著者
梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

電子捕獲型超新星とは重力崩壊型の超新星のうち最も質量が軽い星の爆発である。一般に星の数は軽い星ほど多いため、この型の超新星が実在するのであれば超新星の光度曲線などの観測にも、元素の起源に関しても重要なはずであるが、これまでそれらの研究対象としてあまり考えられて来なかった。その主な理由の一つは、より重い鉄の核を形成するものとその進化過程が大きく異なり複雑なため親星の計算がほとんどなされていなかった事があげられる。今回我々はほぼ30年ぶりにその進化計算を更新された物理を用いて計算することができた。この親星モデルを爆発させることにより、今後この超新星に関する理解が深まることが期待できる。
著者
鈴木 雄大 吉岡 和夫
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

水星は非常に希薄な大気(~1e-10 Pa)を保持しているが、常時強い太陽光圧や太陽風に晒されている上に重力が小さいため、非常に多くの気体が宇宙空間へと散逸している。外気圏が地表に直接接続しているため、水星大気の生成量・散逸量は周囲の環境に応じて劇的に変化する。 外気圏を構成する元素は主にNa, Mg, H, K, Ca, He等であるが、このうちH, Heは太陽風、それ以外の元素は水星表面からの脱離によって供給されると考えられている。脱離プロセスとしては例えば熱脱離、光励起脱離、イオンスパッタリング、微小隕石衝突等が考えられている。熱脱離量は公転に伴う太陽-水星間距離の変動による表面温度の変化、光励起脱離量は太陽活動度の変化による太陽放射の変動、イオンスパッタリングによる脱離量は太陽風の変動や太陽フレアによる水星周辺のプラズマ量の変化、微小隕石衝突による脱離量は水星周辺のダスト量によって変動する。従って、それぞれの過程による水星大気の生成量を推定することは太陽系内縁環境の理解に繋がる。 生成過程ごとに放出される粒子の速度分布が異なるため、現在はMESSENGER探査機の観測データから得られる大気鉛直密度分布から放出温度を推定し、水星大気生成への各過程の寄与を推定することが多い。しかし、特に高温成分の気体の存在量の推定精度に問題があるほか、探査機の軌道の都合上、中緯度帯および北半球高緯度の大気生成過程の推定が非常に困難である。 熱脱離は、粒子に与えるエネルギーが小さく、放出粒子が再度地表に戻るまでのタイムスケールが水星の自公転周期に比べて十分に短くなる(~10分)ので、地表面におけるNa原子の分布を支配していると考えられる。また、イオンスパッタリングは中高緯度で多く生じるため、MESSENGERが苦手とする中緯度および北半球高緯度における大気の生成にも大きく寄与していると考えられる。本研究では特に熱脱離とイオンスパッタリングに着目して水星における中性Na粒子の生成から散逸までの挙動をモンテカルロ法によりシミュレーションする。さらにこの結果とMESSENGER MASCS UVVSの観測データを比較し、熱脱離とイオンスパッタリングの水星大気生成への寄与について議論する。
出版者
選択出版
雑誌
選択
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.110-113, 2010-12
著者
東海 義仁
出版者
富山大学人間発達科学部日本文学会
雑誌
富山大学日本文学研究 (ISSN:24326216)
巻号頁・発行日
no.3, pp.55-60, 2018-02-15

「バースデイ・ガール」は、平成二八年度中学校用『伝え合う国語 中学国語3』(教育出版)の三年生に掲載され教科曹教材にもなっている、村上春樹の短編作品の―つであり、教科書に掲載されて日が浅いこともあって本作品の教材としての研究は不十分である。深津謙一郎氏は「あなたはきっともう願ってしまったのよ」という彼女の台詞から「『僕』もかつて『あとになって思い直してひっこめることはできない』類の願いごとを『ひとつだけ』選んだ結果、今こうあるのだ、と。にもかかわらず、『僕』がそのことを思い出せないのは、『僕』がその起源(の選択)を想起しなくてよい程、今に不満を感じていないからである」と「僕」について解読して、老人については「彼女の話を聞いたあとの事後的な視点から、『何かのめぐりあわせ』というマジック・ワードで必然化してみせた」ことを指摘する。大木志門氏は「僕」が人生の「一回性を無自覚に生きてきた」存在であることと「人生の選択を迫られた」存在である彼女の対比、そしてその「人生の一回性」を「それ自体が呪い」である可能性を指摘する。しかし、深津氏も大木氏もそれぞれ「僕」についての指摘が行き過ぎている。「あなたはきっともう願ってしまったのよ」という彼女の台詞の通りに解読しても、「僕」が今に不満を感じていないことは明らかにはならず、そもそも彼女との対比という点のみで「僕」が人生の「一回性を無自覚に生きてきた」存在であると導き出すのには無理がある。本作品は空白が多数存在しているため、その可能性を示すことはできても、断定するためにはあまりにも情報が足りないため、彼女の願いごと一つとっても特定することに意味はないだろう。本稿では、西田谷洋氏が指摘するユーモアを用いた解読を踏まえながら、これまで見落とされていた作品内に存在する類似したレトリックについて指摘をしつつ、老人の発言を受け取ったことで変化が生じた彼女が、二十歳の誕生日から数十年後に「僕」とやり取りをする中にも変化が生じる可能性があることを確認する。また、本作品の最後に老人の台詞が再挿入されることが強調することも明らかにする。
著者
別府 恵子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.5, pp.53-66, 1991-03

Since the beginning of history the family has been recognized as a central element in the social structure in any culture. In his book, The family(1964), William J.Goode contends that the family performs important services for society "such as reproduction, care, maintenance, and socialization of the young." Likewise, Margaret Mead expounds its raison d'e^^^tre that one's humanity is nurtured in a family, which is "the toughest institution we have." The American family is a transplantation to the American soil of the European model with the father(=husband) as the head and provider of this social unit. Ichabod Crane, Irving's protagonist in "The Legend of Sleepy Hollow"(1820), pictures his vision of a family as follows: "...his busy fancy...presented to him the blooming Katrina, with a whole family of children, mounted on the top of a waggon loaded with household trumpery, with pots and kettles dangling beneath; and he beheld himself bestriding a pacing mare, with a colt at her heels, setting out for Kentucky, Tennessee, or the Lord knows where!" This was an ideal"American family" congenial to the American imagination since the beginning of the Republic. During the 19th century in particular such a vision of a family provided people an incentive to move westward and people the wild west with a whole family of thriving children. In Irving's story Ichabod's dream of his family, however, was not to be realized. This paper is an attempt to clarify the nature of "American family" through an examination of its pictures portrayed in the four novels written in the latter half of the 19th century:Hawthorne's The Blithedale Romance(1852), Melville's Pierre(1852), Mrs. Stowe's The Minister's Wooing(1859), and Louise May Alcott's Little Women(1869). (The paper was originally presented at the symposium on "The Family in American Literature" for the 23rd Annual Meeting of the American Studies Society held on March 31, 1989.)
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.479, pp.28-30, 1999-09-27

インターネット・メールに絡むトラブルが相次いで発生している。メール・サービスを提供しているベンダーで利用者のメールが消失したり,長時間にわたってメールが配送されなかった。メールを誤配信して顧客の個人情報を流出したり,ウイルス感染ファイルを添付したメールを顧客に送ってしまった企業もある。
著者
勝村 幸博
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.644, pp.66-75, 2012-02-27

連絡手段として不可欠な電子メール。メールアドレスを指定するだけで相手に届くことは知っていても、実際にどのようにして送られているのかを知る機会はほとんどない。メールソフトやメールサーバーが、全てを自動的にやってくれるからだ。とはいえ、トラブルの解決や迷惑メール対策などのためには、仕組みの理解が必要になる。さあ、メールの舞台裏を案内しよう。
著者
北島 博
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.61-69, 2008-02-01
参考文献数
136
被引用文献数
1

カミキリムシ類の人工飼育技術に関して,供試虫の確保,成虫,卵,幼虫,蛹の各発育ステージごとの取り扱い,および発育の斉一化方法に分けてレビューした。幼虫の餌として,一般的には天然の餌および人工飼料が用いられる。人工飼料として,寄主植物の乾燥粉末が主成分である飼料と,脱脂大豆粉末,デンプン,スクロース,および小麦胚芽が主成分で,それに寄主植物を添加した飼料が多く用いられている。また,休眠打破のための低温処理や,蛹化を斉一化させるための最適な日長条件が考案されている。人工条件下で継代飼育を行うためには,飼育の目的,労力,および設備に合わせて幼虫の飼育方法を選択し,その上で飼育計画を策定する必要がある。
著者
岡村 保 松久 次雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.382-385, 1965-08-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

筆者らは紙巻タバコのフッ素量を測定した結果, 意外に多量のフッ素がタバコ中にあることを知った. しかもそれが, 煙となって大半が吸煙されると考えられるのでかくれた煙害として再検討されるべきではないかと思われる.