著者
樋口 直宏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.103-111, 1995-03-20
被引用文献数
10

本研究の目的は,授業中の予想外応答場面において,教師の予想水準に対する児童の応答の違いによって,教師がどのような意思決定を行うのかを明らかにすることである.教師の予想水準および児童の応答に対する教師の対応行勤にもとづいた予想外応答場面の分析カテゴリーが開発されるとともに,小学校国語科の授業が事例として分析された.本研究の結果は,次の通りであった.(1)児童の応答が教師の予想水準以上の場合には,教師は児童の応答に同意したり,他の児童に指名を続け,指導計画を大きく変更しない.予想水準以下の応答の場合には,教師は児童に意見の修正を求めたり,否定するといった計画の変更を行う傾向がある.(2)予想外応答場面における教師の意思決定には,学習指導案における教師の意図が影響を及ぼす.予想水準以上の応答の場合には,指導計画を変更する必要に迫られない一方,予想水準以下の応答の場合には,児童の応答を教師の解釈に近づけようとする意思決定が働く.
著者
山口 律子
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.139-156, 2006-01-31

紅花染めは、昔から寒中の染めがよいと言われてきた。寒中と言わないまでも寒い季節に染色するのがよく、夏期は、紅花の染液が変質しやすいため、夏期の紅花染めはしない方がよいとされている。また、寒中の紅花染めは、色が冴え、最も色鮮やかに染め上がるのに対して、夏期の紅花染めは、色相が濁った色になりやすい。そこで、紅花染めの効果的な染色方法を見出すため、紅花染めにおける紅色素の抽出温度、および紅色素抽出液による染色温度の影響について検討した。1.紅花染めにおいて、紅色素の抽出温度を10℃から30℃の間変化させても、染色布の赤み、黄みの割合は、ほとんど変化しないことが認められる。2.紅花染めにおいて、黄色素の抽出除去が十分で、紅色素抽出液による染色温度を10℃に設定する場合、紅色素の抽出温度は、20℃以下で行うのが、効果的であると思われる。しかし、黄色素の抽出除去が不十分である場合、紅色素の抽出温度が20℃では、染色布は色がこく、濁った色になることが認められる。これは、黄色素の抽出除去が不十分であるため、紅色素の抽出の段階で、紅色素の抽出温度が高いほど、紅色素以外の他の色素の抽出が増加すると考えられる。従って、紅花染めにおいて、黄色素の抽出除去が不十分である場合、紅色素の抽出温度は、10℃以下の低い温度で行うのが効果的であると思われる。3.紅花染めにおいて、紅色素抽出液による染色温度が上昇するに従って、染色布の赤みは、多くなる傾向が認められる。4.紅花染めにおいて、黄色素の抽出温度、紅色素の抽出温度が最適であっても、紅色素抽出液による染色温度が20℃以上では、染色布は、明度が低くなり、色がこく、濁った色になることが認められる。これは、紅色素抽出液による染色温度が高いほど、紅色素以外の他の色素の染着量が増加するためと考えられる。また、黄色素の抽出温度、紅色素の抽出温度が最適である場合、紅色素抽出液による染色温度が10℃では、染色布は、明度が基準試料よりも高くなり、色はうすいが、冴えた、澄んだ色になることが認められる。従って、紅花染めにおいて、紅色素抽出液による染色温度は、10℃以下の低い温度で行うのが効果的であると思われる。
著者
石井 晃 吉田 就彦 新垣 久史 山崎 富美
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.554-557, 2006-07-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
井上 明彦
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.33-45, 1994-03-31

Tout "atelier" est une reflexion sur l'art de peindre. On y peut lire non seulement le procede de travail d'un individu mais aussi le mecanisme general de la production picturale d'une societe ou d'un temps. Cela est particulierement vrai pour L'Atelier rouge de Matisse. En pliant le mur en deux, en redoublant la table, et en etalant les instruments et les produits de son metier, Matisse organise, dans cet espace immaterialise par la filtration totale du rouge, une exposition retrospective de son propre art. Il s'agit du retour de la peinture sur elle-meme. Nous y trouvons les correspondances entre deux termes aux trois niveaux, avec quoi nous pourrions schematiser tout "atelier" : 1) objet : l'equivalence entre la nature morte et le tableau en tant que representation de la representation ; 2) plan de reference : l'equivalence entre la table et le mur comme fond commun de tous les objets ; 3) lieu : l'echange entre lieu de production et celui d'exposition. A mesure que la peinture occidentale a ete conditionnee par le systeme de l'exposition dans la seconde moitie du XIX^e siecle, le mur de la galerie a ete interiorise dans la production picturale comme son plan de reference. En se liant a la tradition de "l'atelier", L'Atelier rouge suggere une phase nouvelle de ce processus modern de l'interiorisation de l'espace d'exposition.
著者
細田 七海
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.37-47, 1998-03-31

Decorative fabrics are a common element in the paintings of Matisse. One that appears repeatedly is a blue fabric previously known as "toile de Jouy" (a printed fabric made in France). Because it was later identified as an American-made print, I will hereafter refer to this fabric as the "Blue Print". This Blue Print appears in about eleven works of Matisse, but this paper will focus on Harmony in Red (1908). This painting contains a number of objects, including the Blue Print, which are inter-related. These relationships can be divided into three types : color, form and metaphor. This third type is the most interesting. For example, treating equally flower motifs in the Blue Print and the actual vase of flowers, it provides an evocative, multi-faceted vision. Compositions based on inter-relationships were characteristic of Matisse around 1910. The melange of inter-related images present the viewer with a dynamic vision, not merely of a flat surface or of a simulated three-dimentional space, but of an intangible space within the self. Using the Blue Print as a basis, this paper considers the process through which Matisse established this system of complex and fluid connections within Harmony in Red.
著者
原 大輔 尾崎 亮太 兵頭 和樹 中山 泰一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.3127-3137, 2005-12-15
被引用文献数
2

現在のWWWサーバには実行時のユーザ権限に起因する問題が存在する.PHP プログラムがデータをファイルに書き込む場合,データファイルの所有者がWWW サーバを実行するユーザとなるため,サーバを共有する別の利用者のPHP プログラムからそのデータファイルを盗視されたり削除されたりする危険性がある.1 台のサーバ計算機を多数の利用者で共有する共有型ホスティングサービスにおいて,これは深刻な問題である.本研究では,この問題を克服するWWW サーバ,Haracheを提案する.提案するシステムではサーバプロセスをファイル所有者の権限で動作させる.これにより,WebDAV やPHP といったサーバ組み込みのプログラムを用いる際の問題を解決することができる.また,不必要なサーバプロセスを適宜終了することで利用者数に対する高いスケーラビリティを達成できる.本論文では,Harache の設計および実装法について述べる.Harache をSELinux を有効にしたLinux OS 上に実現し,評価実験を行った.その結果,ユーザ権限に起因する問題を解決すること,他の実現方式に対してスケーラビリティの面で優位性を持つこと,実用に耐えうるだけの性能を達成していることを確認した.This paper presents a WWW server named Harache, that runs under the authority of the file owner. Existing servers have problems that occur because of the user authority during execution. When a PHP program creates data files, the owner of the created files is the special user account that runs a server. Therefore, other users that share the same server can steal and delete these data files. These problems are serious for a hosting service where many users share a server. Harache has server processes that run under the authority of the file owner. Hence Harache can solve these problems that occur because of the user authority. In addition, Harache terminates unnecessary server processes when needed to improve scalability of the number of users. For a proof of concept, we implemented Harache on a Linux OS with a SELinux and performed evaluation experiments. Experimental results show that Harache achieves high performance and scalability.
著者
三田 洋幸
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : 日本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-68, 1997-03-16

相当な投資を伴うことの多い企業買収の妥当性を判断する上で,買収投資の経済性を評価することは著しく重要である.そのために,さまざまな財務手法が開発されてはいるが,実務に十分活用されているとはいえず,あくまでも判断材料のひとつにとどまり,定性要因をより重視した恣意的な判断に依存しているのが実情である.これらの財務手法の利用を妨げているのは,いずれも買収評価の条件を単純化しすぎるために,現実の買収条件を的確に反映できないためである.さらに,その理論的な限界を曖昧にして利用されることも多く,実際の買収交渉における争点と買収評価との関連性をわかりにくくしているのである.企業買収の形態を契約成立後の組織形態によって合併と買収の二つに大別すると,わが国の案件は,ほとんどの場合は契約成立後も被買収企業を存続させる買収の形態をとっている.ところが一般に,買収評価の手法として,理論的に最も合理性が高いといわれるDCF法による計算プロセスを考察してみると,実は被買収企業の資本構成を一定とする状況を前提とした評価方法であることがわかる.被買収企業を存続させる場合にそのような前提を設けることは現実のビジネススにおいては適切でないことも多く,同様の計算プロセスを適用すると誤った経済性評価に基づいた意思決定が行わることも少なくない.そこで,本研究では,買収成立後に被買収企業を存続させる場合を考慮した買収価値の評価方法を検討する.まず,第1節において合併・買収の実施プロセスと買収価値の評価方法の大要を整理し,後節におけるモデル構築のフレームワークとする.第2節では,DCF法による買収評価方法を整理し,被買収企業が保有する余剰資金運用合計の時間的価値が逓減することによる問題点を考察する.第3節では,買収取引におけるキャッシュフローと資金プールに着目し,買収評価を評価するための財務モデルを構築するとともに,数値例を展開して実務的にも容易に適用できることを示唆する.本方法論は,以下の特徴を有することで,買収評価の有用性を高めようとするものである.第一に,被買収企業を存続させる期間を考慮して,買収企業にとっての買収投資の経済性を理論的に正しく評価するための計算手法を構築する.第二に,配当政策等の利益回収の方法によって買収価値がどのように変化するかを評価する.第三に,計画財務諸表(P/L,B/S,C/F)のシミュレーションをベースにして買収価値を算定するため,経営者にとって理解しやすい評価内容を提供する.
著者
石野 眞
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.49-53, 2000-12-01

さきに,拙論「パウル・クレーのプリミィティブ」−平成9年12月・島根大学教育学部紀要・第31巻(人文・社会科学編)において・パウル・クレーの造形思考と造形表現における「プリミィティブ」について研究した。先稿では,浜田市世界こども美術館創作活動館の開館ならびに開館記念展『こどもたちのパウル・クレー展』の意義について述べるとともに同展に寄せてアレキサンダー・クレー氏が祖父パウル・クレーの造形表現について述べた講演に基づいて,パウル・クレーの造形思考と造形表現にあるプリミィティブ性「パウル・クレー・プリミィティブ」について研究した。13; 本稿では,武満徹氏のパウル・クレー論,その絵画と音楽について考察する。13; 武満徹氏はパウル・クレーの作品に接して,昭和25年,20歳のとき瀧口修造氏の口添えで美術雑誌『アトリエ』に執筆(月刊誌「アトリエ」1951年/昭和26年6月号)パウル・クレー論を書き,初めて稿料を得た。相前後して初期創作作品の代表となる「二つのレント」が発表されている。13; 本稿では,武満徹氏の創作活動初期に流れるパウル・クレーへの傾倒,作曲と絵画性,その曙光について留意し考察,研究する。13; なお,「パウル・クレー」の表記について,武満徹氏は「パウル・クレエ」と記述しているので武満徹氏の引用文では,そのまま「パウル・クレエ」と記述し,その他については,今までの拙論表記のとおり「パウル・クレー」と表記する。以下敬称を略す。
著者
Feelifl Hisham 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.203, pp.85-92, 1999-07-23

Shared nothing systemの並列インデックスデータベースに於いて、個々のPEに負荷の偏りができた場合、パフォーマンスは低下してしまう。本論文では、最小の修正コストで、データを動的に動かし負荷分散させることにより、このパフォーマンスの低下を解消する手法を提案し、その有効性を示す。