著者
星野 智祥
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.369-382, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
70
被引用文献数
4 1

日本は原爆による被ばく国として, また原発事故の当事国として, 深刻な放射線災害を経験してきた. その一方で, 日本は他の先進国と比べて国民の医療被ばくが多く, その主な要因は, 診断を目的としたCT検査が増え続けていることである. 福島原発事故が発生してから, 全国的に低線量被ばくと発がんのリスクについて議論が繰り広げられてきたが, 近年, 大規模コーホート研究において, CTスキャンからの低線量電離放射線による発がんリスクが明らかとなってきている. CTスキャンは短時間で解像度の高い画像が得られるため, 医療現場には欠かせない重要な診断技術となっているが, 患者の利益とリスクのバランスの上に立ち, CTが適切に使用されているのかどうか評価することがきわめて重要である. 病院総合医に求められる中核的能力には, 病院医療の質を改善する能力, 他科やコメディカルとの関係を調整する能力が含まれる. この観点から, 病院総合医が放射線科医や放射線技師らと協力し, CTの使用を正当化しながら, 不必要な被ばくを最小限にするためにはどのような役割を果たせるのか考察した.
著者
吉田 文
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.164-175, 2014

&emsp;本論文は、「グローバル人材の育成」をめぐる諸アクターの行動を分析し、グローバル人材を論じつつも、それがローカルな視点に立脚するものであるかを明らかにする。<br>&emsp;分析の結果、1.2000年代に入り産業界は海外勤務従業員の育成を課題としてグローバル人材を論じはじめ、2.2000年代後半には、それが大学の課題となり、3.文科省は競争的資金で大学を誘導し、4.大学は海外留学と実践的な英語教育に力を入れ、5.小規模大学もグローバルを鍵とした学部・学科の改編を実施していることが明らかになり、これらが時間的にも空間的にもローカルな閉じた議論であることを指摘した。
著者
加藤 聖文
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-27, 2005-03

敗戦時に大規模な公文書の廃棄が行われたために、現在の国や地方の行政機関では戦前期の公文書が少ないといった認識が一般的である。しかし、戦前の公文書は、戦後に引き継がれたものと戦後のある時期までに廃棄されたものの二つの系統があり、そして、廃棄されたものは、敗戦前に廃棄されたもの、敗戦時に廃棄されたもの、戦後に廃棄されたものの三つに分けられる。さらに、公文書には大きく分けて普通文書と機密文書の二種類があり、このうち敗戦時の廃棄の中心となったのは機密文書であり、一方、敗戦前と戦後に廃棄されたものは、文書管理規程に基づく通常の廃棄以外では、特殊な理由によって廃棄されたものがあった。本稿では、この通常の公文書のライフサイクルとは異なるかたちで戦時中から戦後までに公文書が大量に廃棄された実態を愛知県庁での事例を中心に検証する。通常のライフサイクルとは異なるかたちとは、敗戦前では、新庁舎の建設に伴う廃棄、戦時中の物資欠乏による廃棄、防空体制の強化による廃棄、文書の疎開に伴う廃棄といった要因が挙げられる。また、戦後では平時になったために戦時に作成された文書の必要性が無くなったことによる廃棄が挙げられる。このようなさまざまな要因によって行われた大規模な文書廃棄を通して見るなかで、すでに敗戦前に多くの文書が失われていたこと、そしてそのような行為を通して見るなかで、行政機関にとって文書の重要性に対する認識が研究者とは全く異なるものであることと、行政組織が生み出す公文書の実像を明らかにし、さらには、現代における公文書の廃棄問題、これからの公文書管理についてのあり方への問題提起を行う。Because a large quantity of official documents were destroyed at the time of defeat, a recognition that only a few prewar documents survive both in the central and local governments has been common. However, this kind of recognition should be reconsidered. Official documents of prewar days were usually treated in two ways. One part is what was taken over to the post war governments, and the other that abandoned before sometime in the postwar period. The latter can be classified into three types, i.e. those which had been abandoned before the end of war, those destroyed at the time of surrender, and those abandoned in the post war period.Furthermore, it should be noted that prewar official documents used to be roughly divided into 'normal documents' and 'secret papers'.The abandonment at the end of war was centered around 'secret papers', while 'normal documents' were abandoned during the war time and post war periods either by document management regulations regularly or in unusual ways for some reasons.The present paper verifies actual conditions of the abandonment of official documents from the wartime through the postwar period, in which documents were destroyed in unusual ways different from the normal disposal procedure based on the life-cycle concept of records, focusing on the case of Aichi Prefectural Government Office.Unusual disposals of official documents not based on the normal life-cycle procedure were: the abandonment of documents by the construction of a new government building; the abandonment for recycling paper caused by the lack of goods; the abandonment after the office reorganization for strengthening air defense; and the abandonment following the evacuation of documents. Moreover, in the postwar period, the prewar and wartime documents were considered to have lost their business value in peacetime, and were often abandoned.Through the above cases of large-scale abandonment of documents caused by various factors, the author reveals that many documents had already been lost before the end of war and discusses, by seeing such wartime activities of government agencies, that the recognition of government people about the importance of official documents is completely different from that of researchers. Lastly, the author insists of the importance to clarify the real image of official documents produced by administrative organizations, and raises problems to think about the abandonment of official document in the present age as well as about the management of official documents in the future.
著者
志賀潔 述
出版者
伝染病研究所
巻号頁・発行日
vol.第1, 1898
著者
清水 誠治
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.65-71, 2006-03-30 (Released:2017-04-29)

ワンマンバスの,テープや音声合成による案内放送について,全国の路線バス事業者に実施したアンケート調査の結果の中から,地域差の見られた事例を取り上げ,分布図を用いて報告する.ここで取り上げるのは以下の事象である.・次の停車バス停や行き先案内での「です」と「でございます」の使用・起点発車時,および終点到着時の第一声に流されること・乗客が乗務員に降車の希望を知らせる設備の名称ここでは,設備の名称に見られるように,おおよそ東日本にしか見られない事象があることや,終点到着時の第一声に見られるような特定の地域に集中している事象のあることなどがわかった.
著者
崔 在和 佐藤 裕
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.483-486, 1996-03-12 (Released:2010-03-11)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
山科 健一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.71-82, 1999
参考文献数
79
被引用文献数
1

Associated with the 1914 great eruption at Sakurajima volcano, southwestern Japan, the maximum height of volcanic cloud is discussed based on collected documents, sketches and photographs in those days. A series of photographs up to around 10 : 40 on January 12 (in Japanese Standard Time) represents that the volcanic cloud height attained to 7,000 to 8,000 m above sea level. After then, it proved that several documents reported the height to be 9,500-15,000 m, or even more than 18,000 m a.s.l, although it is difficult to obtain reliable evidences. Considering these reports and other observations from a distance, the height of 15,000 m is tentatively proposed here as a possible maximum value. According to an empirical relation, an eruption rate of small pyroclastic materials is suggested as, roughly speaking, 5,000 tons per second or 20 millions of tons per hour, if the volcanic cloud was 15,000 m in height.
著者
宮沢 弘成
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.211-213, 2000-03-05 (Released:2019-04-26)
被引用文献数
1
著者
安田 康晴 山本 弘二 岸 誠司 友安 陽子 坂口 英児 藤原 ウェイン翔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.51-54, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
12

背景:救急隊現場到着所要時間・病院収容所要時間の延伸および救急車走行中の事故,ヒヤリハットの発生は,自動車運転者が救急車のサイレン音に気づかず救急車の接近が認識できないため緊急走行が妨げられていることも要因の一つであると推測される。目的:自動車運転者に救急車サイレン音が聴こえているかについて検討すること。方法:自動車走行時の車内騒音量と距離別に救急車サイレン音量とを比較した。結果:自動車まで20mの救急車サイレン音(46.4±1.3dB)は,自動車走行中車内音量,オーディオ視聴時(54.6±6.7dB)や会話時(68.4±1.6dB)より小さかった。考察:救急車が20mに接近してもサイレン音量は窓全閉時の走行中車内騒音量より小さいこと,音が高齢者に聴きづらい周波数帯であることなどから救急車の接近が認識できないと考えられた。サイレン音の改良やサイレン音量の基準の見直しが必要である。
著者
伴 和幸 野上 大史 高見 一利
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.194-203, 2022-12-25 (Released:2023-01-27)
参考文献数
20

動物園動物によるヒトの死傷事故は甚大な被害をもたらすが、正確な事故件数すら把握されていない。そこで本研究は安全対策に資するべく、国内の動物園で発生した動物によるヒトの死傷事故を定量的に評価した。5つの新聞記事データベースを用いて、約72年分の記事から加害動物、発生時の行為などを調査した。その結果、54園で発生した107件122人分(死亡25人、重傷50人、軽傷39人、不明8人)の事故を確認した。飼育員の事故原因はゾウ科の同室内作業やネコ科の扉操作が多く、近年も増加傾向にあった。来園者の事故原因はクマ科などの獣舎への侵入がほぼ全てを占めていたが、2000年代以降0件であった。ゾウ科の飼育管理は直接飼育から準間接飼育へと切り替えが行われており、事故の減少が予想される。以上より、今後動物園動物によるヒトの死傷事故を減少させるには、ネコ科の扉操作による事故の安全管理システムの再構築が必要である。
著者
坂口 安紀
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-48, 2018-07-31 (Released:2019-03-07)
参考文献数
20
被引用文献数
3

ベネズエラは、経済成長率が4年連続マイナス、インフレ率が4万パーセントを超えるなど、想像を絶する厳しい経済状況に直面している。本稿では、ベネズエラの厳しい経済状況を図表によって明示的に示し、その背景要因について概説する。マイナス成長については、国際石油価格の下落の影響も大きいものの、チャベス政権期からの国家介入型経済政策がもたらしたマクロ経済の歪みの蓄積や生産部門へのダメージが重要である。ハイパーインフレや対外債務という切迫した問題も、チャベス期から始まった著しい財政肥大に原因があり、マドゥロ政権の経済運営のみならず、チャベス期からの経済政策そのものに原因があると考えられる。
著者
田崎 晴明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.378-379, 2019-06-05 (Released:2019-10-25)
参考文献数
6

特別企画「平成の飛跡」 Part 2. 物理学の新展開量子力学,統計力学,そして,熱力学