著者
緒方妙子 大塔美咲子
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 = The Journal of Kyushu University of Nursing and Social Welfare (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.57-65, 2013-03

本研究は大学生の月経前症候群(PMS)と日常生活習慣、及び症状出現時の対処としてセルフケアしていることの実態を明らかにし、その関連性を探ることを目的としている。PMS症状に関しては、PMSメモリーリスト52項目1)の結果を、似通った症状2)をまとめて身体・精神・社会的症状それぞれ10項目とし、症状の程度別に示して分析した。統計解析は、単純集計による分析、及び相関に関しては、ソフトSPSS statistics19を用いて、Pearson の両側有意差検定を行った。看護学科女子大学生(1・4年生)212名を対象に質問紙調査を行った結果、以下のことが明らかになった。1.月経前症候群の認知度は4年生69.6%、1年生18.6%であり、学年差が表れていた。2.月経周期が規則的な有効回答者162名中、月経前に何らかの症状が現れる者は97.0%に及んだが、その内PMSを知らない者は56.7%であった。3.日常生活に影響があるPMS症状を持つ者は61.7%、症状が激しい者は30.2%であった。主な身体的症状は「眠くなる」、「下腹痛、腰痛」、「食欲の変化、下痢、便秘」、「ニキビ、肌荒れ」、「疲れ易い」、「頭痛、肩こり、冷え」、精神症状では「イライラする」、「無気力・憂鬱」、「集中できない」、社会的症状では「物事を面倒くさく感じる」、「-人でいたい」などであった。4.日常生活習慣の「運動」、「朝食の摂取」、「良好な睡眠」、「気分転換」は、PMS精神症状と有意な関連がみられた為、日常生活でのこの点での配慮がPMS精神症状軽減に有用であることが示唆された。5.日常生活に影響するPMS症状を持つ者で、セルフケア実践者は87%であり、その主な内容は、「十分な睡眠」、「気分転換」、「周りに“月経前"と言う」、「お腹・腰を温める」であった。この中で幅広い症状に最も多く適用されていたのは「十分な睡眠をとる(60.9%)」であった。
著者
梅澤 友香里 武藤 崇 Yukari Umezawa Takashi Muto
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.25-37, 2014-12-15

本稿の目的は,月経随伴症状と現在行われている対応,その問題点について概観することと,新たなアプローチとしてアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を提案することであった。論文の構成は,(1)月経随伴症状の概要,(2)症状による影響,(3)症状への対応とその問題点,(4) ACTの提案,となっている。現在までの対応を検討した結果,薬物療法が有効であるとされている反面,薬物療法には様々な副作用があり,不安や抵抗感を感じる女性の割合も多いことから,心理学的介入を視野に入れていく必要があることが示唆された。しかし,心理学的介入に関する研究数が少ないことや,その大半が,症状の消失・軽減を目的とした介入を検討したものであり,女性のQOL の向上に直接焦点を当てた介入はほとんどないことが示された。そこで,新たなアプローチとして,たとえ症状があったとしても,自分の価値に沿った活動的な生活を送れるようにすることを主要な目的としているACT を提案した。
著者
江 利紅
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.123-163, 2012-06-30

社会主義国である中国には、人民代表大会制度は国の根本的な政治制度として確立されている。人民代表大会制度は、「すべての国家権力は人民に属する」という「人民主権」の原則をその基本原則とし、「民主集中制」をその組織原則とする。これらの原則に基づき、人民の民主的権利の実現の制度、選挙制度、国家機関の選出制度および地方制度などの具体的な制度が構築される。これらの制度によって人民代表大会制度は構成される。しかし、中国では、立法権、行政権、司法権の間で相互に抑制と均衡を保つ「三権分立」の原理を否定し、「民主集中制」に基づき、統一の国家権力のもとで各国家機関間の「分工(分業)」を認める。「分工(分業)」によって、中国では、各国家機関間の分立、相互の抑制・均衡作用が否定され、人民代表大会による監督のみが認められる一方、各国家機関間の同質性や協力性が強調される。そのため、現実中、国家機関の権力の抑制や国民の権利の保障は十分であるとはいえない。これらの問題を解決するために、人民代表大会制度を維持するという前提のもとで、人民代表大会制度を改革しなければならない。今後、人民代表大会の統一的な指導のもとで、各国家機関間の相互抑制・均衡作用を重視し、特に人民代表大会の地位を高め、法制度の整備を強化し、司法の独立と公正を保障し、法の執行を徹底し、行政機関の活動を法的に統制する努力を積み重ねなければならない。そして、人民代表大会の機能改革以外で、選挙制度、代表制度、立法制度、監督制度、政党制度、地方制度などについても、改革を着実に遂行しなければならない。
著者
井原 久光
出版者
長野大学
雑誌
長野大学紀要 = BULLETIN OF NAGANO UNIVERSITY (ISSN:02875438)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.93-111, 2004-03-31

本稿は、ブランドに関する定義や理論を整理し、その具体的な事例としてハーゲンダッツのブランド構築についてまとめたものである。前半では、ブランド識別の主体を、売り手(企業)、買い手(消費者)、第三者(法的機関)に区分し、ブランド機能を①識別機能、②品質保証機能、③意味づけ機能に分けて整理した。さらに、ブランドカを「知名度」→「信頼度」→「魅力度」というランクで示したモデルも提示した。情報化社会の進展にともなって「企業」が示す「識別機能」や「品質保証機能」に加えて、「消費者」のいだく「意味づけ」が重要になりつつある。そのため単に「知名度」や「信頼度」を上げることより「魅力度」を向上させる必要性が高まっている。また、個別の製品ブランド管理よりも企業全体のイメージを向上させる全社的戦略が求められており、そのためのヒントも提供した。後半は、日本におけるハーゲンダッツの成功事例を通じてブランド構築の過程を具体的に検証した。
著者
杉井 健
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.173, pp.541-562, 2012-03-30

きわめて良好な遺存状態を保つ甲冑や鉄鏃などが出土したマロ塚古墳であるが,その正確な所在地はいぜん不明のままである。しかし,熊本県北部を流れる菊池川の支流,合志川の中流域西半部左岸をそのもっとも有力な候補地域とすることまでは可能である。合志川中流域西半部左岸には,いくつかの注目すべき特質が存在する。第1に,当地域にはじめて築かれた前方後円墳(高熊古墳)には窖窯焼成技術導入期の埴輪が樹立され,しかもそれは畿内地域の埴輪と同じ技術体系のなかに位置付けられるきわめて精美なものである点である。第2に,合志川下流域まで含めると帯金式甲冑出土古墳が3基存在し,その基数は熊本県地域では緑川中流域に並ぶ多さである点である。第3に,大規模な円墳が古墳時代中期に集中して築かれる点である。第4に,方形周溝墓あるいは小規模な円墳が古墳時代前期から後期に至るまで連綿と築造され,そのなかに朝鮮半島系渡来文化の一要素とみられる馬埋葬をともなう円墳が存在する点である。こうした特質は,当該地域が,古墳時代中期中葉になって,古市・百舌鳥古墳群を造営した中央政権と密接な関係をもつに至ったことを示している。これと類似の動向を示す地域には,熊本県阿蘇谷や緑川中流域,あるいは福岡県八女地域や筑後川中流域の吉井地域などがあるが,これらは古墳時代中期前葉までには有力な古墳が築かれていなかった地域である。さらに,有明海に直接面しない内陸部である点でも共通する。これらのことから,古墳時代中期中葉の有明海沿岸地域では,海岸沿いのルート以上に河川づたいの内陸ルートが重視されたこと,しかもそれは中央政権側の意図のもとに新たに整備された可能性があることを指摘した。合志川中流域西半部左岸は菊池川中流域の菊鹿盆地と南の熊本平野部を結ぶ内陸ルートの要衝であるが,マロ塚古墳に多くの武器武具類が副葬された要因の一端はまさにここにあるのである。
著者
丸岡 里香
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学教育文化学部研究紀要 = Bulletin of Hokusho University School of education and culture department (ISSN:2189857X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.163-174, 2017

日本の社会における出産は結婚することと強く結びついており,結婚の先延ばしが少子化につながる要因となっている。政策として少子化対策が打ち出されているが,子どもを希望する若者が増えるためには,将来の自分のライフイメージを具体的に持てることが必要と考えられる。筆者は月経や妊娠に関する知識と将来への具体的なイメージがもてる健康教育を実践することを目標に,これまで高校生と大学生へのライフイメージに関する調査を行なってきたが,本調査では,さらに結婚や妊娠を希望する理由としない理由も加えた調査とすることで今後の健康教育を検討する資料とすることを目的とした。その結果高校生の月経や妊娠に関する知識は高いとは言えず,健康教育として将来のライフイメージを持つことができる内容を取り入れることが課題であることが示唆された。

1 0 0 0 OA 異文化の理解

著者
鈴木 雅光
出版者
東洋大学文学部英語コミュニケーション学科
雑誌
dialogos (ISSN:13463101)
巻号頁・発行日
no.5, pp.81-92, 2005-03
著者
菅原 衣織 伊藤 貴之
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.373-374, 2015-03-17

声質や声調が与える効果は言語情報よりも大きく,コミュニケーションにおいて約4割を占めるという考え方がある.このように声の印象が日常生活に少なからず影響を及ぼすと考えられるが,どんな声がどんな状況でどんな個人性を持つ他者にいい印象を与えるのかは不明瞭である.そこで本研究では聴取評価を行い「いい声」がどのような音響的特徴量によって成立するのか調査した.調査の結果,印象評価値と基本周波数の平均値,単位時間あたりのフレーム数,フォルマント構造との間に相関が見られた.これら結果を基に視覚変数によって「いい声」を判定するアプリケーションを開発し,自己の声の特性を知る手段として提案する.
著者
中野 由章 谷 聖一 筧 捷彦 村井 純 植原 啓介 中山 泰一 伊藤 一成 角田 博保 久野 靖 佐久間 拓也 鈴木 貢 辰己 丈夫 永松 礼夫 西田 知博 松永 賢次 山崎 浩二
雑誌
情報教育シンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.11-17, 2014-08-17

情報入試研究会と,情報処理学会情報入試ワーキンググループは,2013 年と2014 年に「大学情報入試全国模擬試験」を実施した。2014 年に試行した試験は,920 人が受験し,その内容について分析した。その結果,全体としてみれば,得点分布,解答時間,問題数などは極めて良好であり,出題範囲や難易度についても問題はなかった。ただ,「情報の科学」領域,とりわけプログラミングについては,問題点が明らかになった。これはすなわち,大学側が求める内容と,高校側で行なわれている内容の乖離を意味する可能性がある。入試問題という狭い範囲ではなく,教育内容まで含めて,今後,総合的に検討を要する内容である。
著者
早野 俊明
雑誌
白鴎大学法科大学院紀要 = Hakuoh law review (ISSN:18824277)
巻号頁・発行日
no.3, pp.355-367, 2009-11-01
著者
神長 唯
出版者
文教大学
雑誌
湘南フォーラム:文教大学湘南総合研究所紀要 = Shonan Forum : Journal of the Shonan Research Institute Bunkyo University (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.129-146, 2009-01-01

This article points out regional imbalance of constructing final disposal sites (general waste facilities) among local municipalities in Tama Region, Tokyo Metropolis. This is also a case study on the construction of final disposal sites in Hinode Town, Western Tama. The local imbalances or gaps have been closely related to regional gaps of administrative services between the 23 Wards and Tama Region which goes far back to 19th century.