著者
太田 俊作 岡本 正夫
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.38-50, 1983-01-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
71
被引用文献数
7 7

Many useful acylation reactions including carbonylation have been improved in yield, reaction condition and manipulation by using 1-acylimidazole. In this review important synthetic applications of 1-acylimidazole after Staab's review in 1962 are described.
著者
磯部 稔
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.51-61, 1983-01-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
25
被引用文献数
2 5

A general synthetic strategy to ansa-macrocyclic lactam, maytansinoid, is described via a common intermediate for maytansine, maytansinol, maysine and N-methylmaysenine. The key reactions are focused on the successful stereochemical control by diastereoselective asymmetric induction involving heteroconjugate addition, epoxidation, aldol reaction etc. The principle was mainly based on chelational and conformational control in acyclic system, and all of the seven asymmetric centers of maytansinol has been introduced before closing 19-membered lactam ring.
著者
峯 昇平
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

PET(ポリエチレンテレフタレート)を主とするプラスチック廃棄物は、重大な環境問題である。近年、PETを原料にまで分解できる酵素「PETase(ペターゼ)」が発見され、資源リサイクル実現可能な酵素として注目されている。PETを効率的に酵素分解するには、PETが酵素に分解されやすい形状に変化する65℃以上で反応を行う必要がある。しかしながら、PETaseは熱に弱く、35℃以上になると活性を失う。そこで、本研究では、65℃以上で高活性を有する耐熱性PETaseを作製することを目的とする。
著者
吉田 安規良 吉田 はるか 馬場 壮太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.585-588, 2021

<p>生徒の科学的思考力等を育成し,それを測る問題を作成し,適切に評価できる理科教員を育成するため,中学校・高等学校の理科教員免許取得希望学生を対象として,「思考・判断・表現」の評価を目的とした火成岩の同定を問うペーパーテストの出題内容をどのように捉えているのかを調べた.出題内容に違和感を感じた学生もいたが,ほぼ全員が出題者の想定通りに「正答」した.27人中15人が岩石の判断理由を答えさせた点を,11人が火成岩に関するいくつかの知識を組み合わせて解答させた点を肯定的に評価していた.全体的な色の特徴から岩石を特定することの困難さを7人が,採点基準の曖昧さや採点の難しさを6人が,出題構成と配点に関する問題を4人が指摘していた.学習内容に関する専門性を高めるとともに,ある種の受験技術で容易に解答可能な問題を科学的な思考力等を問う問題として出題すべきでないことを学生が学ぶ必要性をこの結果は示している.</p>
著者
宮国 泰史 福本 晃造 杉尾 幸司 古川 雅英
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.505-506, 2021

<p>沖縄県内の5つの中学校と科学教育プログラムに参加した中学1年生に対して、理数・科学に対する情意面の考えや意識を尋ねる質問紙調査を実施した。男女の意識差については学校・組織間で明確な差がみられ、「科学の楽しさ」、「広範な科学的トピックへの興味関心」、「科学に関連する活動」などの項目で、学校・組織間の違いが見られた。また、男女の意識差の小さい学校・組織ほど、進学や就職「以外」の場面においても、理数への好的な感覚を持っており、男女ともに将来、理数に関する職業に就きたいと考える傾向があった。</p>
著者
白石 涼 佐藤 圭祐 千知岩 伸匡 吉田 貞夫 尾川 貴洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.572-578, 2021

<p>【目的】大腿骨近位部骨折患者を対象に,腹部Computed Tomography(CT)の大腰筋面積で推定した骨格筋量と機能的予後の関連を調査した。【方法】回復期病棟に入院した113 名を骨格筋量減少群と対照群に分け,患者背景,機能的予後を比較した。Functional Independence Measure(以下,FIM)利得を目的変数とした重回帰分析を行い,骨格筋量との関連性を検討した。【結果】平均年齢は83.5 ± 8.3 歳,男性35 名,女性78 名であった。骨格筋量減少群は56 名だった。骨格筋量減少群は対照群に比べ,高齢で,痩せており,入院時認知FIM,退院時FIM 合計,FIM 利得が有意に低かった。多変量解析で,骨格筋量減少とFIM 利得に有意な関連を認めた。【結論】大腿骨近位部骨折患者における大腰筋面積で推定した骨格筋量減少は,機能的予後不良と関連することが示唆された。</p>
著者
神谷 大介 赤松 良久 赤星 拓哉 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.143-149, 2021
被引用文献数
1

<p> 豪雨災害時に避難行動を起こす一つの重要な情報に避難勧告等の避難情報がある.また,近年の災害では高齢者等の要配慮者が利用する施設の被災が報告されており,この対応が喫緊の課題である.要配慮者利用施設においては,福祉避難所等の他の施設への避難もしくは垂直避難を行う必要がある場合も存在する.本稿ではコロナ禍において発生した令和2年7月豪雨を対象に,防災気象情報と避難情報の関連を整理し,要配慮者利用施設における避難の実態を調査した.この結果,避難準備・高齢者等避難開始情報はあまり発表されていないこと,河川水位を避難の判断基準としていた要配慮者利用施設では避難の判断に苦慮していたこと,避難には自治会や自治体との話し合いが重要であること等が明らかになった.</p>
著者
金城 衣良 脇田 夏鈴 植田 真一郎 松下(武藤) 明子
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-P-V-1, 2021

<p>【目的】現在世界中で感染拡大しているCOVID-19は呼吸器症状のみならず、血栓症を合併し臓器障害を引き起こす.血栓の形成には様々な要因が存在するが、COVID-19での血栓の原因の一つに、活性化した白血球が細胞外に自身のDNAを放出する細胞外トラップ生成がある.我々は過剰な細胞外トラップ生成の抑制が、血栓による臓器不全を防止できると考え、白血球活性化を抑制するコルヒチンの白血球細胞外トラップ生成に対する効果を検討した.</p><p>【方法】単球系細胞株THP-1をホルボールエステルによりマクロファージ様細胞(Diff.THP-1)に、またはリンパ球様細胞株HL-60をDMSOで好中球様細胞(Diff.HL-60)に分化させたものを使用した.刺激としてTLR9リガンド作用を有するウイルス由来DNAモチーフ、LPSまたはTNFαを用い、刺激4時間での核酸染色試薬Sytox Greenの蛍光により細胞外トラップ生成を、刺激1時間でのwestern blottingによりNFκB p65リン酸化とIκB-α発現をみることで細胞内炎症シグナルを、コルヒチン前処置(1x10<sup>-8</sup>M, 1x10<sup>-6</sup>M)の有無で評価した.</p><p>【結果】Diff.THP-1においてコルヒチン1x10<sup>-8</sup>M前処置はTLR9リガンド、TNFa刺激による細胞外トラップ生成を抑制する傾向がみられ、TLR9リガンド、LPS刺激による炎症シグナル亢進を抑制した.Diff.HL-60においてTLR9リガンド刺激で同様の結果だった.また、コルヒチン1x10<sup>-6</sup>M前処置にはこれらの抑制効果がなかった.</p><p>【結論】コルヒチンは適切な濃度でNFκB経路活性化および細胞外トラップ生成を抑制する.これはCOVID-19の血栓形成による重症化予防にコルヒチンが有効であることを示唆する.</p>
著者
脇田 夏鈴 金城 衣良 植田 真一郎 松下(武藤) 明子
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-P-V-5, 2021

<p>【目的】COVID-19が世界的規模で蔓延している現在、その治療薬や重症化予防法の開発は喫緊の課題である.コロナウイルスを含む病原体の多くはエンドサイトーシス(Edcs)で細胞内に侵入し、感染・増殖する.ヒトコロナウイルスはカベオラEdcsで取り込まれることが報告されているが、COVID-19原因ウイルスSARS-CoV-2に関しての知見は少ない.我々はSARS-CoV-2の細胞内侵入経路と、それに対する微小管阻害薬コルヒチン(Col)の効果について細胞を用い検討したので報告する.</p><p>【方法】ヒト単球系細胞株THP-1をマクロファージ様細胞に分化したものをガラス上に播種し、Col (1x10<sup>-8</sup>M, 1x10<sup>-6</sup>M)または溶媒を一晩処置し、カベオラEdcsを生じるコレラトキシンb (CTb)、またはリコンビナントSARS-CoV-2スパイクエンベロープ(Cv2SE)を1時間暴露後固定し、caveolin-1(cav1)またはゴルジ体マーカー(GM130 or Golgin97)と免疫染色し共焦点顕微鏡にて観察した.</p><p>【結果】[CTb 暴露] 溶媒処置では細胞内でcav1および ゴルジと共局在していたことからカベオラEncsを確認した.Col 1x10<sup>-8</sup>M処置は細胞膜上cav1発現部位にCTbは共局在しゴルジとは重ならずEdcs減少を認めた.Col 1x10<sup>-6</sup>M処置もCTbは主に細胞膜上に分布しcav1と共局在したが、ゴルジの細胞内局在が細胞内全体に分散し劇的に変化しており、高濃度Col処置では様々な細胞内シグナル経路の崩壊が起きていることが示唆された.[Cv2SE 暴露] 溶媒処置でゴルジと共局在を認めEdcsを確認した.Col1x10<sup>-8</sup>M処置は共局在が減少しておりEdcsが抑制されていた.ただしcav1とは局在せず、カベオラ以外でのEdcsが示唆された.</p><p>【結論】 SARS-CoV-2は非カベオラ経由Edcsで細胞内に侵入し、臨床用量ColのEdcs減少作用はCOVID-19感染抑制を期待できる.</p>
著者
植田 真一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.2-SPS-3, 2021

<p>非拠点の大学病院では臨床試験に関わる人材の不足、しばしば属人的になる体制、医師、医療従事者の研究可能な時間の不足、研究費とシーズの不足、大学病院全体の疲弊など多くの問題が存在する。このような状況では決現在の臨床中核病院の要件を目指すよりも数は少なくともそれぞれの強みを生かして、質の高い臨床研究をアウトプットすることと、臨床試験を実施できる人材を養成する必要がある。シーズからの医師主導治験実施は現在の臨床研究中核病院の支援が必要であるが、診療科で重要と考える疾患の臨床試験の疫学的研究基盤としてレジストリの構築やコホート研究はデータベース解析では得られない情報が収集され、将来臨床試験で解決すべきQuestionが明らかになる。試験開始後の症例集積にも有利である。しかし実際これらを解析し、解釈すること、そこから臨床試験を組み立て、実施するには相応のトレーニングが必要であり、人材育成プログラムをOJTまたは大学院で実装する必要がある。またこのような形で行われるのはどちらかといえば開発型の研究よりも特定臨床研究としてのpragmatic trialであり、これの実施に関するノウハウを集積することは非拠点のミッションとも言える。本シンポジウムでは琉球大学病院、大学院医学研究科の取り組みを紹介する。</p>
著者
池原 由美
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.2-S20-3, 2021

<p>多くの研究者から「どんどん規制が複雑になって研究がやりにくくなっている」との声を耳にする。国内の臨床研究に関する規制は、臨床研究全体を対象としたものからは始まっておらず、遺伝子組み換え技術等新たな技術がもたらす生命倫理・安全性等の問題に対応するために整備された1994年の遺伝子治療臨床研究に関する指針に始まる。疫学研究に関する倫理指針が制定されたのはそれから9年後の2002年、臨床研究に関する倫理指針が制定されたのは10年後の2003年であった。臨床研究全体を包括する規制の制定が後になったのは、憲法23条が保証する学問の自由によるところが大きく、学問の自由を確保されている研究者は、一方で専門職としての自主規制・行動規範の遵守が求められる。米国の研究公正局は、研究公正をResearch integrity may be defined as active adherence to the ethical principles and professional standards essential for the responsible practice of research.と定義している。日本は前述のように、新たな技術から生命倫理・安全性等の問題に対応するために規制が始まったことから、臨床研究の規制においては倫理の問題であるという研究者の認識が強いのではないだろうか。研究公正は、倫理教育や研究不正の防止教育だけでは十分ではないと考える。なぜなら研究不正と研究過失(honest error)は異なるが、現象としては同一の場合があり、これらの判別は故意によるものか、悪意のない誤りなのかに基づく。しかし、多くの場合にはその判別は困難である。現象が同じである以上、研究不正を重視した狭義の研究公正のみならず、研究成果の信頼性を損なう行為をいかに排除した試験を実施するか、広義の研究公正教育が重要となのではないだろうか。実際のモニタリングや監査の現場で確認されたエラーから、研究公正の現状を共有したい。</p>
著者
東恩納 美樹
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.2-S20-4, 2021

<p>看護研究は、大学等の研究機関に所属する研究者だけではなく、臨床看護師によっても活発に行われている。看護師の教育背景は、専門学校卒または大学卒がほとんどで、修士・博士課程修了者は少数である。このように多様な教育的背景を持つ看護師の公正な研究活動を支援するため、看護の職能団体である日本看護協会は「看護研究における倫理指針」(2004年)を策定し、一般社団法人日本看護系学会協議会は、「論文投稿ハンドブック」(2021年3月)を作成するなどしている。</p><p>本シンポジウムでは、第52回(2021年度)日本看護学会学術集会にて発表した看護研究論文上の研究公正に関する記載の分析結果(演題名:看護師が主導する研究における研究公正の現状)および一般社団法人日本看護系学会協議会が公表している「学会誌編集における倫理上の課題に関するアンケート報告書」(2021年5月31日)等を基に、看護師の研究公正に関する意識について考察し、看護師を対象とする効果的な研究公正の学習方法について検討する。</p>
著者
植田 真一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.2-S23-4, 2021

<p>臨床試験の目的は診療を良い方向に変えることであり、それは開発型の臨床試験においても同様である。診療は常に疑問に溢れており臨床試験でしか解決しない問題も多い。しかし特に臨床研究法以降臨床的な問題を解決しようとする現実的な医師主導臨床研究(pragmatic trial)は活発に行われているとは言い難く新薬の開発の影で多くの問題は積み残しの状態であると言える。近年はむしろデータベース解析などを用いて臨床試験を避けて因果関係を推定しようとする研究も多いが、例えば診療におけるある介入の有効性は観察研究ではなかなか評価は難しいし、ましてやヒストリカルコントロールでは比較そのものがfairで無くなる。しかしpragmatic trialには症例集積など多くの乗り越えならなければならないハードルがあり、訳のわからない複合エンドポイントで実施に漕ぎ着けたとしても疑問への答えになってなければ意味がない。そこで本講演では研究計画、研究実施体制から品質管理まで薬剤開発型の研究のコピーではなくあくまでpragmatic trialとしての理想的なデザインや実施体制の構築、患者レジストリを基盤とした試験計画(RCT on Registry)、ゲノム情報などを利用したより有効性が推定される患者(サブグループ)での試験の提案、英国などでおこなわているより患者の負担を減らすRemote Decentralised Clinical Trialについて議論したい。</p>
著者
植田 真一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-S11-2, 2021

<p>重要なClinical Questionを解決し診療を適切な方向へ変えていくことには臨床試験による評価が必須であるが、このような「Practiceを変える」臨床試験をconductできる人材は限られている。臨床研究全体で見ればデータベース解析や疫学研究などを学ぶSchool of Public Healthなどの大学院、或いは統計家を育成するコースは増えているものの、Clinical Trialist育成を主眼に置くカリキュラムはほぼない。これまで日本臨床薬理学会では臨床試験実施推進のためCRC認定事業や臨床薬理専門医、、臨床薬理専門薬剤師の認定を行ってきたが、さらにアカデミアで医師主導治験、先進医療Bを含む特定臨床研究をPIとして実施できるClinical Trialistおよび計画段階から支援できる臨床研究専門職の育成を学会のミッションとして開始する。 本学会ならではの研究計画作成に必要な臨床薬理学、および臨床疫学、規制、研究倫理についての高度な教育プログラムの作成と個々の育成対象者に合わせた提供、会員、育成対象者の研究施設における研究計画作成からプロジェクトマネジメントに至るまでのOJTへの参画を軸とし、臨床研究についてのカリキュラムを有する大学院や他の学会とも必要に応じて連携する予定である。</p>
著者
田中 さき Tung―Yuan Ho 長尾 誠也 松中 哲也 Rodrigo Mundo 井上 睦夫 谷内 由貴子 黒田 寛 熊本 雄一郎 滝川 哲太郎 守田 晶哉
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>化石燃料やバイオマスの不完全燃焼、および原油を起源とする多環芳香族炭化水素類(PAHs)は、発癌性や変異原性をもつ有害有機物である。東アジア縁辺海と周辺海域において、PAHsの動態や生態リスクに関する研究が必要とされている。本研究は日本近海を中心とした北太平洋における広域的なPAHs水平分布を明らかにすると共に2017年以降のPAHs経年変動を解析した。各緯度帯における平均Σ14PAHs(粒子態+溶存態)は、基本的に中緯度域で高く、高緯度域で低くなる傾向を示した。沿岸海域では燃焼起源PAHsの寄与が高かったのに対し、外洋海域では原油起源PAHsの寄与が高かった。一方、2020年における日本海のΣ14PAHsは、2019年と比べ有意に低下した。塩分や海水シミュレーションの結果を基にすると、2020年における日本海のPAHs濃度減少は、黒潮系海水のPAHs濃度低下と、PAHs濃度の高い浅層海水の寄与の低下によって引き起こされた可能性が示唆された。</p>
著者
植村 立 三嶋 悟 中村 光樹 浅海 竜司 加藤 大和 狩野 彰宏 Jin―Ping Chen Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東アジア地域においては、最終退氷期の温暖化の開始タイミング及び気温変動の大きさについて統一的な見解は得られていない。石筍は正確な年代測定ができる点で重要な陸域の古気候アーカイブである。一方で、石筍の炭酸カルシムの酸素同位体比は、滴下水と温度の2つの要因に影響されるために定量的な解釈が困難である。本研究では、東アジア地域の最終退氷期における温暖化のタイミングと気候変動を定量的に復元するため、南大東島で採取された石筍の流体包有物の水の酸素・水素同位体比分析を行った。また、独立した手法により気温復元の妥当性を検証するため、炭酸カルシウムの二重置換同位体比を用いたClumped isotope の分析を行った。本発表では、Heinrich stadial 1 (H1)からBølling-Allerød(BA)期への温度変化とタイミングについて議論する。</p>
著者
相澤 正隆 安井 光大
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東北日本弧では,日本海の拡大期にあたる中期中新世頃に,火山フロントが現在よりも約20 km海溝側へ移動した。青森県の下北半島東部に分布する中部中新統の泊層火山岩は,当時の火山フロントを構成する火山岩層である。リフティングの進行に伴い,全岩化学組成は肥沃的な沈み込み帯火山岩の特徴を示す。一方,下北半島西部の第四紀火山フロント周辺に分布する約20 Ma以降の火山岩は,苦鉄質から中間質岩は泊層火山岩に比べて枯渇的な同位体組成を示し,珪長質岩は下部地殻組成(一の目潟)の組成と類似する。西部地域では,少なくとも20 Ma以降,同位体組成の顕著な時間変化はみられない。また,東部の泊層火山岩は,一部で下部地殻の影響をより強く受けていることが示唆される。※本研究は,2020年度下北ジオパーク研究補助金の交付を受けた。</p>