著者
守山 正樹 鈴木 清史
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing = 日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-12, 2020-03-31

看護師にとって手の働きは重要であり、触れる技術としてのタッチは看護の基本技術と位置付けられる。しかし看護の初学者に対し、技術としてのタッチの教育を急ぐ前に、タッチの基礎となる「手で対象に触れ感じ考えることの意味」をどのように教育したらよいだろうか。国内外の文献を検索したが、適切な先行研究が見当たらなかった。そこで看護大学の初年次教育用に新プログラムを開発した。 開発に当たっては、筆者が1990 年代から医学生を対象に行ってきた視覚障害体験実習の1プログラム「身の回りの物体に触れて考える」を出発点とした。少人数の設定では、学生は様々な物体(複雑な日用品から人間の手肌まで)に触れて考えることができる。しかしこの設定を大教室に適用するのは難しい。大教室で実行するためには工夫が必要である。飽きることなく触れ続けられ、様々なことを考えられる物体は何だろうか?学生がその指先から"人間性"や"看護の概念"に至るまで、思考を拡げることは可能だろうか? 試行錯誤の結果、気泡緩衝材(通称プチプチ)に注目した。プチプチは独特なアフォーダンスを持っている。通常はプチプチを渡すと学生はすぐにそれを潰し始める。しかし「なぜ潰すのか?それを命と考えても潰せるか?」などの問いを投げかけると、学生は触れることの意味を考え始める。プチプチにナラティブな問いかけを組み合わせ、新教育プログラムとした。2019 年6 月、学生120 名に対して新プログラムを実施した。学生はプチプチを教材として受入れ、"触れることの意味"から"看護と人間性"に至るまで、自律的に思考を発展させたことが観察された。報告 = report
著者
神田 英宣
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2017

東京海洋大学修士学位論文 平成29年度(2017) 海洋管理政策学 第2811号
著者
樋口 照男 木村 明 林田 真和 舘百 合子
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1455-1460, 1986-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
14

当科では1980年1月より1985年8月までの間に685例の患者に対し計1, 194回の経直腸的超音波断層検査を行い, 得られた断層像より前立腺重量, 前後径左右径比, 仮想円面積比等を計測してきた。前立腺癌症例19例, 手術適応となった前立腺肥大症症例42例, 前立腺炎症例145例, 正常例180例の計測結果を集計し, 以下の知見を得た.1) 前立腺炎症例では正常例に比べ, 重量は低値, 前後径左右径比, 仮想円面積比は高値を示したが, いずれも有意ではなかった.2) 前立腺癌症例, 前立腺肥大症症例とも, 正常例, 前立腺炎症例に比べ, 重量, 前後径左右径比, 仮想円面積比がいずれも有意に増加していた。3) 前立腺癌症例では前立腺肥大症症例に比べ, 前後径左右径比, 仮想円面積比の増加の割に重量があまり増加せず, また仮想円面積比が同程度であっても前後径左右径比がより増加していた.
著者
堀口 良一
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011

論人博第35号
著者
佐藤 忠恭
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.78-86, 2018-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
28
被引用文献数
1

これまで,情愛や無意識がどのようなしくみで農業において作用しているのか,特に暗黙知の観点から詳細に整理した研究はない.ゆえに,近年のICT等を活用した急進的な農業近代化に潜む問題は明確化しておらず,是正策は明らかとなっていない.本稿では,情愛と無意識による感知が農業における技能の構成要素となっていること,及び,情愛が暗黙知の獲得に果たしている役割について論じた.その上で,情報科学の過度な適用が,農業者による対象の客観化の傾向を強めることにつながり,農業者個々人を暗黙知の獲得から遠ざける課題について指摘した.熟練農業者の技能継承を支援するにあたっては,形式知化に偏らず,暗黙知の獲得による継承と,それを支える徒弟制度,習俗,思想,文化,それらを維持する村落共同体をも視野にいれた,総合的なアプローチが必要である.
著者
中馬 充子
出版者
大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター
雑誌
学校危機とメンタルケア (ISSN:1883745X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.21-32, 2011-03-31

本論は、我国において安全運動の世界を切り開こうとした安全第一協会機関誌『安全第一』の安全思想史上での位置づけを、曾頭内田嘉吉の安全観に基づいて考察することを試みるものである。安全運動が始まった1910年代に、従来の社会通念即ち、事故は本人の不注意によってのみ起こるという考え方は修正され、事故が起こる原因を他に求める意識改革のなかで、安全第一協会機関誌『安全第一』の主張は、以下の諸点で先見性が高く先駆的であったと評価できる。1確率は低くとも事故は起こり得るものとして、事故彙報と統計表を多用することにより、情緒的議論を排し、論理的な議論のできる場を提供した。2物質的安全装置と精神的教養の必要性を指摘すると共に、富国強兵を意図しながらも共同の利益を求めようとした。3小学校期から安全思想を育むことの重要性を指摘した。
著者
堀口 良一
出版者
近畿大学法学会
雑誌
近畿大学法学 (ISSN:09164537)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.188-162, 2005-03

[目次] はじめに, 1.人道主義的概念としての「安全」, 2.「安全」概念の多様化, 3.安全運動と能率増進運動, 4.「経済問題」と「人道問題」の矛盾, おわりに本文データは, CiNiiから複写したものである。
著者
齊藤 康則
出版者
地域社会学会
雑誌
地域社会学会年報 (ISSN:21893918)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.61-75, 2016 (Released:2017-05-15)
参考文献数
16
被引用文献数
2

In regional and community studies, there have been many researches about communities in temporary housing since the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake. Sociologists, focusing on the period when disaster victims moved into prefab temporary housing, discussed the organization of tenants’ associations and support networks of volunteers. In contrast, they paid little attention to the development of these associations and networks. As the evacuation period is prolonged, victims not only live in temporary housing but also come to settle in the very area where it is located. This point seems to be lacking in existing sociological studies. In the 2011 Great East Japan Earthquake, more than 52,000 prefab temporary housing units were built in three disaster-stricken Iwate, Miyagi, and Fukushima Prefecture. The government of the day tried to move each disaster-hit community into each temporary housing complex in order to avoid harming pre-disaster neighborhood relationships. However, owing to the widespread evacuation, those who have different local backgrounds and various disaster situations separately moved into the same temporary housing especially in urban areas they flowed into. Moreover, such an organization policy from the government might have influence on their autonomous activities. Based on the above, this paper takes up a temporary housing complex “Asuto Nagamachi Kasetsu Jutaku” in Sendai-City, which many victims separately moved into. In this complex, people met with some neighbor problems in the beginning, but worked out health support activities and made a proposal of disaster public housing with aid from nonprofit organizations and professional volunteers. This study focuses on the transformation of their life problems and support networks by four time periods: moving into temporary housing, making relationships between victims, doing autonomous activities, and moving from temporary housing.
著者
本田 和也 川田 耕太郎
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = BULLETIN OF KAGOSHIMA WOMEN’S COLLEGE (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
no.58, pp.69-73, 2021-02-28

近年,障害のある幼児の動向として,幼稚園や保育所,幼保連携型認定こども園において,障害のある幼児が在籍しており,特別支援教育の対象となる幼児の数は年々増加傾向にある.「幼稚園教育要領解説」等では,障害のある幼児の障害の種類や程度を十分に理解して指導内容を設定し,指導方法の工夫を行うことが求められている.本研究では幼児教育段階での障害のある幼児への指導のあり方について検討した.特に,指導内容や指導方法における自立活動の有効性について,質問紙による調査を通して分析した.その結果,保育現場において,自立活動の理解が進んでいないことが示唆された.しかし,保育者への自立活動の理解を促すことが,指導の有効性へとつながることも示唆された.
著者
小野 紘平 小中 英嗣
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.138, no.5, pp.627-634, 2018-05-01 (Released:2018-05-01)
参考文献数
13

Differential equations are considered to be a fundamental tool in many areas of engineering. The goal of our project is to develop an education system that teaches differential equations, in which exercise and assessment problems are automatically generated and delivered to the students. A student's comprehension is identified using his or her answer history record of past answers, and problems at the appropriate level of difficulty are selected and delivered to the student. The proposed education system is implemented by MATLAB.Item characteristic parameters of each class of problem are equated using test result from 183 students in advance. The implemented proposed system has been examined by 13 examinees in 4 weeks. The experimental results show that the proposed system can deliver suitable problem for each student, and all students can improve their performance on solving differential equation through the experiment.
著者
内田嘉吉 述
出版者
文豊社
巻号頁・発行日
1919
著者
三神 厚 神山 眞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_133-I_138, 2018

東北地方太平洋沖地震によって,東北の太平洋岸の広い範囲で地盤が沈降し,多くの漁港で岸壁の嵩上げ工事が実施されたが,本震後の余効変動(隆起)が漁港施設に影響を及ぼしており,嵩下げ工事を実施する漁港も現れた.漁港の被災から復興に至る過程が高精度の地殻変動データとともに得られていることは過去にない特徴である.本研究では余効変動を伴う巨大海溝型地震による震災からの合理的な復興へ活かすための貴重な教訓を抽出すべく,東北の地震により漁港に生じた様々な不都合や,それに応じた関係機関の対応をヒアリング調査等から明らかにするとともに,地殻変動の推移とともに時系列で整理した.その結果,本震後,すぐに隆起に転じた地域では,漁業の継続性を確保するための段階的な復興工事が結果的に有益であったこと等が明らかになった.
著者
塩瀬 隆之 川上 浩司 片井 修
出版者
脳機能とリハビリテーション研究会
雑誌
脳科学とリハビリテーション (ISSN:13490044)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-13, 2008 (Released:2018-11-13)

製造業, 伝統産業, 医療現場を問わず, あらゆる局面の最後にその成否を左右するのは, 円熟したベテランがもつ卓越した技である. この熟練の技が, いま失われようとしている. 2007年問題として知られる団塊世代の大量退職や, 構造的な後継者不足, 慢性的な人手不足を背景に, それら熟練の技を次世代に伝える方法の模索が急務である. しかし, 熟練の技は言葉にすることが難しく, また安易な形式化によりその価値が失われることも危惧される. 翻って徒弟制度やOJT(On the Job Training)に対する期待が高まるものの, 無責任に見習いを現場に放り込むこととの明確な差異を見いだせずにいる. 本稿では, 技能を形式化することの功罪, 徒弟制度の功罪を整理し, 技能継承を成功裏に進めるために, 技能を伝える側/受け取る側のそれぞれが意識すべき点を考察する.
著者
宮本 一巧 塩瀬 隆之 阪上 雅昭
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2B2OS19a04, 2018 (Released:2018-07-30)

理学療法士,作業療法士が治療の中で行う「ハンドリング」は,経験主義的な部分が多く,その技術を他者に伝達していくには困難を伴う.本研究は,リハビリテーション領域での患者の起立動作の治療に対するハンドリングにおいて,熟練者が持つ特徴と,そこから推測可能な「コツ」を検討した.対象はセラピスト役として18年目の作業療法士 (以下,熟練者)と作業療法学科学生の2名,患者役として仮想片麻痺者を想定した健常者2名とした.熟練者は患者との距離を大きくとりながらも,終始,セラピストと患者の距離間を一定にすることで起立動作に重要な前方への運動を誘導していたことが示唆された.その特徴を支持していたのは上肢運動の自由度を抑え,下肢運動の自由度を大きくするという全身の協応構造にあった.一方,このような身体構造は古武術などの武術的な身体運動の特徴にも見られる.そこで,古武術的な要素を取り入れた他者の上体起こしと一般的なそれを比較した結果,古武術の方が,頭と肩・肘・手との距離を小さくして身体操作を行っていた.