著者
葉室 和親 荒牧 重雄 藤岡 換太郎 石井 輝秋 田中 武男 宇都 浩三
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.p527-557, 1983
被引用文献数
3

1979年12月の淡青丸KT-79-18航海の際,東伊豆沖海底火山群,大島南方の大室出シ堆,新島東方の新島ウラノ瀬などの海底火山の岩石をドレッジにより採集した.東伊豆沖海底火山群は,岩石の鉱物・化学的特徴により北半部,中部,南部に細分することができる.北半部の岩石はすべて高アルカリソレアイト系列の玄武岩・安山岩溶岩であり,伊豆半島中部東部に分布する東伊豆単成火山群がそのまま海底に延長して孤立した海底火山として分布しているものと考えて差支えない.中部では,低アルカリ(低Na2O)ソレアイト系列の玄武岩が5点のドレッジから発見された.そのうち伊豆大島に近い2点は,伊豆大島火山の玄武岩類に似た鉱物・化学組成をもち,新鮮である.西側の3点の岩石はいずれも風化変質作用を受けており,小角礫の集合として産する.これらは伊豆大島火山や東伊豆単成火山群よりも古い海底火山に属するものと判断される.南部のドレッジ2点からは東伊豆単成火山群南西部のグループの岩石に似た玄武岩が得られた。大室出シは,ガラス質多孔質の新鮮な流紋岩溶岩流から成る平坦な頂部をもつ海底火山と考えられる.山体の中央部に深さ100m,長さ1.5km,幅0.5kmの凹陥地(大室海穴)があるが,その壁からは流紋岩溶岩が採集された.新島ウラノ瀬の南東麓からは,流紋岩溶岩と変質した玄武岩礫,石英閃緑岩礫などが採集された.後者はこの地域を構成する基盤岩類と考えられる.
著者
浜田 盛久
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.41-54, 2016

Izu-Oshima is an active volcano located on the volcanic front of the Izu arc. It erupts island arc low-K tholeiite magma. During the past 150 years it has erupted repeatedly at intervals of 30-40 years. Thirty years have already passed since its last eruption (1986-1987) ; therefore, the next eruption is expected in the near future. The hypothesis that the next eruption of Izu-Oshima volcano is triggered by an aftereffect of the M9Tohoku-Oki earthquake, which took place on March 11th, 2011, is considered. In both the 9th century and the period between the 17th century and the 20th century, volcanism of Izu-Oshima volcano seems to have been activated in association with earthquakes occurring near the volcano. While some eruptions occurred after earthquakes, others occurred before earthquakes. It is possible that regional tectonic stress can trigger both major earthquakes and intense volcanic activity, although this hypothesis should be tested at Izu-Oshima volcano and/or elsewhere. Petrological studies of Izu-Oshima volcano are also reviewed to understand its magma plumbing system, providing useful information to prepare for its next eruption. It is proposed that polybaric crystallization differentiation of H2O-saturated magmas proceeds in both the magma chamber at 4 km depth (~3 wt.% H2O in melt) and the magma chamber at 9km depth (~5 wt.% H2O in melt). The H2O-rich nature of the basaltic magmas beneath the volcano suggests that a future eruption of Izu-Oshima volcano could be highly explosive if dissolved volatiles in melt are not sufficiently degassed from magma ascending through the conduit
著者
中原 竜二 海野 進 渡辺 一樹
出版者
静岡大学地球科学教室
雑誌
静岡大学地球科学研究報告 (ISSN:03886298)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p25-57, 1992-07
被引用文献数
2

伊豆半島と伊豆大島の間の海底には40ケ所以上の地形的高まりが存在して, そのほとんどは海底火山体と考えられている。1991年4月27日から5月1日にかけて海上保安庁水路部によって, この海域に存在する海山の頂上, 約30ポイントから約60個の火山岩, 砂岩, 火山噴出物と砂などから成る集塊岩などがドレッジされた。Na_2O+K_2O-FeO^*(全FeO)-MgO図(AFM図)で示される全岩化学組成から, ドレッジされた火山岩は, よりアルカリ元素に富み, 低いFe/Mg比をもつ局アルカリソレアイト系列と, よりアルカリ元素に乏しく, 高いFe/Mg比をもつ低アルカリソレアイト系列とに分かれる。両系列はその地球化学的, 岩石学的特徴が, それぞれ東伊豆単成火山群, 伊豆大島火山と似ている。これらの高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群から得られる火山岩は低アルカリソレアイト系列の岩石及び伊豆大島火山から得られる火山岩よりもより高いZr/Y比をもっている。マントルの部分溶融の程度が高いほどZr/Y比は低くなる。したがって高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群の本源マグマは低アルカリソレアイト系列の岩石と伊研大島火山よりもマントルの部分溶融の程度の低いマグマに由来していると思われしる。また, 高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群の岩石のZr/Y比はかなり広い組成領域をもち, マントルの部分溶融の程度にもかなりの差がある。この違いはN-type MORBのソースマントルが4〜10%分別部分溶解を起こすことによって説明できる。Zr/Y比の地域変化を見ると, 東伊豆単成火山群(海底火山も含む)は系統的な分布を示さず, 部分溶解の程度も場所によってさまざまであると思われる。したがって東伊豆単成火山群が同一の部分溶解したマントルダイアピールに由来するというモデルは成立しない。
著者
葉室和親
雑誌
地震研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.55, pp.259-297, 1980
被引用文献数
3
著者
都築 佳生 村田 嘉利 佐藤 文明 水野 忠則
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. マルチメディア通信と分散処理研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.55-60, 2003-03-20
参考文献数
5

警察庁の統計によると2002年1〜5月における重要窃盗犯の件数は20万件に迫ろうとしており、年々増加傾向にある。その一方で検挙件数は低下傾向にある。窃盗犯やストーカに対抗するため、一人暮らしの女性を中心にビデオカメラ付きインターフォンを利用して帰宅前に訪問者を確認したい等の自己防犯システムヘの要求が強まっている。ビデオインターフォンとiモード端末とをサーバを介して接続した上で、ビデオカメラ付きインターフォンとPHSを組み合わせたCTI技術の適用により、高セキュリティーを確保しつつリモート通話、自宅周辺の映像モニタリングおよび施錠状況等の遠隔確認を可能とする防犯システムを開発したので報告する。

1 0 0 0 大和高取城

著者
高田徹 谷本進編
出版者
城郭談話会
巻号頁・発行日
2001
著者
早内 玄 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.A_223-A_228, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
13

近年、都市内交通としての索道整備が複数報告され、新たな交通手段としての役割が期待されている。 そこで本研究ではトランスポーテーションギャップの考え方に基づき、所要時間の観点から索道の役割を定量的に明らかにすることを目的とする。はじめに、東京都市圏パーソントリップ調査から得られる手段別所要時間分布と人々が受容する所要時間との比較により、都市内交通において現在、既存交通手段では所要時間が受容されない、またはされにくいトリップ距離が複数存在することが明らかとなった。 次に、世界各都市の索道について、同様の比較によりその受容可能範囲が 0.3km~4.2km であることが明らかとなった。最後に両者を重ね合わせた結果、課題の残るトリップ距離のうちおよそ 2~4km の領域における課題を索道が改善しうることが明らかとなった。

1 0 0 0 OA 明治のお伽噺

著者
巌谷小波 著
出版者
小学館
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1944
著者
坂本 光太
出版者
国立音楽大学大学院
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 = Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.125-140, 2020-03-31

《エシャンジュ Échanges》(1973 / 1985)は、ヴィンコ・グロボカール Vinko Globokar(b. 1934)自身のトロンボーン奏者、即興演奏者としての経験を積極的に使用した金管楽器ソロ作品であり、本人が演奏することを前提として作曲された。「この記譜法はパズルに等しい」という本人の言及からも伺えるように、本楽曲の記譜をそのまま演奏することは困難を極める。本稿の目的は、1973年版と1985年版の2種類の楽譜、1978年と1992年の自作自演録音をそれぞれ比較し、グロボカールの作曲者と演奏者の両面を検討することによって、作曲者本人ではない奏者による《エシャンジュ》演奏実践の可能性を呈示することである。楽譜の分析として、1973年版と1985年版の比較を行った。前者には即興演奏こそ明確に認められていないものの、形式的構造などの様々な実践的アイデアを見いだすことができ、その実演が想定されていることが伺える。それに対し、後者の記譜にはより強固に「音色の研究」という実験精神が前面に押し出され、より理念的であるが、一方でこの作品の即興演奏が認められている。自作自演録音の分析から、部分的に楽譜から抜粋して演奏する部分が存在しつつも、記譜と演奏実践に大きな乖離があるということで明らかになった。いずれの録音も、演奏全体は即興的でありながら、1973年版の楽譜と同じように、形式的構造で統一感を保っている。また、グロボカールは「音色の研究」のために、楽譜に書かれていない様々な工夫を行い、多彩な音色やそれに伴う楽想を実現している。以上二つの分析から、《エシャンジュ》は指定されたプリパレーションを用いた音色の研究のための即興的パフォーマンスであるといえる。楽譜は、具体的な演奏内容が示してあるものというよりは、物理的なセッティング(プリパレーション)の交換による即興的パフォーマンスのための「指示書のようなもの」であると考えたほうがよいだろう。演奏実践において重要なことは、音楽的な強い推進力と音の連続性を持って、全体としてのまとまり・形式感・統一感を保ちながら、様々な工夫をもって音色を追求することであり、それは記譜されたシンボルを正確に再現することに優先する。一方で、記譜されたシンボルは完全に無視されるものではなく、演奏者は記譜から全体の構成――例えば1978年の録音のABAのような形式――の着想を得ることできるだろう。本楽曲の演奏は、楽曲全体の音響自体がノイズであるがゆえに漫然としやすい。しかしそれゆえに様々な個別の音響をまとめ、一つの楽曲に統一する構成が必要とされるのであるのである。
著者
小川 有希子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.96-112,249, 1999-01-31 (Released:2017-10-06)

The purpose of this study was to propose a method of 'qualitative' content anlysis, and to examine its methodological usefulness by relating its results to the viewers' reactions. A televised drama, in which a committed teacher dealt with the problem of bullying the classroom was analyzed, and viewers' reactions to the drama were collected by a questionnaire and summarized. The content analysis was done in the following manner: First, the development of the drama was analyzed and then segmented into units. Second, the units were categorized into three negative stages and two positive stages in terms of the characters' mental state. It was found that this method of content analysis was quite informative for identifying the segments of the problem that probably induced each reaction of the viewers.
著者
増田 金吾
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.471-483, 2014-03-20 (Released:2017-06-12)

本研究は,東京府青山師範学校教諭・赤津隆助と彼の教え子たちとの関連について検討したものである。教え子たちの中でも,特に武井勝雄と倉田三郎の美術教育者としての存在意義は大きい。赤津の指導,並びにそれが彼らに及ぼした影響関係を赤津隆助や教え子たちの執筆した文献等を読み解き,考察した。その結果,赤津は「感じとらせるという方法」により,教え子たちに対し幅広い人格の育成を行い,労苦を惜しまず美術教育界や教育界そして社会に貢献する態度を身をもって教えたこと,また美術教育における思想や方法論として,創造主義を基本としながらも,造形主義と生活主義の美術教育を伝えていたこと,が明らかとなった。
著者
陸田 明智 小倉 由佳理 佐藤 愛子 寺井 里沙 鈴木 崇之 升谷 滋行 宮崎 真至 本淨 学 角野 奈津
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.276-282, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
25

目的 : レジンペーストの保管温度条件がその硬化物の機械的性質に及ぼす影響について, 曲げ特性および表面硬さを測定するとともに, レーザー顕微鏡を用いてコントラクションギャップの観察を行うことによって検討した.  材料と方法 : 供試したレジンペーストは, ユニバーサルタイプのEstelite Σ Quick, BeautifillⅡ, Filtek Supreme UltraおよびSolareの4製品, インジェクタブルタイプのMI Fillの合計5製品とした. レジンペーストの保管温度条件は, 5℃冷蔵庫保管 (冷蔵条件), 23℃室温保管 (室温条件) およびコンポジットレジン加温器を用いて45℃にした条件 (加温条件) の合計3条件とした. これらの保管温度条件で硬化させた試片について, 曲げ強さ, 曲げ弾性率およびヌープ硬さを測定するとともに, レーザー顕微鏡を用いてウシ抜去歯にレジンペーストを充塡した際のコントラクションギャップの観察を行った.  成績 : レジンペーストの保管温度条件が, 曲げ強さおよび曲げ弾性率に及ぼす影響は, いずれの製品においても, 冷蔵条件と比較して室温および加温条件で有意に高い値を示した. ヌープ硬さについては, いずれの製品においても, 冷蔵条件と比較して室温および加温条件で有意に高い値を示したが, その傾向は製品によって異なるものであった. コントラクションギャップの観察については, いずれの製品においても, 冷蔵条件においては窩洞隅角部にギャップの形成が顕著に観察されたが, 室温条件ではギャップ幅が減少し, さらに加温条件では, ほかの条件と比較してギャップ幅の減少が観察された.  結論 : レジンペーストの保管条件としての環境温度は, その機械的性質および窩壁適合性に影響を及ぼすことが示唆された.