著者
赤川 陽子 木村 直子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.56-66, 2019 (Released:2019-12-13)
参考文献数
17

本稿は,保育士のバーンアウト状況をもたらす原因を職場でのストレス要因から明らかにし,具体的な職場環境の改善を提案することを目的とする。結果,次の3つのことがわかった。⑴休憩時間の取得時間が短い保育士ほど疲れている。勤務中の休憩時間は少なくとも30分の取得が必要である。⑵自宅への持ち帰り仕事については,週4日まではストレスを溜め込みながらもバーンアウトへの影響を認められず,週5日になるとバーンアウトに直接的影響がある。⑶持ち帰る仕事の内容が,本来職場で完遂する内容の場合はストレスと感じているが,保育士自身のスキルアップにつながる自主研究であればストレスと感じず,やりがいや満足感を感じていることがわかった。

1 0 0 0 数理科学

出版者
サイエンス社
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 1995-01
著者
相馬 優樹 片嶋 充弘 倉内 静香 沢田 かほり 徳田 糸代 駒目 瞳 村下 公一 中路 重之
出版者
日本栄養・食糧学会
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.19-26, 2019 (Released:2019-06-21)

本研究は,職域における健康教育プログラムがメタボリックシンドローム指標に及ぼす効果を検討することを目的とした。参加者は,青森県弘前市に事業所を置く3企業の社員92名とした。参加者は介入前の健康チェック後,3カ月間の健康教育プログラムに参加し,介入後の健康チェックを受けた。プログラムは,月1回の内臓脂肪面積の測定によるモニタリング,内臓脂肪低減を意図した食教育,およびそれを補助する職域給食としての弁当の提供の3要素で構成されていた。介入前後で,参加者の腹囲,内臓脂肪面積,収縮期血圧が改善しており,男性においては体重も減少していた。弁当の提供だけでなく,モニタリングや食教育も含めたメタボリックシンドローム対策プログラムにより,食生活全般の改善を介して効果が得られると考えられた。
著者
上野 千鶴子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2-17, 1975-11-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
35
被引用文献数
1

レヴイ=ストロースの構造主義は、一九五八年『構造人類学』に見る公認の教義から、その客観的な構造を剔抉されなくてはならない。私見では、彼のアプローチは、階梯モデル、同型説、システム論的思考を特徴とする、合理主義的理解の方法の一典型であり、この観点からは「メタ=ストラクチャー」は、当該の事象を、より一般的・整合的な構造のうちに置換する上位モデルと解される。だとすれば、メタ=ストラクチャーを無意識の実在に等置する先験主義からも、これに発達を拒否する無時間モデルからも、私たちは免れることができる。彼自身及び彼の祖述家達の、方法をめぐる様々な錯綜した議論よりも、彼自身の構造分析の実際が、何よりも雄弁にそれを実証しているすなわち、メタ=ストラクチャーは、文字通り「系の系」として上位構造なのであり、理解とは、この構造を構成する手続きそのものなのである。これが、認識の発達モデルを提供するピアジェの構造主義が主張することであり、同時に、構造主義的思潮を、西欧合理主義の伝統の最も多産な果実とする方途である。
著者
坂井 志織
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_55-4_63, 2008-12-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
7

脳卒中後遺症でしびれを患った人々がどのような体験をしているのか,またその体験にはどのような意味があるのかを,日常生活での体験を記述することで明らかにすることを目的とし,半構成的面接を行い質的記述的に分析した.分析の結果,以下のことが明らかになった.参加者はしびれのため生活動作が不確かなものとなり,加えてからだによって無意識に行われていた生活空間の把握にも困難さがみられた.そしてこのような生活を積み重ねることは,自己を支える基盤を揺るがせる可能性を孕んでいることが示唆された.また,しびれ特有の認識様式として,しびれがあることや動作が以前のようにはできないことをその都度認識させられるという特徴がみられた.さらに,注目すべきことは,「慣れる」というプロセスが当事者の視点から明らかになったことである.それは,動作に応じた工夫を日々繰り返すことで再びからだが覚えていくことであり,からだが自然に覚えていく,つまり身体化されるがゆえに慣れたことを自覚しにくいという特徴がみられた.この身体化により,しびれ自体の症状改善が難しくとも,できない動作が減ることで生活の中で感じていた苦痛が軽減されることが示唆された.
著者
劉 璐 佐々木 和郎 椿 郁子
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会研究会講演予稿 画像電子学会第285回研究会講演予稿
巻号頁・発行日
pp.303-306, 2018 (Released:2020-07-01)

本研究は、MAD動画による二次創作の手法を活用して、クラシック映画などの古いコンテンツの普及に役立てる方法を提案し検証するものである。まず各種MAD動画の事例を収集しそれらを世界観や創作手法によって整理分類する。従来、MADムービーは、アニメのファン層などによる娯楽として作成される存在だった。現在では、音楽コンテンツの鑑賞手段として、世界の音楽ファンに広がっている。一方で、拡大する映像コンテンツ市場の中で古典的映画作品を鑑賞する人口が減少しているという問題がある。本稿では、この現状を改善するために「MADムービー」という二次創作物を手段として、古典的作品の再活用することで商業価値を高め、現代にも通用する方式で紹介し普及することを目指した。
著者
松方 冬子
出版者
東京大学連携研究機構ヒューマニティーズセンター
雑誌
Humanities Center Booklet (ISSN:24349852)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-4, 2020-07-10

「社会科学と人文学の対話――『国書がむすぶ外交』総論を素材に」東京大学ヒューマニティーズセンター オープンセミナー特別回より
著者
吉田 啓晃 木下 一雄 平野 和宏 中山 恭秀 角田 亘 安保 雅博 河合 良訓
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3040, 2009

【目的】<BR>人工股関節全置換術症例は、下衣更衣動作や靴下着脱動作の獲得に難渋することが多い.その際、股関節屈曲・外転・外旋の複合的な可動域の拡大が求められる.臨床経験上、このような動作時に大転子後面の痛みを訴える場合があるが、我々が渉猟しえた範囲では、疼痛因子を検証した報告は見当たらない.今回、股関節の局所解剖を行い、股関節後面とくに股関節深層外旋筋の構造を観察した.股関節屈曲・外転・外旋運動において、外旋筋の一つである大腿方形筋の伸張が制限因子となりうるという興味深い知見を得たので報告する.<BR>【対象と方法】<BR>東京慈恵会医科大学解剖学講座の解剖実習用献体2体4肢(78歳男性、84歳女性)を対象とした.ホルマリン固定した遺体の表皮及び結合組織、脈管系、表層筋を除去し、深層外旋筋と呼ばれる梨状筋、上・下双子筋、大腿方形筋、内・外閉鎖筋筋と関節包を剖出した後、大腿骨は骨幹部1/2で切断した.遺体は観察側を上にして側臥位に固定し、股関節を他動的に屈曲、外転、外旋させた時の外旋筋群の伸張の程度を観察した.尚、肉眼で観察する限りでは4関節ともに股関節の変形は認められなかった.<BR>【結果】<BR>股関節中間位(解剖学的肢位)からの外旋に伴い深層外旋筋群はすべて弛緩した.一方、屈曲に伴い梨状筋及び大腿方形筋が伸張され、外転に伴い梨状筋、上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが大腿方形筋、外閉鎖筋は伸張された.複合的な運動では、屈曲位からの外転では梨状筋や上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが、大腿方形筋は伸張され、さらに外旋が加わると大腿方形筋は最大限に伸張され、筋線維が切れる程であった.とくに大腿方形筋を上下部の二等分した場合の下部の線維で顕著であった.<BR>【考察】<BR>骨盤と大腿骨の相対的な位置関係と筋の走行により、股関節に関する筋の作用や筋による関節運動制御は多様に変化する.解剖学書での筋の作用より、解剖学的肢位からの屈曲は梨状筋・内閉鎖筋・大腿方形筋が、また外転は大腿方形筋と外閉鎖筋が関節運動を制御すると考えられる.その中で屈曲・外転ともに制御するのは大腿方形筋であり、屈曲と外転の複合的な運動では大腿方形筋が伸張されたという今回の結果を裏付ける.さらに屈曲・外転位からの外旋では、外旋筋とされる大腿方形筋が伸張された.外転位からの外旋は、大転子後面を背側から尾側に向ける運動であり、大腿方形筋の停止部を遠ざけるため、とくに大腿方形筋の下部線維が伸張されたと考えられる.<BR>変形性股関節症による人工股関節全置換術症例では、手術の展開において大腿方形筋は温存されることが多いが、術中操作により過度のストレスがかかり、術後の関節運動時に大転子後面に痛みが生じることも予想される.今後は術中の様子も含めて、関節運動時の疼痛因子を検討する必要がある.
著者
中島 達弘
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.42-46, 2010 (Released:2019-08-31)

20世紀のアメリカ文化を顧みるとき、現代芸術家でありトラン スパーソナル占星術師、詩人であり思想家でもあったデイン・ル ディア(1895-1985)のユニークな生涯と業績はそのままアメリ カの移民社会、脱土地化の歴史、複合文化・人種混合・多宗教・ 多言語のマルチチュードを一元化するアイデンティティー形成の 問題を特徴付けている。本論文ではルディアの自/伝記を調査す る。人間性占星術とトランスパーソナル占星術の差異、また変容 のトランスパーソナルな過程についても探求する。
著者
Rojeet Shrestha Hitoshi Chiba Shu-Ping Hui
出版者
Japanese Society for Biomedical Mass Spectrometry
雑誌
Medical Mass Spectrometry (ISSN:24327441)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.2-23, 2020-06-25 (Released:2020-09-08)
参考文献数
176

Lipids are ubiquitous in the human body, playing diverse biochemical and physiological functions. Unfortunately, lipids are susceptible to oxidation in vivo by free radicals. Lipid hydroperoxides (LOOH) are one of the primary products of lipid peroxidation which play a crucial role in the pathogenesis of oxidative stress, inflammation, and atherosclerosis. Understanding the underlying molecular mechanism of these diseases is critically important for risk stratification, prevention, and therapeutic intervention. Despite its importance in the atherosclerotic process, the qualitative and quantitative evaluations of LOOH in the biological samples have been largely limited, because of structural variability, instability and rapid clearance from circulation. Application of liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS) has revolutionized the study of lipidomic and eased the identification and quantification of hundreds of molecular species of oxidized lipids derived from fatty acids, cholesteryl esters, triacylglycerol and phospholipids in various biological samples. In this review, we will be discussing oxidized lipid species in human lipoproteins, its analytical consideration and significance. An overview of lipids and its oxidative products in lipoproteins, technological advances its identification and quantification using mass spectrometry, and its possible linkage to disorders of lipid metabolism will be discussed.