平成22年5月28日特許取得、特許第4520842号)。2005年~2008年、2010年~2011年(第40~43回、45~46回日本理学療法学術大会)には、本装具が疼痛軽減効果を有することを報告した。2005年の第40回大会では、本装具とテーピング療法について比較・検討し、同等の効果を有することを報告した。一方、テーピングは、一般にその効果の有効性は認識されてはいるが、コストがかかり過ぎるといった点を指摘されることも多い。本研究では治療コストに焦点を当てた。本研究の目的は、シンスプリントの治療として、本装具とテーピングをコスト面から比較・検討することである。【方法】 対象はA高校の男女バスケットボール部に所属する高校生とした。男子部員は32名、女子部員は36名であった。その内、シンスプリントと診断されている部員は6名(男子2名、女子4名)であり、本調査対象とした。この6名は薬物療法等の加療を受けておらず、多くが湿布やアイシングといったケアを実施している者であった。彼らに対し、シンスプリント用のテーピングの巻き方を事前に指導した。テーピングの方法は患部を非伸縮性テープで圧迫する方法とし、25mm、50mmのテープを使用した。また、ラッピングのために50mmの伸縮性テープも使用した。事前に一定量のテーピングを提供し、シンスプリント以外の目的で使用しないようお願いした。テーピングの管理は2名のマネージャーにお願いし、不足が生じた場合はすぐに補充できるようにした。調査期間は2011年5月~7月までの3か月間とした。練習日誌から、練習日数やテープの使用状況を1か月毎に調査した。なお、大会や練習試合については本調査から除外した。今回の調査はテープの使用状況から費用を算出し、本装具の価格と比較した。本装具の価格は5,800円であった。【説明と同意】 本研究を実施するためにA高校校長及びバスケットボール部顧問に対し、研究の趣旨を説明し理解を得た。また、調査対象とした6名の部員及び保護者に対し、文書にて研究の趣旨を説明し、同意を得た上で参加して頂いた。【結果】 調査開始1か月目の練習日数は17日でテーピングの費用は52,820円であった。2か月目の練習日数は20日でテーピング費用は51,200円であった。3か月目の練習日数は19日でテーピング費用は49,900円であった。3か月間の総練習日数は56日でテーピングの総費用は153,920円であった。テーピングの総費用を対象者数で除した場合、3か月間に使用した一人あたりのテーピング費用は25,653円となった。さらに、練習日数で除した場合、1回あたりの費用を算出すると458円であった。本装具の価格(5,800円)を1回あたりのテーピング費用で除した場合、12.6回分であった。【考察】 テーピングは多くのスポーツ現場や臨床現場において日常的に使用される。しかし、毎回、練習毎に使用されるため、常にランニングコストが問題となってくる。今回、3か月間の調査から、テーピングと本装具とを比較した場合、テーピングの使用が12.6回分(約3週間)を超えると、テーピングにかかる費用が装具の価格を上回ってしまう結果となった。すなわち、本調査のように仮に3か月間テーピングを使用した場合、約2万円近い費用が余計に支出することとなる。もちろん、テーピング、装具それぞれに利点・欠点があり、決してテーピングを否定するものではない。ただし、同程度の治療効果が期待できるのであれば、コストの低い治療法を選択することは当然である。特にシンスプリントの疼痛については慢性化によって難渋するケースも多く、治療の長期化や再発例が少なくない。よって、シンスプリントに対しては治療効果とコストの両者から鑑みると、本装具は有効な手段になるのではないかと考えている。【理学療法学研究としての意義】 これまで理学療法では「治療効果」に関する研究は多々存在するが「治療コスト」に着目した報告は少ない。今回調査したシンスプリントのように長期間の治療を要する疾患では、治療効果・コストの両者の面から検討することが重要である。本研究を通し、コスト面への意識を提言できた点は意義ある研究ではないかと考える。
著者
梶村 政司 森田 哲司 政森 敦宏 小川 健太郎 児玉 直哉 小林 功宜 山本 真士 奈良井 ゆかり 濱崎 聖未 田中 亮
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1469-GbPI1469, 2011

【目的】<BR> 管理者の業務には,目標管理や人材育成,時間管理,情勢分析等がある。その中でも,人材(部下)育成は部署内の業務遂行上効率化に影響を与える内容である。<BR> そうした人材育成の最終目標は部下の自律的な創意工夫,創造力の醸成が可能になることであり,現場においてはどんな指導・教育ができるだろうか。一般的には,感性を磨くという,非常に抽象的で曖昧な表現で終わる指導書が多い。<BR> そこで,今回当科で日常的に行っている「気づく力」を身につけるための方法を紹介し,その結果を業務改善の観点から考察したので報告する。<BR><BR>【方法】<BR> 当科ではスタッフ8名が,平日勤務の朝5分程度の時間を利用して業務内容を中心に「気づき」(可視化トレーニング)の発表を行っている。その「気づき」の内容は,職員によって偏りがあるか明らかにするために,まず全スタッフ合意の下で分類した5つのカテゴリー(リスク,連携,運用,サービス,整理)と個人属性(性別,経験年数)から構成される分割表を作成した。そして,カイ2検定を行ってそれらの関連性を分析した。調査期間は,2009年6月から2010年9月までの1年3ヶ月,315日間である。<BR> この取り組みによる業務改善の判定は,科内におけるインシデント,アクシデント発生件数と,患者からの「苦情件数(ご意見箱)」を指標に用いた。<BR><BR>【説明と同意】<BR> スタッフには,今回の研究目的を説明した上で,発言内容をデータとして使用する許可を得た。<BR><BR>【結果】<BR> スタッフの構成は,男性PT5名,女性OT2名,女性の助手1名であり,経験年数10年以上5名,それ以下3名である。管理者と中途採用者は,除外した。<BR>期間中の「気づき」の総件数は313件で,カテゴリー別内訳と発言率は,リスク42件(13%),連携25件(8%),運用127件(41%),サービス86件(28%),整理33件(10%)であった。各カテゴリーの発言数と職員の性別との関連についてカイ2検定を行ったところ,p=0.435で有意な関連はなかった。また,各カテゴリーの発言数と職員の経験年数(10年以上もしくは10年未満)との関連についても有意でなかった(p=0.991)。<BR> 科内インシデント発生数は,全体で14件(院内1,697件,調査前年4件),2009年7件,今年3件であった。内容は転倒11件,人工股関節脱臼2件(年間300症例),熱傷1件。アクシデントは2009年に発生した熱傷の1件(院内40件)であった。また,苦情件数は,6件(院内508件,調査前年4件),2009年2件,今年0件であった。内容は,リハ開始時間やスタッフの接遇面に対する不満内容が多かった。これらの結果から,インシデント発生数と苦情件数は「気づき」の発表を開始した翌年から減少していることが示された。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の研究ではスタッフ間の性別,経験年数に「気づき」に関してカテゴリーに有意な差はなかった。<BR>この内容で最も多かったカテゴリーは直接業務の「運用」であり,日常診療の中で身近に感じる問題であることから,顧客(患者)に影響を及ぼしやすい部分ほど敏感になっていることが伺えた。 <BR> 一方,最も少ないカテゴリーは間接業務の「連携」ということであった。これは,他部署を介する機会に遭遇した時の問題であるため,気づき難かったことが推察される。<BR> リスク面においては,発言率13%と予想よりも低い結果であった。これは,インシデントやアクシデントの科内における発生件数の低さが影響したと考える。すなわち,リスクに関しては日常より常に「即改善」を実行し,安全で安心な診療が実行されているためと考える。<BR> また,患者サービスにおいてもリスクと同様に,苦情件数が少数のために発言も少なかったと推測する。<BR> こうした科内のリスク回避の取り組みを航空業界では, Crew Resource Management(CRM)「何か気づいたことや気になったことがあれば口に出す」という教育で行っている。そこで当科が実施した「可視化トレーニング」は,CRM同様に情報を共有化し即断即決を行うことでリスクの芽は小さいうちに排除する,という効果の現れと考える。<BR> この「可視化トレーニング」に対するスタッフの感想は,自ら行った業務改善やリスク回避の指摘などが,すぐに解決されることに喜びを感じる,という声を聞いている。これは「気づき」による人材育成の目的に挙げている,スタッフのモラル向上,信頼感の醸成,関係者とのコミュニケーション,スタッフの満足感など,人間性尊重の側面を向上させる点において非常に効果的であったと思われる。<BR> 今後は,個人発言の特性(偏り)を平準化した「気づき」に対する指導を行い,より一層の効率的で安心・安全な業務運営に役立てる方針である。
著者
松浦 由生子 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 芝 俊紀 國田 泰弘 河野 愛史
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100356, 2013

【はじめに、目的】 ストリームライン姿勢(streamline;SL)とは、競泳競技においてスタートやターン後に水の抵抗をできるだけ軽減するために水中で水平に近い状態をとる姿勢で、泳速度に重要な影響を及ぼしている。さらに、SL時の過度な腰椎前彎が腰部障害の原因になると報告されており(松本、1992)、腰椎の前彎が小さいSLをとることは競技力向上だけでなく、障害予防の面においても重要であると考えられる。現場では立位でSLを評価することが多く、先行研究においても、立位と水中SLの腰椎前彎角(以下、腰椎角)の関係は示されているが、水中姿勢と類似した陸上での腹臥位SLと水中SLとの関係を示した研究はない。本研究では、合屋ら(2008)の報告を参考に、水中SLの評価指標となるけのび到達距離(以下、けのび距離)を用い、立位、腹臥位SL時の腰椎角がけのび距離に及ぼす影響を明確にすることを目的とした。仮説は、けのび距離が長い選手は、立位SLおよび腹臥位SLで腰椎角が小さいとした。【方法】 対象は現在腰部に整形外科疾患のない3年以上の水泳経験者27名(男性15名:21.1±1.7歳、女性12名:20.5±1.0歳)とした。脊柱計測分析器Spinal Mouse(Index社)を用いて安静立位、立位SL、安静腹臥位、腹臥位SLの計4姿勢における矢状面の脊柱アライメントを3回ずつ測定し、平均値を求めた。Th12~S1の椎体角度の総和を腰椎角とした。水中SLの評価として、壁を蹴りSLを保持し続けるけのび距離を用いた。けのび距離は、プールの壁からけのび動作で止まった時点の頭頂の位置とし、3回測定し平均値を求め、結果から身長を引くことで統一した。統計学的解析には、SPSS Ver.20.0 for Windows(IBM社)を用い、立位SL、腹臥位SLでの腰椎角とけのび距離との相関をPearsonの相関係数により男女別に分析した。また、けのび距離が全対象の平均値よりも長いL群(男性6名、女性6名)と短いS群(男性9名、女性6名)に分け、各群で男女別に安静とSLの比較を対応のあるt検定を用いて行った。さらに、4姿勢でのL群とS群の比較を対応のないt検定を用いて行った。危険率5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象に本研究の趣旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1232)。【結果】 けのび距離は男性で8.8±2.0m、女性で9.7±1.5mであった。腰椎角とけのび距離との間には、腹臥位SLで男女ともに有意な負の相関を認めた(男性r=-0.69、p<0.01、女性r=-0.82、p<0.01)。立位SLでは女性のみ有意な負の相関を認めた(r=-0.61、 p<0.05)。けのび距離で2群に分けた結果、L群のけのび距離は男性で11.0±1.2m、女性で10.8±0.7mとなり、S群は男性で7.6m±1.0m、女性で8.2±0.6mとなった。腹臥位での腰椎角は安静、SLの順に男性L群が20.2±10.0°、19.5±9.3°、S群23.9±7.0°、29.9±4.2°、女性L群が29.8±7.8°、33.0±8.0°、S群38.5±7.6°、44.5±5.4°となり、男女ともS群のみSL時に有意な増加を認めた(男性<0.05、女性<0.01)。また、腹臥位SL時の腰椎角はL群がS群と比較し有意に小さかった(男性p<0.05、女性p<0.01)。立位では群内、群間ともに有意差を認めなかった。【考察】 本研究より陸上でのSLの腰椎角がけのび距離に影響を及ぼし、特に腹臥位SLで腰椎角が小さい選手は、けのび距離が延長する傾向にあることが示唆された。腹臥位は水中SLと脊柱に加わる重力方向が等しく、立位と比較し、より水中での姿勢が反映されやすかったと考えられる。先行研究では、一流選手ほど立位、水中SLともに腰椎前彎が小さく、水中でも陸上と同等の角度を保つことができる一方で、一般の選手は立位と比較し水中SLで腰椎角が増強すると報告されている(金岡ら、2007)。本研究においてもけのび距離が延長した選手は腹臥位SL時の腰椎角が小さく、水中でも小さな腰椎角を保つことで、抵抗の少ないSL保持が可能であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、特に腹臥位SLの腰椎角がけのび距離に影響を及ぼすという新しい知見が得られた。これまでの研究や現場の評価では立位SLが水中SLの指標となることが多かったが、本研究から腹臥位でSL評価を行うことの意義が示された。また、SL時の過度な腰椎前彎が腰部障害の原因とされることから、SL時に小さな腰椎角を保持できることは、競技力向上のみならず、障害予防にもつながると考える。
著者
高橋 龍介 萩原 礼紀 龍嶋 裕二
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF2035-CdPF2035, 2011

【目的】<BR> Femorotibial angle(以下FTA)210度の変形性膝関節症(以下KOA)患者に対して,当院整形外科にて人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した.手術前後での歩行について動作分析装置を用いて,比較検討を行ったので報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 83歳女性で,高血圧症以外に特記すべき既往歴,合併症はない.現病歴は,約20年前より右膝の内反変形を自覚するも近医にて保存的加療を継続していた.3年前より右膝関節の疼痛が増悪し,歩行困難を主訴にて当院整形外科に紹介され手術適応と判断された.術前は安静時,動作時にNRS(numerical rating scale)7~8の疼痛がみられた.FTAは右210度,左181度であり,横浜市大方式による変形性膝関節症分類(以下OAgrade)5であった.ROMは右膝関節屈曲115度,伸展-10度で,右下肢筋力はMMT3であった.コンポーネントは,Zimmer社LCCKを使用してcement固定で行った.手術後の理学療法は,日大メソッドにて実施した.<BR>【方法】<BR> 路上における10mの直線自由歩行を測定課題とした.測定前に複数回の試行を実施し動作に習熟させた.被験者の体表面上位置に赤外線反射標点を貼り付け空間座標データを計測した.直径25mmの反射標点を,剣状突起,右側の膝蓋骨上縁,脛骨粗面,下腿遠位中央部,両側の肩峰,上前腸骨棘,大転子,腓骨頭,外果,踵骨,第5中足骨頭の計18点に貼り付け,6回測定を行った.歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m<SUP>3</SUP>の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点を測定した.測定課題を実施中の標点位置を三次元動作解析装置(ライブラリー社製GE-60)により撮影した.サンプリング周波数は120Hzとした.計測した1歩行周期を,画像データから各運動相に分類した.解析方法は,観測データをPCに取り込み,平均的な波形を抽出するために,最小二乗法により最適化を行い,位相を合わせ平均化した.計測した重複歩長,歩隔,歩行周期の各相における右股関節,膝関節の角度,右立脚期のFTAを3次元動画計測ソフト(ライブラリー社製 Move-tr/3D)を使用して求めた.測定された値は,5次スプライン補間により補正し,小数点2桁目を四捨五入し,術前と独歩可能となった術後12病日目を比較した.<BR>【説明と同意】<BR> 本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た.なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った.<BR>【結果】<BR> 術前右重複歩長39.9±2.4cm,左重複歩長34.0±5.7cm,術後右重複歩長45.9±2.0cm,左重複歩長48.6±4.4cmと左右ともに延長された.術前歩隔は13.5±2.5cm,術後7.0±2.7cmと狭小化した.術前歩行周期の各相における右股関節屈曲角度heel strike(以下HS)14.3±6.7度,foot flat(以下FF)14.6±5.0度,mid-stance(以下MS)12.9±5.9度,heel off(以下HO)11.8±4.9度,toe off(以下TO)19.9±4.5度.右膝関節屈曲角度HS22.1±6.7度,FF30.3±5.0度,MS35.2±5.9度,HO33.1±4.9度,TO30.1±4.5度.術後歩行周期の各相における右股関節屈曲角度HS17.3±6.7度,FF13.3±5.0度,MS18.3±5.9度,HO25.4±4.9度,TO8.8±4.5度.右膝関節屈曲角度HS8.2±7.7度,FF22.8±5.7度,MS43.4±6.7度,HO10.2±4.8度,TO9.3±6.5度となった.右立脚期のFTAは術前で211.8±3.8度,術後で181.3±4.1度と改善した.<BR>【考察】<BR> 術前は,右立脚期に著明なlateral thrustが生じていた.これは,関節構成要素が破綻していることによって生じており,疼痛を回避するために主動作筋と拮抗筋の同時収縮による関節の剛性が高まった結果,膝関節運動も低下していた.12病日目に独歩可能となり,同日に測定した結果は上述のとおりで,右立脚期のFTA,重複歩長,歩隔が改善した.これはTKAにて結果に示す様なアライメントに矯正され,関節にかかる力学的不均衡の問題が解消し,さらに,理学療法の施行によって再獲得したアライメントに対する効率的な運動再学習が得られたことによると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> OAgrade5でFTA210度と高度KOAであっても,適正な理学療法を実施することで,早期に歩行可能となった症例を提示した.
著者
安田 知子 牧門 武善
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0343-E0343, 2008

【目的】近年競技の低年齢化が進むと同時にスポーツ傷害への認識も高まっている。最近では心臓震盪に対する予防策として胸部保護パッドの着用が呼びかけられているが、普及率は高くはない。今回、胸部保護パッド着用による競技能力の低下への不安が普及率低迷の一因ではないかと仮定し、競技能力について検討したので考察を加え報告する。<BR>【方法】対象は、沖縄県内の少年野球チームで指導者が胸部保護パッドの着用に関心を持っている2チーム44名とした。学年は1~6年生、身長137.3±10.6(115~160)cm、体重32.4±8.8(19~55)kgであった。競技能力の計測は、遠投とベースランニング(23×4塁間)とし、ミズノ社製胸部保護パッドを使用して、着用時と非着用時にそれぞれ1回、ランダムに実施した。統計処理は、JSTATを用いstudentのt検定を行った。<BR>【結果】遠投では、胸部保護パッドの着用時の投球距離は38.5±10.8(最高63.6、最低14.3)m、非着用時は38.8±10.3(最高58.0、最低16.4)mであり、両者間に有意な差は見られなかった。ベースランニングは、着用時の計測時間は19.70±1.8(最高16.00、最低23.68)秒であり、非着用時は20.1±2.1(最高16.34、最低24.32)秒であり、両者間に有意な差が見られた。<BR>【考察】心臓震盪は、2007年は10月末現在全国で4件(内3件が野球)発生し、2件が命を落としている。日本高等学校野球連盟は、「中学生の練習参加に対する安全対策」通知文の中でも胸部保護パッドの積極的な着用を呼びかけている。沖縄県理学療法士会では、沖縄県高校野球連盟が主催する大会の本部医務活動を支援しているが、平成19年度秋季大会において胸部保護パッドを使用しているチームはなく、少なくとも沖縄県内においては普及率が低い。今回、競技能力の低下への懸念が胸部保護パッドの普及率が低い原因と仮定し検討を行った。遠投距離では、胸部保護パッドの着用と非着用に有意な差はなく、投球に与える影響はないものと考えられた。ベースランニングでは、着用時と非着用時の計測時間に有意な差は見られたものの、その差は0.6±0.4秒であり、同様に総力に与える影響は少ないものと考えられた。今回行った投球動作およびランニング動作に、選手自身は使用感の問題は訴えなかった。さらに、バッティング時や試合時着用の使用感にも選手からの競技時に問題となる指摘はなかった。今回、実際に使用することで、指導者らはバッティング時に使用される脛当てや肘当てと同様に習慣化により競技時に問題を与えないという印象を持ったとしている。今回の結果から胸部保護パッドは少なくとも協議に支障を与えるものではなく、むしろ子供たちの安全に寄与するという面においては着用が望ましいものと考えられ、普及していくことが望ましいものと考える。<BR>
著者
大沢 晴美 久留利 菜菜 浅川 康吉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.675-675, 2003

【目的】障害老人における閉じこもり現象は日常生活活動量を減少させ、心身の機能をより低下させるといった悪影響があると考えられている。しかし、障害老人の外出頻度とその満足度(以下、外出満足度)についての知見はきわめて少ない。本研究の目的は障害老人の外出頻度と外出満足度を明らかにし、その関連要因を検討することである。【対象】M市およびその隣接のT市にある訪問看護ステーション3ヶ所とデイケア施設1ヶ所の利用者に個別面接調査の依頼を行い70名の承諾を得た。このうち障害老人の日常生活自立度(J-ABCランク)がJランク(独力で外出する)の者と痴呆やコミュニケーションの障害がある者を除いた43名(男性16名、女性27名、平均年齢73.7±12.6歳)を対象とした。J-ABCランクの内訳はAランク15名、Bランク12名、Cランク16名であり、主な疾患名は脳血管疾患であった。なお、コミュニケーションの障害がある者のうち、その意思を主介護者が忖度して回答することが可能であった者は対象に含めた。【方法】調査は2000年と2001年の各10月から12月に行った。調査は基本属性として年齢、性別、世帯人数、J-ABCランクを、外出頻度と満足度に関する項目として外出頻度、外出満足度、主な外出先、外出不安の有無について行った。各調査項目と外出満足度との関連はカイ2乗検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】外出頻度は「毎日1回以上」が9.3%、「2_から_3日に1回程度」が39.5%、「1週間に1回程度」が7.0%、「ほとんど外出しない」が44.2%であった。外出満足度は「もっと外出したい」が48.8%、「今のままでよい」が51.2%、「もっと減らしたい」は0%であった。年齢、性別、世帯人数、J-ABCランク、外出頻度、主な外出先、外出不安の有無のいずれの項目についても外出満足度と有意な関連を認めなかった。【考察】障害老人の外出頻度は2_から_3日に1回程度かほとんど外出しないかの両極に分布する傾向を認めた。外出満足度は「もっと外出したい」と「今のままでよい」がそれぞれ半分程度を占めた。外出満足度は外出頻度とは関連を認めず、外出頻度の高いことが必ずしも高い満足度にはつながらないと考えられた。外出満足度はまたJ-ABCランク、主な外出先、外出不安の有無などとも関連を認めなかった。このことから、J-ABCランクが低い者でも外出に対して高い欲求を有する場合や、デイケア・デイサービスによる外出機会の提供があっても外出満足度の向上につながらない場合などが存在すると考えられた。外出満足度は今回の調査項目とは関連のない独立した要因として今後の検討が必要と考える。
著者
平澤 小百合 高田 将輝 仁田 裕也 板東 杏太 尾﨑 充代 高木 賢一 吉岡 聖広 髙田 侑季 藤井 瞬 佐藤 央一 丸笹 始信 勝浦 智也 鶯 春夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B3O1078-B3O1078, 2010

【目的】15番染色体異常が原因とされるプラダー・ウィリー症候群(以下PWS)の特徴は運動、神経、精神症状等と多岐にわたるが、特に満腹中枢機能不全からなる過食による肥満や感情コントロール困難は思春期以降の問題となりやすく、確立した治療法のない現状では日常生活管理が不可欠である。今回PWSを基礎疾患とした男性が過食と感情爆発からなる不適切行動による悪循環で推定体重160kg以上となり、結果、低換気症候群・低酸素脳症を発症し寝たきり状態となった症例を担当した。入院時対応に難渋した症例に対し行動分析学的介入により日常生活動作(以下ADL)向上がみられ在宅生活へとつながった経験をしたので若干の知見を加え報告する。<BR>【方法】対象は25歳男性、診断名はPWS・低換気症候群・低酸素脳症、入院時評価として身長141cm・体重(推定)160kg以上、肥満度4(日本肥満学会より)、Functional Independence Measure (以下FIM)36点/126点、知能検査IQ41である。<BR>経過はA病院にて2歳頃にPWSと診断。5歳頃より体重増加し減量を目的とした数回の入退院後、B病院に通院し治療を続けていた。H20年頃より家で閉じこもりとなり臥床時間が多くなった。その間も体重は増加し同年10月意識低下にて救急でC病院搬送。入院希望するも肥満以外に問題ないとの説明で入院不可、B病院でも同様の対応のためC病院から緊急に当院相談。救急から約9時間後に泣き叫ぶ等の興奮状態で入院した。翌日より理学療法開始。訪室するも家族から理学療法に対し拒否的発言がみられ、患者も顔色不良で右側臥位のまま担当理学療法士の様子を伺っている状態。その場で運動の必要性を説明し苦痛を与えないことを約束した上で右側臥位のまま全身調整訓練を施行した。なお、気道圧迫により仰臥位は困難だが、入院2日前まで食事と排泄動作はほぼ自立していたとの家族情報から起立・移乗動作に必要な筋力は維持していると判断した。また脂肪による気道圧迫があるものの酸素2~3ℓ管理下ではSPO<SUB>2</SUB>96%前後と安定していた。<BR>今回の問題点として、本症例の自信喪失感・自己否定感等があると共に他者からの禁止言葉や否定語などで自分の思うようにならない時や注目・関心を自分に向けようとした時に奇声やパニック・酸素チューブを引きちぎる・服を破る等の不適切行動や過食に走る傾向があると思われたため、不適切行動の修正と動作能力改善を目的に行動分析学的介入を試みた。研究デザインにはシングルケースデザインを使用し、理学療法処方日から6日間をベースラインと設定、その後は基準変更デザインより目標行動を移行した。具体的には不適切行動には過度に注目しないよう強化随伴性の消去と同時に動作や言動に適切な変化がみられた直後に賞讃し、その行動が将来生起しやすいよう好子出現による強化を行いその効果を不適切行動の有無や動作能力、FIMにて確認した。その他接する機会の多いスタッフには関わる際の配慮として説明した。また、摂取カロリーは1200kcal/日で理学療法はストレッチやADL訓練を中心に施行し、リスク管理は自覚症状やバイタルサイン等で確認した。<BR>【説明と同意】本症例・家族には今回発表の趣旨及び内容を説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】介入前に毎日みられた不適切行動は、介入後週1回程度まで減少、動作能力も徐々に向上し、介入後3週目寝返り動作自立、5週目平行棒内立位可能、8週目約5m独歩可能となった。また入院当初みられなかった在宅復帰の希望が本人・家族からあり15週目に退院した。体重は当初立位不可等により途中からの計測となるが、7週目146.9kg、退院時は140.7kgと約8週間で7kg減少した。FIMも退院時は68点と向上がみられた。退院後は週2回の訪問リハビリテーションで対応し、退院後約4ヶ月で体重136kg台に減少、FIMも101点と大幅な向上がみられた。日中は酸素なしの活動も可能となっている。<BR>【考察】今回、ガストらが『行動を減らす手続きの選択は侵襲性が少なく、かつ効果的なものを選択されるべきである』と述べているように機能的な代替行動強化に着目し理学療法を進めた。また適切行動の強化が頻繁に得られその行動が自然強化子により維持されるよう配慮し内発的動機付けに変化がみられたことで著明な動作能力の向上が得られたと考えられる。その他、入院中に習得したパソコンによるメール交換が可能となり『食』のみに関心が集中することなく安定した生活が得られていると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】症例の置かれている状況を『個人攻撃の罠』に陥ることなく行動と環境の関係から検証し問題解決する行動分析学的方法は理学療法を円滑に進めていく上で有効かつ有用であると考えられる。
著者
倉島 尚男 奥田 真央
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3431-C3P3431, 2009

【はじめに】<BR> 平成20年3月20日から28日に行われた長野県サッカー協会主催の高校選抜サッカーチームドイツ遠征に帯同する機会を得たためここに報告する.<BR><BR>【遠征目的】<BR> 遠征は、長野県サッカーの発展と競技力向上のため県内高校生の優秀選手をドイツへ派遣する事で競技力向上を図り、また将来、大学・社会人・Jリーグ等で活躍する選手の養成を目指し、併せてその動機付けを目的として行われた.<BR> <BR>【遠征概要】<BR>派遣先はドイツで、バイエルンミュンヘン・1860ミュンヘン・シュツットガルト他計5試合が行なわれ、期間中ドイツサッカー協会S級ライセンスを持った現地プロコーチによるトレーニングが行われた.選手は18名(GK2名、フィールド16名)で、監督他スタッフ含め合計27名の編成であった.今回の遠征は、長野県サッカー協会主催で、遠征前・中の活動内容における公表の同意を得ている.<BR><BR>【サポート目標】<BR>目標を「全選手試合を欠場する事なく遠征を終える」事とし、サポートとして障害を持った選手、急性外傷、外傷後復帰、疲労の4項目を中心に行った.「障害を持った選手」に対して、遠征前練習会でチェックシートを配布し、重症度分類した上で状態把握を行い、必要な選手にはトレーニング等指導した.遠征中は状態に合わせコンディショニング調整・テーピング・動作指導を行った.「急性外傷」に対して、練習・試合中に発生した傷害に対し現場での受傷部位の評価を行い、RICE処置、テーピング等行った.「外傷後復帰」に対して、処置後の状況に合わせコンディショニング調整、テーピング等行い、選手・監督と相談し練習・試合参加の可否を判断した.「疲労」に対して、事前にマニュアルを配布し個人でのセルフケアを促し、遠征中はチェックシートにて状態把握に努め必要な選手にはストレッチ・マッサージ等行った.<BR> <BR>【遠征中サポート内容】<BR>現地サポート期間は3月21~27日の7日間.延べ人数は50名(実質11名、1日平均7名).サポート内容はテーピング、RICE処置、コンディショニング調整、筋力訓練、動作指導等.疾患の種類(件数)は、打撲(5)、足関節捻挫(3)、肉離れ・腰痛(2)、マメ・疲労・分裂性膝蓋骨(1)であった.<BR> <BR>【考察】<BR> 全選手全試合出場という目標は、一選手一試合欠場という結果で達成は出来なかったが大きな傷害なく選手が戻って来られた事は十分な結果ではないかと思われる.今回病院を離れスポーツ現場での活動を行う事で自分自身の足りない点や実際の現場で求められる知識・能力を肌で感じる事が出来た事は貴重な経験であった.今回は選抜選手ではあったがセルフケア・知識が不十分な選手もおり、また障害を抱えている選手もコンディショニング調整が中心となり、動きの中での評価や動作指導が十分出来ていない場合もあり理学療法士が現場に出て行く事、現場で評価・指導する事の重要性を感じた.
著者
田中 和宏 内海 常明 石井 哲夫 有井 克己 荒井 圭介 鴨野 博道 澤田 一勝 田辺 誠
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101788-48101788, 2013

【はじめに、目的】 柔道は2012年4月より全国中学教育で必須化が開始されたが,その種目特性上,傷害は多く発生する.受傷頻度が複数回にわたると競技生活に問題を生じることも予測される.パフォーマンスを高め,傷害を予防していくためには,受傷部位や傷害発生状況,発生時期等を把握することが必要である.そこで兵庫県高等学校体育連盟柔道部では,県下柔道部のある全高等学校を対象にアクシデントリポートの提出を求めた.この結果を解析することで,傷害発生の要因を明らかにすることを試みた.【方法】 兵庫県下の柔道部のある高等学校全87校に,2011年4月から2012年3月までの1年間に発生したアクシデントの全例提出を求め,提出のあった119例を対象とした.アンケート調査の内,発症月,学年,性別,経験年数,発生状況,傷病部位,傷病名について検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象となる柔道部のある高等学校に説明と同意を得た上で調査を実施した.【結果】 傷病名別では,骨折が最も多く23件(19.7%),次いで捻挫の22件(18.8%),打撲の16件(13.68%),靭帯損傷は13件(11.1%)であった.傷病部位別では,肘関節,手指・足趾が多く17件(14.5%),次いで膝関節,足関節の14件(12.0%),頭の10件(8.54%)であった.学年別に比較すると,肩関節,膝関節,手指・足趾においては,1年生に比べ2,3年生の割合が多くみられた.傷病発生月別では,4月が最も多く31件(26.5%),次いで5月の19件(16.24%),8月の15件(12.82%),9月の10件(8.55%)であった.傷病発生月を学年別にみると,1年生において,4月は10件(32.3%),5月は9件(47.37%),8月は11件(78.57%),9月は5件(50%)となっており,2年生は,4月は9件(29.03%),5月は5件(26.32%),8月は3件(21.43%),9月は5件(50%),3年生は,4月は12件(38.71%),5月は5件(35.71%),8月・9月は0件であった.発生状況別では,練習中が59件(50.43%)と半数以上を占め,試合中が23件(19.66%),授業中が11件(9.4%)であった.【考察】 宮崎らによれば,中学校,高等学校柔道部員では肩,膝,肘,手・手指,足・足趾部の外傷が多く,傷病名では骨折,捻挫が多いと報告している.今回の調査においても,傷病名別では骨折,捻挫が多く,傷病部位別では,肘関節,手指・足趾,膝関節,足関節が大部分を占めており,これまでの報告と同様の結果であった.これは技術面の問題に加え,骨関節は成長軟骨を含み脆弱であり,筋は発育途中である点など成長期である点が多く影響していると考える.傷害発生月別では,これまでは4月,5月に初心者の受傷が増えると多くの指導者は考えてきた.しかし,4,5月は2,3年生が全体の約7割を占めており,1年生の割合は多くない.それと比べ,8,9月は1年生が半数以上占めている.この理由として,高等学校の行事に関連があると考える.2,3年生は,4,5月は部活の中で中心的な立場で,高等学校総合体育大会等に向けて,平常より長時間の密度の高い練習を行う.このため,肉体的,精神的疲労が受傷に影響すると考える.また,8,9月に1年生が多い理由として,夏休みの合宿期となり,基礎練習から本格的な練習に進むことが影響していると考える.上記のことからスポーツサポートしていく上で,経験の浅い1年生だけでなく,2,3年生にも秋,冬期から計画的に傷害予防を促していくことが重要であると考える.【理学療法学研究としての意義】 身体的に成長期で,技術も未熟な時期の傷害特性を知ることは,コンディショニングを通じての傷害予防に有益である.
著者
平塚 乃梨 渡邉 修 井上 正雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2048-A3P2048, 2009

【はじめに】従来の脳血流評価にはfMRIやPETが利用されてきたが,近年,低拘束性,安全性が高い,身体活動の制限が少ない,頻回の計測が可能な機器として,近赤外光分光法(near infra-red spectroscopy :NIRS)が注目されている.本研究では習熟度の異なる3名の被験者が100マス計算を行っている際の脳血流増加部位の相違について,NIRSを用いて前頭前野および頭頂側頭葉の血流変化の比較を行った.<BR>【対象と方法】対象は100マス計算に熟練した健常な右利きの小学生,100マス計算を練習している左利きの小学生,100マス計算未経験の右利き成人男性それぞれ1名とした.測定には近赤外光イメージング装置NIRstation OMM-3000シリーズ(島津製作所製)を用いた.血流測定部位は,国際10-20法に基づき決定し,前頭部測定のために21箇所,頭頂側頭部測定のため40箇所を測定した.実験は,始めに対象を閉眼・安静とし,NIRS信号が定常状態になった時点から15秒間の脳血流を測定した(前レスト).次に,100マス計算を30秒間実施した際の脳血流を測定した(タスク).その後,再度15秒間の閉眼・安静時の脳血流を測定した(後レスト).上記の行程を1セットとし,連続して2セット実施した.実験には小学生が日常学校にて使用しているパソコンソフトを用い,数字の打ち込みは利き手にてテンキーを,非利き手にてenterキーを使用した.なお,実験は説明と同意を得て実施し,倫理的配慮に基づきデータを取り扱った.<BR>【結果と考察】100マス計算施行中の脳血流の増加は,未経験成人では左前頭前野が,練習している小学生は両側前頭前野が,一方,熟練した小学生では前頭前野での血流の増加はあまりみられず,頭頂側頭葉(右側優位)で血流の増加を見た.以上より,未経験成人における左前頭前野の血流増加は,計算や数字などの操作によるワーキングメモリの負荷が主因と考えられた.一方,練習している小学生では,両側前頭前野での血流が著明に増加したが,パソコン上での100マス計算の習熟過程において,数字や計算を空間的に捉えていることの反映ではないかと考えられた.さらに,熟練した小学生では両側前頭前野の血流増加はほとんどみられず,むしろ頭頂側頭葉(右側優位)で血流増加をみた.これは,学習の初期過程における前頭前野の役割および習熟による頭頂連合野の役割(習熟動作の固定)を示唆するのではないか推察された.<BR>【まとめ】100マス計算の習熟度の異なる3名について,100マス計算施行中の脳血流変化をNIRSを用いて比較した.その結果,新規学習においては前頭前野が活動し,習熟に伴い活動は,頭頂側頭葉へとシフトしていくことが示唆された.しかし本推論は,3例のみの比較に留まるので,今後例数を増やしてさらに検討をしていく必要がある.