著者
山本 淳子 梅本 雅
出版者
全国農業構造改善協会
雑誌
農業経営研究 (ISSN:03888541)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.24-35, 2012-12-25
参考文献数
17

農業労働力の減少や高齢化は年々深刻化しており,近年では大規模層でも後継者が確保できていない場合が少なくない。従来の直系家族制の下での農業の継承については,もはや限界が生じてきている。このような中,農家あとつぎによる従来の「農家型経営継承システム」に加えて「非農家型継承システム」を構築することの必要性が指摘されている(柳村)。この「非農家型継承システム」は,「農家型」,すなわち農家家族内での継承に基づかない方式として位置づけられるが,そこにはいくつかの方式が内包されていると見るべきであろう。この家族内での継承とは異なるタイプとしては,一つは組織法人における経営継承があり,複数農家から成る共同経営に新規参入者が加わり継承するタイプ(泉谷,原)や,血縁関係にこだわらず従業員の中から優れた者を経営者に登用し継承するタイプ(迫田)について,その実態や課題の検討が行われている。また,近年では,後継者不在の家族経営が行ってきた事業を技術・ノウハウを含めて家族外の第三者(新規参入者)へ継承するという「第三者継承」が,各地で取り組まれるようになってきている。まだ事例は少ないものの,平成21年度からは農林水産省の補助事業として,このような第三者継承を推進する「農業経営継承事業(実施主体は全国農業会議所)」が開始されている。この第三者継承により,経営内で後継者を確保できなかった場合にも事業が次の世代へと引き継がれ,同時に新たな担い手の育成を図ることができる。
著者
本郷 儀人 金田 大
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.90-95, 2009
被引用文献数
6

一般にフクロウはネズミなどの小型哺乳類や小型鳥類及び両生類などを主食とし,昆虫類は稀にしか捕食しないと考えられている。しかしながら我々は,フクロウが,餌動物としてはこれまでに報告がなかったカブトムシを捕食することを発見した。さらに,フクロウのカブトムシに対する狩り行動についても観察することができた。そこで,フクロウの詳細な狩り行動についてと,夏季のある時期に非常に頻繁に捕食することを合わせて報告する。
著者
松田 映二
出版者
埼玉大学社会調査研究センター
雑誌
政策と調査 (ISSN:2186411X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.29-44, 2019

質問・選択肢を「目で見る」調査で発生する初頭効果は,Krosnick(1991)が提唱した満足化(satisficing)だけでなく,Kahneman(2011)が解説したシステム1(速い思考)の機構でも発現していることを検証する. そのために,力学におけるモーメントの概念を適用した新しい尺度(M 値)を定義する.同時に 7 つの択一質問を選択肢正順と逆順で実験した結果を用いて,学歴が低いほど M 値が高くなる(satisficing が機能している)ことを一般化する.しかし,女性より男性で,主婦より学生で,保守的志向をもつ層でM 値が高くなる新発見は,satisficing では説明できない.一方で,表形式質問における欠損は女性で有意に多い(p < 0.001).これらの事実を基に,回答バイアスにはシステム1 も機能していることを示す.This paper shows that the primacy effect in visual-mode surveys arises not only through “satisficing,” as advanced by Krosnick but also through “system1,” which Kahneman exposited in Thinking, Fast and Slow. These findings were solved using “M value,” defined as a new scale based on moments in dynamics. Comparing the difference between standard order and reverse order for options of seven single-answer questions, it is shown that the lower education the level, the higher the M value (the same occurs with larger satisficing). However, satisficing does not provide a sufficient explanation for why there is a higher M value for males than for females, for students than for full-time homemakers, or conservative types than others. On the other hand, there were significantly more missing options in grid questions (p < 0.001) for females. Based on these findings, we show the relation between response biases and system1.
著者
佐藤 忠男
出版者
キネマ旬報社
雑誌
キネマ旬報 (ISSN:13425412)
巻号頁・発行日
no.129, pp.126-128, 1955-10
著者
山本 隆司
出版者
日本法社会学会
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.66, pp.16-36, 2007 (Released:2017-01-31)
著者
橋本 靖
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第52回大会
巻号頁・発行日
pp.24, 2008 (Released:2008-07-21)

イチヤクソウ属植物は,菌従属栄養植物とされるシャクジョウソウ亜科と近縁な仲間で,生育環境も同様に光の少ない森林の林床である.一方,イチヤクソウ属の多くの種は,常緑の厚い緑の葉を持ち,比較的大きなコロニーを形成して生活することが出来る.そこで,イチヤクソウ属植物と共生菌の関係を,種子の共生発芽から親個体の菌根菌まで調べ,彼らの生存戦略と菌従属栄養性について考察した.種子の埋設実験を様々な環境下で行った結果,若齢カバノキ林でのみで発芽が確認され,親コロニーが存在する成熟林や,森林成立前の調査地では発芽が見られなかった.また,調べた全ての発芽実生から同一種の菌根菌が検出され,発芽時の菌パートナーは極めて特異的で,他の菌従属栄養植物と同じ傾向と考えられた.一方で,イチヤクソウ属の親個体の菌根菌は,様々な科・属にまたがる多様な種の菌が出現し,菌従属栄養植物で見られる,菌根菌パートナーとの特異的関係は見られず,また,その菌根菌の多くが,生育森林内の優占樹木の外生菌根菌と同じ種によって占められていた.つまり,イチヤクソウ属は生育環境に応じて周囲の菌と菌根を形成し,かつ周辺樹木と菌の共有を可能にしていると考えられた.さらに,イチヤクソウ属の葉の安定同位体自然存在比を,周囲の他の植物種と比較したところ,一部の群落で菌従属栄養性を示唆する値が示された.また,ポットを使った13Cトレース実験の結果,ベニバナイチヤクソウ葉から菌根菌経由での樹木光合成産物の移動が示唆された一方,検出された13Cの量は多くなかった.これらの結果は,本植物の菌従属栄養性の存在を間接・直接的に示すが,それへの依存度は高くないと考えられた.以上から,イチヤクソウ属植物は,種子発芽時には厳密な菌への特異性を持つことで,発芽適地の選択が可能となり,逆に親個体では,菌への特異性を低くすることで,周辺環境の変化への対応が可能になり,また,各森林の外生菌根菌糸ネットワークに接続できると推察される.イチヤクソウ属植物の生存戦略において,菌従属栄養性への依存度は高くはないが,共生菌の存在は重要な働きを持つと思われた.
著者
篠原 和毅 曽 耀崑 大村 浩久
出版者
九州大學農學部
雑誌
九州大学農学部学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-30, 1974-09

TRとアミノ酸との反応における褐変におよぼすCu^2+の影響について検討した結果,Cu^2+共存下においては,特にGly,Asp,Try,Arg,Pheとの1:2反応で,Cu^2+無添加の場合よりも著しい褐変が観察された.他のアミノ酸との反応系ではCu^2+を加えない時とほぼ同程度か,あるいはそれ以下であつた.他方,Cu^2+共存下でも褐変は1:1反応よりも1:2反応において顕著であつた.続いて,Cu^2+存在下でのTRとアミノ酸との反応における吸収スペクトル,およびその吸光度の変動を求めた.その結果,反応時間とともにTRに特徴的な吸収の減少がみられた,その低下の度合は各反応系ともほぼ同程度であつた.さらに,特に1:2反応において縮合物の生成を示す225nm,および310nm付近を中心とした吸光度の増加が認められた.また各反応液についてペーパークロマトグラフィーを行なつた結果,すべての反応系に縮合物と思われるスポットが検出された.
著者
横井 安芸 石井 良和
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.190-201, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
33

本研究では「高齢者の生活期リハビリテーションに携わる作業療法士のコンピテンシー項目(案)」の自己評価尺度を開発する目的で信頼性・妥当性を検討した.調査対象は,生活期リハビリテーションに従事する作業療法士とし,得られた363名の有効回答について,回答の偏りを確認後,探索的因子分析を行った.その結果,本尺度は30項目5因子構造であることが推察された.この予測をもとに共分散構造分析を実施したところ,適合度指標CFI=.921,RMSEA=.055で良好な構成概念妥当性を有していることが確認された.また,信頼性はCronbach’s α=.79〜.95で内的整合性が保たれていることが明らかとなり,本尺度は十分な信頼性・妥当性を有していることが示された.
出版者
ほるぷ出版
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, 1921-03
著者
脇 実花 秋田 馨 宮本 直 笹木 栄子 原口 友里恵 松井 弘稔 金子 ひろみ
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.305-308, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)
参考文献数
8

当院では,2012年7月よりFisher & Paykel Healthcare社より発売されたOptiflow®(ネーザルハイフロー:以下NHFとする)を導入した.NHFには様々な使用効果があるが,新しい酸素供給デバイスのためエビデンスが少ない現状がある.2013年度途中までに当院でNHFを使用した患者25名の疾患内訳,NHF使用前の酸素デバイス,NHFの使用時期,NHF使用後の転帰,NHFの使用期間,NHF使用中に経口摂取や会話が可能だったかを分析した.その結果,NHFを使用することにより,人工呼吸器装着以外の治療の選択肢が広がり,高流量酸素投与下でも会話や食事ができる機会が増えたことを認めた.

1 0 0 0 電気評論

著者
電気評論社 [編]
出版者
電気評論社
巻号頁・発行日
vol.58(9), no.72, 1973-08
著者
辻 絵理子
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.97-103, 2021

ヴァティカン図書館所蔵ギリシア語写本1927番は、ビザンティン世界で制作された挿絵入りの詩篇写本である。全289葉に145もの図像を有する貴重な作例だが、その独特の図像体系には比較対象となる写本が現存しない。そのため1940年代のモノグラフ出版の後は、旧約の王ダヴィデの表現に着目した分析などは見られたものの、写本全体を取り上げて各挿絵と対応する本文を詳細に検討する包括的な研究は為されてこなかった。本稿では同写本のテクストと挿絵を突き合わせ、同じ章句に挿絵を有する他の詩篇写本作例と比較しながら、紙幅の許す限り分析を進めていく。
著者
吉田 恒夫
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.55-60, 1980
被引用文献数
1

繊維を横方向に1μmの厚さにカットし, 紫外線吸光度を測定して, アントラキノン (AQ) 添加, 又は無添加時の松材のソーダパルプ化における脱リグニンの相違を研究した。AQを添加した場合, 二次膜と中間層共に脱リグニン度が増加した。これは春材, 秋材に共通して言えることである。いかなる脱リグニンレベルにおいても, リグニン除去率は二次膜, 中間層共に同一であった。Ross図表が示すように, AQによる脱リグニンの促進により, 全リグニンレベルにおいて高収率パルプが得られた。紫外線吸光度は, Halseリグニンと高い相関 (99%) を示した。<BR>1970年代初期にはBachとFiehnにより, また近年ではHoltonによってAQとその誘導体の多くは, ソーダパルプ化, クラフトパルプ化共に脱リグニン促進効果のあることが見出された。この脱リグニン促進効果によって, 全リグニンレベルにおいて高収率パルプが得られる。脱リグニンの促進と還元性末端基の酸化による炭水化物の安定化により, 収率が向上する。AQ添加により黒液の酸化還元電位が低下する。これは脱リグニン促進の間接的証明となる。もし1個の β-0-4結合を持つ分子を, アントラキノンモノスルホン酸塩で処理したならば, フェノールユニットの側鎖において, CαとCβの間で開裂が起こるであろう。この開裂は, 同一リグニン度で比較すると, ソーダパルプ化の場合には起こらなかった。本研究の目的は, 紫外線ミクロ分光光度法を用いて, AQ添加又は無添加時のソーダパルプ化におけるPinus silvestrisの仮道管細胞膜の脱リグニンを検討することにある。この方法を用いて繊維横断面を分析することにより, 二次膜と中間層について個々に脱リグニン度を測定出来る。