著者
葛城天華 著
出版者
大学館
巻号頁・発行日
1902
著者
徳原 靖浩
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の中心課題は、西暦11世紀のペルシア詩人であり、イスラーム・シーア派の一派イスマーイール派に傾倒した思想家として知られるナーセル・ホスロウ(1072年以降没)の思想の全体像を明らかにすると共に、イランの思想史に位置づけることである。採用二年目である本年度は、(1)前年度学会で発表した、ナーセル・ホスロウの解釈学教義を端的に著したテクスト『宗教の顔』に関する研究を進め、また、(2)前年度に引き続き、新たに公刊された研究書、本邦で入手が困難な一次・二次資料文献、写本情報の収集のためイランに渡航した。(1)前年度はナーセル・ホスロウに先行するイスマーイール派思想家のテクストとの比較作業を行なった。特に、本研究で主に扱うテクスト、『宗教の顔Wajh-i Din』における記述には、基本的な教義的方向性に関する記述で先行する文献や、後のイスマーイール派の文献、また同時代の神秘主義文献にも程度の差こそあれ類似した表現が見られることが分かった。この点を間テクスト性の観点からどう扱うかについても考察を進めた。また、前年度の研究からの継続としては、『宗教の顔』に見られるザーヒル(外面)・バーティン(内面)の概念に二重の基準があるのではないかという考えを更に掘り下げ、この点に関して新たな知見を盛り込んだ論文を準備中である。(2)イランにおける資料収集:今年度はイラン国民議会(マジュレス)図書館および国民マレク図書館にて、刊本に使用されていないナーセル・ホスロウ著作の写本調査を行なった。
著者
長野 明日香 石井 正和 大西 司 下手 葉月 石橋 正祥 森崎 槙 相良 博典 巖本 三壽
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-29, 2017-02-28 (Released:2017-03-25)
参考文献数
18

【目 的】医師が求める薬局薬剤師の禁煙支援における役割について明らかにする。【方 法】 日本禁煙学会のホームページに掲載されている日本禁煙学会専門医及び認定医(200名)を対象にアンケート調査を実施した。【結 果】 回収率は51%(102名/200名)だった。薬局薬剤師が禁煙を勧めることは、喫煙者全員に行ったほうがよいとの回答が多かった(70%)。市販の禁煙補助薬での禁煙治療を勧めることは、禁煙の意思がある喫煙者に勧めるべきと回答した人が最も多かった(62%)。また、市販の禁煙補助薬による治療が失敗した場合は、禁煙外来の受診を勧めるべきと8割以上が回答した。薬剤師から医師への受診勧奨時の患者情報の提供方法としては、文書による提供を望む声が最も多く、中でも服用薬の情報を提供すべきとの意見が最も多かった。禁煙外来に通院中で、禁煙を継続している患者に対しては、称賛し自信をもたせること(85%)、禁煙できていない患者に対しては、禁煙できていない理由を確認することが、薬剤師が行うべき継続的フォローとして重要だと考えている人が多かった(71%)。より良い禁煙支援を行うために学会や薬剤師会などの認定を取得すべきだと7割以上の医師が考えていた。【結 論】禁煙治療では治療中に精神的ケアが必要となることもあることから、薬局薬剤師がより良い禁煙支援を行うためには、禁煙支援に関する知識をさらに身に着ける必要があると思われる。
著者
石井 正和 大西 司 下手 葉月 長野 明日香 石橋 正祥 阿藤 由美 松野 咲紀 岩崎 睦 森崎 槙 佐口 健一 相良 博典 巖本 三壽
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.12-20, 2017-02-28 (Released:2017-03-25)
参考文献数
20

【目 的】 禁煙外来を受診した患者へのアンケート調査により、保険薬局薬剤師(以下薬局薬剤師)による禁煙支援の必要性と、実際の薬局での禁煙支援の現状の把握から、薬局薬剤師の禁煙支援業務について考察する。【方 法】 昭和大学病院の禁煙外来を受診した患者を対象にアンケート調査を実施した。【結 果】 回収率は59%(36/61名)だった。対象者は、男性69%、女性が28%、平均年齢は58歳であった。禁煙を始めるとき、56%の患者は医師に相談したと回答したが、薬局薬剤師に相談した患者はいなかった。同様に、58%の患者は禁煙外来を医師から教えてもらったと回答したが、薬局の薬剤師から教えてもらった患者はいなかった。保険薬局の薬剤師による禁煙支援(禁煙の勧め、禁煙補助薬の供給・服薬指導、禁煙指導、禁煙外来への受診勧奨の4項目)の必要性を75%以上の患者は感じていたが、患者の視点では薬剤師による禁煙支援は4項目すべてにおいて患者の望む環境にはなっていなかった。しかしながら、薬剤師による禁煙支援を受けた経験がある患者は、その支援に65%以上が満足していた。【結 論】薬局薬剤師による禁煙支援体制は、患者は必要と感じているものの、患者視点では現実は不十分であることがわかった。薬局薬剤師がより良い禁煙支援を行うためには、さらなる努力が必要だと思われる。
著者
家永 三郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.28, no.12, pp.74-75, 1979-12-10
著者
ステケヴィチ スザンヌ・ピンクニー
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.29, pp.107-144, 2014-01-15

何世紀にもわたり、Araka 'asiyya al-dam'i〔あなたの涙がこぼれまいとすることを、私は知っている〕で始まるラーイイヤ(ラーによる押韻詩)は、戦士であり王子であったアブー・フィラース・アルハムダーニー(320/932-357/968)のもっとも名高い詩である。アレッポのハムダーン朝統治者であるサイフ・アッダウラの従兄弟であるアブー・フィラースは、サイフ・アッダウラに、直接または間接的に自らの釈放を保証する身代金を払うよう嘆願する詩を贈った。にもかかわらず、351/962年にビザンツ軍に捕らえられて以降、355/966年の一般捕虜交換までの4年間、アブー・フィラースは捕虜として留置されてしまう。彼はアッルーミイヤート(ビザンチンの詩)と呼ばれる複数の詩によって名声を得ており、ラーイイヤもそのひとつである。本研究ではこの詩の読解として、まずラーイイヤの説明に有用な解釈を示す。次に、さらに進んだ解釈のための再読解を行う。この再読解は、性愛的な導入部(ナシーブ)と自慢(ファフル)に認められる感情的な率直さと誠実さに依拠したロマン主義的な評価によるものではない。間接性と多義性に特徴づけられ、捕虜の身代金と釈放の保証を意図した、修辞的技巧によるスピーチ・アクトとして解釈する行為遂行的な面に依拠した再読解である。古典アラブ詩の分野では、この20年間、文学批評研究は傑出した詩の様式(genre)であるカシーダ(ode)の儀礼的、儀式的、行為遂行的(performative)な側面に着目してきた。これまでこれら遂行的研究のほとんどは、カシーダの主要な下位様式(sub-genre)である宮廷称賛詩(カシーダト・アルマドフ)と、比較的少数のヒジャーゥ(風刺あるいはののしり)に焦点をあててきた。本研究はむしろ下位様式であるファフル(個人のあるいは部族の自慢)の作品を検討し、行為遂行的もしくはスピーチ・アクト理論の見地から考察するものである。しかし、本研究はカシーダト・アルファフルが単に個人的、部族的栄光の詩的称賛ではなく、その姉妹ジャンルであるマドフとヒジャーゥのように、複合的な詩的儀式あるいはスピーチ・アクトであるということを論証するものである。この詩的儀式あるいはスピーチ・アクトは、地位、忠誠、政治的正当性を主張するとともに、義務的な道徳力を有し、詩人とその受け手の両方における道徳的で政治的な地位の変化をもたらすものである。先に触れたとおり、本研究ではふたつの読解を行う。第一の読解では、アブー・フィラースによる古典アラブ詩(カシーダ)における慣行のみごとな用法が示される。この用法は、ナシーブの性愛的な抒情とファフルの勇壮なヒロイズムが均衡した二部構成である。ナシーブにおける絶妙な言い回しと性愛的な苦悩を通して、詩人はアラブ伝統のなかでも最も知られた恋愛詩のひとつを作り上げた。第二の行為遂行的読解は、当時の政治・歴史的状況に基づいた解釈である。含意されたアレゴリーによって、ナシーブの伝統的要素である性愛的献身と裏切り、苦難、不確かさ、中傷者の悪意が、捕虜である詩人と、彼の身代金の支払いを避けようとする君主との間に横たわる緊張した政治的・道徳的な絆を暗示する。ナシーブの'スピーチ・アクト'力を通して、アブー・フィラースは忠節であり続けると自らを弁護し、同時にサイフ・アッダウラが約束を遵守せず、戦士・君主・臣下関係における責任を果たしていないと非難している。このナシーブの読解によれば、ファフルの「自慢」は利己的な大言壮語として解されるべきではない。むしろ捕えられた詩人が承認されたいがための窮余の嘆願であり、言葉には出さなくとも、戦士・貴族の倫理的制度のなかで、この承認がもたらす身代金の支払いを導くものとして読まれるべきである。したがって、詩人によるファフルの選択は、自らの釈放を希求する何らかの政治的・詩的策略であったと言える。つまり、詩人は、君主、親類、後援者に対するマディーフ(称賛)として訴えるのではなく、承認、そして身代金支払いの要求(あるいは哀願)を、より広範囲に彼のハムダーン朝親族に対して訴えることを選んだのである。本研究はアブー・フィラースのカシーダト・アルファフルが、階級の交渉、忠誠、道徳的状態の変化を伴う複合的なスピーチ・アクトまたは言葉による儀式であると結論づける。カシーダト・アルマドフにおいて、後援者への称賛は、それが成立し、確実なものであることを証明するために、後援者のほうび(ジャーイザ)あるいは返礼となる進物を必要とする。同様に、このカシーダト・アルファフルでは、自慢において、アブー・フィラースによる親類への称賛の道徳的美点が成立し、確証されるのである。アブー・フィラースはこの詩を通じて忠義を'遂行'したといえる。そして、それは彼の親族、ハムダーン家がこの詩的挑戦を受け入れるか否か、つまりその忠誠心の'契約'の目的を'遂行'するか否かに託されている。言外に込めた詩人の要求に対するハムダーン家の応諾は、詩人の政治的・道徳的な状況を拒まれた捕虜から認められた親族の一員へと変化させるものであろう。
著者
四宮 陽子 宮脇 長人
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-279, 2009-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
1

食料自給率40%の2002年と60%の1970年の食事を国民栄養調査結果などの資料に基づいて再現し,食品構成や栄養バランスおよび食料消費に伴うCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行った.<BR>1. 1970年は和・洋・中の料理の種類に関わらず,ご飯とみそ汁,漬物がベースという食事パターンが多かった.2002年は主食の米が減少し,主菜の肉類や魚介類が豊富に増加し,副菜も季節,産地を問わず贅沢に多様化した.<BR>2. PFCバランスを比較すると1970年の方が理想バランスに近く,2002年はたんぱく質と脂質が増加し,炭水化物が減少していた.<BR>3. 献立から計算された1日平均CO<SUB>2</SUB>排出量は,1970年907g/日に対して,2002年は2743g/日と約3倍に増加し,その差は環境省のCO<SUB>2</SUB>削減目標値1人1日1kgを大幅に超えた.この増加の原因は摂取量増加と自給率低下の両方が考えられる.
著者
薮田 直子
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.197-218, 2013

本稿は,公立中学校とNPOでのフィールド調査から,外国にルーツを持つ生徒のアイデンティティに関わる教育実践の現状を描くことを目的とする。<br> 調査地では,近年ベトナムルーツの生徒が「通名」を使用する事例が散見される。そこで具体的に「本名を呼び名のる実践」を挙げ,教師や支援者が生徒の「通名」にどう向き合うかを描く。分析から2つの「転換」が明らかになった。<br> まず,従来の実践が象徴としてきた「通名から本名へ」という物語の揺らぎである。在日コリアン生徒を対象とした実践では,本名を表明することが重視されていた。しかしダブルの生徒にとって,また歴史的経緯を別とするベトナムルーツの生徒にとっての表明すべき「本名」とは何か。ここから実践目標に転換が生まれていると位置付けた。<br> 次に浮かび上がる2つ目の転換は,名乗りという主体的な行動に介入することへの配慮である。本人や保護者の決定に介入しない実践スタイルは,「特定の名乗り:民族名」を過度に期待することで生まれる「教条的」な関わりを避けたいという実践手法の転換であった。<br> 以上の分析から,オールドカマー,ニューカマー両者を対象に据えた新たな実践の形が明らかになった。また公立学校と同校区内のNPOを事例とすることによって,実践の中心的役割を担ってきた2つの場を比較検討することができた。こうした教育実践の現状を記すことは,「在日外国人教育」の発展に有益な視点を提供すると考える。
著者
吉田 有輝 三岡 相至 松本 直人 大野 英樹 吉田 生馬
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】1998年の厚生労働省の調査によると,ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:以下,GBS)は人口10万人あたりに対し1.15人の年間発生率であり,平均発症年齢は39歳で男女比は3:2である。また,GBSは一般的に予後良好であるとされており,1998年の英国の調査において,走行可能な状態まで回復した症例は約62%と報告されている。このように,GBSは若年性の神経難病であり,やや男性に多いことから,働き盛りの労働者に発生しやすいという特徴を持っている。それにも関わらず,GBSを発症した症例がその後どのような過程を経て社会復帰を実現したのかを示す報告は少ない。そこで,今回,当院において急性発症から自宅退院,その後の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)により社会復帰を達成した症例を経験したので報告する。【方法】平成25年3月5日~4月16日までに神経内科に入院したGBSの1例を対象とした。年齢は40代後半,性別は男性,職業は建設施工会社の現場監督であり,妻と3人の息子と同居していた。退院時のBarthel Indexは85点,100mの連続歩行や1時間の座位保持は疲労感が強く継続は困難な状況で,外出には車椅子が必要であった。筋力は,徒手筋力検査にて,上肢では前腕筋が概ね3+,股関節伸展筋および外転筋が3+,足関節底屈筋が2+,握力は右14.5kg,左14.0kgであった。退院時の主訴は「新たな身体を作りたい」であり,HOPEは「最終的に復職したい」であった。入院中は1日3回のリハビリテーションを毎日実施し,自宅復帰後は週に3日,1回40分の訪問リハを医療保険下で平成25年4月18日~9月27日まで実施した。訪問リハでは,屋内生活の安定を目標とするとともに,過用性筋力低下(overwork weakness)のリスクを考慮したADL指導や自主練習の提示を行っていった。その後,徐々に活動範囲を拡大させながら,日常的な活動性とADLおよびIADLの状況を毎回確認し,最終的には,復職した際の具体的な通勤方法や仕事内容を評価し,指導を行った。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り,利用者に十分な説明と同意を得た後に実施した。【結果】自宅復帰後,社会参加に対するHOPEに早期復職や完全復帰と変化が認められるようになった。しかし,介入時の主訴からも推測される通り,疾患や身体機能,それに伴うADLへの理解が不十分であり,復職に関して焦燥感があることが考えられた。本人が同年6月末を復職時期として希望していたため,まず,通勤手段である自転車走行や電車移動を家族とともに行ってもらったが,電車移動中や外出先では疲労が強く頻回な休息が必要という結果であった。そこで,本人と相談しながら復職時の課題を明確化し,問題解決方法をその都度確認していった。その結果,8月初旬には1日の外出を実施することが可能となった。その際,移動時の疲労やそれらの翌日への持ち越しが確認されたが,デスクワークは可能であることも確認できた。そして,9月には訪問リハを週2回に変更し,復職後の業務内容は会社と相談した結果,内勤へと変更することが決まり9月27日に訪問リハは終了,10月初旬に復職を達成した。【考察】若年の男性にとって,労働者や夫,父親としての社会的地位や尊厳,名誉が失われることは大きな問題である。また,あらゆる神経難病の中で,GBSが予後良好と言われていても,罹患した方々は常に不安と隣り合わせの状態で自宅退院を迎えていることが容易に予測できる。今回の症例では,入院中から復職という社会復帰の目標が明確に設定されていた。しかしながら,退院直後は自宅内生活を送ることが精一杯であり,外出時には車椅子を使用しなければならない状況であった。そのため,まずは居宅生活の安定を目標としリハビリテーションを実施していった。その中で,徐々に生活が安定すると,可及的早期に復職をしたいというHOPEの変化が認められた。本人は復帰時には仕事への完全参加を希望していたが,病態やより具体的な復職のプロセスを考慮すると,本人との間で課題の明確化と問題解決方法をその都度確認していく必要があった。そのような介入をした結果,利用者の焦燥感は徐々に緩和していったと考えられる。そして,社会的側面や経済的側面も考慮し,可能な限り利用者の地位や名誉,尊厳に配慮した形で目標を共有していけたため,安全な方法や形式での社会復帰が可能であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法の目的および理学療法士の役割が,身体の機能回復ではなく,個々人の権利・名誉・尊厳の回復であるならば,本症例のような神経難病を有する患者に対し,退院後も居宅サービスとしての支援を行い,社会復帰を実現していくことは大変重要なことであると考えられた。
著者
鶴田 禎人
出版者
日本医療経済学会
雑誌
日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.33-40, 2017

本稿では、計量テキスト分析によって、地域包括ケア研究の動向と今後の課題を明らかにした。まず、地域包括ケア研究が、介護・医療保険制度改革といった政策動向に追従して、量的に増加していることを指摘した。また、内容的には医療、介護、連携、首都圏の分析に偏っており、政策的な展開が不十分である低所得者、周辺地域、住まい、生活支援については研究がほとんど進んでおらず、今後の課題となることを明らかにした。
著者
菅野 沙也 伊藤 貴之 高村 大也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.52, pp.71-74, 2014-05-17

本研究では文書の印象や感情に基づいて楽曲生成を行う.前処理としてコードとリズム進行のデータを作成しておき,さらにユーザーごとの感性データを取得しておく.これは一人ひとりによって異なる音楽的感性を考慮し,ユーザーそれぞれに対応した楽曲を提供するためである.文書を入力するとまず形態素解析と感情極性を用いた文書解析をすることで印象値を取得し,次にこの印象値から場面ごとのコードとリズムの進行を決定する.これらを合成することで生成された楽曲がユーザーごとに提供されることとなる.入力文書の印象や感情を楽曲を用いて表現することでさらなる印象理解を促すことを目的とした.
著者
水野 真希
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.294-301, 2016

本研究の目的は,人工妊娠中絶ケアに携わる看護者を対象に,中絶ケア体験により生じたトラウマによる心理的反応とその関連要因について明らかにすることを目的とした.2011年10月〜2012年1月に,人工妊娠中絶を実施している医療機関に勤務する202名の看護者を対象に,個人属性,中絶ケアを負担と感じる要因,そして中絶ケア体験から生じたトラウマによる心理的反応を測定するため改訂版出来事インパクト尺度を用いて無記名自記式質問紙による調査を実施した.重回帰分析の結果,中絶ケアに携わる看護者の心理的反応(改訂版出来事インパクト尺度)と有意に関連が見られたのは,「生きる可能性のある胎児が中絶されること」,「ケア中の感情コントロールの困難さ」そして「中絶された胎児に触れなければならないこと」であり,分散の24%が説明された.また31名(15.3%)が心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)ハイリスク群に分類された.看護者の業務に対する意思を尊重し,業務を変更するなどの配慮をすると同時に看護者への支援体制を構築することが,ケアの質向上につながることが示唆された.
著者
加藤 千穂 片岡 弥恵子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.4-14, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
25
被引用文献数
2

目 的 本研究の目的は,既存の文献より,産科に従事する医療者に対する産科救急シミュレーションの効果について明らかにすることである。方 法 PubMed,CINAHL Plus With full text,The Cochrane Library,Maternity and Infant Care,医学中央雑誌Ver.5にて検索を行い,Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsに基づいて,文献の批判的吟味と分析を行った。結 果 RCT 5件を分析対象とし,採用文献のバイアスのリスクは低いと判断した。介入を高忠実度(high-fidelity)シミュレーションとし,対照群はシミュレーションを実施しない,低忠実度(low-fidelity)シミュレーション,レクチャーと設定した。パフォーマンスについては,高忠実度シミュレーションのほうが低忠実度シミュレーション,レクチャーと比較しパフォーマンスが向上した。また,高忠実度と低忠実度の比較では,肩甲難産の管理ついては高忠実度群のほうが,パフォーマンスが向上するが,子癇の管理については有意な差は見られなかった。知識については,高忠実度と低忠実度で差はなく,コミュニケーション技術は,シミュレーターの忠実度による差はない,もしくは低忠実度シミュレーションのほうが,コミュニケーション技術が向上するという結果であった。結 論 子癇,肩甲難産の管理に関する高忠実度シミュレーションは,トレーニングを実施しないことや,レクチャーと比較し,パフォーマンスを向上させる。しかし,シミュレーターの忠実度の違いによる知識,コミュニケーションへの明らかな効果は認められなかった。今後は,子癇,肩甲難産以外のプログラムや,産科合併症など長期的アウトカムの評価が求められる。
著者
西田 直樹
出版者
作新学院大学
雑誌
作新学院大学人間文化学部紀要 (ISSN:13480626)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-84, 2005-03-23

天保14年(1843年)に刊行された『和字絵入 往生要集』は、所謂「後期仮名書き絵入り往生要集」に属する本である。本研究において取り上げる第12図「大焦熱地獄」は元版本(寛文11年本〔1671〕)の挿絵とは大きく異なる場面を描いている。この第12図の分析を通して、江戸時代後期(天保年間)に生きた絵師八田華堂金彦の『往生要集』「大焦熱地獄」の解釈を歴史的視点から探った。
著者
山ノ内 弘
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.200, pp.835-847, 1933-12

各種金属材料のブリネル硬度と引張又は圧縮強との關係が實験上確定されたものも多いので試験が比較的簡易に行ひ得る硬度測定を以て引張試験等に代へる場合も在るに到つた。ブリネル硬度は例令同一材料でも、鋼球の大小、押圧力、常温加工度の相違、圧延材の圧延方向の影響、結晶粒の大小、温度の影響、等の外に試験片の大小に依つて違ふものである。著者は試験片の厚さ、表面積の最小限度竝に厚さと表面積との關係影響を明かにする爲め軟鋼及銅材を用ひて實験を行ひ、試験片は應力分布の算出に便利なる様円柱状となした。直径は12〜55mm, 厚さは7.5〜20mmの範囲で、標準硬度10/3,000/30及10/1,000/30に依つて得た結果を更に硬度試験に於ける規定硬度数に對する公差竝に他の實験結果をも斟酌して次の結論を得た。即ち試験片の直径と窪み円の直径との比が4以上、厚さと窪みとの比は6以上の場合の硬度を採らねばならぬ。尚又以上の實験に於て試験片内部の塑性変形を考察して應力分布状態を近似的に算出し以て参考となした。
著者
小久保温 澁谷泰秀 吉村治正 渡部諭
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.415-417, 2014-03-11

従来行なわれてきた訪問や郵送による質問紙の社会調査は、近年困難になりつつあり、今後はWeb調査に移行する必要がある。Web調査は、サンプリング、カバレッジ誤差などが問題とされてきた。われわれは調査法としてDillmanのTDMを応用し、WebアンケートシステムとしてPC、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの幅広いマルチデバイスに対応したシステムを開発することで、これらの課題に対応しようと試みた。更にシステムでは回答過程を詳しく記録している。そして、2013年の初頭におよそ1000人を無作為抽出して郵送とWebによるハイブリッド社会調査を実施した。本講演では、その解析結果について論じる。