著者
直井 恒雄 渡部 要一 新舎 博 日高 征俊 白神 新一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_498-I_503, 2012
被引用文献数
1

東京都の新海面処分場Cブロックにおいて,真空圧密を利用した粘性土層の減容化事業を実施した.対象となる粘性土層は,均質な在来粘土層とその上に処分した砂分を多く含む浚渫土層である.本減容化事業では事前予測沈下量の90%以上の沈下量を目標として工事を実施しているが,浚渫土層の中に存在する中間砂層の堆積分布を正確に把握し,沈下量の評価に反映する必要があった.そこで,本文ではドレーン打設時のマンドレル貫入抵抗値から中間砂層の堆積分布を詳細に把握した.また,減容化のための圧密挙動に関しては,中間砂層を排水層とみなした圧密理論と実際の沈下挙動を比較し,予測沈下計算方法が十分に適用できることを明らかにした.
著者
阿部 孝章 佐藤 好茂 船木 淳悟 吉川 泰弘 中津川 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_1004-I_1011, 2015

本稿では北海道でも人口が低平地に密集する釧路市を対象地域とし,河川周辺域における自治体等行政の減災対策を支援する手法の開発を目的として検討を実施した.まず,波源域から河道域までの津波解析を簡易に実施可能な一連のモデル開発を行い,実際に発生した津波波源モデルのパラメータ及び河川流量を変化させた解析を行い,各構造物が受ける津波外力を評価した.次に,北海道庁により検討が行われた最大クラスの津波のデータを用いて地盤沈下量を変化させた解析を行い,上水道や下水処理施設等に対する津波外力を評価した.その結果,津波の規模と河川流量,地盤変化量の条件次第では,施設の被災可能性は変化する可能性がある事が分かった.複数の津波想定を事前に行っておくことで河川管理者や自治体の減災支援となる可能性が示された.
著者
浅井 章治 村瀬 勝美 社本 英 水野 孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.319-325, 1991

納屋橋は、名古屋市の中心部を南北に流れる堀川に架かる橋長27m.幅員30mの鋼桁橋である。この橋は慶長15年(1610年)の名古屋の誕生と同時に架けられ、以後数次にわたる改築を経て現在の姿になっている。<BR>380年間ひたすら名古屋のまちの発展を支えてきた納屋橋は、明治43年から大正2年にかけての改築で、それまでの木橋から近代的な鋼アーチ橋に生れかわり、花崗岩の重厚な親柱や郷土三英傑の家紋を配した鋳物の高欄、橋の中央部に設けられたバルコニーなど、当時の社会情勢を反映した豪華なものであった。<BR>当時の名古屋市民は、この新しい橋が誕生したことを歓迎し、橋の開通式には多数の市民が参加したと記録されている。以後、この橋は名古屋のメインストリートである広小路通りとともに市民に親しまれ、周囲の街の発展にも大いに貢献してきた。<BR>橋梁景観という言葉が目新しかった昭和50年代初期に、納屋橋が当時の幅員21.8mから都市計画幅員である30mに改築されることになったが、この橋の歴史が橋の修景に大きなインパクトを与える事になった。<BR>橋梁形式はアーチから桁橋になったが、外見上はアーチ形式の飾り桁の採用や高欄の修復、親柱の復元等、明治から大正にかけて改築された当時の姿をほぼそのまま再現したものであるが、これからの橋梁景観の整備に一つの指針を与えるものである。現在の納屋橋を歴史という観点から再評価してみると、(1)技術・素材・意匠などにおいて、時代の節目を伝える土木文化財、(2)名古屋のまちの歴史を伝える記念碑であるという事ができる。また、景観整備という観点からは、(3)整備の一手法として復元の在り方を示す、(4)明治の情緒を今に伝える橋であるということができる。<BR>名古屋の堀川には納屋橋の架設と同時に六橋が架けられたが、これらの修景についても以上の経験が生かされるとともに、今後に計画されている堀川の環境整備や周辺の都市景観の整備にも生かされることが期待される。
著者
広瀬 宗一 山口 晶敬
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.421, pp.233-242, 1990-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
5
被引用文献数
4

To root out Minamata disease, caused by the sewage accumulated in fish and shell fish, a large-scale sediment disposal work was conducted with a special care to prevent a new pollution. The basic approach to sediment disposal was to construct a highly watertight revetment for reclaiming the inner area of the Bay and then to confine sediment, dredged from the remaining contaminated area. Before sediment disposal, boundary nets were installed to enclose the work area to prevent the mixing of contaminated and non-contaminated fish. Dredging work was successfully done by using four cutterless suction dredgers, newly developed in advance for minimizing muddiness due to dredging work. Sediment, discharged into the reclamation area, keeping it under water, was covered with a sandproof membrane, particular volcanic ash earth with light weight, and mountain soil, successively.
著者
越智 聖志 木村 克俊 山本 泰司 上久保 勝美 名越 隆雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_1003-I_1008, 2015
被引用文献数
2

1980年1月,北海道の日本海側に位置するK海岸に大型の低気圧が来襲し,大型バスと救急車が高波による越波の影響を受け,路外へ滑動および横転する事故が発生した.本研究では,事故時の関係者および当時の新聞記事などから事故状況を分析し,縮尺1/30の2次元水理模型実験により,事故発生当時の護岸背後地における越波状況を再現した.また,波力実験を行って越波流速を指標として被災車両に作用した越波による波力の定量的評価を行うとともに,越波流速と滑動距離との関係を明らかにした.さらに,当該事故発生後に越波対策として消波ブロックが設置された断面に対して越波流量および越波流速を求め,通行車両の安全性を確認した.
著者
只隈 章浩 幸福 辰己 滝川 清 横手 敏弘 奥村 靖浩 小田 勝也 小堀 達
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_491-I_496, 2015

国土交通省九州地方整備局では,調査観測兼清掃船「海輝」「海煌」を用いて,有明海・八代海の海域環境特性の把握を目的として,水塊構造調査並びに底質・底生生物調査を実施している.2004-2013年度の10ヶ年分の調査結果を整理した結果,八代海では球磨川河口前面海域よりも湾奥の海域の方が表層-下層間の密度差が大きいことが確認された.また,八代海において,底質と底生生物群集のクラスター解析により,それぞれ4つのグループに分類されるが,さらに,これらの組み合わせにより9つのグループに細分類され,複雑な環境特性を持つ海域であることが明らかになった.
著者
長坂 典昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.468-471, 1995-08-15 (Released:2010-03-17)

SABO work is one of the most fundamental public works that keep our lives and property away from danger, and its purpose is to prevent landslide disaster and improve our environmental quality of life.Recently, as the standard of living has got better and the concerns for nature and environmental issues have been shown strongly, there has been much demand for the affluence and the restoration of the enveronment. The infrastructure works have been called for change to adjust that kind of demand.The Kusatu River SABO Lerning Zone Model Work, which was started since HEISEI 2, was finished last year. This work was designed to fulfil the demand. Here I'd like to make a report on the aim, content and result of the work and in addition, what I think about it now as a person in charge.
著者
中野 和典 千木良 純貴 中村 和徳 矢野 篤男 西村 修
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_87-III_92, 2012
被引用文献数
2

畜舎排水を処理するフルスケールの多段鉛直流式人工湿地について運転開始から2年間の水質モニタリングを行い,汚水処理施設としての性能を評価した.運転開始1年目の人工湿地の水質浄化性能は水温に依存する季節特性を有していたが,2年目には水温の低い冬季の浄化性能が有意に向上し,年間を通した浄化性能の安定性が向上した.これは,人工湿地の水質浄化性能が運用開始から1年間は発展途上にあり、運用から1年を経て気候条件に適応した頑健性を発揮するようになることを示唆するものである.2年目の年間汚濁負荷量と年間平均除去率により求めた各水質項目の浄化性能原単位は、BODでは26.2g/m<sup>2</sup>・d、SSでは21.0g/m<sup>2</sup>・d、TKNでは1.60g-N/m<sup>2</sup>・d、TNでは1.55g-N/m<sup>2</sup>・d、TPでは0.36g-P/m<sup>2</sup>・dであった.
著者
牧野 夏樹 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.345-353, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
11
被引用文献数
2

近年、モータリゼーションの進展に起因する様々な都市問題への対策としてコンパクトシティの考え方が注目されており、大小様々な都市においてコンパクトシティ施策が検討されている。本研究では、都市の人口規模に着目し、人口規模の異なる仮想都市を対象として数値シミュレーションを行い、コンパクトシティ施策の効果について分析することで、人口規模の違いが各施策の効果へ及ぼす影響を明らかにした。また、郊外店舗が立地した場合についても分析し、施策実施前の都市構造により施策効果に明確な差がみられることを明らかにした。
著者
栗原 剛 岡本 直久
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.147-155, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究では、インバウンド需要予測手法の精緻化およびインバウンド政策の評価手法確立を目指し、インバウンド需要に影響を与える政策および外的要因の分析を行った。インバウンド需要予測は旅行発生量、分布の2段階から構成される手法を用い、影響要因には海外旅行自由化および経済成長、査証規制緩和、自然災害等を挙げた。海外旅行自由化や経済成長の影響を反映したロジットモデルでそれぞれ旅行発生量が増加することが示されたほか、査証規制の緩和を旅行分布モデルに導入し、訪日中国人旅行者に対して査証免除政策を行ったときの効果が定量的に表現できることが示された。
著者
Toru WATANABE Takayuki MIURA Tsukasa SASAKI Satoshi NAKAMURA Tatsuo OMURA
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
ENVIRONMENTAL ENGINEERING RESEARCH (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.245-254, 2006-11-17 (Released:2011-06-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

メコン流域の一部の地域では, 安全な水供給を目的として, 先進国と同様に浄水場と管路網からなる広 域水道と, 集落単位で地下水をくみ上げて配水する簡易な水道 (集落水道) がそれぞれ整備されている。これらの水供給システムによる感染リスク低減効果を明らかにするために, 2つのケーススタディを実施した。タイにおけるケーススタディでは, 広域水道と集落水道の整備地域で, 飲用水起因の感染症のリスクを比較した。その結果, 塩素消毒後の安全な水が供給される広域水道整備地域のリスクは, 集落水道整備地域の約1/8であった。カンボジアにおけるケーススタディでは, 集落水道整備地域と水道未整備地域のリスクを比較し, 集落水道整備地域の方が1/5程度にリスクが低下する結果を得た。
著者
Fumihito IETSUKA Akira WADA
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
PROCEEDINGS OF HYDRAULIC ENGINEERING (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1063-1068, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

We assumed two-dimensional advection-diffusion equation to be a basic equation and aimed to inspect the applicability of CIP method with tangent conversion through two benchmark problems. On the Skew Flow problem, we got superior results that CIP method with tangent conversion could catch a discontinuous border sharply without causing numerical oscillation. On the other hand, on the Rotating Cone problem, we got good results on the short time simulation but in the case of long time rotating cone velocity field CIP method with tangent conversion could not reproduce initial profile, so the room of improvement of the scheme is left.
著者
鈴木 盛明 福島 二朗 為国 孝敏 中川 三朗
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.445-452, 1998

明時期に西洋より導入された鉄道技術は、近世以来、その輸送手段を街道や河川舟運等に依存してきたわが国の運輸形態に大きな影響を与えた。明治政府が、国策として鉄道建設を推進したこともあり、鉄道は生産地と消費地、特に輸出物の産地と港を結ぶために、全国にそのネットワークを形成するようになった。そのため、従来からの舟運は、鉄道路線が並行して敷設されたこともあって、大きな影響を受け、その結果として衰退過程をたどることとなる。本研究では、巴波川舟運と両毛鉄道、および集散地としての栃木市を事例として、鉄道の開業に伴う舟運の衰退過程について実証的な分析を行い、考察を行った。
著者
稲葉 克己 渡辺 貴介
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.98-102, 1986

第二次世界大戦前にほぼ完成された関東圏の鉄道網において、その鉄道敷設目的は、産業振興・沿線開発・通勤通学客輸送など多岐に渡っていたが、観光客輸送を目的とした観光関連鉄道路線と言える路線も数多く存在していた。それらの路線は。東京から各観光地に到達する方法の違いにより、「直結型」、「枝分型」、「回遊型」、「延伸型」、「創造直結型」、「創造枝分型」と呼べる6タイプに分類でき、時代と共に変遷していった。また、それらの路線を成立させるのに、各鉄道会社は、出発地・鉄道・目的地のそれぞれの地点で様々な観光客誘致策を実施した。
著者
是永 定美
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.499-509, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
7

関東地方では, 明治の中頃から大正中期にわたる短い期間に煉瓦造りの水門が建設された。この煉瓦造水門は, 土・木・竹を用いるわが国古来の技術で構築される水門から近代技術の鉄筋コンクリート工法で築造される水門への橋渡しであったと考えられる。このような技術的な位置づけだけでなく, 煉瓦造水門は, その使用材料の暖かさ, デザインの美しさから, 多くの人々に安らぎを与えてきたことも忘れてはならない。「めがね橋」と呼ばれ慕われていたものも多い。近年, 多くの煉瓦造水門が解体されて姿を消していき, 残存する数も極めて少なくなっている。本論文では, 現在進めている関東地方の煉瓦造水門の“戸籍簿”作成作業の進捗状況を報告し, ついで完全な形で保存されている明治30年代初頭の煉瓦造水門の設計書を紹介する。
著者
Kozo Amano Toshihide Miwa Yasunori Maeda
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
PAPERS OF THE RESEARCH MEETING ON THE CIVIL ENGINEERING HISTORY IN JAPAN (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.107-113, 1984-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
9

明治後期から大正前期にかけて、成長期を迎えた大阪市の常住人口は100万人を超えて、膨脹し続けた。路面電車が市内交通機関として、十分な機能を発揮するに至る明治41年頃以前は人力車・巡航船が大阪市の都市交通の中心的役目を果たし、さらに、一部臨港地域では渡船も重要な役割を果たしてきた。なかでも、わが国の独創的交通機関である人力車は、明治初年に出現して以来、着実に増加して、明治中期以後は大阪市民の足として重要役割を果たすようになり全盛期には2人乗りもあわせて2万台を超えていたが、巡航船や路面電車、大正中期以降の自動車の発達により衰退して行った。路面電車開業と同年の明治36年運航を開始した巡航船は、最盛期には2万人以上の乗客を運んでいたが、明治41年路面電車の路線拡張により、大正2年にその使命を終えた。本研究は明治期における交通手段の変遷について述べる。
著者
須 純一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_123-I_132, 2014
被引用文献数
1

本論文では,航空写真と航空機レーザ(light detection and ranging: LiDAR)データから建物境界線を自動推定する手法を提案する.提案手法では,航空写真に領域分割を行い初期の領域分割結果を得る.次に,航空機LiDARデータの3次元座標点群に対しフィルタリング処理を実施し,地盤面と非地盤面データに分離する.そして非地盤面データの各点に対し,近傍の点を含めて平面の法線を計算する.この法線を領域ごとに集計した領域の法線データを活用して,対となる領域のペアを生成し,領域を建物単位で捉え直す.最後に各々の建物単位で2次元の境界線を生成する.京都市東山区の密集市街地に提案手法を適用した結果,細い路地に囲まれた街区に建物が隣接し、陰影が多数発生する密集市街地であっても,提案手法は良好な境界線データを生成できることが判明した.
著者
李 鎮昊 全 炳徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.435-444, 2007

本研究は日本の陸地測量部が当時の朝鮮半島で行った測量の足跡である.特に,当時の朝鮮の政府官僚の対応および地方民の抵抗等について焦点を当てている.また,当時の朝鮮の近代測量の足跡と日本の測量足跡とを対比しながら,朝鮮と日本が取られた近代測量の認識を史料に基づいて考察した.これらの考察より,日本の陸地測量部の朝鮮半島での測量内容や活動,また,それに伴う当時の朝鮮国内の政府官僚および地方民の反応などを明らかにした.この結果から,近代測量において朝鮮の測量認識は日本に比べて非常に低く,これが日本より測量技術の遅れを招いた原因のひとつである分析した.<br> また,本研究では朝鮮半島で活動していた日本の測量技術者たちの測量内容を明らかにし,彼らが活動していた朝鮮と日本の近代測量交流史についても史料に基づいて考察した.
著者
北川 信 古家 和彦 中村 俊一 鈴村 恵太
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.672, pp.145-154, 2001-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

明石海峡大橋ケーブルの防食方法として, ケーブル内部に乾燥空気を送り込み, 内部水を強制的に排除させる送気乾燥システムを世界で初めて適用した. 本システムの導入に際し, 乾燥空気を送気した小型ケーブル試験体の腐食試験結果を, 送気しなかった試験体と比較することにより, 送気乾燥システムの防食効果を確認した. さらに, ケーブル試験体から除湿された水分を計測することにより, 内部水が除湿されるプロセスを定量的に把握し, 除湿メカニズムを明確にした. また, 湿度および付着塩分が亜鉛メッキ鋼線の腐食におよぼす影響を室内実験により調査し, 送気システムによる亜鉛メッキ鋼線の耐久寿命を推定した. その結果, ケーブル内を相対湿度60%以内に保てば, きわめて長期の耐久性が得られることを見い出した.
著者
今西 正義 山本 祐吾 東海 明宏 盛岡 通
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.65-74, 2010

本研究では,代表的な都市活動である建設,電力消費,交通,食糧・水資源消費に伴うエネルギー・物質代謝と,それに随伴する直接・間接的な環境負荷量を算定し,3つの指標(CO<sub>2</sub>排出量,総物質需要量(TMR),エコロジカル・フットプリント (EF))から都市の持続可能性を評価するためのモデルを構築した.その上で,巨大な物質的ストックとフローが形成される中国上海市に分析モデルを適用し,社会経済構造の将来変化による都市代謝と持続可能性を推計・評価した.その結果,TMRは経済成長とともに増加し,2020年では2004年に比べて最大で80.4%増加すること,EFは建設需要の伸びによって2004年で高負荷となり,特に都市の急成長期には,建設資材由来の間接負荷が大きくなること,などが定量的に明らかになった.