著者
堀由蔵編
出版者
名著刊行会
巻号頁・発行日
1974
著者
平尾 智隆
巻号頁・発行日
2017-06

要 旨本研究の目的は,キャリア教育が就職結果へと続くキャリア意識に与える影響を統計的に検証することにある。キャリア教育は,大学生のキャリア形成に有用な効果を与えているのだろうか。この問いの解明を行うために,本研究では,ある大学で行われているキャリア教育を取り上げ,自然実験による手法を用い,効果測定を試みる。分析の結果,①キャリア教育は就職結果へと続くキャリア意識の向上に正の効果を持っていること,②理系学生は文系学生よりキャリア意識が低いこと,③女子学生の将来に対するビジョン意識は男子学生のそれより低いことが明らかになった。分析結果からは,文系・理系の進路選択特性を考慮したキャリア教育の実施,将来において男子学生より多くのキャリア選択を行うであろう女子学生に向けたキャリア教育の必要性が示唆される。
著者
角田 世治
出版者
地方独立行政法人青森県産業技術センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

可視光に応答するオキシ水酸化鉄(FeOOH)に着目し、その高活性化を目指し、結晶多形、粒子形状と光触媒活性の関連性を調べた。まず、FeOOHの4種の多形のうち、α-FeOOHが光照射下で最も高い有機物分解活性を有することが判明した。次に、α-FeOOHの粒子形態と活性の関連から、{021}面が高い光触媒活性を有し、この面が多く露出した形態の粒子は活性が高いことを明らかにした。そして、この表面特性に立脚した粒子形態制御により、高活性なα-FeOOH光触媒を得ることに成功した。本研究により、表面特性を考慮した材料設計が、高活性光触媒材料の開発の上で重要な柱になることが示された。
著者
鈴木 茂
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.66-69, 2008-02-15 (Released:2008-08-12)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

鉄さびの形成機構に関する最近の研究について概説した.グリーンラスト(GR)は鉄基合金の中間的な腐食生成物として時々観察されるが,それらは空気酸化によりゲーサイトやレピドクロサイトなどのオキシ水酸化鉄に変態しやすい.これは,GR が二価の鉄イオンを含んでおり,水溶液中で三価の鉄イオンに変化するためである.ここでは,これらの GR の構造や変態の特徴について述べた.
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

インビボ、インビトロの2つの系を使い、動物の模様を人為的に操作(改変)する技術の開発を目指した。インビボ系においては、 CX418遺伝子を変異させてゼブラフィッシュに導入することで、ほぼすべての種類の模様を作ることに成功した。インビトロ系に関しても、培養皿の上で、色素パターンを作るのに重要な細胞間の相互作用を再現することが可能になった。以上に寄り、おおむねこのプロジェクトは成功したと言える
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

目的 動物の形態形成が正確に起きるためには、個々の細胞が胚における自らの位置を正確に知り、分化することが必要である。1952年にチューリングは、「胚の中で化学反応の波(反応拡散波)が発生し、それが正確な形態形成のための位置情報となる。」と提唱した。40年以上のあいだ実例は発見されず、反応拡散波の存在に関しては否定的な意見が強かったが、近藤は、タテジマキンチャクダイの皮膚模様の変化が反応拡散波の理論と一致することを発見し、チューリング理論の実証の可能性を開いた。本研究では「反応拡散波」の分子的実体を迫ることを目的とした。結果 まず、この現象がどの程度の普遍性を持っているかを知るため、タテジマキンチャクダイで観察されたのと同様の模様変化が魚類や他の脊椎動物でも観察できるかを調べた。その結果、模様変化を起こすほとんど全ての脊椎動物で計算機シミュレーションと一致する変化が観察され、全ての皮膚模様は同一のメカニズムで作られている事が強く示唆された。次に、反応拡散波のメカニズムに遺伝的にアプローチする目的で、異なった体表模様をもつゼブラフィッシュのミュータント同士を掛け合わせ、様々なハイブリッドの模様を得た。特にひとつの遺伝子(leopard)に関して、アレル間の模様の違いやハイブリッドの模様が、計算機を使った予測と一致することがわかり、この遺伝子が反応拡散波形成のキーになっていることが強く示唆された。現在クローニングを検討中である。また、最近ではあるが、いくつかの薬剤により表皮模様のサイズをコントロールできることを発見した。それらの薬剤で起きる皮膚の変化を解析することにより、反応拡散波の分子機構に直接迫ることが可能かも知れない。
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

魚類には、皮膚にストライプ模様を持つものが多い。ストライプの形成原理に関しては、その成長に伴う変化から、反応拡散モデルが適用できることが解っている。しかし、その分子、遺伝子レベルの解明は未だなされていない。ストライプ発生のメカニズムを考えるとき、その波が発生する場についての情報が必須であることはもちろんであるが、魚の皮膚に関しては、その皮膚構造と模様との関係は明らかになっていなかった。そのため、本年度は光学、電子顕微鏡を使い、皮膚の微細構造が模様とどのようなかかわりがあるかについて検討することを目的とした。研究対象としては、今年からはプレコストムスに加え、zebrafish, Genicanthus類のキンチャクダイを用いた。顕微鏡による詳細な観察の結果、皮膚内の微細構造は普段外から見ている模様の部域差以上に複雑であることがわかった。特に、インターストライプの領域が3つに分かれていることが判明し、目に見えるメラノフォアの分布以上に複雑な構成になっていることが解った。さらに、皮膚内のそれぞれの層に存在する細胞群の同定を行った結果、多くの場合メラノサイトよりも、iridophoa(銀色の反射板を持つ細胞種)が構造の細かい部域差を見せていた。今後、模様形成に関与する細胞の候補として注目すべきである。また皮膚内に存在する鱗の基部が縞模様の方向性に関与することが明らかとなった。
著者
近藤 滋 後藤 寛貴
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

研究はカブトムシとツノゼミの2つを対象にして、原基折り畳みと成虫の3D形態との関係の解明を目指している。カブトムシ:28年度の主な進展は、角原基の折り畳み構造が、蛹角の完全な3Dを内包していることを証明できたことである。実験は3通りの方法で行った。まず、終齢幼虫の頭の殻を取り除き、腹に圧力を与えることで、原基が膨らみ、蛹角の形状になることを証明した。次に、その変形に細胞シートの伸展が関与していないことを証明するため、原基を切り出し、ホルマリンで固定したのちシリコンチューブに固定し、空気を送り込んで膨らますことで、正確な蛹角ができることを示した。最後に、連続切片から取得した原基の折り畳み形状を、計算機の中で膨らませることでも、同じ変形が起きた。この結果から、蛹角の完全な3D構造は、角原基の折り畳みにコードされていることが完全に証明された。(論文審査中)ツノゼミ:コスタリカに研究員を派遣し、最も注目しているヨツコブツノゼミの採集に成功している。また、羽化直前の幼虫も少数ながら確保しX線CTにより、折り畳み形状のデータを取得できた。まだ、解析は十分ではないが、多種多様の形状を見せるツノゼミのツノが、基本的には似た折り畳み様式を持っていることが示唆され、今後の研究の指針が得られた。技術的な進展:カブトムシ、ツノゼミともに、原基の3D形状のデータ取得方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたが、その成果は十分にあり、今後の研究の加速が期待できる。
著者
小原 雄治 近藤 滋
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

1)モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化・EST配列12万本からエキソン・イントロン構造を確定した12000遺伝子についてwhole mount in situハイブリダイゼーションによる発現パターン解析をおこないクラスタリング解析により共通制御候補遺伝子群を同定した。NEXTDB<http://nematode.lab.nig.ac.jp>で公開し、これをもとにした共同研究を世界中で進めた。・glp-1母性mRNAの翻訳制御メカニズムについて、gld-1,pos-1、spn-4などの複数遺伝子の組み合わせとポリA鎖の伸長によるfine tuningの機構を解析した。・初期発生の細胞配置パターンがC.elegansとは異なる近縁線虫Diploscapter sp.についてcDNAライブラリーを構築し、EST約7万本から約10,000種に分類でき、約5,800種についてC.elegans, C.briggsaeとのオルソログが見出された。初期発生に重要な遺伝子をそろえるために、薄い(1X)ホールゲノムショットガンシーケンシングをおこない、追加約1,000のホモログを得た。発現パターンについてC.elegansとの比較を進めている。・細胞の形状を力学モデルによって構成した胚発生シミュレータ(原腸陥入期の26細胞期まで)を構築し、中心体の動きなどをより正確に再現するような条件を求めた。2)生物発生のコンピュータシミュレーション・模様形成遺伝子のひとつレオパードをクローン化した。
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

以下の新しい知見が得られた。●アドレナリン受容体阻害剤の骨に関する影響に関して1.ゼブラフィッシュでは骨が小さいため、薬剤の影響を細かく調べることができないので、エンゼルフィッシュを使い、特に頭部の骨の形成を調べた。その結果、アドレナリン阻害剤の効果で、頭部の骨が全般的に薄くなっていることが解った。このことは、破骨細胞の活性が亢進していることを示している。2.骨芽細胞特異的に発現するプロモーターでGFPを発現させて、骨芽細胞の分布を調べた。その結果、骨芽細胞の量、分布にはアドレナリン阻害剤は影響しないらしいことが解った。3.トラップ染色により、脊椎周辺での破骨細胞の分布を調べた。その結果、予想通り、破骨細胞の分布に異常が見られた。しかし、その一方で、破骨細胞総量に関しては大きな変化は見られず、そのあたりは頭部骨とのデータが一致していない。●脊椎骨の変形をおこすstp変異のクローニング1.Stp変異(優勢の変異、enuで作られたため、ポイント変異と思われる)とクローニング用の株を交雑して、ポジショナルクローニング法による変異部位の特定を行った。2.22番染色体の一部に、stp変異を持つ個体由来のpcrbandが高い確率(86/88)で出る事が解り、おおよその遺伝子の位置が判明した。3.その領域は染色体の末端にあたるため、候補となる遺伝子は比較的少ない。4.その領域には別の骨形成変異を持つ突然変異の遺伝子(既にクローニング済み)が含まれている。5.Stpの染色体から、その遺伝子をクローニングし、配列を調べた結果、アミノ酸の置換があることが解った。6.今後、さらにF2の個体についてマーカーをスクリーニングすることで領域を絞るとともに、発見された変異遺伝子を含むプラスミドによるトランスジェニックの作成により、変異遺伝子の特定を目指す。
著者
近藤 滋
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

分節パターンを決定するメカニズムを解明する目的で、以下の2つの研究を行った1)ニワトリ胚の分節現象が反応拡散波の性質を有することを示す実験反応拡散系の特徴として、外科的なかく乱に対して修正作用を持つことがあげられる。体節形成に反応拡散の原理が働いているのであれば、胚を変形させても同じ大きさの体節を作れるはずであり、そのような現象が起きれば、他のモデル(clock and wavefront model)と区別をつけることができる。体節形成期のニワトリ胚をピンセットで物理的に伸張させ、細長い中はいようにしたところ、伸張度合いにかかわらず同じ大きさの体節ができることを確認した。これは、体節形成に反応拡散の原理が働いていることの傍証である。2)ゼブラフィッシュの模様形成遺伝子の探索ゼブラフィッシュの皮膚模様も自発的に成立する等間隔パターンである。同じ分子メカニズムが働いている可能性があると考え、模様形成遺伝子のクローニングを行った。これまでに、模様形成に関係する2つの遺伝子のポジショナルクローニングに成功している。Obelix変異は、縞の幅が広くなる変異を示す。原因遺伝子はKir7.1というKチャンネル分子であった。この遺伝子は色素細胞でのみ発現しており、また、変異体の遺伝子はKの透過性を失っていることがわかった。縞が斑点に変わる変異遺伝子レオパードのクローニングも行ったが、これはGAP JUNCTION関連の遺伝子をコードしていた。現在これら2つの遺伝子の変異がどのような機構で模様を替えているのか計算機によるモデル化を行っている。
著者
松田 文彦 リットマン ギャリー 近藤 滋 LITMAN Gary
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

ヒト免疫グロブリンH鎖遺伝子領域の物理地図を作成し全塩基配列を決定することを最終目標に領域の単離、解析を酵母人工染色体(YAC)を用いて試み、約1Mbの領域の全体を単離し詳細な物理地図を作成し、この領域の全貌を明らかにすることに成功した。さらに、得られた物理地図の情報をもとに、全領域の全塩基配列の決定を試み、現在までに2箇所のギャップ(約10kb)を除き、J_H遺伝子群から14qテロメアまでの約1Mbの領域の塩基配列決定に成功し、以下の結果を得た。1)V_H断片の総数得られた塩基配列を用いてコンピューターによる相同性検索を行った結果、V_H断片の総数は82個であることが明らかになった。またこのうち半数以上の42個が何らかの原因で機能を失った偽遺伝子であった。2)V_H断片のpolarityV_HのJ_H断片に対する相対的転写方向はすべてJ_Hに対して順向きで、逆位は存在しないことが明らかになった。3)反復配列の同定領域中に分布するヒトの高頻度反復配列Alu及びL1反復配列の同定を行った。その結果、105個のAlu配列と25個のL1配列が見い出された。それぞれの反復配列の頻度はゲノム全体の平均とはそれほど大きく異なっておらず、またその分布に関しても特定の傾向は見い出されなかった。4)D遺伝子群の構造ヒトD遺伝子群はD_M、D_<LR>、D_<XP>、D_A、D_K、D_Nの6つのファミリーのD断片で構成され、V6-1とJH断片群の間の領域にこれら6つの断片が組になって4回重複したかたちで存在していることが推測されている。塩基配列の詳細な解析より今回合計25個のD断片を同定した。
著者
近藤 滋 武田 洋幸 上野 直人 松野 健治 松本 健郎 芳賀 永 井上 康博 秋山 正和 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-11-06

主な活動は以下の4点である。1:7月10,11日にアメリカ合衆国カリフォルニア大学アーバイン校と合同で、3D形態形成に関するシンポジウムを開催し、同時に、今後の技術協力体制の拡大に関して話し合いを行った。アメリカ側の主催者であるKen Cho博士は分子発生学の世界的な権威であり、今後も、交流を続けることを確認した。2018年の本研究班の班会議にKen cho博士を招き特別講演をお願いすることが決まっている。また、上野研究室との共同研究も現在進行中である。2:河西通博士をHarvard Medical School のSean Megason研究室へ派遣し、ゼブラフィッシュ胚における組織の3次元構造の発生機構の研究を共同研究で行っている。これは前年度からの継続である。昨年度より、細胞レベルでの挙動を定量的に解析しており、特に、In toto imagingなどの観測技術を武田研究室に移植している。河西通博士の派遣は、2018年度で終了する予定。3:近藤班の3名が、前年に引き続き、コスタリカでツノゼミサンプルの採取を行った。今年度は、プロジェクトの目的がはっきりしており、特にヨツコブツノゼミの幼虫、ヨコツノツノゼミの幼虫、の2種に絞り、採集を行った。結果として、それぞれ70匹、200匹のサンプル採集に成功し、エタノール固定ののち、コスタリカ大学ポールハンソン教授の仲介で、日本に送付していただいている。今後の近藤班の研究は、このサンプルの解析が中心となる。4:近藤研究室の学生、松田佳祐を3D形態の計算で世界的に有名なプルシェミック研究室に約2か月滞在させ、原基の折り畳みソフトの高速化技術を学び、昨年作った展開ソフトを改良した。
著者
近藤 滋
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

免疫グロブリン遺伝子のスイッチ組み換えを制御する分子機構を解明するため、我々の研究室で樹立した高頻度SS組み換えB細胞株(CH12. F3)を用い、まず組み換えに必要な遺伝子配列の詳細な同定を進めている。当初はV領域とCm, Ca領域の全体を細胞に導入して解析を行っていたが、それだと導入するDNAが長すぎ、DNAの制作、細胞への導入に時間がかかることがわかったため、特に重要と考えられる部分だけをつないだミニコンストラクトを使うやり方に変更し、現在種々の変異ミニコンストラクトを制作中である。それと平行して、変異を導入すべき配列の目星をつけるためS配列の上流で、SS組み替えが誘導されたときにどのような変化が起きるかを詳細に解析し、ふたつの重要な発見をした。(International Immunology, 1996, vol8に掲載)種々の実験系でgermline transcriptの量と組み替えの率の間に相関関係が認められており、germline transcriptの重要性が指摘されている。しかし我々の系では、IL-4はgermline transcriptを減らすのに、組み替えは誘導することがわかった。この発見は、germline transcriptの役割を考える上で今後重要な要素になると考えられる。第2は、リガンドの刺激により、I領域に一過性にメチレーションが入ることの発見である。CH12F3のIa領域は、刺激以前より脱メチル化されており、このことが組み替え先がIgAに定まっている理由と考えられる。しかし、組み替えを誘導する刺激により、一過性にメチレーションが入るという事実は報告された例がなく、きわめて興味深い。おそらく組み替えの分子機構に直接に関係した現象と考え、現在解析を進めている。
著者
近藤 滋 芳賀 永 秋山 正和 松本 健郎 上野 直人 松野 健治 武田 洋幸 井上 康博 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

28年度の総括班では、既に、班としてのシステムの構築がほぼ終わっているために、既存の共有装置の維持管理が主なものになる。2機の3Dプリンターは、全班員の研究に有効に使用されている。28年度に、総括班費で購入した機器は、顕微鏡用の共焦点レーザーユニット(北海道大学:999万円)と、ズーム顕微鏡(基礎生物学研究所:299万円、原子間力顕微鏡の一部として購入)である。いずれも、他の資金で購入したパーツと組み合わせることで、購入金額の節約をしている。両装置とも、3D形態の計測に必須であり、共同利用が進んでいる。班会議は北大で、5月23,24日に行った。理論系と実験系の交流を目的とする夏、冬の合宿は、9月4,5,6日と、3月28、29日に、淡路島、琵琶湖で行った。いずれも、学生の旅費の補助を総括班費から支出している。これまで、合宿は主に比較的少人数で行ってきたが、2016年度は、公募班員からの希望が多かったために、冬の合宿では会場を変えた。非常に活発な議論が行われたが、参加者が多くなりすぎたため、プロジェクトごとの議論の時間が逆に短くなり、やや、食いたりない面もあった。この点の解消が、今後の課題として残された。北海道大学の秋山は、定期的に、数学と3Dソフトの講習会を行っており、そのための実費(交通費、宿泊費)の支援を行った。その他、HPの更新に約30万円を支出している。
著者
本庶 佑 近藤 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

in vitroの培養細胞株CH12F3細胞は試験管内でIL-4、TGFβ、CD40Lを加えることによって50%以上の細胞がIgMからIgAにクラススイッチすることを明らかにし、この細胞のクラススイッチによってSμ-Sa組み換えが起こり遺伝子の欠失が起こることを証明した。さらにこの細胞の遺伝子組み換えの部位頻度分布を詳細に検討したところ遺伝子組み換え点はS領域を中心に前後に広く広がっていること、またI領域内には極めて低頻度でしか組み換えが起こらないことを明らかにした。この結果は、S領域の役割が組み換えの引き金としての役割と実際に切断、つなぎ戻しを行われる場であるのと二つの可能性の内、前者の可能性を強く示唆するものである。ついでCH12F3細胞に人工的に作製したSμとSαをもつプラスミドを導入し、染色体外で遺伝子組み換えの発現誘導を試み、低頻度ではあるが実際にクラススイッチ組み換えが行われることを確認した。現在これをさらに高頻度の組み換えが起こるようにプラスミドを改変中である。新しいクラススイッチ制御遺伝子を単離するためにクラススイッチ刺激を加えたものと加えないものとの間でsubtraction hybridization法を行った。このために酵素分解を加味した新しいsubtraction法を確立し、特異的に誘導される2種類の遺伝子を単離し現在この意義を解析中である。また先天的にリンパ節及びジャーミナルセンターの形成不能マウスaly/alyマウスの病態を解析し、このネズミにおいてはクラススイッチが極めて起こりにくいことを明らかにした。すなわちクラススイッチが起こるためにはジャーミナルセンターにおけるT、B細胞の協調的制御が必要であることを明らかにした。
著者
近藤 滋 船山 典子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、「細胞の積み上げでなく、剛性の高い材料の組み立てで形ができる」という新しい概念を形態形成学の分野に確立することを目的とする。カワカイメンと魚のヒレ骨形成は、それを示唆する最初の、そして極めて典型的な例である。いずれの実験系でも、それぞれの役割を果たす細胞が、どのように建築資材(骨片・AC)と相互作用するのか、を明らかにすることが目的である。棒状構造の動態を記録できる3Dイメージングの装置と、細胞との物理的な相互作用を計算するシミュレータにより、細胞による体の「建築」原理を解明したい。
著者
近藤 滋 渡邉 正勝
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

動物における自律的なパターン形成の基本原理がTuring波であるとの仮説を検証するため、ゼブラフィッシュの模様形成機構を分子レベルで解析した。その結果(1)ゼブラフィッシュの模様は、Turing波と一致する動的な性質を持つこと、(2)色素細胞間の相互作用がTuring波形成の条件を満たすこと、(3)Turing波形成にかかわる分子が、ギャップジャンクション、Notch-Delta, Kirチャンネルであることを突き止めた。目標の90%は達成されており、Turing波形成の完全解明も、目前に迫ったといえる。
著者
近藤 滋 川上 浩一 渡邉 正勝 宮澤 清太
出版者
大阪大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

ゼブラフィッシュの皮膚模様形成機構に関して、以下の結果を得た。1)色素細胞間の相互作用のネットワークを明らかにした。2)上のネットワークを組み込んだ計算機シミュレーションが、模様形成の過程を正確に再現した。3)模様変異突然変異2種の遺伝子クローニングした。4)クローニングされた遺伝子は、Kチャンネルとギャップジャンクションであった。5)クローニングされた遺伝子、または改変した遺伝子を導入することで、模様がさまざまに変化することを発見した。6)5の事実から、模様形成のためのシグナル伝達には、イオンや低分子が重要な役割を果たしていることが明らかになった。以上により、ゼブラフィッシュの皮膚模様形成に関して、多くの事実が発見され、模様形成原理の解明に大きく近づくことができた。