著者
加藤 智之 越島 一郎 梅田 富雄
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.107-120, 2018 (Released:2018-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

近年、IoTやIndustry 4.0などのデジタル技術を基盤とした新しい価値創出のための概念が注目されており、実際に全く新しいビジネスが展開されている。これらは、デジタル革命と言われているように従来型の経営からデジタル技術を生かした経営変革に向うデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれ、世界的なトレンドとなっている。日本の製造業においても、これらのDXを実現しようとしているが、既存のビジネスモデルやビジネスプロセスをデジタル技術が活きるように変容することができず、対応が遅れているのが現実である。そこで、本論では日本企業の強みを活かしながらもDXに対応できるような組織体について議論し、日本的なDXのための経営手法としてP2Mが有効であると考え、関連する事例とともに関連事項について説明する。
著者
荒牧 憲隆 山本 健太郎 平 瑞樹 林 泰弘 根上 武仁
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.309-322, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
28

宮崎県と鹿児島県の県境,霧島山中央部に位置する新燃岳において,2011年1月19日から始まった52年ぶりの噴火は,新燃岳火口から南東方向に大量の火山灰を降らせた。発生した火山灰の量は,4,000万~8,000万tと推定されており,宮崎県南部周辺の広範囲で降灰が確認されている。この突発的な火山災害により,斜面等に降り積もった火山灰堆積地盤での降雨や火山性地震による安定問題や処分された火山灰のリサイクル方法が重要な課題となってくる。本研究は,上記のことを鑑み,新燃岳より噴出した火山灰を用いて,新燃岳火山灰質土の物理・力学性質を実験的に検討し明らかにすることを目的としている。その結果として,噴火直後の火山灰質土の物理・力学特性は,砂質土と概ね類似した傾向を示し,リサイクル材として有用な材料であることが示された。しかし,火山灰質土特有の性質も包含しており,凍結融解の繰返しにより火山灰質土が細粒化していくことが認められ,物理的な風化の影響により材料特性が経時的に変化していくことが予想される結果となった。
著者
森 英樹 石橋 真実 渡邊 謙太郎 牧田 文子 宮下 雄博
出版者
岡山赤十字病院
雑誌
岡山赤十字病院医学雑誌 (ISSN:09158073)
巻号頁・発行日
no.29, pp.58-62, 2018-11

近年、残薬やポリファーマシーが社会問題になっている。患者の服薬アドヒアランス向上の対策として錠剤の一包化や服薬カレンダーの利用、可能な場合には配合剤に変更し薬剤の種類を減らすこと等が考えられる。そこで当院糖尿病外来通院中で経口糖尿病を使用中の患者314名に配合剤に対するアンケートを行った。また、同じ内容のアンケートを当院薬剤師と近隣の保険薬局薬剤師、合計69名に行った。なお、薬剤師へのアンケートは薬剤師が思う患者(患者の立場)の意見とした。結果として患者の配合剤への変更の希望が64.6%に対して薬剤師の思う患者の意見は46.4%であった。変更に対する意見として「少しでも内服する薬の数が減ると有り難い」が患者は68.2%に対して薬剤師は45.7%、「変更しないで今までと同じ薬を継続する方が安心できる」が患者は11.5%に対して薬剤師は40.0%と大きな乖離がみられた。薬剤師だけに質問をした項目のうち現在処方している薬剤の服薬錠数や服薬回数を減らしたいと思いますか」という設問に対して「はい」と回答した薬剤師は89.5%と高い値であったにもかかわらず「薬剤変更の提案を行ったことはありますか」の回答では「たまにする」「よくする」と答えた薬剤師は20%であり、大きく半数を下回っていた。このアンケート結果より薬剤師は配合剤を医師に処方提案し、少しでもアドヒアランス向上に寄与したいと考える。(著者抄録)
著者
湯 立 外山 美樹 長峯 聖人 海沼 亮 三和 秀平 相川 充
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20326, (Released:2021-12-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

Regulatory fit theory (Higgins, 2000, 2008) proposes that people experience regulatory fit when they pursue a goal in a manner that sustains their regulatory orientation. The present study applied the regulatory fit theory and examined the relationship between regulatory focus and student engagement. We hypothesized that a fit between chronic regulatory focus (promotion or prevention focus) and motivational regulatory strategies in difficult learning situations enhances emotional, cognitive, and behavioral engagement. We conducted a survey among Japanese college students (N = 304) to test this hypothesis. The results indicated that increasing the levels of emotional and behavioral engagement were more strongly related to the frequent use of strategies to enhance self-efficacy in promotion-oriented individuals than in prevention-oriented individuals. These results partly supported the regulatory fit hypothesis. We discussed the results of this study in terms of theories of motivation.
著者
原田 亜季 伊藤 さやか 馬場 きみ江 好田 稔規 水津 智樹 藤嶽 美穂代 山口 敬子 藤田 芳一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.681-686, 2009-08-05
参考文献数
23

アシタバ含有カルコン誘導体の4-Hydroxyderricin(以後{Hy}とする)及びXanthoangelol(以後{Xa}とする)を用いるチタン(IV)の新規吸光光度法を開発した.{Hy}の場合,モル吸光係数(&epsilon;)は,&epsilon;=6.24×10<sup>4</sup> L mol<sup>-1</sup> cm<sup>-1</sup>,相対標準偏差(RSD)は0.65%(<i>n</i>=6),{Xa}の場合&epsilon;=6.02×10<sup>4</sup> L mol<sup>-1</sup> cm<sup>-1</sup>,RSD=0.53%(<i>n</i>=6)であった.{Hy}と{Xa}は共に,従来のチタン(IV)吸光光度法に比べ,共存物質の影響も極めて受けにくく,選択性にも優れている.また,本法を,酸化チタン含有用品中のチタン(IV)分析に応用したところ,測定値,回収率とも良好な結果が得ることができた.これらの天然色素が分析用有機試薬として十分利用できることを認めた.
著者
山岡 捷利
出版者
千葉大学
雑誌
言語文化論叢
巻号頁・発行日
vol.12, 2003-12-31
著者
荒牧 憲隆 清松 潤一 岡林 巧 藤井 治雄
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.359-373, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

我が国には,火山灰質粗粒土が広く分布し,特殊土として取り扱われ利用されることが多い。これらの土粒子には,粒子内空隙を有することが知られており,現在の地盤材料の試験方法では対応が困難となることも見受けられる。そのため,物理的諸性質の測定値には,ばらつきが多くなることが予想される。本研究では,粒子内空隙を有する種々の火山灰質粗粒土を対象に,土粒子の密度試験ならびに粒度試験を行い,測定値のばらつきに及ぼす試料の準備や実験方法での影響因子について検討することを目的としている。その結果,火山灰質粗粒土の物理的性質の評価においては,人的,機械的なばらつきに加え,材料そのものの特性により,著しく影響を受けることが認められた。このような材料での計測,品質評価においては,試料の均質性や準備状況に充分配慮を行う必要があることが示唆された。
著者
蕭 閎偉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.705-712, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本稿では地域住民の提案により地域内に存在する遊休空間を改造して活用するOSを「地域住民提案型OS」と定義し、台北市において2014年から推進されてきた「オープングリーン」(OG)事業の中で創出された地域住民提案型OSに着目する。本稿では、以下2つの仮説を検証することを目的とする:仮説1) 台北市ではこれまでの一連のまちづくり関連施策と住民主体による空間提案の経験蓄積から、台北市の全域に地域住民による活発なOGの提案がなされている:仮説2) 住民主体によるOGの提案により創出された地域住民提案型OSでは、多様な空間利用が実現されている。本稿ではまず、背景としての台北市のまちづくりと遊休空間の活用をめぐる動向を整理した。本稿の成果を以下に示す:仮説1)の検証からOGの提案件数、立地条件、面積などに地域差があったものの、OGは今までのまちづくりの成果の継承のみならず、今後の新たな担い手の出現の契機にもなっていると解明した。仮説2)の検証から、住民主体のOG提案により地権者や既存空間の現状に縛られず多くの遊休空間の活用に成功し、更にOGでは1件あたり4種類もの多様な空間利用が共存し、「地域住民提案型OS」の多様性と可能性を明確に示唆した。
著者
平野 一貴 田中 貴宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.697-704, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
78

近年、地球の環境問題として、化石燃料の枯渇や地球温暖化が挙げられており、その対策の一つとして再生可能エネルギー活用が求められている。一方、我が国の島嶼部では多くの地域で人口減少や高齢化、およびそれに伴う地域社会の衰退が課題となっている。本研究の対象地を含む瀬戸内海の島嶼部においてもこれらの課題が見られるが、その一方、温暖な気候や豊かな森林、豊富な果樹園などの自然資源に恵まれており、冒頭の課題解決の方策の一つとして木質バイオマスエネルギーの活用が考えられる。木質バイオマスの利用はカーボンニュートラルであり、また、その利用過程において雇用創出や地域内経済循環を生み出すことも可能と考えられる。以上より、瀬戸内海の島嶼部における木質バイオマスエネルギー活用可能性を検討する必要があると考えた。本研究では瀬戸内海の大三島を対象に、地形や、森林多面的機能を考慮した伐採エリアを抽出し、そこから得られる木質バイオマス量を推定する。その後、経済性、CO2排出削減を考慮した木質バイオマスエネルギーの活用シナリオを作成し、評価することにより、その活用可能性を明らかにすることを目的とする。
著者
高橋 敏夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、日本近代・現代の「怪物」表象の特色・意義についての研究である。「怪物」とはなにか。「怪物」とは、怪物を嫌悪し恐怖する秩序によってうみだされる。「醜悪」「恐怖」「不快」「汚れ」「グロテスク」といった怪物の印象は、怪物がもたらすものだとしても、つねに「誰かにとって」の印象だということである。さまざまな秩序を統合する社会体制は、独特な認知の体系、価値体系、経済体系、政治体系、時間と空間の体系、身体体系等から成り立っており、それらの諸体系の複雑な組み合わせによって、「正体のわからない」「あやしい」「異なるもの」とされたとき、はじめて異能を有する怪物が誕生する。したがって、怪物表象の研究は、怪物が出現する体制秩序の認知から身体にいたる体系を明らかにするだろう。怪物表象の出現する場である文学・映画などは、そのときどきの体制秩序の体系をうっしだすとともに、他方でそうした体系を変形する装置でもある。いいかえれば、怪物を生み出す体系をあらわにすると同時に、怪物を生み出す体系を変更していく方向を示すものにもなっている。この両者を怪物表象をつうじて考えることを、わたしの怪物研究の目的としたい。本研究があつかう時代および対象は、文学における「怪物」表象が「貧困」や「悲惨」などの表象とともにあらわれた1895(明治28)前後にはじまり、それから100年の後、ホラー小説が大量に出現し、そのなかに「怪物」「悲惨」「残酷」などの表象があふれだす1995年前後までである。
著者
木股 知史
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.12-21, 1998-11-10 (Released:2017-08-01)

『たけくらべ』の結末に描きこまれている「水仙の作り花」については、(1)信如の境遇についての暗示的表現 (2)信如の内面(美登利に対する感情)の暗示的表現 (3)信如と美登利の関係性についての暗示的表現 (4)投影された美登利の内面の暗示的表現 (5)テクストの外から持ち込まれた語り手の介入的メッセージの暗示的表現、というように多義的に理解することができる。多義性をまとめあげるために、<恋愛>という枠組が必要とされ、そのことが理解を拘束していることを検討する。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.143, 2015

「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。