著者
磯 達雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.868, pp.98-103, 2008-02-25

辺りは一面の雪景色だった。色がない、音もない世界。その中に弘前市民会館は建っていた。 雲が途切れて晴れ間が訪れる。すると打ち放しコンクリートの壁が雪に反射した光でまばゆく輝き出した。そこに浮かび上がる木々の影。世界は一瞬のうちに息を吹き返したようだ。寒さで体は凍えていたが、雪の中で建築を見るのは、これはこれで悪くない。 建物の中へと足を踏み入れる。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[26] 廿五 臨時御褒美御手当之部,
著者
中 大輔
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

積雪は春先に安定した水資源を供給する.一方,融雪出水の要因でもある.近年の地球温暖化は冬季の降雪を降雨に変え,冬期の流出量増加と春先の流出量減少が指摘されている.したがって,対象流域内における積雪を広域で把握するとともに,積雪の変動が河川流量に及ぼす影響を明らかにする必要がある.特に中国地方は暖地性積雪のため,湿雪である.そのため,積雪深ではなく,積雪深と積雪密度を考慮した積雪水量を正しく把握しなければならない.衛星データと積雪モデルを用いた積雪水量の広域推定手法が検討されている.積雪モデルは降雪モデルと融雪モデルで構成され,融雪モデルとして,Degree-Day法を適用した.しかしながら,中国地方は暖地性積雪であるため,積雪の日変化が大きく,日積雪水量の推定精度が十分でないことがわかっている.そこで,本研究では,次の3つを進め,積雪水量が冬期河川流量に及ぼす影響を解明する予定である.まず,①積雪モデルを改良し,積雪水量の推定精度を向上させる.次に,②改良した積雪モデルと衛星データを用いて,対象流域内の積雪水量の広域推定を行う.そして,③河川流量の観測結果と比較することで流域内の積雪水量の変化が冬期河川流量に及ぼす影響を把握する.本稿では,①の積雪モデルの精度向上に着目し,積雪モデルに関する先行研究をレビューし,降雪モデルと融雪モデルを整理するとともに,各モデルが中国地方に適用可能かどうかを検証することを目的とする.
著者
中山 浩次
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.573-585, 2001-11-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
64
被引用文献数
3

口腔偏性嫌気性細菌 Porphyromonas gingivalis は成人性歯周炎の発症・増悪に関わる最重要細菌であり, 血液寒天培地上での黒色集落形成, 赤血球凝集性, ヘモグロビン吸着性, 糖非発酵性, 強力な菌体表面および菌体外プロテアーゼ産生性などの興味深い性状を示す細菌である。本菌の分子遺伝学的解析手段の開発を行うとともに, 本菌のスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 遺伝子 (sod) のクローニングおよびsod変異株の構築を行い, sod変異株が高度に酸素感受性を示すことから嫌気性菌においてもSODが酸素障害抵抗性において非常に重要であることを発見した。また, 本菌のもつ主要なプロテアーゼであるジンジパイン群 (RgpとKgpプロテアーゼ) の遺伝子 (rgpA, rgpB, kgp) のクローニンゲとそれらの欠損株を構築した。三重変異株を含むいくつかの多重変異株を作製し, 性状を検討することでこれらの遺伝子群が本菌の特性ともいえる黒色集落形成, 赤血球凝集性およびヘモグロビン吸着性に深く関与していることがわかり, 赤血球からのヘム鉄獲得蓄積機構という独特な鉄獲得戦略を明らかにした。また, RgpはFimA線毛タンパクなどの菌体表面タンパクの成熟化過程のプロセッシングを行うプロテアーゼであることを発見し, Rgpプロテアーゼが多彩な目的のためにその酵素活性が利用される“多目的酵素”であることを示した。
著者
土方 久 Hisashi HIJIKATA
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
商学論集 (ISSN:02863324)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1-42, 2007-12

筆者が「ドイツ簿記の16世紀」に想いを馳せて,複式簿記の歴史の裏付けを得ながら,その論理を解明するようになったのは,いつも筆者の脳裏から離れなかった問題,会計制度,会計理論と「複式簿記」の関わりを解明したかったからである。本来ならば,さらに,17世紀から19世紀までのドイツ簿記を解明してから,この問題に立ち向かわねばならないのかもしれない。しかし,「ドイツ簿記の16世紀」を解明してきたところで,そこまで取組むだけの時間は,筆者にほとんど残されてはいない。そのようなわけで,筆者がこれまでに模索してきた卑見だけでも披瀝しえたらということで,この問題を整理しておくことにしたい。まずは,「会計」と「複式簿記」の関わりであるが,Littleton, Ananias Charlesが表現する有名な言葉を想起してもらいたい。「光は初め15世紀に,次いで19世紀に射した。15世紀の商業と貿易の発達に迫られて,人は帳簿記録を『複式簿記』(double-entry bookkeeping)に発展せしめた。時移って19世紀に至るや,当時の商業の飛躍的な前進に迫られて,人は複式簿記を『会計』(accounting)に発展せしめた」という例の言葉である。複式簿記については,世界に現存する最初の印刷本が,Pacioli, Lucaによって出版されたのが15世紀,さらに,「産業革命」がヨーロツパ諸国に波及したのが19世紀,この歴史事実ないし経済背景が意識されてのことであるにちがいない。15世紀以降は経済覇権が移行するに伴い,複式簿記が世界の各国に伝播されて,19世紀以降は産業構造が変化するに伴い,複式簿記と関わりながら,会計へと進化したことによって,会計理論,会計制度が想像ないし創造されてきたからである。商業から工業へと移転していく産業構造の変化,特に製造業,鉄道業などが必要とする固定資産の増大は,「資産評価」の問題を引起こさずにはおかない。そればかりか,企業形態の変化,特に資本集中を容易ならしめる株式会社の急増は,「報告責任」はもちろん,「配当計算」の問題を引起こさずにはおかない。事実,筆者が知るかぎりでは,近代会計学の父であるSchmalenbach, Eugenによって出版される大著『動的貸借対照表論』("Dynamische Bilanz",Leipzig. / Köln und Opladen.)が,そうであるように,ドイツでは,「会計」を意味するのは「貸借対照表論」(Bilanzlehre)。「貸借対照表」の標題を表記する印刷本が出版されるようになるのは,19世紀の末葉,たとえば,1879年にScheffler, Hermannによって公表される論文「貸借対照表について」("Ueber Bilanzen", in: VIERTEL JAHRSCHRIFT FÜR VOLKSWIRTSCHAFT, POLITIKUND KURTURGESCHICHTE, Bd.LXII, S.1-49.)を初めとして,1886年にSimon, Herman Veitによって出版される印刷本『株式会社と有限責任会社の貸借対照表』("Die Bilanzen der Aktiengesellschaften und der Kommanditgesellschaften auf Aktien", Berlin.)からである。したがって,世界の各国に伝播されて,展開かつ発展された「複式簿記」を包摂して,資産評価,報告責任,配当計算の問題に対応しうる「会計」へと進化したわけである。進化することによって,会計理論,会計制度として展開かつ発展されるようになったわけである。もちろん,進化したからといって,複式簿記が退化してしまったわけではない。したがって,複式簿記を包摂して進化したとするなら,複式簿記から「会計」として進化したというよりも,複式簿記から「複式簿記会計」として進化したというべきであるのかもしれない。そうであるとしたら,複式簿記から「複式簿記会計」へと進化する,まさに接点にある問題は「年度決算書」。いつから作成することが規定されたか,どのように作成されたかである。したがって,会計制度,会計理論と「複式簿記」の関わりを整理するとしたら,「年度決算書」と複式簿記の関わり,この問題から解明しなければならない。そこで,「年度決算書」であるが,世界で最初に法律に規定されたのは,1673年の「フランス商事王令」(Ordonnance de Louis XIV pour le Commerce)によってである。破産,特に詐欺的な破産の横行に対抗するために,したがって,債権者を保護するために,すべての商人は「商業帳簿」(Livres et Registres)を備付けねばならない。さらに,普通商人(Marchand)に限定して,隔年でしかないにしても,「財産目録」(Inventaire)を作成しなければならない(第III章第8条)。さらに,フランス商事王令を模範に,1807年の「フランス商法」(Code de Commerce)によっても,すべての商人は「商業帳簿」を備付けねばならない。しかし,普通商人に限定するのでもなく,隔年でしかないのでもなく,すべての商人(Commerçant)は,毎年,「財産目録」を作成しなければならない(第I編,第II章第9条)。したがって,年度決算書としては,財産目録を作成することが規定されたのである。
著者
今川 浩 安藤 泰正 秋山 綽
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.16, pp.23-29, 1979

1976年から1978年にかけて採集された北海道の生産地, 東京, 中山両競馬場ならびに栗東トレーニングセンター所属の軽種馬の血清計1873例について, ウシロタウイルスのCF抗体保有状況を調べた. その結果, 以下の成績を得た.<br>1. 全検査例 (1873例) の60.9%にウシロタウイルスに対するCF抗体が検出された.<br>2. 北海道の生産地において, 当歳馬の15.1% (8/53), 2歳馬の56.3% (99/176) ならびに4歳以上の馬の43.3% (91/210) がそれぞれウシロタウイルスに対するCF抗体を保持していた.<br>3. 東京, 中山両競馬場および栗東トレーニングセンターの3歳馬から採集されたそれぞれの200例についてのウシロタウイルスに対するCF抗体の保有率は, 東京競馬場では43.0%, 中山競馬場では57.0%および栗東トレーニングセンターでは36.5%であった.<br>4. 中山競馬場の2歳馬の46.3% (31/67), 3歳馬の75.2% (324/431), 4歳馬の84.6% (176/208) ならびに5歳馬から7歳馬の92.2% (118/128) にウシロタウイルスに対するCF抗体が検出された.<br>以上の結果, ロタウイルスは日本の軽種馬において, 広範囲にわたって高率に感染していることが明らかになった.

1 0 0 0 OA 湖月抄

著者
北村季吟
巻号頁・発行日
vol.[3], 1675
著者
広瀬 孝文/ボーチェック ボレスラフ A. Takafumi/Boczek Boleslaw A. Hirose
雑誌
聖徳学園岐阜教育大学紀要 = Bulletin of Gifu College of Education (ISSN:09160175)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.28-56, 1976-07-20

This is a study of the relationship between the status of permanent neutrality and the modern system of collective security. The point in question is whether or not the status of permanent. Neutrality is compatible with the system of collective security which requires its members to participate in coercive measures against a common enemy. Based on a number of scholastic arguments presented in the past this is a comparative study of two different arguments : one by Switzerland which is not a member of the United Nations, and the other by Austria which has been a member of the U. N. since 1955. First, it examines these arguments in order to determine why Switzerland and Austria chose different, courses. Then, actual practices of these states in relation to the U. N. are examined in order to probe the possibility or impossibility of the existence of permanent neutrality in the United Nations. It is, then, concluded that, from a legal point of view, there remain many conditions that must be met before a permanently neutral state can become a member of the U. N. without any anxiety. But Austria became a member for her own politicalreasons, and the stability of her status in the U. N. largely depends on the political atmosphere of the organization. Whether a member of the U. N. or not, a permanently neutral state can contribute a great deal to the world peace in its own way.
著者
斉藤 匡昭 宮川 孝子 佐々木 こず恵 山崎 とみ子 高橋 明美 小野 文徳 秋山 博実 小野地 章一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.331, 2007

〈緒言〉<BR>平成19年4月よりがん対策基本法が施行され、がん疼痛における対策が明文化された。当院では、平成18年7月に緩和ケアチームが発足した。それに伴い、薬剤科でも、緩和ケアにおける取り組みを行ってきた。当院は平成19年1月にがん診療連携拠点病院に指定された。<BR>これまでの当院の緩和ケアチームの活動と緩和ケアにおける薬剤科の取り組みについて報告する。<BR>〈概要〉<BR>1)緩和ケアチームの業務は、依頼された患者の緩和ケア実施計画書の作成と主治医への助言・協力、退院後の緩和ケア体制の調整、月2回の病棟回診およびチームカンファレンスである。 構成員はチーム本体が医師2名、薬剤師2名、看護師4名。チーム活動に協力する支援ナースが病棟看護師12名と外来看護師1名となっている。<BR>2)薬剤科での取り組みは全職員対象の緩和ケア勉強会では薬剤師が今まで2回に渡って講演を行った。<BR> 月に1度、支援ナース単独の勉強会では薬剤師が薬剤について解説している。勉強会後に補足が必要な場合は院内LANで資料を配布している。平成19年4月に疼痛治療マニュアルを作成し各病棟に配布した。また医師が携帯出来るような縮小版も作成した。原案は薬剤科で検討した。その他、オピオイドの薬物動態表や換算表をポケット携帯版にしてチームメンバーに配布した。<BR>〈症例〉<BR>主病名は胃がん、すい臓がん。<BR>心窩部痛にて近医を受診し胃カメラ検査を受けたところ精査が必要と言われ、総合病院を紹介され、胃がん、膵がん、癌性腹膜炎、肝転移と診断され予後は1~2ヶ月と告知された。その後、本人が希望して当院を受診、疼痛緩和を目的に入院となった。<BR>痛みへの不安と告知による精神的な落ち込みが強いためチームでは在宅へ向けた精神的ケアと十分な鎮痛を緩和ケアの目標とした。<BR>疼痛は腹部が著名であった。依頼時はデュロテップパッチ2.5mgを貼付されていたが鎮痛不十分で、モルヒネ筋注によるレスキューをしばしば使用、他、嘔気を伴っていた。そこで、チームではデュロテップパッチの5mgへの増量と嘔気予防としてノバミンの内服、レスキューとしてオプソ内服液の使用を助言した。<BR> その後、疼痛コントロールは良好となり、嘔気も消失した。入院当初は「家に帰ることは考えられない」と話していたが、徐々に精神的動揺も減り、年末年始には自宅に外泊も可能となった。<BR>〈今後の課題〉<BR>緩和ケアチームとしては、主治医との連携を強化し、医師会、薬剤師会等に働きかけ、在宅緩和ケアに向けた地域医療連携体制を構築できるよう努めていきたい。<BR>薬剤科としては、病棟薬剤師とチーム薬剤師間で患者情報の共有を図り、連携の強化や医師の処方に積極的に支援できるよう個々のレベルを上げていきたいと思う。<BR>
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 大西 良 福山 裕夫 矢島 潤平 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.85-95, 2006-03

10年前の阪神淡路大震災を契機に,本邦においても消防隊員の惨事ストレスによるメンタルヘルスの悪化が論じられるようになってきた.実際,自然災害や火事などが頻発する中で,消防隊員の活躍は目覚ましいものがあるが,一方で,消防隊員の責任や負担は増大しており一般成人と比較して特異なストレス状況下にある.それにも関わらず,本邦では,消防隊員のメンタルヘルスに焦点を当てるようになったのは近年のことであり,消防隊員の全体像を把握し,対策を講じていくには確固とした調査報告が示されていない現状にある.本論文では,消防隊員のメンタルヘルスの全体像を把揺すべく,惨事ストレスを中心に調査を実施した.対象は,A市481名の現役消防隊員で,回答してもらった質問紙に関しては,多角的に統計処理し結果検討を加えた.その結果,消防隊員は,多くの者が職務に従事する中でストレスを感じており,35%の心身の不調と,12.2%のPTSD症状を呈する者が見受けられた.消防隊員の8割が精神的ケアを必要と考えていることからも,消防局はその地域に根ざした惨事ストレス対策を講じていく必要があることが明らかとなった.
著者
高田 礼人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.61-70, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひきおこす病原体として知られている.ワクチンおよび抗ウイルス薬は実用化されていない.しかし,2014年に西アフリカで起きた大規模なエボラ出血熱の流行によって,予防・治療法の実用化に向けた動きは加速されるとともに,未承認ながら幾つかの治療薬が感染者に投与された.本稿では,エボラウイルスに対するワクチンおよび治療法開発のための研究と現状を紹介する.