著者
小笠原 功明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.316-324, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
7

日本内科学会は1903年創立当初から英文誌を刊行し,今日までに1万本を超える論文を発行してきた。現在は,月2回・年24回発行し,J-STAGEによりオープンアクセス誌として公開している。2005年の論文投稿・査読オンラインシステム導入および電子ジャーナル化以降,海外を中心に,予想を上回るほど投稿論文数が大幅に増加した一方で,さまざまな問題点・課題が表面化することとなった。本稿では,表面化した問題点・課題,その克服への取り組み,さらには今後の展望について紹介する。
著者
加藤 文彦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.307-315, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

DBpediaは主にWikipediaから構造化データセットを抽出してリンクトデータとして再公開するコミュニティープロジェクトである。まず,DBpediaやDBpedia日本語版の成り立ちについて解説する。その後にデータモデルやデータ抽出といったDBpediaの技術的側面について述べる。現在日本語版のトリプル数は1.1億程度である。また,Wikipedia内でのテンプレート出現数に対するマッピングのカバー率は49.1%である。日本語版の利用調査を2015~2016年にかけて行った結果,日本語版にリンクするデータセットが18件,日本語版のアプリケーションが26件,研究利用が65件あることがわかった。また,DBpediaとウィキデータの関係も述べる。
著者
中澤 敏明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.299-306, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

ニューラル機械翻訳(NMT)の登場により機械翻訳のパラダイムは大きく変化した。平均的な翻訳精度は統計的機械翻訳(SMT)と比較すると格段に向上したが,誤りの傾向がSMTとは大きく異なっており,NMT特有の誤りも存在する。本稿では機械翻訳研究の歴史をごく簡単に振り返り,SMTの仕組みを簡単に復習した後,SMTと比較しながらNMTの仕組みを解説する。NMTは大きく分けてエンコーダー,アテンション機構,デコーダーの3つからなり,それぞれの役割についても解説する。またそれぞれの翻訳方式の特徴を明らかにし,その長所と短所を説明する。さらに科学技術振興機構(JST)におけるNMTの活用事例を紹介し,最後に本稿のまとめを行う。
著者
清水 忠 上田 昌宏 豊山 美琴 大森 志保 高垣 伸匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.8, pp.987-998, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

This study evaluated the effect of an evidence-based medicine (EBM) educational program on EBM-related knowledge and skills of pharmacists and pharmacy students. Our preliminary educational program included the following four sessions: 1) ice breaker, 2) formulation of answerable clinical questions from virtual clinical scenario using the PICO criteria, 3) critical appraisal of the literature using a checklist, and 4) critical appraisal of the results and integrating the evidence with experience and patients values. Change in knowledge and skills related to EBM were evaluated using pre- and post-seminar 4-point scale questionnaires comprising of 14 questions. A total of 23 pharmacists, 1 care manager, and 5 pharmacy students participated in our EBM educational seminar. Knowledge and skills related to several variables improved significantly post-seminar (pre-seminar 2.80 versus 3.26 post-seminar; p<0.001). Specifically, the skills of formulating answerable clinical questions from virtual clinical scenario and critical appraisal of the literature using a checklist improved. Our findings suggested that EBM educational program using problem-based learning was effective in improving EBM-related knowledge and skills of pharmacists and pharmacy students.
著者
三浦 麻子 飛田 操
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.124-136, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
6 4

本研究では, 集団創造性に影響を与える要因として成員アイディアの多様性を取り上げ, その効果を実証的に検討した。多様性の高い集団による相互作用過程においては, 集団が創造性パフォーマンスを発揮する可能性が高まり, 集団の創発性が生まれることが期待される。しかしその一方で, コミュニケーションにおいては葛藤を生じやすくさせる方向で機能することが考えられる。実験1では, 集団成員の個人レベルのアイディア創出結果にもとづいてアイディアの多様性を分類し, 集団の創発性と成員の心理的変数に対する効果を検討した。しかし, 予測したような多様性の効果は見られず, 成員アイディアの多様性が十分な効果を持つためには, より円滑なコミュニケーションを促進するような, 類似性や共通性を有することが必要となることが示唆された。そこで, 実験2では, 成員のアイディアの多様性に加えて類似性についても検討し, この2つの基準にもとづいて集団を分類した検討をおこなった。その結果, 多様性と類似性の相乗効果によって, 集団の創発性が高められる可能性が示された。以上の研究結果から, 集団が創造的となるためには, 成員相互の多様性と類似性がともに必要となることが示唆された。
著者
樫村 修生 南 和広 星 秋夫
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.139-144, 2016-12-01 (Released:2016-12-31)
参考文献数
9

本研究では,2020 年東京オリンピック開催期間と同期間の 2015 年において,暑熱曝露がもっと過酷であると想定されるマラソン選手の立場から,走行中に曝露される WBGT の計測を試みた.期間中にロードバイクに環境温度計を設置し,スタート地点からゴールまでをマラソン競技の走行スピードに相当する時速 20 km 時の WBGT を計測し,熱中症の危険性を評価した.平均 WBGT は 7 月 26 日が 30.4℃で 30℃を超え,次いで 8 月 4 日が 29.6℃,8 月 9 日が 27.0℃であった.また,平均乾球温度は,7 月 26 日が 36.9℃,8 月 4 日が 34.5℃,8 月 9 日が 32.4℃であった.平均 WBGT は,各地点においてロードバイク走行時の方が定点観測より平均 0.2±0.1℃(0.1 から 0.3℃)とわずかに低値であった.その結果,走行時に選手が曝露される WBGT は予想以上に高く,これにマラソン運動による 2 時間以上の体温上昇の負担も加わることから,熱中症を防ぎ良い成績を残すためには暑熱下トレーニングを実施し,十分な暑熱順化が必要になると思われる.この研究において,我々は 8:30 にスタート時間を設定したが,そのスタート時間をさらに早朝にシフトすることを検討する必要がある.さらに,我々はマラソンコースに多くのミストシャワーを設置し,ランナーの身体冷却を補助することが必要であると考える.

12 0 0 0 OA 浄瑠璃名作集

著者
松山米太郎 校
出版者
有朋堂書店
巻号頁・発行日
vol.中巻, 1926
著者
沢井 芳男 外間 安次 鳥羽 通久 川村 善治
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はヤマカガシ咬症の重症患者の治療血清の試作を行うためにヤマカガドウベルノイ腺から毒液を抽出し, ウサギ及びヤギを免役し, その血清を採集し, 硫酸ナトリウム, 硫酸アンモニウムによる分画及びペプシン消化法によってγ-グロブリンを分画精製し高力価の抗毒素を得た. その結果ウサギ抗毒素0.2mlは120μg(48mld)の毒量を中和した. またヤギ抗毒素0.1mlは220μg(73.3mld)の毒の致死を中和し, 216μg(47mhd)の毒の出血を抑えた. また抗凝固性は抗毒素0.05mlは119.3μg(108.5u)の毒による凝固を阻止した. また抗毒素の精製度については電気泳動の結果γ-グリブロンの単一のピークが得られた. しかし免疫電気泳動では抗ウサギγ-グロブリン(IgG)ヤギ血清に対し, ウサギ抗毒素は特異時的な反応帯が認められたが, 抗ウサギ血清に対してはγ-グロブリン以外の混入が認められた.なお本抗毒素にはさらに治療用毒素に必要な所定の検査を行い, 長期保存にたえるように凍結乾燥を行った. その間に発生したヤマカガシ咬症患者の重症例の治療に応用し, その治療効果を確かめることができた. すなわち本抗毒素は患者の出血性素因及び血液の凝固異常を速やかに回復し, 患者を治癒に導いた.
著者
植田 康孝 菊池 魁士
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.27, 2017-03-31

近年,目覚ましい技術成長を遂げている人工知能は,あらゆる産業を革新すると期待される。しかし,その影響の範囲は広過ぎるため,2030 年に到来すると予想される,人工知能が人間の能力を上回る「シンギュラリティ」以降の「人工知能社会」の具体的な将来像をイメージし難い,と指摘されることもしばしばある。イメージを助けてくれるのがSF(サイエンス・フィクション)作品である。現代の多くの人の中にある「人工知能」のイメージは,学問としての人工知能でも,技術としての人工知能でもなく,数多くのSF 映画やアニメ作品を通して形成されて来たイメージである。 スター・ウォーズ,ターミネーター,アイアンマンなど,SF 映画はいつの時代も人間そっくりの人造物(ロボット,アンドロイド)に憧れて来た。そして,その憧れは,「人工知能」に結びつく。人間のように動き,時に感情まで持つアンドロイド(ヒト型ロボット)は様々なSF作品に登場するため,欠かすことが出来ない存在になっている。SF 作品「スター・ウォーズ」が世界中に愛され続けているのは,ロボットが圧倒的な存在感を有しているからである。壮大な銀河の戦いの中で,安らぎとユーモアを与えてくれる。「スター・ウォーズ」シリーズには数多くのロボットが登場するが,1 作目(1977 年)で観客にとって最も印象に残ったのが「C-3PO」と「R2-D2」という2つのロボットである。「R2-D2」は宇宙船の操縦や機械の操縦をするロボットであり,登場人物たちの危機を何度も助ける。ただし言葉を話すことが出来ないため,「C-3PO」が代わりに話す役割を担う。「C-3PO」は通訳・式典用ロボットであり,機械語を人間に通訳したり,様々な種族の言葉や儀礼に精通し種族間の仲立ちをしたりする。映画ではこの2 体を主人公ルーク・スカイウォーカーが購入したことから,ロボットは帝国軍と反乱軍の戦いに巻き込まれて行く。「フォースの覚醒」から登場した「BB-8」は,大小2つの円から生まれたロボットであり,そっぽを向いたり,二度見したり,猛スピードでコロコロ疾走する。「R2-D2」の半分の大きさで,頭部と分離したボール型のボディが転がりながら移動する姿は,「かわいさ」を醸出する。結果,「BB-8」は,作品の中で一,二を争う人気キャラクターとなった。2016年12月16日に公開された「ローグ・ワン」では,ヒト型ロボット「K-2SO」が,反乱軍の将校キャシアン・アンドアの相棒として初登場した。何かと一言多いキャラクター設定である。「スター・ウォーズ」シリーズに登場する,これら人工知能「C-3PO」「R2-D2」「BB-8」「K-2SO」は,あくまでも人間がコントロールできる「道具知」と位置づけられる。映画「スター・ウォーズ」で描かれる人工知能は,「人間中心」のキリスト教観を基盤として,人工知能(ロボット)はあくまでも人間がコントロールできる存在であり,日本のSF 作品で描かれる「自律知」(汎用人工知能)のロボットと性格を異にする。「道具知」(特化型人工知能)とは,「自律知」(汎用人工知能)と対照する表現であり,人工知能の評価を「いかに便利な道具か」という視点でその知能の有無を評価する立場から捉えられ,「道具としての知的さを実現するために知的な情報処理モジュールを数多く組み込まれて構成されるロボット」である。

11 0 0 0 OA 反清算主義

著者
レーニン 著
出版者
希望閣
巻号頁・発行日
1928
著者
エヌ・オグニヨフ 著
出版者
世界社
巻号頁・発行日
1928
著者
高瀬 孝次
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鐵と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-120, 1936-02-25 (Released:2009-07-09)

Owing to the marked increase of aero-engine power, number of revolution, compression ratio, etc., crankshaft should inevitably biar the vibrational and duplicated over-stresses. The crankshaft should, therefore, not only be of the best chemical composition, most properly heat-treated, the latest metallurgical procedure being applied, but also of the most perfect design, in addition to the minimum weight and size.The writer has published a part of this investigation in the "Tetsu To Hagane" Vol. XIX, No.4 In this paper, in order to select the most suitable steel for the future, the notch effect in regard to the endurance properties and the influence of heat-treatment of these steels have been investigated.An investigation of crankshaft steel on the relation between the mechanical test results and the endurance properties by fatigue test have also been executed, and the writer has introduced a new method for determing the endurance limit in stead of laborious fatigue test.As a conclusion, the writer has suggested future requirements for the aero-engine crankshaft steel, considering all the facts above mentioned.
著者
山田 昌弘
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-51, 2017-05-25 (Released:2017-06-13)
参考文献数
10

日本の少子化を考える場合,次の意識を考慮に入れる必要がある。一つは,「結婚は経済的なイベントという意識」である。結婚は,恋愛の結果生じるという側面よりも,経済的に新しい生活を始める側面が強調される。第二に,日本では世間体意識が強く,他人から見て恥ずかしくない結婚生活を求める。特に,子どもに経済的につらい思いをさせたくないという意識が強い。そのため,自分が育った経済環境以上の条件が整わなければ結婚や出産を見合わせるのである。経済の高度成長期には,若者の経済状態はよく,その条件は整っていた。しかし,オイルショックを経て,1990年以降,若者の経済状況は不安定になり,格差が拡大する。子どもを十分な経済環境で育てる見込みがたたない若者が増える。その結果,結婚が減少するだけでなく,男女交際も不活発化する。そして,2000年以降,夫婦の子ども数も減少するのである。
著者
太田 恭子 Ohta Kyoko
出版者
首都大学東京 人文科学研究科
雑誌
人文学報. 社会学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.48, pp.1-26, 2013-03-25

本稿の目的は,近代日本の性教育論の分析を通して,大正期の母親による性教育モデルの形成過程を描き出すことにある.なぜなら,性別アイデンティティの確立に寄与したと思われる近代日本の性教育の推進に母親が積極的に関わっていることを明らかにすることで,近代日本のジェンダーの再生産過程を明らかにすることができると思うからである.そこで,明治から大正にかけて産出された性教育論において,性教育の担い手についての言説と大正末期に登場した母親たちの性教育実践報告を分析した.明治期の性教育論では性教育の対象は男子であり,担い手は教師か学校医が想定されていた.大正期になると家庭では母親が幼児期の生活全般に関わる性教育を行い,学校では教師がそれぞれの年齢に見合った性知識を与えるという性教育言説が形成された.そうした言説が流布する中,母親たちは子どもとの相互行為を通じて,子どもが貞操や純潔を重んじ性差に基づく行為を生み出していくような,母親にしかできない性教育を構築した.母親による性教育言説は大衆的なメディアを通じて広く流布し,多くの母親に参照されるモデルとなって性教育に取り組む母親を生み出していったと思われる.こうして,母親による性教育は,結婚するまで貞操を守り「男は仕事,女は家庭」という性別分業に適合的な次世代を世に送り出して,近代日本のジェンダーを再生産していったと考えることができると結論した.