著者
脊板 弘康 倉橋 節也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019)
巻号頁・発行日
pp.3A3J1301, 2019 (Released:2019-06-01)

顧客第一主義を標榜し、品質第一主義を掲げて世界を席巻してきた日本企業で今、品質詐称事件が後を絶たない。これは、これまで各企業が日本独特の高コンテクスト社会ならではの概念である「空気」を用いて絶対化していた品質第一といういわば信念が組織内の現実の問題により相対化し崩れたために詐称に至るものと考えられる。 本研究で、Giddensの構造化の理論の枠組みを基に、山本七平の言う日本独特の精神文化とも呼べる「空気」により形成された顧客への「忖度」が相対化され破れに至る様を、ビジネスゲームを用いて再現させる事を目的としている。
著者
胡 熙
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-16, 2022-04-22 (Released:2022-04-23)

本論文は、60年代にイタリアで興ったアルテポーヴェラという美術運動を取り上げ、現代の美術教育が直面している経済化、形式化、権威化などの諸問題を乗り越えるため、アルテポーヴェラから現代の美術教育へどのような可能性を引き出せるのかを提言する論文である。まずアルテポーヴェラの起源及び理念を明確にし、60年代のイタリア及び世界の社会背景を明らかにした。最後は、アルテポーヴェラと共通点が伺える中国の「厦門達達(シャーメンダダ)」という美術運動を考察しながら、芸術の限界、反解釈的な美術教育観という二つの視点を中心に、美術教育への提言を示した。
著者
徳田 篤志
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

人工呼吸器を装着した患者に気管支拡張薬やステロイド吸入薬等を投与する際、定量噴霧式吸入器(MDI)やネブライザーを用いて薬物をエアゾル化し蛇管の側管から投与を行う。しかし、経験上意図した薬物量が肺内に到達しないため、人工呼吸器を装着した患者に吸入薬を投与する際には、添付文書に記載されている必要量以上の薬物量が投与されているケースがしばしば見受けられる。このように薬剤の投与量を増加することにより、有効性が得られるのは事実であるが、全身への副作用などが問題となってくる。そこで、本研究では、人工肺を用いて人工呼吸器を装着した患者モデルを作成し、回路内に薬物を投与して人工肺部に到達する薬物量を測定した。使用薬物は、臨床現場で使用頻度の高い硫酸サルブタモールを用いた。また、薬物のエアゾル化にはMDIと超音波ネブライザーであるエアロネブとウルトラソニックネブライザーの3種を使用した。この方法でエアゾル化した硫酸サルブタモールをそれぞれテスト肺内に設置したフィルターに吸着させ抽出後、HPLC法により定量を行った。その結果、MDI、エアロネブ、ウルトラソニックネブライザー使用における硫酸サルブタモールの肺への到達率は、それぞれ0.95%、0.88%、2.02%とかなり低い用量であることが確認された。これは、3種の投与法によって放出されるサルブタモールの粒子径がほぼ変わらない事から、蛇管内に小さな水滴を多く含む人工呼吸器下では、薬物が蛇管や回路に吸着し到達量が減少したと考えられた。さらに、呼吸器回路や蛇管の長さや肺への到達までにかかる時間等の問題も原因の一つであると示唆された。人工呼吸器回路内のエアゾル沈着には多くの因子が影響するが、今回の条件下ではどれも数%しか吸入されないことから、人工呼吸器を装着した環境下では、吸入薬の肺への到達性が低下するために、添付文書の用量も考慮した上で薬物量を増加させる必要があると考えられた。
著者
竹谷 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.自動車関連企業の海外進出や部品の海外調達の進展に伴う、雇用・労働市場への影響について、各種統計調査結果の解析を進めた結果、1991年以降は年を経るに従い、雇用指標は悪化し、特に95年から96年にかけ、東海などが有効求人倍率の落ち込み、製造業の労働時間の非自発的圧縮、パート労働者比率の増大、倒産の増大など、深刻であった。2.愛知県の県内2000の事業所アンケート結果等によれば、最近3年間で、非海外シフト企業の余剰人員発生状況は、海外シフト企業より遙かに深刻な事態にあることが判明。農村部に多い非海外シフト企業における雇用環境の悪化は顕著である。3.3次以下の下請を対象にヒヤリングを進めた結果、受注量の減退や単価の押し下げが顕著であり、今後5年間では事業規模の拡大や高付付加値生産への転換を進める下請もあるが、規模を縮小し、或いは転・廃業する企業が1/3を越えそうなことが判明した。4.農村部の下請雇用の再編に伴い、農村労働力の農業回帰という形での就業再編が、新規参入にも刺激され起こっているが、量的には多くない。高齢者の農業就業の増加が目に付く。定年退職者が従来であれば再雇用されるケースが多かったのと対照的である。5.雇用条件悪化の中、終了機会を自ら創出する起業活動の展開は多様である。村興しと結合させ、定年、間近な壮年層、女性を中心に「百年草」、「山紫庵」などの保護・加工販売・文化を結びつけた交流型 施設経営、「荷互奈」などの生産・加工産直施設経営、名古屋市農業文化圏と提携した食材提供の「つくばね」「ひこばえ」グループなど、都市農村交流型のものが多い。経営管理面は概して脆弱であり、地域差も大きく、農村就業の新機軸を担う点からみればまだ補完的である。
著者
滝浦 静雄
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.19, pp.22-47, 1969-03-31 (Released:2009-07-23)
参考文献数
46

Cet essai a pour but de chercher un ressource pour réfuter une forme du solipsisme dont on pourrait trouver le type dans la philosophie de J.-P. Sartre. Selon lui, toute conscience d'objet est en même temps << conscience non-thétique d'elle-même >> et, par conséquent, l'expérience du << Nous >> n'est qu'un fait psychologique de chaque individu qu'il est un d' << eux >> pour un tiers. Nous essayons donc dans cet essai de démontrer que sa conception de la << conscience (de) soi >> n'a pas raison, en tenant compte du fait que la prise de conscience de soi est en règle générale très difficile pour l'enfant. Car, ce fait ne serait pas indifférent au problème de la conscience (de) soi. Et nous pensons que, pour saisir correctement l'existence d'autrui, il faut avoir la notion juste du corps humain, et nous la trouvons dans la philosophie de M. Merleau-Ponty. Il constate par l' examen de la << sensation double >> le système de coexistence de mon corps avec le corps d'autrui, c'est-à-dire l' << intercorporéité >> où l'on pourrait restituer le bon droit de l'expérience du << Nous >> sujet.
著者
西澤 翔 北村 重浩 竹口 昌之 蓮実 文彦
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集 創立50周年記念国際シンポジウム/第38回石油・石油化学討論会
巻号頁・発行日
pp.144, 2008 (Released:2009-01-05)

メタンは温室効果ガスであるが、その温室効果は二酸化炭素のおよそ21倍もある。現在も大気中のメタン濃度は増加し続けており、その対処法が急速に望まれている。本研究では、メタンを唯一の炭素源として生育するメタン資化細菌のメタン代謝能を利用して、温室効果ガスであるメタンを固定化できるバイオリアクターを構築することを目的とした。本実験では、約1%程度のメタンを効率よく固定化できるメタン資化細菌の探索を行った。また、天然土壌によるメタン固定化能力について検討した。
著者
Arata NAGAI Yasuhiro SUZUKI Tomohisa ISHIDA Yoshimichi SATO Tomoo INOUE Teiji TOMINAGA
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
pp.2022-0155, (Released:2022-10-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1

Delayed cerebral vasospasms after subarachnoid hemorrhage (SAH) are a risk factor for poor prognosis after successful treatment of ruptured intracranial aneurysms. Different strategies to remove clots from the subarachnoid space and prevent vasospasms have different outcomes. Intrathecal urokinase infusion therapy combined with endovascular treatment (EVT) can reduce the incidence of symptomatic vasospasms. To analyze the relationship between symptomatic vasospasms and residual SAHs after urokinase infusion therapy, we retrospectively reviewed the records of 348 consecutive patients managed with EVT and intrathecal urokinase infusion therapy for aneurysmal SAH at our institution between 2010 and 2021. Among them, 163 patients met the study criteria and were classified into two groups according to the presence of residual SAH in the cisterns, Sylvian fissures, and frontal interhemispheric fissure. The incidence of symptomatic vasospasms and the clinical outcomes were assessed. In total, eight (5.0%) patients developed symptomatic vasospasms. Patients with symptomatic vasospasms had a significantly higher incidence of residual SAH in the Sylvian or frontal interhemispheric fissures than those without (P <.0001). No patient with SAHs resolved by urokinase infusion therapy developed symptomatic vasospasms. However, the two groups did not differ significantly in terms of modified Rankin scale scores at discharge. Treatment with intrathecal urokinase infusion after EVT for aneurysmal SAH can substantially reduce the risk of clinically evident vasospasms.
著者
Satoru YABUNO Takao YASUHARA Satoshi MURAI Tetsuya YUMOTO Hiromichi NAITO Atsunori NAKAO Isao DATE
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.465-474, 2022-10-15 (Released:2022-10-15)
参考文献数
61
被引用文献数
2

Intensive care unit (ICU) survivors after traumatic brain injury (TBI) frequently have serious disabilities with subsequent difficulty in reintegration into society. We aimed to investigate outcomes for ICU survivors after moderate to severe TBI (msTBI) and to identify predictive factors of return home (RH) and return to work (RTW). This single-center retrospective cohort study was conducted on all trauma patients admitted to the emergency ICU of our hospital between 2013 and 2017. Of these patients, adult (age ≥ 18 years) msTBI patients with head Abbreviated Injury Scale ≥ 3 were extracted. We performed univariate/multivariate logistic regression analyses to explore the predictive factors of RH and RTW. Among a total of 146 ICU survivors after msTBI, 107 were included (median follow-up period: 26 months). The RH and RTW rates were 78% and 35%, respectively. Multivariate analyses revealed that the predictive factors of RH were age < 65 years (P < 0.001), HR < 76 bpm (P = 0.015), platelet count ≥ 19× 104/μL (P = 0.0037), D-dimer < 26 μg/mL (P = 0.034), and Glasgow Coma Scale (GCS) score > 8 (P = 0.0015). Similarly, the predictive factors of RTW were age < 65 years (P < 0.001) and GCS score > 8 (P = 0.0039). This study revealed that "age" and "GCS score on admission" affected RH and RTW for ICU survivors after msTBI.
著者
村上 登司文
出版者
日本平和学会
雑誌
平和研究 (ISSN:24361054)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.143-161, 2022-10-15 (Released:2022-10-13)
参考文献数
20

本稿では,社会学的分析手法を用いた筆者の先行研究に依拠して,2000年代の平和教育について多角的に検討する。平和教育への公的支持が平和教育を進化・発展させ,それが平和意識を変革していく働きがあると捉える。公的指示を分析指標として,平和教育事象の展開についての構造的な把握を目指す。次に,中学生に対する平和意識調査のデータを時系列と,日英独以の平和意識を国際的に比較して,平和意識への社会的規定要因を考察する。日独英以のそれぞれにおいて,継承する戦争記憶(集団的記憶)は異なる。平和教育への公的支持の在り様は,その国が置かれた歴史的状況と地政学的環境の影響を受けている。日独英以の各国において,公的支持の指標を用いて,平和教育を促進する力の程度を想定することができよう。日本の地域レベルと国内レベルで,平和教育へ多くの公的支持が相乗的に働いていることが動因となり,平和主義的意識が多くの中学生に育成されているのではなかろうか。日本の中学生達の高い平和意識がこれからも存続する方向で,次世代型平和教育の展開方法を提示する。「戦争体験を継承する平和教育の類型」の分析枠組により,平和教育を世代ごとに類型化して,戦後から現在までの戦争体験継承方法の展開を示す。次世代型の平和教育は、戦争第4世代となる2006年~2035年頃生まれを対象としており、平和教育実践の担い手が変わり、平和教育の課題も変化している。
著者
末滿 達憲 宮崎 彰吾 佐藤 和人 橋本 雄太郎
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.177-184, 2022-06-01 (Released:2022-06-06)
参考文献数
23

種々の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に抗すべくSARS-Cov-2ワクチンが急速に開発され,本邦では薬機法に基づく特例承認を経て,医療従事者,高齢者等に続き,職域においても接種が進められている.COVID-19の病態を概観し,公表されている同ワクチン接種後の死亡例,健康被害救済制度,損害賠償制度および関係法令等を整理した.ワクチン接種に先立ち,健康被害に対する損害賠償等による製造販売業者の損失等を補償するための契約を可能とする予防接種法の改正がなされた.一方,健康被害発生時,使用者等の責任が民法,国賠法に定められているが,何れも使用者等の求償権が規定され,直接接種業務に携わる産業保健スタッフを含む医療従事者に対する損害賠償請求を妨げる明規はない.今後の新興・再興感染症の発生等に備え,法制面,実施主体との契約等につき,特に緊急時の予防接種健康被害に係る提言を行った.

1 0 0 0 車輛工学

著者
車輛工学社 [編]
出版者
車輛工学社
巻号頁・発行日
vol.50(11), no.565, 1981-11
著者
佐藤 雅俊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

廃棄バイオマス資源の一つであるケナフ心材部の有効利用の一つとして、バインダーレスボードの開発について検討し、製造条件、特に圧締温度が高いほど耐水性が向上し、最適条件下では、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤と同等かそれ以上の性能を有することが認められ、さらに、一年間の暴露試験においても材料の劣化は少なく、バインダーレスボードが耐水性に劣るという概念を覆す結果となった。一方、ケナフコアボードを用いたバインダーレスボードの自己接着機構に関する検討を、化学的手法と物理的手法を用いて実施した。化学的分析結果から、自己接着には、熱によるリグニンの軟化及びリグニンの縮合型構造の形成が確認された。また、カルボン酸類によるエステル結合の生成の可能性も示唆され、このような変化を生ずる要因は、製造時における圧締温度であり、適切な温度条件下において自己接着機構が発現していることが推測された。また、廃木材および竹を爆砕処理したパルプ等の化学分析あるいは走査型電子顕微鏡を用いた分析からは、爆砕によりパルプ表面に析出し遊離したリグニンが自己接着に関与していることが明らかとなり、この結果からも上述したリグニンの関与が明らかとなった。バインダーレスボードの製造条件に関しては、圧締圧力および圧締温度が木質系ボードの製造条件と比較しても差異がないことから既存のボード製造装置を用いたバインダーレスボードの製造が可能であり、今後、各種のバイオマスの有効利用に適用可能と思われる。
著者
井上 誠
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-18, 2021-01-18 (Released:2021-03-15)
参考文献数
36

嚥下運動誘発には脳幹延髄の神経回路を介する反射性のものと随意性嚥下を含む中枢性のものがある.前者の主たる受容野は,上喉頭神経で支配される下咽頭から上喉頭領域であり,多くの刺激やそれに応答する受容体が関連していると考えられている.その中で最もよく知られているのは,C線維や一部のAδ線維に発現する温度感受性受容体transient receptor potential(TRP)チャネルである.ことに温刺激受容体であるTRPV1や,冷刺激受容体であるTRPM8とTRPA1は,嚥下反射誘発・促進にかかわるという多くの臨床報告があるものの,その十分な根拠を示す基礎研究データは提供されていない.TRPチャネルはポリモーダル受容体である.TRPV1が温度のみならず酸やカプサイシンにも応答する性質を用いて,嚥下障害の臨床に用いられる炭酸水嚥下の末梢受容機構などの解明が行われ,acid sensing ion channel(ASIC)3などの関与が考えられている.機械刺激に関しては,上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)が候補受容体とされているが,全容解明には至っていない.

1 0 0 0 OA 香ひ袋 2巻

出版者

改装青本(合1冊)。2冊(10丁物の内第6丁・10丁欠)、[鳥居清経]画、題簽欠、柱題「にほいふくろ」による表紙打付書「香ひ袋」を題名としている。本作は東京国立博物館本に題簽「話加減窹藥(はなしかげんめざましくすり)」があり、大東急記念文庫本はこれによって後補書題としたため、「香ひ袋」は当館のみとされている。他に「匂袋」と題する東北大学狩野文庫本(黒本集44)がある。「平成15年度/京都古典会特別市会目録」(京都古典会)No.117に本作の第10丁裏と「午正月/新版/目録」が図版掲載され、この目録に「薬/種/色道匂袋」と載る。これが原題と推定され、鱗形屋、安永3年(1774)刊とみられる。画工名、欠丁箇所は狩野文庫本に拠って補った。