著者
マエス マルセーロ 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-13, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
36

We present an optimization of the height-field water-column based approach for water simulation, providing three-dimensional animation of water flow on natural terrains. Our approach eliminates the storage and management of redundant virtual pipes between columns of water and also removes output dependency for parallel implementation, making it efficient for interactive computer graphics applications. We show a GPU implementation of the proposed method that runs at interactive frame rates with rich lighting effects on the water surface, including light wavelength dependent attenuation and light scattering.
著者
ママット アブドゥカディル 藤本 忠博 メムティミン ゲーニ 千葉 則茂
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.179-196, 2007 (Released:2008-06-18)
参考文献数
31
被引用文献数
2

We present an efficient method for creating large-scale animations of vertical developing cumulus-type cloud growth. The dynamics of cloud formation, growth, and motion are complex phenomena, and depicting these dynamics remains a significant challenge in the area of simulation and animation of natural phenomena in computer graphics. A novel aspect of this paper is the combination of a physical simulation method and a stochastic simulation method for obtaining an animation of large-scale phenomena with effects that are more natural. The physical simulation method is used to accurately solve fluid dynamics on a relatively small scale and prepare a 3D primitive pattern of a realistic animation of cloud growth. The stochastic simulation method uses 1/fβ noise functions and performs a large-scale simulation of an air current caused by the rising and condensation of water vapor due to the thermal effect. Many copies of the 3D primitive pattern are recursively mapped into the air current to constitute a large-scale continuous cloud growth. This combination of the physical and stochastic simulation methods can animate large-scale phenomena efficiently without enormous computational time and memory. The physical and stochastic simulations are achieved by particle-based methods, and the mapping is applied on simulated particles. Experimental results show that the proposed method efficiently creates realistic animations of large-scale cumulus and cumulonimbus clouds.
著者
Xin Yin Weiwei Xu Ryo Akama Hiromi T Tanaka
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.14-21, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

A technique to synthesize a 3-D Kabuki face model from ancient images is proposed. Kabuki is a traditional Japanese theater art. Kabuki researchers can know some ancient information of Kabuki from the ancient 2-D images such as Ukiyo-e (Japanese drawing) and Kumadori images (Kabuki makeup). Compared with the real face images in photographs and paintings, the face images in Ukiyo-e and Kumadori images were distorted a little from the real face for art representation. Hence, it is necessary to synthesize a new 3-D face model between the 3-D real face original model and the 2-D images. A deformation technique is proposed for transforming 3-D real face original models according to the 2-D images, and a mapping algorithm is given to map the images onto the 3-D face shape model. To ensure balance between precision and smoothing of 3-D model deformations and mappings, the radial basis function (RBF) is developed and a multilevel RBF is proposed. This multilevel RBF solver can be used to deform the 3-D real face model as well as map the 2-D images onto the 3-D face model. Some experimental results are given to demonstrate the effect of this technique.
著者
橘 春帆 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.22-33, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
29

クラスタリングされた表形式データは,情報科学の多くの場面において重要な役割を果たしている.このような表形式データの内容を効果的に可視化する手法として,表形式データを階層構造やグラフ構造に変換した上で可視化する手法が,近年になって多数報告されている.本論文では,階層型データ可視化手法「平安京ビュー」を使った表形式データの可視化手法を提案する.提案手法ではまず,表形式データの行および列を構成するデータ要素に,クラスタリングを適用し,各々の結果から階層型データを構築する.続いて,行を構成するデータ要素で構成される階層型データに対して,「平安京ビュー」を適用して可視化する.同様に,列を構成するデータ要素で構成される階層型データに対しても,「平安京ビュー」を適用して可視化する.この2 つの可視化結果を相互に操作することで,大規模な表形式データの内容を探索する新しい可視化を実現する.著者らは実験例として,新聞記事コーパスから作成された表形式データの可視化を試みた.本論文では,「左京と右京」によって新聞記事コーパスから,興味深いいくつかのキーワード群や記事群を発見できた事例を紹介する.
著者
景 琳琳 井上 光平 浦浜 喜一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.98-105, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1

カラー写真をステンドグラス画像やカラースケッチ画像などの非写実的画像に変換する簡便で高速な手法として,画像を色が均一な領域に分割するタイプの処理法を提案する.本論文では,エッジベースの手法と領域ベースの手法とを提案する.エッジベースの手法では,入力画像から検出したエッジからの距離変換に基づいて画像をアポロニウス分割し,バンプマッピングによってステンドグラス風やキルティング風,タイル風などの画像を生成する.エッジからの距離変換を用いる同様な手法として,円板配置によるバブル画像の生成法も示す.領域ベースの手法では,入力画像を減色し,モードフィルタをかけて滑らかな境界の領域分割を得る方法を提案し,境界線や領域色を処理してステンドグラス画像やカラースケッチ画像を生成する.
著者
中野 敦 河村 仁 三浦 枝里子 星野 准一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.145-153, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
2 6

近年,能動的に行動するキャラクタの生き生きとした反応を見て楽しむインタラクティブな創発型コンテンツが見られるようになってきた.これらのコンテンツでは,ユーザが仮想世界に干渉すると,それをキャラクタが知覚して反応する様子が見られる.しかし,その反応したキャラクタがさらに他のキャラクタの行動に影響を与えて新たな話に展開するといった現実世界では容易に起こりえる連鎖的なエピソードの発生はあまり見られない.このような連鎖的なエピソードを能動的に行動するキャラクタによって生じさせることができれば,より創発性の高いコンテンツとなることに加えて,ユーザは仮想世界のキャラクタがより生き生きと行動していると思えるようになり,コンテンツへの没入感を高められるはずである.そこで我々は,ストーリーの断片であるエピソードを階層的なAND/ORの達成条件を持つツリー構造のイベントの流れ(エピソードツリー)として表現し,連鎖的なエピソードを生じる創発的なストーリーを生成するための手法を提案する.提案手法では,キャラクタがユーザからの干渉を知覚しながら複数のエピソードツリーから現在の状況に適していて,かつ優先度の高いイベントを動的に選択し,実行していくことによって,多数のエピソードが連結されたストーリーやエピソード内にその他のエピソードが途中挿入されたストーリー,そして複数のキャラクタが同時に異なるエピソードツリーを実行していくことによって並列的にエピソードが進行するストーリーを生成する.実験として,ユーザがオブジェクトを仮想世界へ追加したり,仮想世界のオブジェクトに触れたりすることで,多様なエピソードの連鎖を鑑賞できるゲームコンテンツ(Spilant World)を制作した.このコンテンツを通して手法の有効性について評価を行った.
著者
竹川 佳成 寺田 努 塚本 昌彦 西尾 章治郎
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.88-97, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
25

近年,計算機の普及に伴い,電子メール,ブログ,チャットなどテキストベースのコミュニケーションが活発に行われている.また,感情や込めたい思いをより良く表現し他者に伝えるために,写真,ムービー,効果音,音楽,香りなどさまざまなコミュニケーションメディアやインタフェース,システムが提案されてきた.一方,ピアニストは鍵盤楽器を使って感情や思いを巧みに表現している.したがって,文字入力に演奏者の音楽的な表現力を付加できれば,感情や思いをより豊かに表現・伝達できると考えられる.そこで本研究では,鍵盤を使って文字入力に音楽表現を付加できる文字入力システムTEMPEST (TExt input and Musical PErforming SysTem) を提案する.TEMPEST の文字入力方式は,楽器演奏による感情伝達を考慮した設計になっており,ユーザはあたかも演奏しているかのように文字入力できる.さらに,実装したプロトタイプを用いた,文字入力演奏の視聴評価実験の結果から,提案システムは感情伝達手段として有効であることが証明された.
著者
アブドレイン プルカット 藤本 忠博 千葉 則茂 ゲニ マミチミン
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.154-166, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

A particle-based method is one of the most commonly used methods for fluid simulations. It has certain advantages over other fluid simulation methods; for example, it is easy to simulate irregular and complex fluid motion with topological changes. However, the surface reconstruction for particles remains a challenging problem. In this paper, we propose a surface reconstruction method for moving particles whose motion data are given by a particle-based simulation method. Our method utilizes a level set method to reconstruct a surface because the level set method enables the surface to change its topology free according to the irregular arrangement of particles. Moving particles' data such as positions and velocities given by a gridless particle-based method are effectively used in the level set method executed on a grid space. As a result, a suitable surface is reconstructed so as to follow the moving particles with topological changes. Besides, our method makes isolated splash particles to appropriately contribute to the surface reconstruction. Some experimental results show the useful performance of our method.
著者
西山 慧子 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.106-116, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

遺伝子ネットワークとは,各遺伝子をノードとし,遺伝子間をエッジで接続して構築されるデータである.数千,数万といった大量の遺伝子群で構成される遺伝子ネットワークには,複雑な連結成分を含むことが多く,その解釈や把握が困難な場合も多い.本論文では,遺伝子群にクラスタリングとネットワーク化を同時に適用して構築される,階層型ネットワークデータを対象とした可視化手法を提案する.提案手法では,各々の遺伝子は数種類の発現率を持つと仮定し,その発現率の相関性の高さによりクラスタリングを行う.それと同時に提案手法では,発現率の相関性が高い遺伝子間をエッジで連結することにより,ネットワークデータも同時に生成する.提案手法ではこの遺伝子ネットワークデータを,大規模階層型データ可視化手法「平安京ビュー」の拡張手法を用いて可視化する.提案手法を用いることにより,遺伝子学の研究者は,膨大な遺伝子群の中から,特定の遺伝子の相互関係を分析,あるいは興味深い特徴を持つ遺伝子の発見,などが容易になるものと考えられる.なお本論文は遺伝子ネットワークの可視化を試みるものであるが,提案手法における階層型ネットワークデータの可視化手法は,拡大性とランダム性の高い複雑ネットワークと呼ばれるネットワーク全般に適用可能な,応用範囲の広い可視化手法である.
著者
五味 愛 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.117-125, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

筆者らは,実写撮影画像の視線情報を高速検索するシステムVIEWGLEの研究に従事し,その中で大容量画像から類似部分画像の高速抽出アルゴリズムを用いている.本論文では,この類似部分画像抽出アルゴリズムを一般化した手法を提案し,その処理時間や正確さについて考察する.本手法は3ステップから構成される.最初のステップでは大容量画像に対して前処理を施し,その結果を蓄積しておく.続いて入力画像を提示されたときに,2つめのステップとして大雑把な類似度判定を行い,大容量画像中から少数の候補部分画像を抽出する.続いて3つめのステップとして,それら候補部分画像と入力画像の類似度を算出し,応答曲面法を用いて類似度が最大となる最適部分画像を出力する.本手法では,厳密に確実に画像を検索できる保証はない.しかし本論文の実験結果から,本手法が高速に,ある程度の満足のできる類似画像を抽出できることが示されている.
著者
新庄 貞昭 高橋 誠史 木村 秀敬 白井 暁彦 宮田 一乗
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.167-178, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
42

本解説では,グラフィックプロセッサ(GPU)を取り巻く環境やその利用法,開発環境の現状,およびGPUのコンピュータビジョンへの適用事例を紹介し,GPUコンピューティングの可能性を探る.GPUはプログラマブルシェーダの導入後,シェーダのバージョンアップにあわせてスペックの向上が行われてきた.またCPUと比較して制約は多いが,プログラミングを工夫することにより速度向上が可能である.GPUは幅広く利用されているが,特筆すべき適用事例としてコンピュータビジョン,物理シミュレーションがあり,汎用計算においては分散コンピューティングによるナノテクへの応用も報告されている.本解説では,GPUに加えて最近のCPUアーキテクチャの革新であるマルチコアプロセッサCPUについても触れるとともに,最新OSのひとつであるWindows Vistaでのグラフィックユーザインタフェースへの利用にも触れ,今後の応用の可能性を探る.
著者
大山 喜冴 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.126-135, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
25

映画やテレビCMの製作,およびマルチメディア技術において,画像の印象に合った音楽を用いることは非常に重要である.そこで我々は,ユーザが任意の音楽と画像を入力した際に,画像の印象に合わせて音楽を自動アレンジする手法の研究を進めている.本論文ではその初期成果として,画像の色分布および対象物からその印象を推測し,その印象に合ったリズムパターンで音楽を自動アレンジする手法を提案する.本手法では前処理で,ユーザに多数のサンプル色,サンプル画像,画像に写る対象物をキーワードとして提示し,この各々から連想されるリズムパターンを回答させる.この回答結果から各々のリズムパターンに対して,どのような画像から高い連想度を得られるかを推測する算出式を導出する.続いて本処理では,任意の入力画像に対して,各々のリズムパターンの連想度を算出し,最も連想度の高いリズムパターンを用いて自動アレンジした音楽をユーザに提示する.
著者
岩井 大輔 佐藤 宏介
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.65-75, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
16

本論文では,熱情報の入力をVR 空間と物理空間との間を繋ぐチャネルとして利用した画像創作支援システムを提案する.筆者らはこれまで,赤外線カメラから入力されるスクリーン上の温度変化を絵道具の接触判定に利用して描画作業を支援するシステムを構築してきた.本論文では,このシステムを発展させ,赤外線カメラより取得される熱情報を積極的に利用して,心理マッピングモデルに基づいたユーザの持つ熱感覚を利用した画像創作支援を行う.熱印象を介して彩度・色相といった画像パラメータを直観的に操作するThermoRetouch と,熱現象を介して3 次元形状モデルの塑性パラメータを操作し形状を変形させるThermoModeler を提案する.これらのシステムでは,自らの熱感覚が画像に反映されるため,直観的で発想を重視するような画像創作が可能となる.
著者
牧野 貴雄 中口 俊哉 津村 徳道 高瀬 紘一 岡口 紗綾 小島 伸俊 三宅 洋一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.53-64, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
13

本論文では,ビデオチャット等のアプリケーションにおける新たなコミュニケーションツールとして,使用者の感情を誇張して表示する顔色変化シミュレーションシステムの提案を行う.まず2 台のCCD カメラで撮影した動画像から自動的に使用者の顔領域と表情を認識する.認識した表情に合わせて顔の肌色をリアルタイムに変化させて表示することによって,感情を誇張することが可能である.本システムでは肌色変化処理として,独立成分分析に基づく色素成分解析法を用いている.肌の物理特性に基づいた処理であるため,日焼けや紅潮など現実に近い肌色変化が可能である.肌色変化処理においてはGraphics Processing Unit(GPU)を,表情認識においては色情報による高速な追跡・認識手法を用いることで,動画像に対してもリアルタイムに処理を実行することができる.結果画像に対する評価実験を行い,本システムが単純な画素値変化と比較して感情強調に有効であることが確かめられた.
著者
佐藤 陽悦 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.92-94, 2006-12-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
4

近年, 3次元計測技術の向上により, デジタルアーカイブなどのコンテンツ作りのために, レンジセンサと呼ばれる主にレーザスキャン型の奥行き (デプス) 計測装置を活用した3次元形状モデル (3Dモデル) の獲得技術に関する研究が多数報告されてきている. 一方, CGの製作過程において, 建造物などは, 一般にモデラなどによりプリミティブ等で構築していくことが多い. その際, レンジセンサ計測データなどを元にCGモデルを構築することが有効である. その場合現状のCGコンテンツの制作では, クリエータが形状モデラを利用し, インタラクティブにモデリングを行うことが多い. 本論文では, このような実際的な形状モデリングを支援する技術として, 点群データへのプリミティブ当てはめツールの開発を目的として, 計測データのユーザによる指定領域に適合するプリミティブの最適なパラメタを求めるためのGA (遺伝的アルゴリズム) を用いた手法について基礎的な検討を行った.
著者
川野邊 誠 亀田 昌志
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.95-105, 2006-12-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
11

音楽 (音) と色の関係は, 芸術, 科学の分野で古くから広く研究されてきている. 従来研究のほとんどは, 音楽の個々の構成要素のパラメータと色の関係を求めている. そこでは, 各構成要素から受ける印象には着目しているが, 音楽から受ける印象を深く考慮していないことが多い. さらに, 1楽曲に対して1色を関係付けていることがほとんどである. しかしながら, 楽曲にはその途中で曲調が変化するものが多い. そのため, 従来研究の成果から音楽と色を関係付けると, 感覚的に一致しないことが多かった.音楽の印象は楽曲の進行に伴い変化するものであり, 楽曲に合わせた色との対応を取る際, 楽曲の印象とその変化を考慮する必要があると考える. 本論文では, 楽曲から受ける印象の時系列変化に対応するために, 曲調変化を感知する箇所で楽曲を区切って印象評価を行い, その結果と先行研究で構築した「楽曲と配色間の共通印象を介したメディア変換モデル」を使用し, 感覚的一致度の高い楽曲と配色の組み合わせを実現する.本手法に基づいて, 各々の区間楽曲に対する一番強い印象のみを用いて配色との関係を求めた場合, 組み合わされた区間楽曲と配色の感覚的一致度は全体平均で約58%となった. そこで, 区間楽曲に対する全ての印象を用いて, 区間楽曲に適切な印象を総合的に判断可能なアルゴリズムを提案する. 本アルゴリズムに基づき区間楽曲と配色を組み合わせた結果, 一番強い印象のみを用いる方法と比較して, 約24%の感覚的一致度の向上があることが明らかとなった.
著者
岩瀬 亮 鈴木 茂樹 中 貴俊 山田 雅之 遠藤 守 宮崎 慎也
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.37-43, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
13

知恵の輪を解く際の難易度は,輪を外す手順の組み合わせの複雑さや,輪が移動可能な経路全体の構造の複雑さが主に関連していると考えられる.本論文ではこれら複雑さを表す量を仮定し,知恵の輪の難易度との関連性を明らかにすることにより,知恵の輪の難易度を定量的に評価する方法を提案する.これを実現するためには,知恵の輪の解を計算機処理により求めるためのアルゴリズムや,探索空間の構造化を実装する必要がある.本研究ではまず,実在する知恵の輪を対象としてこれを実現した.次に,シミュレーションで得られた諸量と実際に人が感じる難易度との関連性を被験者実験を通じて評価し,それらの諸量の知恵の輪の難易度としての妥当性を検証した.
著者
矢原 弘樹 高橋 瑛逸 福井 幸男 西原 清一 持丸 正明 河内 まき子
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.44-52, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
20

近年,3次元計測技術の発展に伴って,3次元身体モデルを利用した身体に適合する製品設計が注目されてきている.しかし,3次元スキャナ等で計測された身体の表面形状データは座標系が定められていない.そこで,従来は座標系を定めるために必要な身体の部位に,3次元スキャナで計測可能なマーカーを専門家があらかじめ貼る事で解決していた.しかし,マーカーを貼ることは手間や顧客への心理的負担がかかるという問題があった.本稿では,足部モデルの座標系を定義するのに必要な身体の部位MT(脛側中足点)とMF(腓側中足点)の位置を,すでにそれらの位置が定められているサンプルモデルセットをあらかじめ用意しておき,それらの統計的な情報を基にマーカーの位置情報無しの表面形状データのみの足部モデルのマーカーの位置を推定することで,座標系を設定する手法を提案する.そして,FFD法を用いた身体モデル生成法を用いることで,推定されたMT,MFの位置推定の精度向上を試みる.
著者
ゾリーグ グンジェー 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.21-36, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

In this paper we present our solution for shadow generation, visibility sorting and GPU based shading of translucent point data for point based rendering. Our Translucent Shadow Mapping Algorithm uses a spherical coordinate system and solves the distancebased sorting, transparency calculation, shadow mapping, omni-directional mapping and light intensity attenuation problems in one step. We also propose a novel algorithm for visibility sorting of unstructured point data using the Hierarchical Bucket Sorting approach. This algorithm uses less memory and produces precise back-to-front ordered slices compared to previous methods. Finally, the shading calculations are performed in the GPU, using the rendering-oriented attributes of the point splats. Furthermore, we demonstrate the efficiency and flexibility of our novel approach of point splatting by showing several rendering results for visualizing mixed 3D data sets.
著者
鈴木 亮 天野 敏之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-20, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10

現代の美術品の位置付けでは美観回復のための不可逆的な修復が許されないことが多い.本研究では,この問題に拡張現実感技術を応用して実世界での美術品の仮想復元を行う手法を提案する.提案手法では,あらかじめ計測した劣化のない状態のテクスチャ画像から修復のための補正画像を生成する.美観回復を行う方法として,マーカトラッキングにより稀覯資料の位置検出を行い,その後液晶プロジェクタで補正画像を投影する.また,稀覯資料の姿勢を検出し,phong のモデルに基づいて光沢復元を行う.サンプル画像による退色復元と光沢復元の実験結果より,補正画像を投影することにより現実世界での仮想的な退色復元と光沢復元が実現できることを確認した.