著者
加藤 郁佳 下村 寛治 森田 賢治
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.52-64, 2022-06-05 (Released:2022-07-05)
参考文献数
49

本稿では,強化学習を用いた依存症の計算論的精神医学研究について紹介を行う.依存症は,物質の摂取や高揚感を伴う行為などを繰り返し行った結果,それらの刺激を求める耐えがたい欲求や,得られないことによる不快な精神的・身体的症状を生じ,様々な損害を引き起こしてもやめられない状態に陥る重大な精神疾患である.この疾患の理解と治療法開発のために,臨床研究による病態の解明やマウスなどを用いたモデル動物によるメカニズムの解明が進められているが,本稿ではそれらの知見を元にして数理モデルを構築する研究アプローチを取り上げる.まずは導入として筆頭著者らが開発した計算論的精神医学研究データベースの使用例を示しつつ,主眼である依存症研究においてどのような数理モデルが多く用いられてきたのかについて分析する.その後,最もよく研究されている強化学習を用いた依存症の行動的特徴に関する具体的な研究の流れを紹介する.最後に,筆者らが最近提案した,非物質への依存(ギャンブル・ゲームなど)にも適用可能な計算論モデルの一例として,successor representation(SR)と呼ばれる状態表現を用いた依存症の計算論モデルを紹介する.今回紹介する研究は強化学習過程における状態表現に着目しており,不十分な状態表現を用いることで適応的でない報酬獲得行動につながるという観点を提示し,物質/非物質に共通する依存のメカニズムの解明などに寄与することが期待される.
著者
波多野 邦道 加納 忠彦
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_70-2_76, 2022-02-01 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

2020年11月に国土交通省によって世界初となるレベル3自動運転の型式指定が行われ、2021年3月より自動運行装置である「トラフィックジャムパイロット」を搭載した車両(通称名:レジェンド)の販売が開始された。本稿では、レベル3自動運転の実用化に向けた課題を法務的側面と技術的側面で整理した上で、世界で初めてとなる主要技術を解説する。さらに、自動運転の普及拡大とレベル4自動運転に対する課題と今後の期待を述べる。
著者
木村 光孝 西田 郁子 牧 憲司 高橋 宙丈 渡辺 博文 野沢 典央 堤 隆夫 岡 裕美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.291-298, 1991-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は食物の硬軟による咀嚼機能の変化が下顎骨にどのような変化を及ぼすかを明かにした.3週齢のWistar系雄ラットにそれぞれ固型飼料群,練飼料群-I,練飼料群-IIおよび粉末飼料群の飼料を与え,飼育6週間後に下顎骨に及ぼす影響を検索し,次のような結果を得た.1.飼料の平均圧縮強さは固型飼料群で94.32kg/cm2,練飼料群-I 45.23kg/cm2,練飼料群-II 14.20kg/cm2,粉末飼料群0であった.2.写真濃度所見は,固型飼料群が最も濃度が高く練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に歯槽骨骨濃度は減少した.3.下顎骨計測所見は,固型飼料群と練飼料群-Iおよび練飼料群-IIの下顎骨長および下顎枝高はほぼ同程度の値を示したが,粉末飼料群の値は減少した.4.X線マイクロアナライザーによる分析所見では,歯槽骨のCa,Pの点分析による定量分析を対照群と比較した相対Ca量比(Ca/[Ca]c)およびP量比(P/[P]c)を求めた結果,固型飼料群および練飼料群-Iはほぼ同程度の値を示し,練飼料群-IIおよび粉末飼料群に比べ高い値を示した.5.下顎骨破砕強度は固型飼料群が最も強く,練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に低値を示した.以上のことから食物の硬軟の変化によって歯槽骨の内部構造に影響を及ぼすことが明らかになった.
著者
山口 穂菜美 佐竹 隆宏 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.117-125, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
10

食後の嫌悪的な結果と食物による感覚的な特徴の回避という回避・制限性食物摂取症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:ARFID)様の症状を呈した自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)のある9歳の小児に対して入院にて心理教育とトークンエコノミー法を用いた行動的介入を行った症例を報告した.入院開始時,患児の摂食量は1日1口程度であったが心理教育と行動的介入の開始後徐々に摂食量および体重が増加したため149日目に退院となった.心理教育によって食後の嫌悪的な結果への対処行動を身につけたこと,トークンエコノミー法によって経口摂食の動機づけが高まったことが有効であったと考えられる.さらに,保護者を通した心理的介入を行ったことや,ASD特性に配慮した方略を用いたことが重要な役割を果たした.また,精神科医,小児科医,心理職の多職種連携を行ったことで,身体面,栄養面,行動面の多面的な治療を行うことができたと考えられる.
著者
Anatoli BROUCHKOV Gennady GRIVA
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.241-249, 2004-03-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

本稿では,寒冷地域での主にガスパイプラインの現状について,既存の情報と筆者らの研究結果とをあわせて述べる.永久凍土帯のパイプラインではパイプ周辺の地盤とパイプとが直接的な相互作用をする.この部分では凍結・融解によるさまざまなプロセスが発生・活発化する.パイプ周辺の湿地化の結果,ガスパイプラインには顕著な水平方向および鉛直方向の変位が生じ,強い応力腐蝕によるパイプの破壊が起こる.氷点下の温度でパイプラインを稼動させた場合には,ガスパイプラインが通過するタリクの凍結にかかわる新しい問題が発生する.最近の統計では,これらの問題とかかわっていると考えられる事故が数多く報告されている.
著者
黒木 真理 渡邊 俊 塚本 勝巳
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.21-031, (Released:2022-07-04)
参考文献数
61

Serious concern about the declining populations of the genus Anguilla and increasing related socioeconomic activities worldwide have led to a rise in the use of unauthorized Japanese names for members of this genus in various fields, as well as in academia. Therefore, it became important to clarify the standard Japanese names of all valid species and subspecies in the genus. Existing standard Japanese names for Anguilla species and subspecies were assessed, and new names proposed for some members, based on their geographical distribution and morphological characteristics, according to the nomenclature guidelines for standard Japanese fish names formulated by the Ichthyological Society of Japan in 2020. Standard Japanese names of three Japanese species and one subspecies were adopted from already-established names (Anguilla japonica, Nihonunagi; A. marmorata, Ō-unagi; A. bicolor pacifica, Nyūginia-unagi; A. luzonensis, Ugumaunagi); two Atlantic species were redefined (A. anguilla, Yōroppa-unagi; A. rostrata, Amerika-unagi); and the remaining eleven species and five subspecies were newly named (A. bicolor, Baikara-unagi; A. bicolor bicolor, Indo-baikara-unagi; A. dieffenbachii, Nyūjīrandoō-unagi; A. australis, Ōsutoraria-unagi; A. australis australis, Ōsutoraria-syōtofin-unagi; A. australis schmidtii, Nyūjīrando-syōtofin-unagi; A. reinhardtii, Ōsutoraria-rongufin-unagi; A. celebesensis, Serebesu-unagi; A. borneensis, Boruneo-unagi; A. interioris, Interia-unagi; A. megastoma, Porineshia-rongufin unagi; A. obscura, Porineshia-syōtofin-unagi; A. bengalensis, Bengaru-unagi; A. bengalensis bengalensis, Indo-bengaru-unagi; A. bengalensis labiata, Afurika-bengaru-unagi; A. mossambica, Mozanbīku-unagi).
著者
根本 泰雄 柴山 元彦
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-107, 2004-01-15 (Released:2022-06-30)
参考文献数
15

大学や研究所の研究者等が小学校「総合的な学習」・「算数」・「理科」・「生活科」の教材研究用の情報を教諭に提供する際教諭層のうち理数的な背景を持つ教諭がどの程度の割合で所属しているのか知っておくことは重要である. しかしながら,文部科学省や各教育委員会には小学校教諭の個々人がどのような専門的背景を持っているかを示す統計資料は存在していない.そこで,本研究では大阪市立小学校全303 校を対象として理数系を背景に持つ小学校教諭がどの程度の割合で所属しているかを郵送によるアンケート調査法により求めた.その結果,数学(算数)および理科を背景として持つ教諭は全教諭のうちそれぞれ約2.3% ,約5.9%であり,特に理科を科目として考えると,物理,化学,生物,地学を背景として持つ教論はそれぞれ約1.0% ,約0.9% ,約1.0%,約0.6 %であった.各科目ともに少ないが,特に地学の低さが特徴的であることが判明した.小学校における主要8教科を考えると10 数%の教諭がそれぞれ数学,理科を背景として持っていてもおかしくないが,理数系を背景に持つ教諭は合計でも10 %強でしかなかった.以上から,「小学校教諭」の採用においても志願者の素養を考慮することが望まれ,志願者の学問的背景による教科毎のバランスを考える方法を検討することや,教諭の配置にあたって各教諭の専門性も考慮に入れることでより望ましい配置となり得る可能性が示された. また,研究者等が情報を発信する際には,理数的な背景が必ずしも得意でない教論が約9割いる現状を認識して行う必要性のあることが示された.
著者
Suzuki Yuya
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.59-61, 2022-06-30 (Released:2022-07-02)

This paper describes field-based observations of male-male agonistic behavior in a longlegged sac spider Cheiracanthium eutittha (Araneae: Cheiracanthidae). Males of the species exhibited a characteristic agonistic behavior, where two males hung from leaves with a dragline, with all of their long legs entangled with each other and pushed each other’s body aggressively. To the best of my knowledge, this is the first video-based report of male-male agonistic behavior associated with usage of elongated legs in this spider family.
著者
多賀 太
出版者
大阪府立大学女性学研究センター
雑誌
女性学講演会 (ISSN:18821162)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-62, 2018-03
著者
星沢 欣二 小谷田 一男 小野 哲夫
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.224-240, 1985-04-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Coal dust emission from and spontaneous combustion of coal storage piles are becoming problems of increased importance as the volume of coal used and stored is expanding. Research results concerning these problems and preventive measures are summarized as follows:1. Coal dust emission is caused by dispersion of small particles of diameters less than 200 micrometers from coal piles. Methods for predicting coal dust emission quantities during operational storage were developed. Also, effectiveness of control methods including water sprays and wind shields were assessed.2. Spontaneous combustion of coal is caused by low temperature oxidation of coal. It was observed that pile temperatures must rise to 80 to 90 degrees C and be maintained for a period of time for spontaneous combustion to occur. A system using infra-red imaging apparatus was developed to predict the probability of spontaneous combustion in coal piles.
著者
大場 有紗 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.294-300, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
17

これまで物語における「ときめき」を読者に感じさせるメカニズムはほぼ研究されていない.そこで本研究では,物語における「ときめき」を感じさせるメカニズムを重視していると推測される女性向け恋愛ゲームを分析対象とし,「ときめき」に関する特徴を明らかにするために,構造の分析や「ときめき」に関するシーンの抽出を行った.また,男性キャラクターごとの物語構造を比較し,「ときめき」を感じるパターンは大きく3つ存在することを明らかにした.
著者
Nobuyuki Nakama Yasuyuki Nakamura Haruki Tatsuta Zoltán Korsós
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.5-12, 2022-06-30 (Released:2022-07-02)

A new pill millipede species, Hyleoglomeris magy sp. nov., is described from Okinawa and adjacent islands, Ryukyu Archipelago, Japan. The new species is mainly characterized by its large body (maximum length: 12.1mm) and general light yellowish-brown coloration marked with pairs of blackish spots. The general appearance of the new species resembles that of Hyleoglomeris hongkhraiensis Golovatch & Panha 2015, but can be distinguished from this species by the number of striae on the thoracic shield (typically 8–10, with 3 or 4 crossing the dorsum, vs 7 or 8 in total with 4 or 5 crossing the dorsum) and the shape of the telopod (femur strongly bulged distally, vs not bulged). An identification key to all five species of Hyleoglomeris known to occur in the Ryukyu Archipelago is also provided.