著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。
著者
岩渕 大行
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.141, no.10, pp.613-616, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

1.はじめに電気応用分野において,照明工学は重要な位置づけとなっており,大学の講義でも教えられているし,電気主任技術者をはじめとした各種資格試験でも出題される。しかし,電気電子工学
著者
片桐 雅隆
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.35-51,125, 1981-03-31 (Released:2017-02-28)

In this paper, we insist that the concept of social worlds is very important. Some symbolic interactionists use this concept recently, but they learn from T. Shibutani what this concept means. We also go back to him and learn from him how he uses this concept. He teaches us that everyone lives in many social worlds in his lifetime and that the concept of social worlds is different from that of organizations and groups. And next, we examine the concept of multiple realities which A. Schutz uses in many places and make some difference between the two concepts clear. Here we systematize the concept of social worlds and point out the relation between the concept of social worlds and multiple realities. These two concepts are not only very important in theoretical points of view but also important when we ask how the modern society is going on. P. L. Berger and T. Luckmann make clear the relation between the concept of multiple realities and that of the privatization. Social worlds are not static but dynamic. In the last paragraph, we ask how social worlds change and shift.
著者
三宮 愛
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.28, pp.133-161, 2014-03

本研究の目的は、女性同(両)性愛者のコミュニティ参加が自尊心と精神的健康に及ぼす影響を検討することである。特に、同(両)性愛者のコミュニティに関して大規模で短期的な「イベント」と、小規模で中長期的な「友人グループ」に分け、それぞれのコミュニティに参加する心理的意味を精査した上で、短期的な心理状態の指標である「精神的健康」と長期的な心理状態の指標である「自尊心」に及ぼす影響を調べた。研究1では女性同(両)性愛者の当事者が抱える問題とコミュニティ参加の捉え方について面接法を用いて調査した。その結果、性的指向の自覚と葛藤は思春期に起こり、性的指向を確立させた後にカミングアウトするという過程を辿っていた。また、イベントには性的指向を確立した者が参加し、特に外向的な者が満足しやすい可能性が示唆された。研究2では、研究1の知見に基づき、(1)コミュニティ参加の心理的意味、(2)それらが精神的健康や自尊心に及ぼす影響、(3)外向性との関連性、について質問紙法を用いて調査した。結果は以下のとおりであった。はじめに、イベント参加には"価値観変化"、"娯楽"、"関係形成"、友人グループ参加には"価値観肯定的変化"、"日常満足"、"関係発展"の心理的意味があることが示された。また、女性同(両)性愛者はこれらの心理的意味を非常に重要視していた。加えて、イベントやバーでの"関係形成"が自尊心を向上させ、友人関係による"日常満足"が精神的健康と自尊心のどちらも高めていた。この結果は、日常場面で性的指向を明示することのない女性同(両)性愛者が、同(両)性愛者コミュニティにおいては自然体で関係を形成することが可能となり、「自分と同じ人はたくさんいること」を意識した結果、精神的健康・自尊心共に良い影響を与えているものと解釈できる。さらに、10代の対象者のみ、イベントやバーでの"価値観変化"が精神的健康を促進していた。この結果から、アイデンティティ未確立の女性同(両)性愛者が思春期に性的指向に葛藤した際、同じ性的指向を持つ者との関わりの機会が重要になることが示唆された。このことは、同世代の男性同(両)性愛者にも該当すると考えられるため、今後の同性愛者支援に向けて、多様な性のあり方に触れる機会を学校教育場面で設けることが必要であろう。
著者
関口 海良 田中 克明 赤石 美奈 堀 浩一
雑誌
SIG-SAI = SIG-SAI
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.1-9, 2007-11-26

多元的な世界とは,真理,価値,世界観などの多様性を認める世界である.これを実現するためには,人と人の対話を支援することが有効であると考えられる.ロボット・ネットワークを用いれば,人とロボットの同期対面(ミクロ)の対話と,ネットワークを介した人と人の非同期非対面(マクロ)の対話の両方を,効果的に支援することができる.本論文ではコンセプトを提案し,研究開発中のプロトタイプを紹介する.
著者
土田 英雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C2)社会科学・生活科学 02 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.p1-12, 1987-08

本稿は,成人したすべての子供たちと別居している老夫婦単独世帯とその別居子を対象にして,わが国の伝統的な家の継承について考察したものである。調査結果を要約すると,調査対象となった現代の都市家族はもちろんのこと,農村家族においても直系制家族における本家・分家の区別があいまいで,家の系譜意識が充分でなく,家のあとつぎは確定しておらず,あとつぎ意識も希薄で,全体として家意識が乏しいので,伝統的な家はすでに解体消滅の方向にあり,また現段階はまだ新しい家が形成されていない状況である。
著者
坂本 杏子 佐藤 智照 小竹 直子 〓 瑩 チュウ ロザリン 金 英周 小野 創 酒井 弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.184, pp.23-28, 2008-08-01
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では,成人日本語母語話者が新奇動詞を学習する際に,助詞を手がかりにした意味推論を行うかどうかを検討する実験を行った.その結果,日本語母語話者は助詞の違いに応じて使役事象から異なる局面を切り出して動詞と対応づけることが明らかにされた.さらに動詞の意味推論には,名詞句とガ格助詞を手がかりとした項構造の決定と,項構造に基づく事象の切り出しという二つの段階が関与していることが示唆された.
著者
原田 吉通 冨野 真悟 小川 和久 和田 忠子 森 進一郎 小林 繁 清水 徹治 久保 博英
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-18, 1989-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

昭和53年から昭和61年までの9年間に放射線学実習で撮影された平均年齢24.3歳の男女1,353人の全顎デンタルX線写真のうち小臼歯部を目的としたものと大臼歯部を目的としたもの及びパノラマX線写真を使用し, 下顎第一大臼歯の3根の出現頻度について調査した。結果は次の通りである。1. 3根は右側歯数1,163本中240本 (20.6%), 左側歯数1,168本中200本 (17.1%) であった。2. デンタルX線写真による歯根数の確認は, 小臼歯部目的の写真のみで3根の確認できたもの274本 (11.8%), 小臼歯部ならびに大臼歯部目的の写真のいずれでも確認できたもの124本 (5.3%), 大臼歯部目的の写真のみで確認できたもの42本 (1.8%) であった。3. パノラマX線写真で3根の確認できたものは, 440本中70本 (15.9%) であった。4. 左右両側に第一大臼歯の存在している人1,070人のうち, 両側共3根の人は136人 (12.7%), 片側のみ3根の人は127人 (11.9%) であった。
著者
OKA H.
雑誌
Clin Adult Diseases
巻号頁・発行日
vol.19, pp.531-537, 1989
被引用文献数
1
著者
玉越 隆史 横井 芳輝 石尾 真理 鎌田 敏郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.101-116, 2015
被引用文献数
1

全国の多数の道路橋で高齢化が進んでおり,限られた予算で合理的に維持管理することが求められている.そのため,点検データから劣化特性を推定して将来予測に反映する試みも行われている.道路橋では古くから技術基準類が整備され,年代毎には全国でほぼ同じ基準で建設されてきており,その性能は整備時点の技術基準に大きく依存する.本論文では,適用されてきた技術基準の規定を主に耐久性との関係に着目して整理した.その結果,主な劣化要因に関わる規定は,経験的な構造細目等の仕様や下限値規定であり,潜在的に耐久性能の大きなばらつきが避けがたいことを明らかにした.一方で,性能規定化以前の道路橋では,耐久性能に関わる仕様等が適用基準毎に一致するものも多く,劣化予測の観点から耐久性能の差別化が行える可能性があることを示した.
著者
安井 哲二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.94-99, 2001-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

ビールの劣化により生ずるカードボード臭はビールの代表的なオフフレーバー である。カードボード臭はこれまで製品ビールの酸化により生成するものと考えられてきたが, 最近非酸化経路による有力な生成説が提唱された。本稿ではカードボード臭に精通している筆者に, カードボード臭の生成メカニズムの詳細と生成抑制の考え方について解説していただいた。