著者
二橋 亮
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1086-1090, 2014

江戸時代の浮世絵にも描かれている「アカトンボ」は,日本人にとって最も馴染みの深い昆虫の1つといっても過言ではないだろう.童謡の「赤とんぼ(作詞:三木露風,作曲:山田耕筰)」は,ほとんどの人が口ずさむことのできる数少ない歌の1つであり,青空を群れ飛ぶアカトンボは,秋の訪れを告げる風物詩としても馴染みの深いものといえる.<br>日本人なら誰もが知っているアカトンボであるが,かつて日本や中国では,漢方薬として使用されていたことをご存じだろうか.ナツアカネやショウジョウトンボなど,特に赤みの強いアカトンボが,百日咳や扁桃腺炎,梅毒などに効果があると信じられていたのである.戦後もアキアカネやナツアカネの成虫を乾燥したものが薬局で売られているという紹介記事が出ており,緒方らは,ナツアカネとアキアカネを材料に,「赤蜻蛉成分の研究(第一報)」という論文を1941年の薬学雑誌で発表している.ちなみに,この論文ではアカトンボの具体的な成分が同定されたわけではなく,その後続報が発表されることはなかった.それでも,この論文の存在は,アカトンボの薬効成分に着目した研究があったことを伺わせるものである.<br>最近では,トマトの赤色色素であるリコペン(カロテノイドの一種)や,イチゴの赤色色素であるアントシアニン(フラボノイドの一種)に,強力な抗酸化能があることから,疾病に対する予防効果があるとも言われている.これらの例をみると,真っ赤なアカトンボの赤色色素も,もしかすると本当に健康に良いのかもしれないと思えてくる.その前に,そもそもアカトンボの赤色の正体は何であろうか.
著者
稀書複製会 編
出版者
米山堂
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1927
著者
内村 祐之 倉本 誠 曽根 謙一
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.573-577, 2011-12-20
参考文献数
14
被引用文献数
1

アコヤガイ赤変病が発生以来、収穫された真珠にレンガ色の真珠(濁り玉)の割合が増加した。この真珠は収穫された真珠の有機物を除去する脱色作業でも除去されないことが多いため、真珠生産者では商品価値のある真珠の収量は激減した。そこで、レンガ色の正体を明らかにするため、濁り珠を破砕し抽出した真珠の色素のNMR分析と、電子顕微鏡による正常な真珠との結晶構造を比較した。色素のNMR分析では、これまで報告されたメラニンのほかに、アコヤガイ体内のラジカル損傷産物である過酸化脂質が検出された。一方、電子顕微鏡観察では、濁り珠は正常な真珠に比べ稜柱層が有意に厚いことがわかった。抽出された色素は、真珠加工会社の脱色過程で除去されることから、レンガ色の正体は厚く形成された稜柱層にあると考えられた。
著者
内藤, 若狭
出版者
巻号頁・発行日
vol.[513],
著者
松尾 栄治 保井 渉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.249-258, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
10

遠赤外線減容処理を施した発泡スチロール骨材は軽量モルタル用としての用途が期待できる.筆者等はその強度特性を中心とした基礎物性について明らかにしてきた.本稿では,軽量化以外の付加価値として断熱特性に着目し,配合条件や部材厚さが断熱効果に及ぼす影響を日射量との関係から明らかにした.さらに高温時の断熱特性についても実験的考察を行った.
著者
阿部 勝征
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.51-69, 1989-06-30

津波マグニチュードMtの決定式と地震断層パラメターの相似則に基づいて,地震のマグニチュードから津波の高さを予測する方法を導く.その際にマグニチュードや津波高の基本的性質および津波励起の地域性を適当に考慮することによって予測の精度を高める.特異な津波地震を除いて,関係式log Ht=Mw-log Δ-5.55+Cから得られる予測高Ht(m)は津波の伝播距離Δ(km)付近での区間平均高を近似し,2Htはその付近での最高値を近似する.区間平均高の最大値は簡単な関係式logHr=0.5Mw-3.3+Cから得られる予測高Hr(m)で見積られる.ここにMwは地震のモーメント・マグニチュード,Cは定数であり,太平洋側の津波にはC=0,日本海側の津波にはC=0.2がそれぞれ適用される.適切な考慮のもとではMwの代わりに表面波マグニチュードや気象庁マグニチュードを利用することができる.地震直後の迅速な予測に利用できるようにこれらの関係式を一枚の予測ダイアグラムにまとめることができる.一方,遠地津波に対する予測式はlog Ht=Mw-Bによって与えられる.定数Bの値として,南米からの津波にはB=8.8,アラスカやアリューシャンからの津波にはB=9.1,カムチャッカや千島からの津波にはB=8.6がそれぞれ適用される.予測法の信頼性を検討するために,過去の津波について実測高と推定値とを統計的に比較してみると,大局的にみる限り,両者間のばらつきの程度は津波数値シミュレーションの場合とそれほど違わない.
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of language and culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.93-118, 2016-03-31

本稿では、青森県地方において方言名として認識されている魚種等の名称のリストを提示し、それについてのいくつかの特徴を明らかにした。方言名としてリストされていた名称には、標準和名と全く異なるもの、標準和名と部分的に共通部分を含むもの、標準和名に方言特有の音変化が生じたと思われるもの、標準和名を短縮した形のもの、標準和名と同一形であるが方言名リストに加えられているものが含まれていた。標準和名と全く異なる方言色が濃い名称は、全国的に広く流通していない、地元以外の一般家庭にはあまり馴染みがないような魚に多く見られる傾向があった。一方で、全国的に広く流通し地元以外の一般家庭でもおなじみの食材で商業上も重要と思われる魚の中には、標準和名では一つの魚種となっているのが何らかの基準で細分化され、それぞれに名称が付与されているものが見られた。これは、地元の人達のそれらの魚に対する関心の高さを反映していると思われる。また、大きさや収穫時期を表す<その魚の特徴を表すキーワード>+<その魚が属するグループを指す一般的な名称>という複合的な形式で下位分類を表すものについては、特に大きさや収穫時期(旬の時期と関連)は商品価値にも影響することから、商業上の重要性が大きく関与していると思われる。
著者
遠藤 敏彦 畑 章一 山〓 博之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.347-353, 2005 (Released:2008-04-11)
参考文献数
7
被引用文献数
3

糖尿病患者の血糖コントロールに血糖自己測定が有用であることは周知の事実であり, 現在, 20種を超える血糖自己測定機器が発売されている. そのうち, 8機種を用いて基礎的検討 (再現性試験, ブドウ糖添加試験) を行うとともに, 血液量や他の糖類・還元性物質が測定値異常の原因となりうるか検討した. その結果, 再現性やブドウ糖添加試験は, 機種により差異があることが確認された. さらに, 血液量不足や他の糖類・還元性物質により, 測定値異常を示す機種があることが確認された. これらの結果を踏まえ, 糖尿病療養指導士は, 血糖自己測定器の操作方法や性能を熟知した上で, 適切な自己血糖測定の指導を行う必要があると考えられた.
著者
丸山 公明 M.B. ソロモン J.A. プラウドマン
出版者
明治大学
雑誌
明治大学農学部研究報告 (ISSN:04656083)
巻号頁・発行日
vol.131, pp.37-46, 2002-09-25

ソマトスタチンの分泌阻害剤であるシステアミンをラージホワイト種♂七面鳥に投与した場合の血漿中成長ホルモン濃度,成長速度,体組成に及ぼす影響を探索した。システアミンの成長ホルモン分泌への影響を調べるために,システアミン塩酸塩を300mg/kgの用量にて,〓嚢にストマックチューブを用いて投与したが,投与後24時間では血漿成長ホルモン濃度には変化が見られなかった。食餌中のシステアミンの成長速度と体組成への影響を調べるために,8週令でシステアミン塩酸塩を基礎飼料中に0%,0.12%,0.24%の割合で添加し,16週令まで体重と飼料摂取量を各週測定した。血漿中成長ホルモンは8週令,12週令,16週令で測定し,16週令で七面鳥を屠殺し,体全体,胸,腿,脛の化学組成を決定した。食餌中のシステアミンは16週令で血漿中の成長ホルモンを増加させ(P<0.05),飼料摂取量を減少させた(P<0.05)。体組成では,脂肪は減少し(P<0.05),水分が増加したが(P<0.05),タンパク質には変化がなかった。胸,腿,脛の化学組成には変化は認められなかった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1120, pp.94-97, 2001-12-10

ブックオフでは、新しい店のオープン前夜に関係者が集まり「決起会」を開く。東京・大田区の「中原街道長原店」のオープンを翌日に控えたこの日は、10代後半から20代前半の若者、約20人が集まった。 新店の準備を手伝った社員や、次の日から店頭に立つアルバイトなど、皆カジュアルな服装。まるで大学生のサークルのコンパのようだ。
著者
安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.227-231, 2004
被引用文献数
7

老人における口腔カンジダ症,および吸入ステロイドの使用に伴う咽頭・食道カンジダ症は,患者が非常に多い疾患であり,しかも一部の患者では難治性となる.これら粘膜カンジダ症は,主として常在菌である<i>Candida albicans</i>が,宿主の低下した防御能をくぐり抜け,感染が成立する感染症である.鵞口瘡がこれら口腔咽頭カンジダ症の一般的な状態であり,舌,咽頭などに偽膜性の白苔を生じる.私達は新たにマウス口腔カンジダ症および咽頭カンジダ症のモデルを作成した.これら動物モデルは,口腔カンジダ症では,クロルプロマジンをマウスに投予することで,<i>C.albicans</i>の口腔内への菌の定着が容易におこるのみでなく,舌白苔などの症状を示し,その数値化が可能となるものである.すでにこの口腔カンジダ症モデルで,ウシラクトフェリン,クローブ,植物精油の経口投与により防御効果が得られており,その免疫学的機序も一部明らかにされてきている.さらに,アゾール系抗真菌剤に耐性を示す<i>Candida albicans</i>による本感染症に対しても植物精油が有効なこと,また,ヒト唾液が感染防御に働くことも明らかにされつつある.