著者
大草 優子
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.508-514, 2005

古紙配合率の増加, 用水原単位の低下により, 水質が低下し, 内添薬品の定着, 歩留も悪化している。この対策として, 内添薬品の1つであるサイズ剤 (ロジンエマルションサイズ剤) の定着促進に着目し, ポリマーによるサイズ剤の定着とサイズ発現性について調べた。その結果, ポリマーの物性によって, 定着効果やサイズ発現効果が異なることが明らかとなった。これらの知見を基に, サイズ定着剤「フィクサージュR100」を開発し, 実機で適用した結果, サイズ剤の低減や, 抄紙用具の汚れが軽減できることが実証された。
著者
髙橋 稔 武藤 崇
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.3, pp.40-47, 2005-03-10

lronic Process Theoryは,思考を意図的に統制しようとするとむしろ逆の効果をもたらされるという現象を説明している。睡眠障者や不眠についてもこの現象が注目され,入眠時の思考統制について検討されはじめた。本研究では,入眠時に浮かぶ思考に対してどのような対処を行っているか調べるために, Harvey (2001)のTCQ-Iにより調査を行った。対象は大学生157名とした。因子分析の結果,思考妨害,思考の再評価,否定的な自己焦点化の3因子が関与していることが明らかになった。さらに,各因子で因子得点を基準に低得点群と高得点群を抽出し,睡眠の諸様相の違いについて検討した。否定的な自己焦点化では,高得点群は低得点群と比較して睡眠の質が低いこと,思考妨害,思考の再評価については,睡眠の質や睡眠リズムに関係がないことが示された。これらの結果から,臨床への応用可能性と今後の課題について討論した。
著者
堀部 要子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.206-223, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
30

小学校全体で通常の学級に在籍する全児童にスクリーニングテストを行い,その上で学習面の困難さを示す児童を毎週1回15分間教室から取り出し,国語・算数に関する基礎的な内容の学習支援を実施した。その結果,国語の単語聴写課題とカタカナ聴写課題に有意な正の変容が認められるとともに,学習支援を行った取り出し群において有意な得点の上昇が認められ,指導の効果が示された。事後アンケートの記述からは,教師と対象児が学習支援を肯定的に捉えていることと,取り出しに際して本人と周囲の児童への配慮が必要であることが確認できた。また学習支援の実施に伴う校内支援システムについて検討した結果,システム構築過程と運用過程での役割分担,取り出しを行う時に必要な配慮,コーディネーター会議の有用性,校長およびミドルリーダーの関与の在り方が示された。最終的にスクールワイドの学習支援を実施するための校内支援システムの要件を8点に整理した。
著者
嶺井 聡 貝沼 茂三郎 坂元 秀行 玉城 直 友利 寛文 梁 哲成 仲原 靖夫 古庄 憲浩
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.141-145, 2019

<p>苓桂朮甘湯は茯苓,桂皮,朮,甘草の4つの生薬から構成され,陽証で気逆と水毒を伴う病態で,起立性調節障害などの自律神経の機能調節障害,特に副交感神経優位から交感神経優位な状態への調節が上手くいかない場合などに用いられる。今回,自律神経の調節障害と考えられた3症例に対し,苓桂朮甘湯が有効であったので報告する。 症例1は運動後や仕事終了前後に出現する頭痛,症例2は夕方から出現するふらつきや冷汗,症例3は仕事終了後や休日に出現する頭痛が主訴であったが,いずれの症例も交感神経優位の状態が長く続いた後に,副交感神経優位な状態に自律神経の調節障害が原因と考えられた。また3症例いずれも陰証や水毒を示唆する所見に乏しく,今回の検討から水毒の所見がなくても,陽証で気逆の所見に加え,交感神経優位から副交感神経優位な状態に自律神経の調節障害に苓桂朮甘湯が有効である可能性が考えられた。</p>

1 0 0 0 OA 年録

出版者
巻号頁・発行日
vol.[33],
著者
大橋 朋史 富丸 慶人 丸橋 繁 友國 晃 浅岡 忠史 和田 浩志 江口 英利 土岐 祐一郎 森 正樹 永野 浩昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.185-191, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
12

症例は44歳の女性で,24歳時にBudd-Chiari症候群と診断され,経過観察されていた.34歳時に肝硬変の進行のため,脳死肝移植登録(医学的緊急度:3点)を行った.その後,11年の移植待機後,44歳時に肝機能悪化に伴い医学的緊急度を3点から6点にランクアップし再登録した.その約1か月後に脳死ドナーが発生し,脳死肝移植術を施行しえた.手術から1年経過した現在,肝機能を含め全身状態良好で,外来経過観察中である.本症例では脳死肝移植を施行することが可能であったものの,欧米と比較して移植待機期間は極めて長いものであった.この長期待機期間は本邦における脳死ドナー不足によるものであり,脳死移植医療における現在の深刻な問題であると考えられた.
著者
梶谷 卓也 平野 佳代子 澤木 弘之 浜田 誠一郎 平 雅成 永吉 顕 ?梨 晃 萩原 秀彦(MD)
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.141, 2011

【目的】<BR> サッカーは,キック動作を多用する下肢を中心とした動きの連続で,下肢外傷の発生頻度は高い.特に,股関節周囲の慢性的な疼痛を訴える選手が多く,その治療と予防には力が注がれている.競技特性として,ポジション別に身体操作に特徴があり,特にサイドプレーヤーでは,左右の下肢へ加わるストレスに違いがある.支持脚と蹴り脚について,大腿四頭筋の筋力や重心動揺など多くの研究がなされているが,両者の差は明らかにされていない.また,股関節機能に対する研究や,ポジション別に左右差を検討した報告は少なく,検討の余地がある.<BR> 本研究では,ポジション別の特性が股関節の機能に与える影響に着目し,利き脚と非利き脚における筋力及び可動域(以下ROM)について検討し,若干の知見が得られたので報告する.<BR>【対象】<BR> 本研究の趣旨を理解し同意を得た,下肢に既往のない高校サッカー選手20名(年齢17.2±0.7歳,身長170.9±6.3cm,体重62.5±6.4kg)とし,各ポジションの競技歴が3年以上の者を選定した.内訳は,センタープレーヤー10名(以下CP群),サイドプレーヤー10名(以下SP群)とした.尚,利き脚はキック動作を多用する側とし,SP群では,全員が利き脚と同側のポジションであった.<BR>【方法】<BR> 股関節外転・内転・外旋・内旋のROMと筋力を,下記の方法で測定した.A)ROM:日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会に準じ,角度計を用いて計測した.B)筋力:徒手筋力計(μTasF-1)を用いて各2回測定し,平均値を求めて体重比を算出した.統計学的処理は,CP群とSP群で各項目の利き脚と非利き脚における差について,対応のないt検定を用い比較検討した(P<0.05).<BR>【結果】<BR> CP群は,全ての項目で有意差は認められなかった.SP群は,筋力で内転(利き脚:0.903±0.15Nm/kg,非利き脚:0.739±0.14 Nm/kg),内旋(利き脚:0.736±0.18 Nm/kg,非利き脚:0.591±0.10 Nm/kg)に有意差が認められ,その他の項目では認められなかった.<BR>【考察】<BR> 結果より,CP群では差はなかったが,SP群において股関節内転・内旋筋力で,利き脚が非利き脚より高値を示した.SP群は,同一脚,特に利き脚でのキック動作を多用し,中でもインフロントキックを用いる局面が多い.インフロントキックは,テイクバックから股関節内転・内旋運動によって,インパクト,フォロースルーへ移行することが特徴的であり,結果との関連性が考えられた.従って,サッカー選手ではポジションの特性により,股関節機能に影響を与えることが示唆された.<BR>
著者
浜中 淑彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1220-1231, 1975-11-15

上に訳出したV. v. Weizsäcker(1886-1956)の論文は,1926年彼がはじめてSiegmund Freudを訪ねたWienと,翌1927年2月,既に数年来の知己であった哲学者Max Schelerの招きによりKolnのカント協会で行った講演であり,彼の医学的人間学―その生証人として後に彼はSchelerとFreudをあげた―の出発点となったにとどまらず,今世紀20年代における医学のみならず他の学問の領域における新しい入間学誕生の一標石ともなった記念碑的著作であるが,V. v. Weizsäckerの医学的人間学とその周辺については,最近既にかなり詳しく述べる機会(浜中,1972)があったので,ここでは繰り返しを避け,人間学および医学的人間学の歴史的背景について―今世紀の医学的人間学には,後述するごとく19世紀初頭のそれの復興とみなし得る一面もある―若干の補説を試みたい。 人間学はAnthropologie(独)の訳語である。この西欧語(ラテン語ではanthropologia,英語ではanthropology,仏語ではanthropologie―以下A.,医学的人間学はm. A. と略す)は,ανθρωποδ(人間)とλογοδ(言葉,論述,学)なるギリシャ語より16世紀につくられた合成語であるが,明治初年わが国に西洋科学が紹介されて以来,人身学・人学・人道・人性学(西周,昭和6年まで),人類学(井上哲次郎,同14年),人間学(大月隆?,同30年前後)など様々な訳語が当てられてきたことからもうかがわれるとおり,―今日でこそわれわれが人間学と人類学のもとに理解する2つの主たる意味を付与されるに至ったとはいえ―歴史的に,また各国の精神史的伝統の相違に応じて,様々に異なる意味で用いられてきた。
著者
正司 哲朗 エンフトル A. イシツェレン L.
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 = Memoirs of Nara University (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.47, pp.147-158, 2019-02

本稿では、モンゴル国ドルノド県ツァガーンオボー郡に位置する契丹(遼)時代に築かれた土城バルスホト1に隣接する仏塔の調査成果について述べる。2014年の仏塔調査においては、デジタル化および建築部材の年代測定を行った結果、一部の建築部材が16世紀から17世紀前半であることが判明した。このことから、この仏塔は、契丹(遼)時代に建立され、修築されている可能性を示したが、2014年から2016年にかけて大規模な修築が行なわれた。2018年の調査においては、ドローンと画像計測を用いて、バルスホト1および修築された仏塔をデジタル化した。さらに、この仏塔が、どの程度修築されているかを調べるために、2014年と2018年にデジタル化した仏塔をもとに、修築前後の構造を比較した。最後に修築に関する問題について考察した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.14, no.8, pp.82-86, 2005-09

「ポテトチップス」「えびせん」「じゃがりこ」などで知られるスナック菓子大手のカルビー(東京・北)は、2003年度からバランス・スコアカード(BSC)を全社導入した。 BSC導入直前の2002年度は減収減益。売上高は前年比6.4%ダウンの931億円、経常利益は同64%ダウンの6億円と業績が低迷していた。
著者
和田 悟朗 伊藤 千賀子
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1694-1699, 1957

非電解質の水溶液に対する電解質の塩析作用をあらわす式としてさきに本文(1)式をみちびいたが,本報ではこの式の低用例として16種類の1-1型電解質水溶液へのジエチルエーテルの溶解度の測定値と計算置との比較を行った。電解質の塩析作用の大きさの順は本文(4)の順となる。またMillerの求めた電解質の水和数hおよびイオン接近距離αの値を用い,パラメーターΔS1を適当にえらんで計算した溶解度は電解質のmolality m=0.1~1.0の範囲内では0.1の誤差範囲内で実測値とよく一致するが,電解質の高濃度で乃をそのまま用いると,溶媒の全本秀子がすべてイオン水和水になるという矛盾を生じ,(1)式は物理的意義を失い,計算値は負の浩解度を示すだけでなく,イオン水和層内における局部溶解度S1も負となる。Si=Oとなるようなイオン水和数hoを定義してみると,種々のイオンのhoはアルカリ金属イオン,ハロゲンイオンに関して規則性を示し,前者ではイオン水和エネルギーの小さいほど,後者ではイオン水和エネルギーの大きいほど大きい値を有し,電解質の塩析作用の程度を予想することができる。
著者
小林 淳希 宮下 洋平 大洞 裕貴 織田 さやか 田中 邦明 松野 孝平 山口 篤 今井 一郎
出版者
Faculty of Fisheries Sciences, Hokkaido University
雑誌
Memoirs of the Faculty of Fisheries Sciences, Hokkaido University (ISSN:24353361)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.33-67, 2021-12

Onuma and Konuma are belonging to the Onuma Quasi-National Park and are located in southern Hokkaido. The fisheries and tourism are important industries in this lake area. Eutrophication has progressed in these lakes since the 1980s, and nuisance blooms of cyanobacteria have occurred every summer to autumn. The outbreaks of cyanobacterial blooms substantially destroy the ecosystem due to the production of cyanobacterial toxins, and effective countermeasures are urgently needed. However, in the lakes of Oshima Onuma, there is a paucity of knowledge about the appearance trends of phytoplankton including cyanobacteria. Therefore, seasonal monitorings were carried out on the phytoplankton community in the water column and the relatioships were discussed between dynamics of phytoplankton communities and changes in environmental factors in the lakes of Oshima Onuma. The survey was conducted once a month as a rule at Stns. 1-5 (Stn. 1 is the northeastern end of Onuma, only Stn. 5 is in Konuma) and at Stn. OP and Stn. OC along the shore of the Lake Onuma during the period of May-November 2015 and April- October 2016. The parameters of hydraulic environments were measured about water temperature, pH, transparency, dissolved oxygen, nutrient concentrations (NO3-N, NO2-N, NH4-N, PO4-P, SiO2-Si), chlorophyll a concentration, and pheophytin. The chlorophyll a concentration of the surface water showed a single-peak type fluctuation with the maximum value (28.7 μg L-1 at Stn. 2) in August at all stations in 2015. In 2016, the largest single-peak type fluctuation was observed in September- October with the exception of Stn. 3. Concerning the seasonal variation of the phytoplankton species, the proportion of Uroglena volvox (Chrysophyceae) was high at Stn. 5 in May, but the pennate diatoms Fragilaria crotonensis and Asterionella formosa, and the centric diatoms Aulacoseira spp. at other stations other than Stn. 5. As for cyanobacteria in August 2015, Dolichospermum planctonicum, possessing an ability of nitrogen-fixation, dominated (maximum 4.4×104 cells mL-1) at all the stations under the severe nitrogen-deficient conditions (N/P &lt; 16). In the following year 2016, the cell densities of Dolichospermum spp. were low, and Microcystis spp. dominated at all the stations (up to 5.6×104 cells mL-1) with the enough nitrogen conditions. It is hence thought that the N / P ratio determined the dominant species of cyanobacteria in the summer season. In September and thereafter, the number of phytoplankton cells decreased on the whole in both years, and the centric diatoms Aulacoseira spp., Cyclotella spp. and the cryptophyte Cryptmonas spp. tended to increase. Considering the occurrence mechanisms of cyanobacterial blooms based on the fluctuation trends of cyanobacteria in the water columns, it is found that the supply of Microcystis aeruginosa from the lake bottom sediment to the water column (water temperature of 10-15ºC is required) is progressing at all stations in April-June. Since Onuma and Konuma are shallow with an average depth of 4.7 m, wind-inducing resuspension of bottom sediments probably contribute to the supply of cyanobacteria to water columns. In addition, since cyanobacterial cells tend to float and accumulate in surface water, it is needed to take physical factors such as wind and flow into consideration regarding the distribution of the blooms of cyanobacteria.
著者
田中 重男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.38-42, 1967-12-10

三池炭鉱三川鉱では,昭和38年11月9日坑内の炭じん爆発で458名が死亡して,そのうち20名が爆死,438名が一酸化炭素中毒死であった。生存者941名のうち,意識喪失の状態になったものが435名あり,その大部分が一酸化炭素中毒によるものである。それから4年後の昭和42年9月28日には,同じ三川鉱で坑内火災が発生して,一酸化炭素中毒のため7名が死亡して,多くの被災者を出したが,今度は全般に症状が軽く,後遺症を残すものはないという見通しである。 一酸化炭素(CO)ガスは各種燃料の不完全燃焼によって生じ,無色,無臭,無刺激性で,比重は0.967と空気よりわずかに軽い。COガスは各種の工場のみならず,石油やガソリンを使用する暖房器具や自動車のエンジンなど,また都市ガスを使用する家庭内においても発生する。日常使用しているものでは,微量ではあるが煙草の煙のなかにも含まれている。とくに集団的にCO中毒が発生して,社会的に問題をおこしているのは,炭鉱の坑内爆発やトンネル工事中の事故などによるものである。