著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-38, 1988

The White Stork <i>Ciconia ciconia boyciana</i> has ceased to breed in Japan since 1965. However, between 1972 and 1988 there were 23 records of wintering or migrant storks from Hokkaido, northernmost island of Japan. Some of these records may probably represent the same individuals. Thus, at least 12 birds have occurred in Hokkaido since 1972. Although this species also sporadically occurs in Honshu southwards, there is no evidence that the birds observed in Hokkaido flew from the south through Honshu.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-6, 2014

<p>1976~2013年の4月下旬~7月上旬(高標高地では~7月下旬)に北海道中部・南東部の887区画(4.5km×5km),調査路996か所でマミジロ<i>Zoothera sibirica</i>とトラツグミ<i>Zoothera dauma</i>の分布を調べた.これらが出現した区画数と調査路数は,マミジロで45区画(5%),48か所(5%),トラツグミで260区画(29%),279か所(28%)で,後者で有意に多かった.マミジロが山地だけに生息するのに対し,トラツグミは山地と一部平野にも生息する.生息環境別の出現率は,マミジロではハイマツ林で0%,常緑針葉樹林で7%,針広混交林で21%,落葉広葉樹林で6%,農耕地・林で1%,それ以外の環境では0%であった.トラツグミではハイマツ林で0%,常緑針葉樹林で60%,針広混交林で54%,落葉広葉樹林で46%,カラマツ人工林で44%,農耕地・林で22%,農耕地で11%,住宅地で2%であった.マミジロの標高別出現率は,200m以下で1%,201~400mで7%,401~600mで17%,601~800mで25%,801m以上で17%で,トラツグミの標高別出現率はそれぞれ25,42,30,10,17%で,マミジロの方が高標高に生息する.</p>
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.55-60, 2010
被引用文献数
3

1976~2009年に北海道中部・南東部の調査地823区画,調査路928か所のうちウズラが観察されたのは胆振地方東部,石狩・空知地方,十勝地方の23区画,24か所であった.このほか文献などに同時期の記録が16区画あった.生息環境では草原と農耕地だけで観察され,出現頻度はそれぞれ10.4%, 3.8%で,ウズラが観察された農耕地には必ず採草地やムギ畑があり,その割合は18,75%(平均47.1,標準偏差19.0)であった.標高では,大部分が標高400m以下で観察された.34年の調査期間中,ウズラは1987年までと1998年以降には観察されたが,1988~1997年の10年間は1991年を除いて観察されず,出現率は1990年代には低くなったが,2000年代になって高くなり,生息数回復の傾向がみられた.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.74-80, 1969
被引用文献数
1

1960年3刀から1961年11月まで札幌市藻岩山の天然林でヒメネズミを採集し, これらを臼歯の磨滅状態によって越冬個体と当年個体とにわけて, 繁殖活動の季節的変化を調べ次の結果を得た。<BR>1.繁殖期は, 1960年には4~9月, 1961年には3~8月であった。<BR>2.繁殖期間中越冬個体が主として繁殖する。当年個体のうち早く生まれ, 体重も越冬個体に近くなったようなものは繁殖活動を行なう。しかし繁殖能力は低く, 個体群の増大には重要な意義を持たない。
著者
馬場 芳之 藤巻 裕蔵 小池 裕子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-60, 1999
被引用文献数
3

日本産エゾライチョウの遺伝的多様性と系統関係を調べるためにミドコンドリアDNAコントロール領域レフトドメイン428bpの塩基配列を決定した.塩基配列の決定に用いた試料は北海道産126試料,ヨーロッパ-ボヘミア産2試料,ロシア-マガダン産11試料の計139試料であった.塩基配列の比較の結果32ヵ所の塩基置換部位が検出され47個のハプロタイプに分別された.<br>エゾライチョウの47のハプロタイプにミヤマライチョウをアウターグループとして加え,近隣接合法による系統樹を作成したところ,種内の差異の検定値が低く,エゾライチョウが全体に連続した大きなクラスターを形成していることが示された.さらに実際の塩基置換部位を介してつなぐネットワーク分析を行ったところ,北海道内のハプロタイプはそのほとんどが1塩基置換で他のハプロタイプとつながっており,ハプロタイプのつながりがよく保存され,最終氷期中から安定した個体群を維持していることが示された.<br>系統樹から推測されるエゾライチョウの分岐時期は,約4万年前と推測され,北海道のエゾライチョウは系統樹で示され,系統が地域間で重複して分布していた.北海道内のエゾライチョウの地域間での遺伝的交流を調べるために,北海道を12地域に分画してそのハプロタイプの共有率を計算したところ,日高山脈と阿寒から知床半島にある1,000m以上の山地が続いている地域がエゾライチョウの移動を妨げていることが示唆された.また12地域のうち試料数が10以上の地域のハプロタイプ多様度を計算したところその全てが0.8以上の高い値を示し,遺伝的多様性が高かった.しかし近年人間活動の広がりとともに生息地の分断や減少が続いており,今後個体群の遺伝的な多様性を保持できるような個体群管理が求められる.
著者
隅田 重義 吉沢 貞一 越田 幹男 藤巻 裕蔵
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.124-132, 1990
被引用文献数
1

1.函館市郊外のトドマツ人工壮齢林で,1977~1989年のうち8年間,クマゲラの営巣を観察し幼鳥数と巣立日を明らかにした。また1989年には,営巣木や巣穴の形態を調べ,糞分析により幼鳥の食性を調べた。<br>2.幼鳥数は2~4羽で,平均3.3羽であった。性比は1:1であった。<br>3.営巣木はトドマツの生立木で,胸高直径は46~51cmであった。営巣木3本のうち,2本は巣穴側に,1本はそれとは反対側に傾いていた。<br>4.巣穴は営巣木に1個で,巣穴の地上高は4.0~5.9mであった。巣穴の出入口は縦径が90~110mm,横径が70~90mm,奥行270~330mm,出入口下端からの深さ360~410mmであった。<br>5.営巣木周辺の立木密度は594本/ha,基底面積は55.7m<sup>2</sup>/haであった。<br>6.育雛後期における幼鳥の主要な食物はアリ類であった。
著者
阿部 学 藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.18, no.84, pp.272-275, 1968

An adult female accompanied by 8 ducklings of <i>Mergus serrator</i> and an female with 3 ducklings of <i>M. merganser</i> were observed swimming over Reservoir Iwamatsu on July 8 and 9, 1964. This reservoir, ca. 3 km long and ca. 800 m wide, lies in the central part of Hokkaido, being surrounded by summer forests of <i>Betula Maximowiczii, Quercus mongolica, Ulmus Davidiana japonica, Cercidiphyllum japonicum, Tilia japonica, Acer mono</i>, etc.; a drag road and a forest railroad run together along its eastern coast (Fig. 1).
著者
小林 茂雄 藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.57-63, 1985
被引用文献数
3

(1)帯広市岩内の落葉広葉樹天然林とカラマツ人工林で1983,1984両年の繁殖期に森林構造と鳥類群集との関係を調べた.<br>(2)天然林は多層構造をもつが,人工林は樹種,森林構造ともに単純であった.<br>(3)天然林の鳥類は21種,14.8つがいで,多様度指数は,3.300であったが,人工林ではそれぞれ12種,11.0つがい,2.084であった.<br>(4)天然林ではアオジ,ハシブトガラ,ヤブサメなど樹上で採餌し,樹洞や樹枝上で営巣する鳥類が優占し,人工林ではホオジロやウグイスなど低木や地上で採餌,営巣する鳥類が優占した.<br>(5)天然林と人工林の鳥類群集の類似度指数は,0.42であった.
著者
藤巻 裕蔵 松岡 茂
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.21, no.91, pp.316-324, 1972

ウトナイト沼とその周辺で,1967~1972年の秋と冬(10月から翌年3月まで)に鳥類の観察を行なった(この調査の一部は,日本鳥類保護連盟の依頼で行なった鳥獣保護事業基本調査である)。この調査で記録した鳥類は65種である。これらの種類の季節変化を明らかにし,このうち水鳥類,ワシタカ類については個体数も調べた。またおもなものについては,種ごとに詳しい観察結果をつけ加えた。
著者
尾内 一信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2117-2119, 2016

<p>日本人の海外渡航者は毎年1,600万人を超え,その中でもアジアなど発展途上国への渡航者が増えている.また,発展途上国での滞在期間が延び,日本ではあまり経験しない熱帯病などの感染症に感染する機会が増えている.日本人の渡航者は,欧米人に比べて海外渡航時の体調不良には無関心であり,準備不足であるので,海外での感染症に罹患するリスクについてさらなる啓発が必要と思われる.</p>
著者
大西 健児
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.139-143, 2011-03-20
参考文献数
14

細菌感染症ではハイチで大流行し日本への侵入も危惧されるコレラ,フルオロキノロンに低い感性を示す菌が増加し治療に困難を伴うようになった腸チフスとパラチフス,ウイルス感染症では発症すればほぼ 100% が死亡する狂犬病,新型インフルエンザへの移行が危惧されている鳥インフルエンザ H5N1,報告数が増加傾向にあるチクングニヤ熱,寄生虫感染症ではアメリカ合衆国やカナダで集団食中毒を起こし,日本でも今後流行地からの帰国者で感染者数の増加が推測されるサイクロスポーラ症が最近注目されている輸入感染症であろう.日本人臨床医にとってこれらの輸入感染症にはなじみの少ないものもあり,診断にはこれらの疾患の存在を思いつくことが重要である.