著者
三輪 洋文
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.41-56, 2017 (Released:2020-03-01)
参考文献数
49

本稿は,Twitterのデータを用いて日本の政治家・言論人・政党・メディアのイデオロギー位置を推定する。政治家等のイデオロギー位置は様々な方法で推定されてきたが,Twitterのデータによる方法には,地方政治家や言論人のイデオロギー位置を推定できるなど多くのメリットがある。採用する統計モデルは,一般のTwitterユーザーが自分自身と似たイデオロギー位置の政治家等のアカウントをフォローすることを好むと仮定し,一般ユーザーが政治家等のアカウントをフォローしているか否かのデータを使って,両者の理想点を推定するものである。衆議院議員70人,参議院議員46人,政党など10団体・機関,新聞社6社,地方政治家・元政治家39人,言論人41人のイデオロギー位置を推定した。本稿の方法で推定された国会議員の位置を政治家調査データから推定した位置と比較すると高い相関を記録したことから,妥当な推定が行われたと評価できる。
著者
篠永 正道
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1026-1033, 2014-11-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

脳脊髄液減少症と心身症には3つのかかわりがある.第一に心身症と診断されている脳脊髄液減少症患者が少なくないこと,第二に脳脊髄液減少症の症状に心身症的な症状が含まれていること,第三に脳脊髄液減少症の治療には心身症的な治療が必要であること,である.脳脊髄液減少症は主として脳脊髄液が漏出して脳脊髄液が減少することにより頭痛,めまい,視覚障害,記憶力低下,倦怠など多彩な症状が持続する疾患である.原因が不明の特発性と外傷性があるが,心身症的症状を呈するのは外傷性に多い.診断は体位により変化する多彩な症状とMRIや放射性同位元素(RI)脳槽シンチグラフィー・CTミエログラフィーなどの画像診断によってなされる.治療は減少した脳脊髄液量を増やすことであるが,漏れを止めるためには自家血を脊髄硬膜外に注入するブラッドパッチ治療が効果的である.
著者
三中 信宏
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:24321982)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.80-86, 2022-06-24 (Released:2022-09-30)
参考文献数
34

In the field of statistical data analysis in research, there is considerable discussion about the details of statistical methods and statistical modeling applied to the actual data. However, the fact that philosophical and conceptual issues in statistical science lie behind a variety of practical problems is not often discussed in the open. Meanwhile, this paper discusses the relative comparison of competing hypotheses, model selection by AIC (Akaike’s Information Criterion), and the nature of statistics as “abduction” as nondeductive reasoning, which is based on the statistical criterion of “simplicity.”

6 0 0 0 OA 八犬伝後日譚

著者
為永春水二世 作
出版者
山本平吉
巻号頁・発行日
vol.初編, 1853
著者
周 俊
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.2-32, 2022-12-15 (Released:2022-12-26)
参考文献数
143

広義には調査研究に位置づけられる中央指導者による地方視察は,中国政治を理解する重要なポイントである。本稿は歴史学的アプローチとGISによる可視化の手法を用いて,これまで光が当てられてこなかった毛沢東などの中央指導者による視察の行動様式,諸機能の実態,及び政策過程における視察の意義を考察する。指導者の視察は国内外向けの宣伝材料に転じて宣伝機能を発揮した場合があるものの,その基本的な機能は情報収集であると思われる。しかし,それは往々にして空間的な「壁」と官僚制の「壁」によって阻まれ,「特殊な者」としての毛沢東でさえも例外ではなかった。1955年農業集団化の問題の考察を通じて,視察は末端の実態を客観的に認知する方法というよりも,むしろ,毛沢東が自らの正当性を裏づけるための道具であることが明らかになった。つまり,毛沢東が視察を利用して自らの主張に見合う証拠を探し,政策決定の主導権を握ろうとする構図が看取できる。
著者
平山 英夫 松村 宏 波戸 芳仁 佐波 俊哉
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-14, 2017 (Released:2017-02-15)
参考文献数
11
被引用文献数
3 5

The Xe-135, I-131, I-132, I-133 and Te-132 concentrations in plumes at the monitoring posts in Fukushima prefecture in March 2011 were estimated using the pulse height distribution obtained from a NaI(Tl) detector, which were available to the public. Several corrections to the pulse height distribution were necessary owing to high count rates. The contribution to the count rates from each radionuclide except Xe-135 accumulated around each monitoring post was estimated using a method based on the time history of the peak count rate proposed by the authors. The concentration of each radionuclide in the plume was converted from the peak count rate using the response of the NaI(Tl) detector calculated with the egs5 code for a model of a plume containing a uniform distribution of radionuclides. The obtained time histories of Xe-135, I-131, I-132, I-133 and Te-132 concentrations in air at a fixed point in March 2011 were the first ones for Fukushima prefecture. The results at five monitoring posts near Fukushima Daiichi Nuclear Power Station were used to characterize radionuclides in the plume before March 15, soon after the accident. The results at three monitoring posts, Naraha-town Shoukan, Hirono-town Futatsunuma and Fukushima-city Momijiyama, which were analyzed during almost all of March, were used to characterize radionuclides in the plume in the period after March 14. It was fourd that Xe-135 was dominant on March 12 and Te-132 increased from March 13. For the radionuclides of iodine, I-131, I-132 and I-133 were detected with almost the same concentration for the first few days after the reactor shutdown.
著者
田中 孝明 渡辺 勝彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.651, pp.1219-1224, 2010-05-30 (Released:2010-07-26)

By surveying village Sinto architecture with historical plaques of Simousa fief once a part of Chiba-ken, we can find out the activities of the sculptors represented as Takeda Juzaburo in the late Edo period. We are able to draw out our results by examining the materials as follows; Four sculptors named Takeda Juzaburo once lived in Yuuki, near the northern part of Kanto area, where some shrines have an extreme amount of wood-curving. They had spread the use of large amounts of wood-curving in shrines in the fief, and carved onto not only the panels used as decorative transoms but also entire wooden walls of shrine from 1806 to 1822.
著者
菅野 文夫 KANNO Fumio
出版者
岩手大学教育学部社会科教育科
雑誌
岩手大学文化論叢 (ISSN:09123571)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.139-149, 2002-03-31

天正末年に糠部郡を舞台にして起こった九戸一揆については,これまでも多くの研究が言及しているところであり,その性格もおおむね解明されている。しかしながら,この事件の全容を通史的に叙述した論攷は,1961年に刊行された『岩手県史』を除いては,ほとんど見あたらないといえよう。筆者は近年刊行された『二戸市史』で,この事件を時系列にしたがって論述する機会を得た。ただ,自治体史としてできるだけ平易で簡潔な叙述につとめたため,史料に即した論証という点で不十分な憾みがあった。本稿は,事件の性格を確認した上で,経過の細部にわたる検証を試みる。ただし紙幅の都合と筆者の力量不足により,一揆のはじまりと想定される天正18(1590) 年冬から,豊臣政権による軍事行動が本格化する直前の翌年6月までをとりあげることとしたい。
著者
広瀬 玲子
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.17-32, 2014-10-20 (Released:2015-12-29)
参考文献数
32

1945 年の敗戦時日本帝国の支配は東アジア・東南アジア・太平洋地域に及んでいた。朝鮮半島もその一地域である。そこに約75 万人の日本人が移動・定着して家族を形成し、植民地での特権的生活を送った。35 年間の植民地支配の過程で、植民者一世・二世(あるいは三世)という世代形成がなされた。本稿は、朝鮮で植民者として暮らした日本女性に焦点を当てた。被植民者に対し抑圧者・支配者であった女性に関する研究は少ない。まず、朝鮮における日本女性の人口・職業構成を明らかにし、彼女たちの植民地での位置を概観した。続いて、女性たちのあり様を、一世の経験としての愛国婦人会の結成と活動を通して考察する。朝鮮における愛国婦人会の結成は併合以前の1906 年であり、それも内地の愛国婦人会結成と歩みを揃えて行われた。これは日本の支配層が植民地化推進に女性の力を不可欠としたことを示している。愛国婦人会は「文明化の使命」の理念を掲げ、朝鮮王室や支配層の女性の多数を組織しながら活動を展開していった。さらに女性たちのあり様を、二世の経験としての女学校生活という側面から明らかにした。具体的には京城第一公立高等女学校生の植民地経験をとりあげた。朝鮮で生まれ育った彼女たちは高等女学校生として「幸せな」学園生活を送るが、それは支配者としての特権の享受のうえに成り立っていた。彼女たちの大半は、自らが「植民者= 侵略者」であるという自覚なしに生活した。そこには支配を支配と感じさせない暴力、被植民者を不可視化する暴力が働いていていた。日本の敗戦により、「自分が侵略者であった」とつきつけられ、引揚げたのちに、内なる植民地主義をいかに解体するのかが課題となるが、いまだに果たされたとは言えない。さいごに、少数ではあるがこの課題に応えようとする女性植民者の事例を紹介し、植民地主義解体の可能性について考察した。
著者
坂井 昭夫
出版者
關西大學商學會
雑誌
關西大學商學論集 (ISSN:04513401)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-22, 1987-04-25
著者
瀧澤 一騎
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では運動トレーニングによる体力向上が,アルコール分解能を高めることを実験的に検討した.日常的に運動習慣のない被験者を対象に,12週間にわたるトレーニングを行った.その前後で体力テストを行い,トレーニング効果とアルコール分解能を測定した.初年度は有酸素性トレーニングについて検討し,次年度は筋力トレーニングについて検討した.結果として,有酸素性トレーニングによってアルコール分解能は向上しなかったが,筋力トレーニングによってアルコール分解能が向上した.故に,筋肥大を伴うようなトレーニングはアルコール分解能を向上させるといえる.
著者
小山 耕平 福森 香代子 八木 光晴 森 茂太
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.91-101, 2013-03-30 (Released:2017-04-28)
参考文献数
47
被引用文献数
4

スケーリング関係とは、生物の体または器官のサイズと、それらのサイズに伴って変化する構造や機能との関係のことである。スケーリング関係は「べき乗則」で表されることが多い。本稿では、動植物の体サイズと表面積および代謝速度(個体呼吸速度または個体光合成速度)のべき乗則で表されるスケーリング関係について述べる。とくに、動物や植物の個体呼吸が個体重の3/4乗に比例するという「クライバーの法則」を中心に解説する。次に、これらのスケーリング関係を定量的に説明するための基本となる考え方として、相対成長(アロメトリー)、相似則およびフラクタル成長の3点について述べる。最後に、フラクタル成長に基づいたモデルの先駆例として代謝スケーリング理論(WBE理論)を解説し、スケーリング研究の今後の展望を述べる。