著者
上田 昌宏
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2022-029, (Released:2022-05-25)
参考文献数
5

2020年からのCOVID-19の感染拡大に伴い,教育は大きな転換期を迎えた.薬学教育においても,対面授業が大きく制限され,薬学部教員の多くが,慣れないオンライン教育の実施を余儀なくされた.このため,薬学部教員は,全くノウハウがない中でそれぞれが独自に取り組みを行う必要に迫られた.2020年度内から教育系の学会では,オンライン教育の実施に関する情報共有の場が設定された.しかし,その多くは,成功体験や構築例の報告であり,意図せぬ小さな失敗や間違い(しくじり)を共有する機会は限られていた.そこで筆者は,薬学部教員を対象として,オンライン教育における「しくじり」およびその対策に関する調査を実施した.その結果,9名のしくじり先生から,報告を受けた.本稿では,しくじり先生の経験談を紹介することで,オンライン教育における「しくじり」を振り返る.今後の教育に活用し,良い点は継続し,改善すべき点は良くすることで質の高い教育を実践するためのPDCAサイクルを進める一助になることを期待している.
著者
佐藤 暢哉
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.105-117, 2010 (Released:2010-12-22)
参考文献数
67

Episodic memory is defined as a memory system that consciously carries out recollecting one's subjective past experience and re-experiencing it. Through these mental activities, episodic memory is thought to make mental time travel retrospectively and prospectively possible, which is sometimes considered to be unique to humans. However, after a seminal study in scrub-jays by Clayton & Dickinson (1998), animal models of episodic memory have been developing and are starting to affect the concept of human episodic memory itself. This paper will concentrate on reviewing the studies that could encourage nonhuman animals to utilize memory — the properties are consistent with current definition of human episodic memory. Additionally, a discussion on the possibility to divide the system of episodic memory into two sub-processes and to study in animals the sub-processes of episodic memory will be undertaken.
著者
中村 敏史 野村 浩夫 岡本 浩一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.610-615, 2019-11-10 (Released:2020-11-11)
参考文献数
9

“LANTUS® XR Inj. Solostar® (450 units / 1.5 mL)” is a preparation that tripled the insulin concentration of existing LANTUS® Inj. Solostar®. As the volume per insulin unit is reduced to one third, the recommended blank beating units before dosing have been increased to 3 units. However, some patients perform 2-unit blank beating as they use the existing injector. A retrospective investigation identified erroneous operation of blank beating in 9.5% of outpatients who had been prescribed LANTUS® XR Inj. Solostar® at Nagoya Ekisaikai Hospital from April to May 2017. In this study, we investigated if 2-unit blank beating with LANTUS® XR Inj. Solostar® is suitable to confirm needle hole clogging and injection of content by naked-eye observation and the amount emitted. Injection of content was confirmed at the second and subsequent 2-unit beatings by naked-eye observation. On the other hand, the emission weighing test with a new needle and syringe barrel revealed that the amount discharged was increased with 2-unit beating and reached the theoretical value at the fourth beating. Based on these results, we concluded that 3-unit blank beating is preferable for LANTUS® XR Inj. Solostar®; however, three successive 2-unit blank beatings are helpful to confirm correct installation of the needle and normal movement of the injector.
著者
齋藤 智也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.244-252, 2016-08-15 (Released:2016-08-15)
参考文献数
40

オリンピックのようなマスギャザリングは,公衆衛生危機管理の重要課題である.注目度が高く,テロのリスクにも備える必要がある.生物剤によるテロは,可能性は低いが,社会的影響は非常に大きい.マスギャザリングはその対策を見直しつつ,中長期的な対応能力を底上げする良い機会である.サーベイランスは,中核的対応能力の一つである.社会的関心が高い故,より低い閾値で,より素早い対応が求められる.特に「何も起きていないことの確認」が最大の課題となる.なお,サーベイランス能力の開発は,感染症のみならず,全ての健康危機管理を念頭に置くべきである.テロ対策の文脈では,公衆衛生機関に様々な機関との連携が求められる.特に,治安部局とのリスク・脅威評価の共有や,初動対応部局との統合的運用能力が重要であり,演習による強化が不可欠である.
著者
伊藤 久志 菅野 晃子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-010, (Released:2022-05-20)
参考文献数
23

本研究の目的は、行動論的アプローチに基づく自閉スペクトラム症と知的障害児者に対するトイレットトレーニングにおいて、What Works Clearinghouseが作成した「エビデンスの基準を満たすデザイン規準」に従った単一事例実験計画研究を抽出してメタ分析を行うことである。メタ分析に組み入れるために最終的に抽出された文献7本の統合された効果量は0.77[0.66—0.88]であった。標的行動に関して、3種類(排尿のみ/排便のみ/排泄関連行動を含む)に分類したところ、排尿のみを扱った文献は4本該当し効果量は0.88[0.75—1.00]であった。排尿訓練に関する実践研究が進展してきたことが明確となった。今後、エンコプレシスを伴わないケースの一般的な排便訓練をエビデンスの基準を満たすデザイン規準に従って進めていく必要がある。
著者
気駕 まり
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.115-124, 2004-01-10

女性のみを処罰の対象とする刑法の自己堕胎罪は、ジェンダーの視点から捉えて問題があると言わざるをえない。この自己堕胎罪について、保護法益を基点にして現代の日本に存在する意味、その矛盾点、背景にある文化的規範などを考察していきたい。まず、堕胎は殺人と同等とするには、あまりにも保護法益の前提量が違いすぎることを指摘する。次に、その前提の内容を検証することによって、そこから女性の自律した身体であり続ける権利を導き出す。このことによって、堕胎罪の法益を設定する前段階における一つの違法行為、男性の側からは発想しにくいであろう女性の権利の侵害行為が明らかになる。妊娠しないままでいる権利を法益とした場合、避妊しない性交は法益の侵害を意味する。行為の主体は男性で、客体は女性である。望まない妊娠があって、自己堕胎が発生するとしう因果関係を考慮するのなら、まず確立しなければならないのは、堕胎罪の運用方法より、この権利侵害の「犯罪」であろう。「犯罪」の刑罰を設定することによって、主体である男性は規範を動機づけられ、女性の権利侵害を安々と行わなくなる。これは、堕胎を減少させ、結局のところ堕胎罪が求める規範に合致するのである。
著者
牧野 能士 河田 雅圭
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

生物が持つ適応力は種によって異なる。本研究は、重複遺伝子保持率から生物が持つ環境適応力を予測する手法の確立を目指し、動物ゲノムの重複遺伝子保持率と生態的特徴の関係を調査した。本研究で侵略的外来種アメリカザリガニの全ゲノム配列決定し、本種を加えたゲノム配列既知の動物を対象にした比較ゲノム解析により、侵略的外来種の重複遺伝子保持率が高いことを明らかにした。重複遺伝子保持率と環境適応力との関連を強く支持するものであり、ゲノム配列情報からの環境適応力評価への応用が期待される。
著者
畑中 知笑美 間瀬 広樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.501-504, 2014 (Released:2014-02-17)
参考文献数
9

【緒言】オキサリプラチンは, 結腸・直腸がんに対して有効な白金系抗がん剤である. しかしながら, 半数近くの患者に急性および蓄積性の末梢神経障害が生じ, 日常生活に及ぼす影響は甚大である. 末梢神経障害への対処は重要であるにもかかわらず, いまだ確立された方法はない. 【症例】60歳代, 女性. 再発大腸がんに対してSOX療法が施行されたが, 治療当初より末梢神経障害が発現した. ピリドキサールリン酸エステル水和物や牛車腎気丸を継続服用したが無効であったため, 患部へ1.35% l-メントール含有軟膏を1日3回, 1回につきおおむね0.5~1 gを両足裏に塗布するよう, 薬局で服薬指導した. 塗布開始当日より症状のすみやかな消失が認められ, その後SOX療法終了までの1カ月間塗布を継続したが症状の再発はみられなかった. 【結論】1.35% l-メントール含有軟膏の塗布は, オキサリプラチン誘導末梢神経障害の改善に効果的である可能性が示唆された.
著者
和田 恒彦 全 英美 宮本 俊和
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.51-56, 2016 (Released:2020-05-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

【目的】棒灸は治療家のみならず、セルフケアとしても用いられているが、火傷の過誤が報告されるなど、温度特性について把握しておく必要がある。棒灸の燃焼部からの高さ、経時的な温度変化、影響範囲について検討した。 【方法】4mm厚のシナベニア板上に置いた1mm厚のアメゴムシート上に熱電対(ST-50 理科工業)を燃焼部直下(0mm)、直下から外方3.75mm、7.5mm、15mm、30mm、45mmの6点に設置し、温度インターフェイス(E830 テクノセブン)を介してパソコンに温度データを取り込んだ。棒灸(温灸純艾條 カナケン)は、先端から熱電対までの高さを20、30、40、60、80、100mmと変えて10分間経時的に6回測定した。 【結果および考察】測定時の室温は24.5±2.5℃だった。測定点の平均最高温度は、高さ20mmでは44.1±4.7℃、30mmは38.5±2.6℃、40mmは36.2±4.5℃、60mmは29.4±2.9℃、80mmは26.8±2.3℃、100mmは25.6℃±3.1℃だった。高さの100mmの燃焼部からの水平距離では直下から3.75mmでは25.9±3.3℃、7.5mmは25.9±3.2℃、15mmは25.9±3.1、30mmは26.1±3.0℃、45mmは26.3±3.1℃だった。また、高さ20mmで直下と外方部の温度逆転が、260秒後に外方15mm、290秒後に7.5mm、310秒後に3.75mm、430秒後に30mm、600秒後に45mmとの間に見られた。灰による影響と思われる。 【結語】直下では燃焼部に近いほど最高温は高かったが、高さ100mmでは遠いほど温度が高く、経時的には水平距離と温度の関係の逆転もみられた。棒灸は燃焼部からの高さにより、上昇温度、刺激範囲を可変でき、術者が刺激を調節することができることが確認された。
著者
Ryuho Kataoka Stephen D. Winn Emile Touber
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2022-019, (Released:2022-04-26)
被引用文献数
3

Large-amplitude meteotsunamis were observed in many areas in Japan, following the arrival of barometric Lamb waves emitted by an underwater volcanic eruption of Hunga Tonga-Hunga Ha‘apai in January 2022. We modeled the power spectra of the tidal level data obtained from 12 tide stations of the Geospatial Information Authority of Japan, based on a method of transfer function which converts the barometric pressure pulse spectra into the meteotsunami spectra. The obtained transfer functions are similar at 12 stations. The pressure pulse spectra are obtained from the ensemble average of ∼1500 Soratena weather sensors of Weathernews Inc. distributed over Japan. The observed meteotsunami spectra can be characterized by the enhanced seiche eigenmodes at each station excited by the mesoscale pressure pulse within the amplitude error of 50%, which contributes for accumulating the necessary knowledge to understand the potential dangers in various different areas over Japan.