著者
高屋敷 真人
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.21-41, 2012-09

中上健次(1946-1992)は、自己形成において他者との同一化と自己同一化を廻る自己矛盾を感じ、それが自らの書くという行為の永続化の要因であると感じていた。書くという行為においては相反するものが同時に存在し複雑に絡み合いながら反復し続けることを「無間地獄」と名付け、敢えてそれを志向するために書くのだと宣言した。本稿では、中上健次が考えた、このような終わりのない「永続化する二項対立構造」と宮沢賢治(1896-1933)の「四次元芸術」の創作術、すなわち、唯一の決定稿を持ちえない今ここにしかない決定の連続の中で行う創作行為を比較し、賢治が「第四次元」の時間軸に沿って常に移動変遷していく世界から物事のすべてを眺め自覚的に確立したものと、中上健次が相対するものとは対立の果てに和合するのではなく、反復しながら永遠に終わりを引き伸ばすものであると考えたこととの相似について検討する。
著者
竹内 武昭
出版者
The Japanese Society of Behavioral Medicine
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.59-63, 2013

日本の喫煙率は低下してきてはいるが、依然として先進国としては高い状態が続いている。多数の死者を出す予防可能な疾患にもかかわらず、社会的には重要度の認識が低く、西欧諸国と比較すると十分な対策がなされていない。まさに「サイレントキラー」の名にふわさしいのがたばこである。明らかに健康被害のあるたばこであるが、実際に問題なのはほとんどの人がたばこの害が解っていながら、やめられない依存状態にあることである。ニコチン依存は、ニコチンが報酬系の行動と強く結びついていることに主因がある。依存に関係するドパミン神経系は「報酬系回路」として知られており、快の感覚を個体に与えるため、強化行動をひき起こす。喫煙による急激なニコチン濃度上昇は、一過性のドパミン過剰放出を起こすが、最終的にドパミン受容体数が減少するため、慢性的な喫煙状態は、シナプスの機能不全を起こす。禁煙指導には、薬物療法と共に行動科学的アプローチが重要である。禁煙の意志のある喫煙者に対してはニコチン依存の治療が行われ、行動カウンセリング(禁煙支援の5つのA)が高い戦略的価値を持つと考えられている。日本では保健適応の禁煙外来の利用が有用である。禁煙の意志のない喫煙者に対しては、動機付け面接を基本とする行動カウンセリング(動機強化のための5つのR)が有効であると考えられている。禁煙を継続・維持中の禁煙者に対しては再発防止戦略が重要であり、禁煙継続中に起こりうる心身の問題、外部環境の障害、誘惑に対する対応が含まれる。喫煙者には支持的に対応し、彼らはたばこ産業の犠牲者であるという考え方を持つことが重要である。さらに、禁煙することのメリットを個人レベルで模索し、禁煙開始と禁煙継続のモチベーションを維持する必要がある。
著者
安福 尚文 佐賀 聡人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.94, pp.25-30, 1998-10-15
被引用文献数
1

人間は描画動作によって,3次元構造物の形状,大きさ,位置,姿勢などを一度に相当程度まで表現することができる.このような自然な表現法を3次元CADのヒューマンインタフェースとして活用できれば,より直感的かつ効率的な形状入力の実現が期待できる.本報告では,このような考えから,3次元プリミティブ曲線の空間描画動作同定に基づく立体プリミティブ入力インタフェースのアイディナを提巣する.また,その中核技術として必須となる3次元手書き曲線同定法「FSCI-3D」を提案する.更に,没入型仮想環境を用いて,実際に3次元プリミティブ曲線入力インタフェースを試作し,その基本動作を確認する.Man can express 3-D object's shape, volume, position and orientation all at once using gestures. It is expected that utilization of this natural expression in a human interface of 3-D CAD brings a realization of intutive and efficient input of 3-D objects. In this paper, we propose an idea of 3-D object input interface on the basis of a spatial gesture identification of 3-D primitive curves. We also propose a 3-D freehand drawing identification technique named FSCI-3D that is the core technology of the proposed interface, and actualize a 3-D primitive curve input interface using immersive virtual environment to demonstrate its basic operations.
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.483, pp.30-35, 2005-06-13

携帯ノートは、各メーカーの主張が込められた特徴ある製品だ。持ち運びやすさと使い勝手という相反するテーマをいかに両立させるか、そこがメーカーの腕の見せ所。例えば、軽さ重視なら、液晶ディスプレイのサイズを小さくし、バッテリーを少なくすればよい。液晶ディスプレイが小さくなればバッテリー駆動時間が長くなるという利点も生まれる。

2 0 0 0 OA 古今要覧稿

著者
屋代弘賢
出版者
巻号頁・発行日
vol.[81],
著者
平本健二
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.52-59, 2012-01-15

CIOは,情報システムのガバナンスに留まらず情報活用全般を担当する.様々な情報が集まり,職員がそれをもとに政策の立案,執行するという経済産業省の組織の特性を考えると,CIOチームにとって,情報システムのガバナンス向上やコスト削減はもちろん重要であるが,情報の価値の最大化,人材の価値の最大化は非常に大きなミッションと言える.一方,行政機関を取り巻く環境は大きく変化してきており,オープンガバメントといわれる国民と一緒に取り組みを行う新しい行政スタイルが模索されてきている.さらに,国民本位の行政サービスを実現するため,情報を軸としたマーケティングの視点が非常に重要となってきている.そこで,国民の声を収集し活用するために,国民と共に職員も参加する電子掲示板を活用し,その意見の情報分析を実施し,さらにその分析方法をソーシャルメディアで流れる情報に適用することで,掲示板などに参加しない国民の意見の分析も実施した.本論文では,その検証の結果を整理し,国民の声を活用した新しい行政モデルとCIOの役割について考察する.
著者
白石 眞 関 一平 安藤 裕康 中澤 暁雄 伊巻 尚平 長嶋 淳三 高木 妙子 山中 郁男
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.692-695, 2001
被引用文献数
4

A 62-year-male presented a high fever and a dry cough during a trip to Australia. He was admitted to a hospital as soon as be returned to Japan. The next day after returning to Japan, he was transferred to our hospital with septic shock and loss of consciousness. <I>Neisseria meningitidis</I> was cultured from his blood. <I>N. meningitidis</I> is rare in Japan. However its seems common, in some foreign countries. With these findings, it can be postulated that <I>N. meningitides</I> might be one of the etiological agents of the imported infectious disease.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.500, pp.138-146, 2000-07-17

プロジェクトをたくみに切り盛りし,必ず本稼働へもっていくプロジェクト・マネジャたち,物流アプリケーションにかけては百戦錬磨のコンサルタント,ミドルウエアを核にしたソリューション(問題解決策)の全体像を描けるアーキテクト。データベースの中味を完全に知り尽くしたスペシャリスト。最前線で走り続けるプロフェッショナル7人が,自身の「プロ哲学」を語る。
著者
古田 榮作
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.(85)-(107), 2011

日常語となっている「地獄」は、梵語 niraka 奈落、niraya 泥梨の訳語として日本語になっているが、この語の概念はアッシリア・シュメール文化起源のものであり、インドに移入されたものである。「善因楽果」「悪因苦果」と説く仏教に取り入れられたのである。『ダンマパダ』はその一章を「地獄の章」(Niraya-vagga)としている。釈尊の時代にどのように「地獄」が位置づけられ、どのように仏教の一つの重要な概念としてまでたかめられたのであろうか。六道の最下層に置かれる地獄が、悪因の苦果として描かれ、さらにはどうもがこうとも休むことなく続く苦しみを受ける avici 阿鼻地獄、無間地獄までもがリアルに描かれている。しかし悠久の転生によりそこからの他の六道への移行も否定はしない。『ダンマパダ』の「地獄の章」を中心として、地獄がどのように描かれ、どのような者が「地獄」に墜ちるのだろうかを考察した。
著者
松本 伸哉
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.683-688, 2012-12-01

米国において,ビッグデータ解析の事例を紹介する.本事例は,オンラインゲームの会社において,ユーザーとの通信をすべて蓄積し,解析を実施した事例である.オンラインゲームにおいては,初心者にとって入り込みやすいゲームであるとともに,熟練したプレイヤーにとっても飽きさせない要素が必要である.また,プレイヤー間でのフェアな競争が必要であり,アンフェアな行為が可能でないかの確認ために,解析を実施した.
著者
白石 弘巳
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.13-21, 1997

日本人の海外出国者は年間1, 500万人を越え, 遅ればせながらさまざまな障害を持つ人たちが海外旅行に出かけるようになってきたが, 精神障害者の海外渡航については, 当事者にとっての弊害についての報告が多い。著者は, 1996年5月12日から22日まで, やどかりの里やどかり研修センターが企画した海外旅行 (「メンバー交歓会, 於ロサンゼルス」) に精神障害に罹患しデイケアなどに通所中の6名の参加者とともに参加した。旅行中, 現地の患者団体である「プロジェクトリターン・ザネクストステップ」などの支援を受けて, 当事者の集会への参加, 4日間の船上キャンプ, 当事者宅へのホームステイなどを行い, 現地の当事者や専門家と交流を深めた。旅行期間中, 日本の当事者は不安や緊張に対して各自のコーピングスタイルを駆使して対処し, 随所に優れた生活技能を発揮した。最後まで大過なく, また, 帰国後も病状が悪化した人はおらず, 各自が旅行の体験に力を得て回復の道を歩んでいるように見えた。またこの旅行を通じて, 専門家として当事者の力を信じること, 傍らにいて当事者の援助のニーズに即応することの大切さが実感された。<BR>以上の結果を踏まえ, 海外旅行におけるノーマライゼーションの体験が, 長期的に見て精神疾患からの回復の一契機を提供する可能性を示唆した。さらに, 今回の海外旅行が, 当事者の力を信じること, 専門家はパートナーとして接すこと, 広く社会の抑圧に対抗する力を生み出していくこと, を目指して行われるエンパワーメント・アプローチの一事例であると位置づけ, 精神疾患に罹患した当事者が海外旅行に出かけることの意義について述べた。
著者
戸田 恵子
出版者
佐伯史談会
雑誌
佐伯史談
巻号頁・発行日
no.204, pp.30-33, 2007-02

随想