著者
中埜 貴元 小荒井 衛 星野 実 釜井 俊孝 太田 英将
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.164-173, 2012-07-25 (Released:2013-10-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

地震時に発生が懸念される大規模盛土造成地における滑動的変動被害について,その被害予測を効率的に実施するためには,国土交通省の「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドライン」の第一次スクリーニングですべての盛土に共通して得られる地形情報のみを利用して,盛土の相対的な滑動崩落危険度を評価する必要がある。そこで,盛土地形の計測と地震時滑動崩落に対する相対的な安全性の評価支援が可能なシステムを構築し,その有効性を検証した。
著者
李 榮淳 本間 清一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.515-519, 1991-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
2

アジア諸国の穀醤16種と魚醤4種を電気透析にかけ,非透析性画分のFe(II)キレート能を測定した.方法は0.1mM硫酸鉄(II)を含むpH4酢酸緩衝液によるゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にかけ,溶出画分の鉄濃度を測定した.その結果,鉄錯体はメラノイジン画分と非着色画分に検出された.醤油のFe(II)キレート能は,穀醤は0.11~1.95mg/ml,魚醤は0.13~0.50mg/mlであり,穀醤は一般に魚醤よりキレート能が大きい.穀醤のキレート能が醤油の色素濃度(450nmにおける吸光度)と相関しなかったことは鉄錯体が非着色画分にも検出されたことと関連があると推定した.
著者
石原 康成 堀江 翔太 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101316, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】腱板断裂では,上肢挙上の際に,肩甲上腕関節における求心位保持能力の低下と,それに伴う肩甲胸郭関節,胸郭運動の異常が報告されている.したがって,腱板断裂患者に対して理学療法を行う際は,肩甲上腕関節のみならず,肩甲胸郭関節や胸郭にもアプローチする必要がある.しかし,腱板断裂における肩甲骨の位置異常と胸郭運動の特徴については明らかになっていないため,機能評価と効果的に肩甲胸郭関節や胸郭へアプローチする手技の確立を困難にしている.本研究の目的は,腱板断裂における肩甲骨の位置異常と胸郭運動の特徴を明らかにすることである.【方法】対象は,当院で腱板完全断裂と診断され鏡視下腱板修復術を施行された24 名(以下RCT群)(男性14 名,女性10 名,平均年齢69 歳,49 〜 86 歳)と,肩関節に既往のない40 〜60 代の健常者16 名(以下健常 群)(男性8 例,女性8 例,平均年齢51 歳,43 〜 64 歳)である.これら2 群の,上肢挙上に伴う肋骨・胸椎運動と下垂位での肩甲骨の位置を比較し腱板断裂における肩甲骨位置と胸郭運動の特徴を検討した.測定方法は,肩下垂位と130°挙上位の2 肢位で胸部3 次元CTを撮影し,骨格前後像と側面像にて肋骨・胸椎と肩甲骨の位置を評価した.肋骨の動きは,肋椎関節を基準として肋骨先端の上下方向への移動距離を測定した.胸椎の動きは,第7 胸椎を基準として胸椎伸展角度を測定した.肩甲骨の位置は,内外転方向の位置として,脊椎から肩甲骨内側縁の距離(Spine Scapula Distance,以下SSD),挙上下制方向の位置として,肩甲骨下角の高さを,回旋方向の位置として肩甲棘の傾斜を測定した.統計学的検討にはMann-Whitney’s U 検定を使用した.【倫理的配慮、説明と同意】病院倫理委員会の承認を得た上で,本研究の目的とリスクについて被験者に十分に説明し,同意を得た.【結果】RCT群の下垂位から130°挙上位までの肋骨移動距離は,挙上方向へ平均5.8mmであった.最大は第7 肋骨の9.7mmであり,第7 肋骨から離れるに従い移動距離は小さかった.健常群では挙上方向へ平均5.2mmであった.最大は第5 肋骨の9.4mmであり,第5 肋骨から離れるに従い移動距離は小さかった.2 群を比較すると,第9,11 肋骨でRCT群の肋骨移動距離が有意に大きかった(p<0.05).すなわち,腱板断裂により肋骨運動の中心が尾側にシフトしていた. RCT群の下垂位から130°挙上位までの胸椎伸展角度は平均2.4°であった.健常群では平均3.8°であり差はなかった.RCT群における下垂位でのSSDは平均60.3mm,健常群では平均68.6mmであり,RCT群で有意にSSDが小さかった(p<0.01).下角の高さと,肩甲棘の傾斜には差がなかった.すなわち,腱板断裂により肩甲骨は内転位に変化していた.【考察】本研究より,上肢挙上に伴う肋骨運動は,健常者では第5 肋骨を中心に挙上するのに対し,腱板断裂患者では第7 肋骨中心に挙上することが明らかとなり,腱板断裂により肋骨の運動中心が尾側へシフトすることが明らかとなった.また,腱板断裂に伴い肩甲骨の位置は内転位に変化することが明らかとなった.従来の報告によると,腱板断裂に伴い肩甲骨他動運動と肋骨運動が制限される可能性が指摘されている.また,肩甲骨位置異常は,肩甲骨周囲筋のバランス異常の存在を示唆している.この事実は,肩甲骨周囲での胸郭運動が制限されていることを示しており,これを代償するために,胸郭運動の中心が尾側へ移動した可能性が考えられた.【理学療法学研究としての意義】腱板断裂が、肩甲骨の位置と肋骨運動パターンに影響を与えることが明らかとなった.肩甲上腕関節のみならず,肩甲骨位置や肋骨運動パターンを考慮することで,より有効な理学療法を提供できる可能性がある.

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著者
東 泰雄
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.197-202, 2009-05-01 (Released:2016-01-31)
参考文献数
4
著者
春名 匡史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.144_1, 2017 (Released:2018-02-15)

体幹伸展運動に伴う肩甲骨後傾運動は、オーバーヘッドスポーツで障害予防やパフォーマンスアップに重要となる。本研究の目的は、体幹伸展時の、肩甲骨と、上位胸椎、下位胸椎、腰椎および肋骨運動の運動連鎖を定量評価することである。対象は20歳代健常成人男性6名。対象者の肩甲骨、胸腰椎および肋骨(肋骨下縁に6個貼付)の骨特徴点に赤外線反射マーカを貼付し、端座位での体幹中間位と体幹最大伸展位(視線前方注視かつ上肢脱力位)を光学式モーションキャプチャ・システムにより静的に計測した。カメラ座標系に対する肩甲骨座標系の回転を肩甲骨の外観上の運動とし、胸部座標系に対する肩甲骨座標系の回転を肩甲骨の胸郭に対する運動とし、それぞれオイラー角で表現した。上位胸椎(1–7胸椎)、下位胸椎(7–12胸椎)、腰椎(12胸椎–5腰椎)および肋骨運動は各マーカ間の距離の和で表現した。肩甲骨前後傾、上位胸椎、下位胸椎、腰椎および肋骨運動それぞれに対して、体幹中間位から体幹最大伸展位への変化量を求めた。外観上の肩甲骨後傾運動は下位胸椎伸展に、胸郭に対する肩甲骨後傾運動は腰椎伸展および肋骨下制に影響されることが明らかとなった。
著者
佐野 忠史
出版者
近畿大学原子力研究所
雑誌
近畿大学原子力研究所年報 = Annual Report of Kindai University Atomic Energy Research Institute (ISSN:03748715)
巻号頁・発行日
no.57, pp.9-22, 2021-03-31

[要旨]241Amは原子炉運転中の核燃料或いは使用済燃料中に含有されている半減期が432.6年のα核種である。241Amの中性子捕獲断面積は大きな事から原子炉の核設計上、考慮すべき要な核種である。一方、核分裂断面積については捕獲断面積と比較し小さいが、高速炉や加速器駆動未臨炉での核変換の対象となっていることから、核分裂断面積の高精度化は重要である。そこで、本研究では241Am核分裂断面積の精度向上の観点から、京都大学臨界集合体実験装置にH/235Uが約49の炉心を構築し241Am/235U核分裂率比を測定した。その結果、241Am/235U核分裂率比として0.0451±0.0002を得た。MVP3.0とJENDL-4.0を用いた場合、そのC/E値は0.986±0.004であった。更に異なる核データライブラリに収納されている241Am断面積がC/E値に与える影響を検討するために、241Amのみ使用する断面積をJENDL-4.0からENDF/B-VII.1またはJEFF-3.2に変更した計算を実施した。その結果、ENDF/B-VII.1を用いた場合は0.975±0.004、JEFF-3.2を用いた場合は0.954±0.004であった。[Summary]241Am is an α-nuclide with a half-life of 432.6 years, which is contained in nuclear fuels during reactor operation and spent fuels. 241Am is one of the important nuclides in the nuclear design of nuclear reactor because of its large neutron capture cross section. On the other hand, the fission cross section of 241Am is smaller than the capture cross section, but it is important to improve the accuracy of the fission cross section because 241Am is a target nuclide of transmutation in fast reactors and accelerator-driven systems.In the present study, a critical core with about 49 of H/235U nuclide ratio in the Kyoto University Critical Assembly was constructed and 241Am/235U fission rate ratio was measured. As a result, the measured 241Am/235U fission rate ratio was 0.0451 ± 0.0002. The C/E value with MVP3.0 and JENDL-4.0 lead to 0.986 ± 0.004. On the other hand, the further MVP3.0 calculations, where only the 241Am cross sections were taken from JENDL-4.0, ENDF/B-VII.1 or JEFF-3.2 all other nuclides were done from JENDL-4.0, were carried out to examine an impact of the difference of 241Am cross section among these nuclear libraries to the fission rate ratio. The C/E values calculated with respective 241Am cross sections from ENDF/B-VII.1 and JEFF-3.2 were 0.975±0.004 and 0.954±0.004, respectively.
著者
市橋 万知子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.822-829, 1960-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

近年高血圧の集団檢診及びその疫学的研究に関して多くの報告がみられるようになつたが,この中,労働と高血圧の関係については報告も少なく意見も一致しない.これはその集団を形成する各個人の素質,環境に著しい相違があり,また,労働の種類も複雜な爲と思われる.そこで都会の同じような生活水準の警察官という一つの集団を対象として,肉体労働の比較的強い外勤と,肉体労働の弱い室内勤務を主とする内勤の二つを選んで比較檢討し,高血圧の成因について考察を加えた.血圧平均値,高血圧出現頻度共に内勤に有意に高く,一見激務と思われる肉体労働も,労働規準法に規定する範囲内であれば高血圧の発生にはあまり影響がなく,むしろ精神的緊張を伴ないやすい室内の勤務條件の方が強い影響を與えていると考えられる.高血圧者に対しては,臨床檢査として眼底檢査,尿檢査,心電図檢査を実施したが,何れも内勤と外勤の間に有意の差が認められた.