- 著者
-
田島 優
- 出版者
- 明治大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
昨年度(平成28年度)と同様に、挨拶表現のデータを得るために、本学図書館に所蔵されていない書籍や、手元において活用したい書籍の購入を行った。例えば、太平書屋から刊行されている人情本の影印本や、黙阿弥全集を購入した。刊行されていない文献については、所蔵されている研究機関に出かけて調査を行った。なお、本研究に近い分野である感動詞の研究に関する科研による発表会があったので、情報を得るために、その研究会にも参加した。平成29年度は、江戸時代の人情本や洒落本を読みながら、データ収集の作業を実施した。また昨年度調査の遅れていた上方の用例収集のために、上方の洒落本を用いてデータ収集を実施した。2年間の調査によってかなり多くのデータが集まったが、まだ整理することができていない状況である。平成29年度は、本研究に関する論文を2本執筆し、研究発表として台湾の銘傳大學における国際学会に参加して口頭発表を行った。またこの学会における発表内容を纏めた論文集にも執筆した。本年度に明らかにしたことは、関西で使用される感謝表現のオーキニと同じ語形が江戸にも見られたが、両者に意味の異なりがあることを指摘した。ただし、論文執筆後の調査によって、若い世代では関西と同様なオーキニ使用も見られたが、後世の状況からいえば定着できなかったようである。これについては、次年度以降の課題とした。また感謝表現においては、現代もよく使用する断り表現を伴った感謝表現が江戸後期に既に使用されていたことを明らかにした。また別れの挨拶においては、サラバからサヨーナラの間にゴキゲンヨーの使用があり、このゴキゲンヨーによって、別れの挨拶表現が去る側だけでなく見送る側の表現ともなった。そしてサヨーナラによって去る側も見送る側も同じ表現形式を使用できる状況ができたことを明らかにした。