著者
後藤 秀昭 杉戸 信彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.197-213, 2012-12-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
32
被引用文献数
1 8

国土地理院の基盤地図情報として公開されている数値標高モデル(5 mメッシュおよび10 mメッシュ)すべてを用いて実体視可能な地形ステレオ画像を作成した.地理情報システムにステレオ画像と既存の活断層分布図を読み込み,変動地形学的な地形判読を行ったところ,これまで認められていない新期変動地形を新たに多数見いだした.これらの地形の一部を速報し,数値標高モデルのステレオ画像を系統的に判読する重要性を例証すると同時に,空中写真とは異なる特性をもつ数値標高モデルのステレオ画像の長所についてまとめて紹介する.
著者
道家 達將
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

津山藩主森家に仕えた久原宗清良政に発し、その後藩医となった初代久原甫雲良賢(亨保5[1720]年没)から、9代目久原宗甫(明治29[1896]年没)に及び久原家は、代々藩医を勤めた医家であった。その医術は、漢方だけでなく、南蛮流、まだ和蘭流(蘭方)にも及び、時代と共に、新らしい医学を学び続けた名門である。筆者はとくに、宗甫について調べるとともに、宗甫の長男久原躬弦および次男茂良(本籟)について、その手紙、日記、関係者の写真等について調査し、整理した。長男躬弦は、藩の貢進生として大学南校に学び東大理学部化学科を卒業(1877年第1回生卒)、東大教授、京大教授また総長となり、明治期のわが国の化学の開拓者として働いた。次男茂良は、町の医者として献身的に働いた。この二人の業績を明らかにするとともに、久原家の代々の系譜、また子孫についてもかなり明らかにすることができた。これは、ひとえに、茂良の娘涛子女史(彫刻家)の協力によるものである。久原躬弦の直系の孫久原輝夫(東京工業大学建築学科を昭和16年に卒業後、戦時中に死亡)についても明らかにし得た。
著者
中辻 憲夫 長濱 嘉孝 勝木 元也 西宗 義武 山村 研一 角田 幸雄 帯刀 益夫 本庶 佑
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

当研究領域においては、研究項目A01「生殖細胞系列の制御機構と発生工学」を設定し、計画研究課題7件によって研究を進め、領域代表者中辻憲夫と計画研究代表者西宗義武に外部から7名を加えた総括班を設置し、研究者間の協力と交流を推進した。平成12年11月には公開シンポジウムと班会議を開催した。平成13年11月には国外から主要な研究者7名を招聰して、生殖系列・クローン動物・エピジェネティックス・再プログラム化をテーマとする国際シンポジウム"を開催した。平成14年度には、班会議と公開シンポジウム「生殖細胞の発生プロセス・再プログラム化とエピジェネティクス」を開催した。松居靖久(大阪府母子センタ)「生殖細胞の発生運命の制御機構」、阿部訓也(理研)「哺乳類全能性細胞・生殖細胞における遺伝子発現の研究」、仲野徹(阪大)「始原生殖細胞成立のシグナル」、野瀬俊明(三菱生命研)「培養系における生殖細胞分化」、中馬新一郎・中辻憲夫(京大)「雌雄生殖細胞の分化プログラム」、尾畑やよい(群馬大)「in vitroにおける卵子分化プログラムの再生」、蓬田健太郎(阪大)「生殖幹細胞の維持と分化の制御機構」、篠原隆司(京大)「凍結精巣バンクの開発」、岡部勝(阪大)「生殖細胞における性の決定」、角田幸雄(近畿大)「化学的染色体除去法を用いた体細胞クローン動物の作出」、若山照彦(理研)「クローンマウスにおける核移植技術の問題点と応用」、小倉淳郎(理研)「体細胞クローンマウスの正常と異常-表現型を中心として」、石野史敏(東工大)「体細胞・生殖細胞クローンにおける遺伝子発現」、塩田邦郎(東大)「DNAメチル化コード:個体発生・細胞分化のエピジェネティックス」、岡野正樹(理研)「DNAメチル化パターン制御機構と再プログラム化における役割」、佐々木裕之(遺伝研)「生殖系列における一次インプリントとメチル化の獲得機構」
著者
飯野 守
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.29-44, 2009-01

This article discusses the prominent cases of the federal courts of the United States in which the main issue is how parody is treated under U.S. copyright law. In the U.S., the defense of fair use is thought necessary to fulfill the purpose of protecting copyright "[t]o promote the Progress of Science and useful Arts," and a new work that uses the elements of the original work may weigh in favor of fair use if it is sufficiently "transformative." The United States Supreme Court defines parody as a derivative work which uses "some elements of a prior author's composition to create a new one that, at least in part, comments on that author's works," and the Supreme Court treats the parody work which is transformative as fair. The point is, parody that is sufficiently "transformative" is ategorized as a kind of comment, or a creative work, and its use of prior work is fair in case law of the United States. This article points out that the above point of view is very useful when we consider Japanese copyright law, especially when copyright infringement by parody is at issue.
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.858, pp.203-207, 2003-10-13

「だってさ,ほかのメーカーが使ってるのは35mmフィルム・サイズだったり,APSフィルム・サイズだったりするじゃない」「そうですね。でも,3分の4ならば撮像素子の技術が進展すれば,1600万画素も難しくないですよ。これなら中判カメラの画質も視野に入るし」 新しい千年紀を迎えた2000年。
著者
井良沢 道也 柴田 貴司
出版者
[岩手大学農学部]
雑誌
岩手大学農学部演習林報告 = Bulletin of the Iwate University Forests (ISSN:02864339)
巻号頁・発行日
no.40, pp.137-146, 2009-03

近年、台風や前線性豪雨、そして地震などにより全国各地で土砂災害が発生し、大きな被害を与えている。こうした土砂災害に対して、警戒避難体制の整備がこれまで進められてきたが、実際には(1)災害発生前に避難勧告等の発令が少ない、(2)避難勧告等が発令されても避難する住民が少ないなどの課題があげられている。さらに近年の集中豪雨の増加や、少子高齢化などの社会的状況の変化に関連し、被災形態が従来よりも激化する様相を呈しており、ハード及びソフト対策が急務となっている。特に東北地方は全国よりも過疎化・高齢化の進行している地域が多く、災害に対する脆弱性が指摘されている。こうした中で、筆者らは地域コミュニケーションの確保・増大は土砂災害に対する減災を考える上で最も重要なものの一つと考えている。2007年2月7日福島県金山町小栗山地区牛兵衛沢地区で発生した土砂災害は深夜に発生したが、住民らの目撃による自主避難で幸いにも人命災害には至らなかった。崩壊地及び渓流内には大量の不安定土砂が堆積して再度土砂流出の発生が懸念されたため、災害癸生日より2008年5月13日まで地域住民は避難を強いられた。本地区における住民の災害に対する認識、災害発生時の状況、避難生活の状況などを把握するため住民聞き取り調査を行ったのでその結果を報告する。
著者
木村 みさか 森本 好子 寺田 光世
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.455-464, 1991-10-01
被引用文献数
17 9

一般の高齢者の運動習慣の実態を明らかにし,運動習慣と体力との関連について検討することを目的に,都市在住の60〜89歳の高齢者179名(男子82名,女子97名)を対象に,体力診断バッテリーテストの実施とともにあわせて運動習慣の調査を行い,以下の結果を得た.A.体力診断テストは,全ての項目で年齢と負の相関関係が認められた.B.何らかの運動習慣がある者は,男子87.8%,女子88.5%であったが,その内容は,散歩が最も多く,以下植木いじり,ゲートボール,ラジオ体操およびその他の体操,ハイキングの順であった.C.運動習慣のある者の体力診断バッテリーテストの成績は,無い者に比べ優れた値を示し男子では握力,息こらえ,総合点で,女子では握力を除く全項目で両群間の差が有意であった.D.運動の頻度,時間による各運動条件群間での体力の平均値は,両者とも多い者が少ない者より優れた傾向を示したが,その差は運動習慣のある者の間では比較的小さいものであった.E.はや足程度(RMR3.5)以上の運動を実施している者は,運動習慣の無い者やそれ以下の強度の運動実施者より優れた体力を示した.F.家事等で歩くエネルギーを加えた運動のエネルギー需要量(安静時代謝量を含まない)が多い者ほど体力診断テストの成績が優れていた.本調査では,運動の種類や実施状況によって体力差が認められた.しかし,最も大きな差は,現在,運動習慣があるか無いかにあったことより,高齢者においては体力の低下を防ぐ(あるいは低下を遅らす)ためには,比較的低レベルの身体運動でも有効であることが示唆された.
著者
水本 正晴
雑誌
科学研究費助成事業研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-5, 2014-06-06

日本語の「知っている」と「分かっている」の意味を英語の"know"のそれと経験的・概念的アプローチによって比較し、日本語の二つの述語の間に認識論的に興味深い差異を発見することで、英語だけに基づく認識論への方法論的問題を提起することに成功した。また日本語以外の言語へも考察を広げる国際会議を開催し、発表者による様々な言語の知識述語の比較が行われ、それを通し、出席者の間で活発な議論を呼び起こした。 : The uses of two Japanese counterparts of "know", "shitteiru" and "wakatteiru" were conceptually and empirically studied, and some epistemologically interesting differences were found between the two Japanese verbs, and therefore their relations with "know" are not straightforward. We also held an international conference to extend this observation to other languages, and provoked relevant debates.
著者
島岡 哉
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.12, pp.199-217, 2004-12-25

The purpose of this study is to analyze how people experienced so-called "traveling theatres (idou-eiga)" in contemporary Japan. For this purpose. I have interviewed members of a cinema promotion company, "Cinema You" in Nagoya city in Aichi prefecture. Also, I worked as a staff at one of the screenings of the traveling theatres. Based on these ethnographic data, the screenings of this company will be investigated. Since traveling theatres are usually regarded as a relic of a bygone age, they have rarely been examined in former cultural studies or media studies. In this study, other important aspects of traveling theatres will be discussed. By focusing on the time and space in which ordinary people watched films, the multiplicity of the meanings of the traveling theatres will be presented.
著者
上條 隆志
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は三宅島2000年噴火後の森林生態系の種構成、多様性、機能に関する回復メカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度については、以下の調査・解析を行った。1.2000年から2004年に設置した島内34箇所の固定調査区(100m^2から625m^2)において、植生調査と毎木調査をい、既存データと共に解析を行った。2.地上部の刈り取り調査を15地点行った。また、オオバヤシャブシについては個体別に刈り取りを行った。得られた試料の乾燥重量を測定し、バイオマス推定を行った。3.固定調査区6か所において土壌調査を行い火山灰ならびに埋没土壌を採取した。4.固定調査区2か所においてリタートラップを設置し、その回収を行った。5.固定調査区2か所においてシードトラップを設置し、その回収を行った。以上の調査解析結果から、噴火後5年間の植生変化パターンを明らかにすることができた。(1)火山ガスの影響が少なく、火山灰の堆積が厚い地域においては、樹木は胴吹きし、草本層ではハチジョウススキなどが増加した。(2)火山ガスの影響が強く、火山灰の堆積が薄い地域においては、樹木はむしろ衰退し、回復は草本層でのみみられ、森林から草源への退行遷移を示した。また、シードトラップの結果から、ハチジョウススキは裸地においても、周辺から多くの種子が供給されていることが分かった。噴火後に裸地化した地点同士で比較すると、火山ガスの影響の少ない地域の地上部バイオマスが噴火後5年で400g/m^2前後にまで回復したのに対して、火山ガスの影響の強い地域の地上部バイオマスは1.8g/m^2から95g/m^2程度であり、2004年から2005年の増加量も少なかった。リターフォールについては、年間のデータを得ることはできなかったが、継続調査することによって純一次生産量を推定する予定である。
著者
中山 純一
巻号頁・発行日
(Released:2013-04-24)

2009
出版者
京都大学図書館機構
雑誌
静脩 (ISSN:05824478)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, 2014-01-20

京都大学図書館機構報
著者
清野 純史 瀧本 浩一
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

2001年7月21日,兵庫県明石市のJR朝霧駅近くの大蔵海岸で花火大会が行われ,15万人の人出を集めたが,花火終了直後朝霧歩道橋上で群集なだれが発生し,11人もの尊い命が失われた.このような事故は,密集空間では常に発生し得る可能性があり,災害やデマなどがそのトリガーになることも十分考えられる.このようなイベント会場のみならず,ターミナル,繁華街,スタジアムなどの閉鎖的で特殊な密集空間を対象に,そこでの人間行動を個体単位でモデル化することにより,その個体の動きや群集全体の挙動を行動心理を含めて再現できるシミュレータを開発する.そして,密集空間で生じるであろう人的被害を定量的に評価し,その安全対策の策定に資するツールを提供することを目的とした.改良した個別要素法(DEM)を用い,また,不特定多数の人々が集まる密集空間で発生する圧力がどの程度のものなのかを計測した結果から決定したバネ定数を用いて,密集空間でのシミュレーションを行った.具体的には,一方向の群集流のみならず二方向の群集流についての群集歩行の再現を試みた.その結果,密集状態において歩行者に働く負荷と歩行速度に関して,解析結果と既往の計測が良い一致を示し,本研究で開発した手法が妥当であることがわかった.避難行動シミュレーションによる方法は,災害事例の結果や避難実験により得られたデータを基に計算を行ったり,様々な状況を設定して計算を行うことができ,設計農階における避難安全性検討に適用可能である.