著者
瀬尾 美紀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.441-455, 2005-12
被引用文献数
3

本研究は, 学習上の援助要請を促進する介入方法を考案し, その効果を検証することを目的とした。まず, 予備調査において, 援助要請に必要な要因を学習者に尋ねた結果, 主に自己のつまずきを明確化することと, 時間や場所の確保のような環境要因が挙げられた。研究1では, 自己のつまずきを明確化するためのつまずき明確化方略の使用と, 先行研究で影響が示されてきた達成目標や援助要請に対する認知が, 援助要請とどのように関連しているか質問紙調査によって検討した。その結果, 習得目標がつまずき明確化方略を媒介して援助要請と関連することが明らかになった。予備調査と研究1の結果を受けて, 研究2では, 高校2年生を対象に, 質問生成に対してつまずき明確化方略を教授する介入授業を行い, 方略教授の効果について検討した。その結果, 方略を教授することによって, 質問生成量の増加が, 数学の学力の高い集団で確認された。一方, 数学の学力に関係なく, 数学の学力の高い集団と低い集団の両方で, 一般的な質問は減少し, 内容関与的質問が増加して, 質問生成の質的な向上が確認された。
著者
垰田 宏
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.259, pp.34-70, 2001 (Released:2011-03-05)
著者
大村 英史 片上 大輔 湯浅 将英 小林 一樹 田中 貴紘
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.2K4OS14a4, 2015 (Released:2018-07-30)

雰囲気は環境から知覚される情報の総体であり,知覚される情報を定量的にコントロールすることは,任意の雰囲気のコントロールと同義であると私たちは考える.この考えから,エントロピーに基づいた確率分布により,人が知覚する情報量を操作するシステムを実現した.このシステムを音楽,表情,図形といった異なるメディアに実装したところ,定量的に人が知覚する情報を操作でき,さらに雰囲気の制御が可能であることを確認した.
著者
石森 広 斉藤 満
出版者
公益社団法人日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.997-1002, 1997-06-09

静的および繰返し圧縮載荷を受けた軽量骨材コンクリートの塩化物イオン透過性をAASHTOT-277に基づく急速塩化物イオン透過性試験法を用いて検討した。荷重レベル100%に至るまでの静的圧縮載荷を受けた軽量骨材コンクリートの塩化物イオン透過性は、荷重無載荷の場合と大差ない結果となり、115万回に至るまでの荷重繰返しもまた軽量骨材コンクリートの塩化物イオン透過性に大きく影響しないという結果が得られた。これらの結果は、すでに公表した静的および繰返し圧縮載荷を受けた普通骨材コンクリートの塩化物イオン透過性とは大きく異なるものであることが明らかになった。
著者
上野 優 新居 雅行
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2021-SE-207, no.37, pp.1-8, 2021-02-22

計算機科学の実験環境として Jupyter Notebook が広く使われているが,その計算機クラスタの管理は一般的に容易ではない.一方,クラスタ管理不要で需要に応じた計算資源の利用を可能にするクラウドサービスの一つとして FaaS がある.しかし Jupyter Notebook で書かれた手続き型プログラムを FaaS で実行しようとすると,FaaS のリソース割り当てが他のサービスに比べて小さいため,多くの場合実行できない.本稿ではこの問題に対して,一連の手続き型プログラムを細かく分割することにより,リソース割り当て制限内に収める手法を提案する.さらに提案手法に基づいて既存のノートブックの分割を行い,その機能性と効率性を評価した.
著者
佐々木 裕介 関口 敦二
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2021-SE-207, no.31, pp.1-8, 2021-02-22

ラピッドリリースを前提として Microservice Architecture (MSA) で構築したシステムを複数の組織で運用する場合,複数の組織が様々な設定変更を MSA システム上で同時に実施する.しかし,複数の同時変更に起因するテストの失敗,すなわち障害を解決することは困難である.本論文では,サービスメッシュの構成変更時,特に性能にかかわる障害に関して,障害原因の切り分け作業を網羅的かつ効率的に行う手法を提示する.本手法は,複数の設定変更を組み合わせた場合にのみ再現する障害について,効率的に原因箇所を特定できる.
著者
神谷 典男 北本 憲永 西條 幸志 高岡 伸次 鈴木 克尚 鈴木 智代 高柳 綾子 小出 昌秋 野地 智 打田 俊司 石橋 信之
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-68, 2002-03-01
被引用文献数
2

【要旨】近年,無輸血開心術は広く行われ,体外循環の血液希釈の影響を最小限に努めるために,各施設では様々な試みがなされている。今回我々は,回路径を可能な限り細くし,回路長の見直しと当施設で考案した体外循環回路組み込みシート(衛生シート)を成人用回路にも応用し,開放および閉鎖型の両回路の低充填化を試みた。その結果,2000年7月までの開放型回路充填量はリザーバレベル200mlの時56kg以上で1,100ml,55kg以下で985mlであったのが,開放型回路では56kg以上で722ml,55kg以下で635mlとなり,症例によっては更に術野側回路を短くすることで565mlとなった。また,閉鎖型回路の充填量はリザーバレベル100mlで780mlとなった。低充填化には閉鎖型の方が理想的と考えていたが,実際は気泡除去能力の高い材料が必要で選択が限られてしまい,結果的に開放型の方が低充填量となった。現段階において低充填化には開放型の方が最適と考えられた。
著者
和田 尚樹 ベリシェフ ミハイル
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.237, 2009

密度不均質な弦を辺とする有限グラフを考え,そこにおけるサイクルの存在の特徴づけに関する逆問題を論じる.本研究では,グラフ上でのLaplacinの固有値と固有関数の境界における値を既知とし,BC法に基づき波動方程式の解の性質を用いた手法を提案する.
著者
早川 智
出版者
診断と治療社
雑誌
産科と婦人科 (ISSN:03869792)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.98-101, 2005-01
著者
磯野 美奈子 江郷 功起 山下 満博 井形 竜也
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.263, 2011

【はじめに】<BR> 今回予後6ヶ月の終末期乳がん患者の上肢リンパ浮腫に対し、複合的理学療法(以下CDP)にて浮腫の改善に加え、QOL、心理的苦痛の改善を認めた。また、終末期に寄り添う家族にもCDPが心理的サポートやポジショニングに効果的であったためここに報告する。<BR> 尚、本報告に関しては本人、家族より同意を得ている。<BR>【症例】<BR> 57才女性右乳ガン、肝転移、Stage4期。2009年10月右胸筋温存術、レベル1郭清、植皮術施行。2010年11月脳多発転移にて放射線治療を施行し、3週間の入院。予後6ヶ月と家族へ告知。2011年1月食欲不振、症状増悪にて入院。同年2月中旬永眠される。家族は息子と2人暮らし、県内に娘2人、趣味は手芸、オカリナ演奏である。<BR>【経過及び結果】<BR> 脳転移による入院後用手的リンパドレナージ(以下MLD)と集中的な圧迫療法、圧迫下での運動療法、セルフドレナージを追加し、セルフケア習得を指導し退院後も継続した。退院後はスリーブへ変更し指のみの圧迫包帯にて、自己管理を行った。周径は手掌部が最大15cm減少。握力は左右差がなくなり、STEFは治療開始時86点退院時91点、慈恵リンパ浮腫スケールの機能は開始時20点退院時55点退院2週後87点、感覚は開始時18点終了時67.5点退院2週後85点、美容は開始時28点終了時79点退院2週後67点、心理的苦痛は開始時43点退院時68点退院2週後90点と特に退院後の点数の改善にはADLで使用する中で機能面のみならず満足度を実感された結果となった。調理動作では皮むきなどの包丁動作、趣味の手芸では針の操作などの巧緻性が改善され約1か月間自宅生活を送ることができた。症状が増悪し、入院後は意識レベル100~200/JCS、理学療法は浮腫の観察、必要に応じてMLDと圧迫療法、ROM練習、ポジショニングを計画した。浮腫改善に喜ばれていたことを知る家族は、浮腫の増強に敏感でスリーブの着用を希望された。輸液の量も多く、四肢への浮腫増強から広範囲なMLDは施行できなかった。「怖くて触れない」と顔と手指を清拭するだけであった家族へCDPの基本でもあるスキンケアに加え軽擦、指のドレナージ、ポジショニングを指導、施行し、浮腫、褥瘡、拘縮が予防できた。<BR>【考察】<BR> リンパ浮腫は終末期乳癌に合併する頻度が高い。今回の症例を通し、常に存在する浮腫がどれだけ心理的苦痛となっているかが分かった。終末期のリンパ浮腫に対するCDPには運動機能の改善、心理的苦痛の改善、QOLの向上、緩和治療としての疼痛改善、緊張の緩和、精神的な支援が期待できる。また、終末期に寄り添う家族の「何かしてあげたい。」という気持ちにも応えるアプローチとして心理的サポートにも効果的であった。CDPは終末期の患者、家族それぞれにおける多様な状況にも対応できるアプローチとして有用ではないかと思われた。