著者
齋藤 順一
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学人間社会学部紀要 = Jissen Women's University Studies of Humanities and Social Sciences (ISSN:24323543)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.39-47, 2021-03-31

我が国において、うつ病に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy; CBT)は治療の選択肢の一つとして推奨されているが、人的・物理的に高コストであることが問題となり、実施率は低い。この問題を解決するため、コンピュータ・ベースやWeb ベースでの認知行動療法(computerized cognitive behavior therapy; CCBT)が期待されており、近年では、スマートフォンを用いたCCBT が注目されている。しかしながら、CCBT は、利用者のドロップアウトが多いことや、長期的に効果が持続しないことなどが指摘されている。うつ病に対するCCBT を発展させていくためには、うつ病に対するCBT の構成要素(有効成分)を理解することが役立つと考えられる。そこで、本稿では、うつ病に対するCBT の構成要素を検討している研究を紹介し、それらの知見を整理することで、うつ病に対するスマートフォンを用いたCCBT の展望について述べることを目的とした。 CBT の技法に関わる要素では、行動活性化、感動調節スキル(マインドフルネスを含む)が重要な構成要素であることが示された。一方、CBT の技法以外の要素が、重要な構成要素であることが示され、うつ病に対するスマートフォンを用いたCCBT においても、これらの要素を組み入れる必要があることが示唆された。具体的な方法として、チャットボットの利用などが考えられた。最後に、経験豊富なCBT 実践家や研究者が開発に関わることで、エビデンスに基づく包括的なCBT のスマートフォンアプリを開発していくことの必要性が述べられた。
著者
坂田 利家 吉松 博信 桶田 俊光 渡辺 建彦
出版者
大分医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

糖尿病および肥満糖尿病における代謝異常が脳機能にどのように影響するかを神経ヒスタミン系を指標として解析し、以下の結果が判明した。1)糖尿病モデル動物であるSTZ糖尿病ラットおよびZucker obese ratでは神経ヒスタミンが低下していた。2)レプチンは視床下部神経ヒスタミンの代謝回転を増加させた。3)レプチンの摂食抑制作用は神経ヒスタミンの枯渇化によって減弱した。レプチンの摂食抑制作用の約50%は神経ヒスタミンによって調節されていることが判明した。4)レプチン受容体に異常のあるdb/dbマウス、それにob遺伝子異常によりレプチンが欠如しているob/obマウスでは視床下部ヒスタミンおよびtMH含量が低下していた。Zucker obese ratと同様にレプチンによる神経ヒスタミンの賦活化作用が脱落した結果と考えられた。5)食事誘導性ラットでは体重増加が少ない早期から内臓脂肪蓄積が認められ、血漿中性脂肪値が増加していた。血糖値、インスリン値は後期に上昇し、インスリン抵抗性の出現が脂肪代謝異常に遅れて出現することを示唆している。血中レプチンは肥満早期に増加し、肥満発症後期にも増加していた。6)摂食抑制性の神経ペプチドであるCRHはヒスタミン神経系を賦活化した。摂食促進性のNPYは神経ヒスタミンには影響しなかった。インスリン抵抗性発症因子であるTNF-αも神経ヒスタミンには影響しなかった。7)神経ヒスタミンは脳のGLUT1 mRNA発現を促進した。飢餓状態での脳のGLUT1の発現亢進には神経ヒスタミンが関与していた。8)神経ヒスタミンは中枢性にインスリン分泌を制御していた。9)神経ヒスタミンは中枢性に脂肪組織の脂肪代謝を制御する作用を示した。その作用様式は脂肪分解の亢進と脂肪合成系のACS mRNAとGLUT4 mRNAの発現制御によっていた。神経ヒスタミンの脂肪分解作用は脂肪組織に分枝している交感神経活動促進作用によっていた。10)ヒスタミンの基質であるヒスチジンの投与で神経ヒスタミンの代謝回転とHDC活性が亢進した。ヒスチジンの末梢および脳室内投与で摂食抑制が観察された。ヒスチジンの末梢投与で交感神経系を介した脂肪分解反応が促進された。11)遊離脂肪酸のオレイン酸はヒスタミン系を促進することが示唆された。12)神経ヒスタミンは学習機能に促進的に作用した。糖尿病状態でのヒスタミン機能低下が学習機能低下につながる可能性が示された。以上、糖尿病でみられる脳機能異常の可能性について神経ヒスタミンを指標に解析し、神経ヒスタミンの動態には血糖値、インスリン値だけでなく、レプチンやアミノ酸、脂肪酸など種々の代謝成分が関与していることが判明した。またそれらの情報を受けたヒスタミン神経系は食行動を調節するだけでなく、脳内の糖代謝や自律神経系を介する末梢の脂肪代謝調節に積極的に関与していることも明らかになった。
著者
和泉 広恵 野沢 慎司
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.34-37, 2017-04-30 (Released:2018-06-18)
参考文献数
5

近年,家族社会学においては,「家族」の多様化と意味変容に関する研究が蓄積されている.一方で,様々な領域において「家族」がその外側からの介入/支援を受け入れ,それによって維持・再編されるようになってきた.そこで,本シンポジウムでは,「家族」に対する専門家という第三者の介入が,精神保健・司法・福祉の各領域においてどのように実践されているのかを検討し,家族社会学の新たな展開の可能性を論じることをねらいとした.本シンポジウムでは,中村伸一氏(家族療法家),原田綾子氏(法社会学),中根成寿氏(福祉社会学)の3名の報告に対し,天田城介氏,松木洋人氏からのコメントが行われた.オーガナイザーおよび司会は,和泉広恵・野沢慎司が務めた.
著者
商工社 編纂
出版者
商工社
巻号頁・発行日
vol.昭和6年版, 1931
著者
大橋 昭一
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.5-17, 2013

In recent years, a methodological problem in tourism studies is the lack of a shared paradigm, that is, a framework underlying most theories and a methodology accepted by the majority of researchers (Aramberri, 2010). This paper argues that tourism originates with human beings who traveled with basic necessities and subsequently brought about extensive development in tourism as a result of their mobility. It addresses afresh certain key issues in tourism studies from a theoretical and systematic viewpoint. While the new era in tourism studies began with "hopeful tourism" advocated by Pritchard et al., a new version of "alternative tourism" presented by Wearing et al. may provide a new category of tourism, enabling the transformation of tourism studies because it is rooted in human nature.In recent years, a methodological problem in tourism studies is the lack of a shared paradigm, that is, a framework underlying most theories and a methodology accepted by the majority of researchers (Aramberri, 2010). This paper argues that tourism originates with human beings who traveled with basic necessities and subsequently brought about extensive development in tourism as a result of their mobility. It addresses afresh certain key issues in tourism studies from a theoretical and systematic viewpoint. While the new era in tourism studies began with "hopeful tourism" advocated by Pritchard et al., a new version of "alternative tourism" presented by Wearing et al. may provide a new category of tourism, enabling the transformation of tourism studies because it is rooted in human nature.In recent years, a methodological problem in tourism studies is the lack of a shared paradigm, that is, a framework underlying most theories and a methodology accepted by the majority of researchers (Aramberri, 2010). This paper argues that tourism originates with human beings who traveled with basic necessities and subsequently brought about extensive development in tourism as a result of their mobility. It addresses afresh certain key issues in tourism studies from a theoretical and systematic viewpoint. While the new era in tourism studies began with "hopeful tourism" advocated by Pritchard et al., a new version of "alternative tourism" presented by Wearing et al. may provide a new category of tourism, enabling the transformation of tourism studies because it is rooted in human nature.
著者
北村 京子 菊池 紀彦 Kitamura Kyoko Kikuchi Toshihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
no.70, pp.351-355, 2019-01-04

近年、ICTの普及により、学校現場でのICT機器が身近なものになってきた。特別支援教育の中でも、ICTの活用事例は増えている。ところが、学校現場では、機器の不足、授業に使えるソフトウエアやコンテンツの不足、教員自身のICTスキルが不足しているという実状もある。そこで、筆者は今までに研究してきたワンタップ教材を教員が子どもの実態に応じて簡単に教材作成ができるものとして、アプリの開発に着目した。本研究では、特別支援学校において、対象児の習得状況に応じて課題を設定することができ、子ども自身がワンタップの操作で、選択・決定して正解か不正解かを判別できるワンタップ教材アプリ「どーれかな?」を開発した。ワンタップ教材アプリ「どーれかな?」の特徴は以下の3点である。①iPad で撮った写真を素材にして、課題にすることができること、②対象児の習得状況に応じて2択から6択問題まで、選択肢を変更することができること、③課題の流れは、正解すると「〇」の表示とチャイム、不正解すると「×」の表示とブザー音が出る。不正解すると再度同じ課題に戻り、全問正解するとファンファーレや好きな動画が登場する設定ができること、が挙げられる。そして、授業実践を行い、その教材の有用性を検討した。その結果、対象児は、興味関心があるものを答えることができるようになった。

1 0 0 0 OA 稲麹と酒造り

著者
小泉 武夫 鈴木 昌治 野白 喜久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.476-478, 1984-07-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5

古い文献によれば, 稲贅花 (オンクワ) と呼ばれる稲穂の上に生ずる稲麹を素種として麹造りを行なっていたという。種麹の変遷とも関連して, この稲麹が酒造りに果たした役割は興味のあるところである。最近, 稲麹について調査研究をされた筆者にその周辺を解説していただいた。
著者
田中 雅子
出版者
国際ジェンダー学会
雑誌
国際ジェンダー学会誌 (ISSN:13487337)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.64-85, 2020 (Released:2021-12-25)
参考文献数
31

日本で暮らす移民女性のうち増加が著しい留学生や技能実習生の多くは,15歳から49歳までの生殖年齢層である。しかし,その中には「妊娠してはならない」,「妊娠したら帰国させる」と警告を受けている人もいる。解雇や退学処分を恐れて,自己服薬による中絶を試みたり,行き場がなく在留資格を失った状態で出産したり,帰国後も子どもの養育上の困難に直面するなど,彼女たちの心身の負担は大きい。本研究は,文献調査のほか支援者と当事者への聞き取りから,留学生と技能実習生の妊娠をめぐる課題を明らかにすることを目的とする。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)や移民に関する国際規範と日本政府の施策には乖離がある。移民女性のうち,技能実習生は労働関係の法令で守られるが,その運用は限定的である。留学生が妊娠し,教職員に早めに相談しないで欠席が続くと退学に追い込まれることがある。妊娠により休学した留学生を在留資格の取り消しから除外することも明文化されていない。彼女たちが妊娠しやすい背景のひとつに,出身国と日本で用いられている避妊の選択肢の違いがある。移民女性のSRHRをめぐる予備的考察から,日本で暮らす女性全般に共通する課題を探り,今後求められる調査を展望する。
著者
中村 直俊
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:24321982)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.28-33, 2021-09-22 (Released:2021-12-26)
参考文献数
19
著者
尾形 祥
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.1-257, 2015

早大学位記番号:新7224