著者
久保田 尚浩 山根 康史 鳥生 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.467-472, 2002-07-15
被引用文献数
1 4

ブドウ'マスカット・オブ・アレキサンドリア'および'巨峰'の1芽に調整した挿し穂を用いて, 休眠打破に及ぼす数種アリウム属植物のペーストおよび揮発性物質の影響を調査した.5種のアリウム属植物(ニンニク, ニラ, ラッキョウ, タマネギ, ネギ)のペーストを挿し穂の切り口に塗布したところ, 発芽は促されなかった.しかし, 揮発性物質の気浴処理では発芽が促進され, その程度は黄ニラで最も大きく, 次いでニラ, ラッキョウ, ニンニクおよびタマネギの順であった.これら植物の揮発性物質の休眠打破効果は, ニンニク中の休眠打破有効成分である2硫化ジアリルや3硫化ジアリルよりも小さかった.ニンニク, 黄ニラおよびラッキョウを煮沸し, それらの揮発性物質で気浴処理したところ, 発芽は促進されなかった.挿し穂をニンニク, 黄ニラおよびラッキョウの揮発性物質で12時間あるいは24時間気浴処理したところ, 市販のガーリックオイルの揮発性物質と同程度に発芽が促進された.挿し穂をニンニクおよび黄ニラの揮発性物質で, 温度を変えて24時間気浴処理したところ, ニンニクでは高温条件で発芽が促されたが, 黄ニラでは温度の影響は認められなかった.以上のことから, ニラとラッキョウはブドウの芽の休眠打破に有効であること, 休眠打破に有効な物質はニンニクと同様に揮発性であることが明らかとなった.
著者
渡辺 公三
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.492-504, 2000-03-30

近代人類学の始まりとして1859年におけるパリおよびロンドンでの学会創立の日付がしばしばあげられる。パリ人類学会の中心的な創立者ポール・ブロカは創立直後におこなった「フランスの民族学的研究」という基調報告をケルトやキムリスなどのraceがフランスのnationを構成することの論証にあてている。国民の人種構成を論証するために使われたデータは, 当時ほぼ唯一の全国的な統計資料だった徴兵検査資料, とりわけ身長統計である。身長という粗雑な特徴に満足していたわけではないブロカは, この報告の後, 晩年まで人種的差異の実証的根拠づけに多くの力を注ぐことになった。その後ブロカの洗練した身体計測技法は, ブロカの不肖の弟子でもあったパリ警視庁に勤務するベルティヨンによって意外な用途を発見された。身体の各部分のサイズが全く同じ成人は稀であり, 身体各部の正確な計測値を一定のしかたで分類のエントリーとして使うことで, 名前にも顔にも頼る事なく個体を個体として同定できるというわけである。この着想は軽犯罪の急増に悩む世紀末フランス市民社会にきわめて有効な身元確認技術を提供することになった。ここには国民国家の根幹をなす軍隊の人員管理技術の整備とともに, 人類学的な国民の人種的同一性確定手法が洗練されてゆき, その手法が警察の犯罪者同定技術として利用されていったという過程があったことが示されている。統治技術から人類学へ, そしてまた人類学から統治技術へという人目にはつきにくい知の技法の往還が見出されるといえよう。この小論ではフランスにおける, 今世紀初頭までのパリ人類学会の動向を, 軍および徴兵制との関係を中心に簡単に検討し, とりわけ徴兵制の変化が, 人類学会で一定の学問的な言説としてどのように議論されていたかについて検討する。それがどのような問題構成の枠のなかでおこなわれ, 人類学固有の問題としてどう受け止められていたのか, そしてそこにわれわれは19世紀人類学のどのような存立条件を見極められるのかを見ていくことにしたい。
著者
木戸川 紀子 田原 弘幸 坂本 繁樹 山本 秀正 本田 亜紀子 田代 泰信 馬場 礼美 井口 茂
雑誌
長崎大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.193-196, 1992-03-31

病院における事故について,リハビリテーションカルテ,看護日誌をもとに調査した. 対象は,昭和63年4月から平成3年11月までに当院に入院した患者,合計673名(男性274名,女性409名)である. 多数回事故を起こしている患者は痴呆を有し,それによる異常行動が原因と思われた. 事故多発時間帯は起床時・消灯時で院内の体制の再検討を示唆するものもあった.事故に伴う傷害で骨折では大腿骨,肋骨,上腕骨と全身的であった. この調査の結果から事故予防策を考えた. ① 移動・移乗能力の評価を厳密にし過大なプログラムを避ける. ② ベッド周囲の環境整備 ③ 事故報告の様式を整える.
著者
清川 清 倉田 義則 大野 浩之
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, no.15, pp.55-60, 2000-02-21
参考文献数
10
被引用文献数
1

従来, 複合現実環境を提示するために実環境像と仮想環境像を合成する場合, ビデオ透過型ディスプレイでは実環境の低解像度化や提示遅れが避けられず, 光学透過型ディスプレイでは仮想環境が半透過となり正しく隠蔽関係が表現できないという問題があった.本稿では, 仮想環境の各画素に対応する実環境の光線を任意に遮蔽するために透過型の液晶パネルを用いることにより, 実物体と仮想物体の自在な隠蔽関係の提示を可能とする新しい光学透過型ディスプレイを提案する.
著者
小松 洋治 益子 良太 土田 幸広 柴田 智行 伊藤 政美 目黒 琴生 小林 栄喜 吉澤 卓 能勢 忠男
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10, pp.654-659, 2001-10-20
被引用文献数
6

ウイリス動脈輪前半部未破裂脳動脈瘤クリッピンク手術の認知機能への影響および予後因子を, 連続40症例についてprospectiveに検討した.術前, 術後3カ月にMMSE, 仮名拾いテストを行い, 各検査単独, および総合評価である浜松方式簡易痴呆診断スケールにより認知機能を評価した.認知機能は多くの症例で温存されたが, 継続的障害が2.5〜5.0%に, 一過性障害が7, 5%にみられた.継続的障害に関与する危険因子はみられなかった.一過性障害を含めた検討では, 70歳以上の高齢が有意な因子であった.術前の浜松式非正常, 仮名拾いテスト不合格, 虚血性脳血管障害合併の3因子は, 予後との関連が示唆された.未破裂脳動脈瘤手術成績は, 認知機能の観点からは良好であるるが, 高齢者, 虚血性脳血管障害合併症例, 前頭葉機能低下例では, より慎重な対応が必要である.
著者
三谷 一裕
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.235-240, 1996-08-25
被引用文献数
7
著者
橋本 健一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 2002-03-25
被引用文献数
3

1. モンシロチョウPieris rapae crucivora Boisduvalの沖縄県石垣島個体群(24°20′N)における蛹休眠誘起の光周反応, 幼虫期および蛹期の発育速度と発育零点, 休眠蛹の蛹期間について調べた.2. 15℃での臨界日長は約11時間10分であると推定された.しかし, 20℃では, 明期8時間・暗期16時間(以下, LD8 : 16), LD10 : 14でも, 休眠率は前者で, 21%, 後者で, 20%であり, LD12 : 12, LD14 : 10では休眠蛹は生じなかった.25℃では, LD8 : 16∿LD14 : 10の範囲では非休眠蛹のみを生じた.3. 幼虫期および蛹期の発育速度(V)と温度(T℃)との関係は, 幼虫期がV=0.0053T-0.0453(r=0.99), 蛹期がV=0.0088T-0.0747(r=0.99)の回帰直線式で示され, 幼虫期および蛹期の発育零点はともに8.5℃であった.4. 20℃・LD10 : 14で得られた休眠蛹の蛹期間は, 20℃・全暗で57.9±11.4日(平均値±標準偏差)であった.20℃・LD8 : 16で得られた休眠蛹の中には蛹期間が100日以上の個体もあったので, 休眠の深さの個体変異は大きいと思われた.5. 石垣島個体群の休眠の誘起は, 20℃で抑制される傾向にあり, 25℃では完全に抑制された.また, 休眠蛹の蛹期間は東京個体群と比べて短かった.このような特性は, 最寒月でも発育零点以上の温量が得られる同地の気候条件への適応と考えられる.
著者
岡田 淳子 深井 喜代子 オカダ ジュンコ フカイ キヨコ
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
日本赤十字広島看護大学紀要 (ISSN:13465945)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-27, 2006

本研究の目的は、入院患者の手指汚染の実態を明らかにし、効果的な手指清潔ケアの方法を検討することである。研究対象は活動制限のある患者9名(活動制限群)と制限のない患者7名(自立群)とした。患者の生活時間を睡眠、午前、昼食、午後の4つに区分し、各区分開始前に手指消毒を実施し、区分終了時点の起床時、11時、昼食後、16時の計4回、手型寒天培地に患者の手掌付着菌を採取した。検体は37℃で24時間培養し、細菌コロニー数と菌種を調べた。その結果、活動制限群5名と自立群4名から黄色ブドウ球菌が検出された。両群とも起床時と昼食後にコロニー数が有意に増加していた。また、全区分において自立群より活動制限群の方が手指汚染の程度が高い傾向にあった。以上のことから、入院患者の手指清潔を強化する必要のあること(特に昼食後)、また、ベッド上生活で自ら手洗いができない活動制限のある患者の効果的な手指清潔ケアの方法を今後検討していく必要のあることが示唆された。