著者
石川 真作
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.132, 2009

ドイツは文化的ナショナリズムを統合の基礎とする非移民国として、自他双方から規定されてきたが、1990 年代からの緩やかな変化を経て、2004 年の移民法制定において実質的な移民国宣言をした。本報告では、そのようなドイツの社会空間における移民の位置づけについて検討する。
著者
松岡 智之
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.184, pp.184_117-184_131, 2016-03-30 (Released:2016-11-22)
参考文献数
59

With the ending of the Cold War, the U.S. has failed in coercing far weaker states – such as Serbia,Afghanistan and Iraq – to comply with its demands, despite its overwhelming military superiority. Conventional wisdom holds that a stronger state’s superiority ensures the credibility of its threat, and that the weaker state will accept the demands because the ex-ante uncertainty of any conflict’s outcome (namely,the target’s defeat) almost does not exist. In reality, however, weaker states frequently resist stronger states’ threats, sometimes fighting hopeless wars instead of complying with their demands peacefully. This paper explores this puzzle of asymmetric compellence failure and asymmetric war.Commonly, asymmetric compellence failures are explained by focusing on other states’ interventions or the domestic factors which reduce or extinguish asymmetry. Alternatively, they are regarded as reassurance failures, in which commitments to future self-restraint are deemed incredible. The weaker state resists the threat to defend its reputation for resolve. In contrast, this paper argues that power asymmetry undermines the credibility of the threat itself.Why do such counter-intuitive phenomena occur? This paper argues that an asymmetry in relative capability necessarily implies an asymmetry in mutual threat perception. When power is symmetrical,each state’s power represents a serious threat to the other. If conflict occurs, the threat is automatically prioritized by both states. Therefore, in securing their existence (and as the vital interests of both are at stake), they will symmetrically display the maximum levels of resolve and willingness. In the instance of power asymmetry, however, the stronger state’s existence is unquestioned, with lesser conflicts not receiving priority. Contrastingly, the weaker state’s resolve will be stronger, as its existence is at stake. This asymmetry undermines the stronger state’s compellent threat, constructing it as incredible, precisely because the coercer’s resolve is in doubt.In instances of power symmetry, it is not a balance of resolve but capabilities that affects the conflict’s outcome – the balance of resolve remains symmetrical. Ex-ante uncertainty is chiefly concerned with the competitor’s relative capability, not resolve. However, in instances of power asymmetry, the balance of resolve is uncertain. Ex-ante uncertainty is here principally concerned with relative resolve – capability is materially objective, while resolve is psycho-subjective, and thus less measurable. This variability/flexibility and invisibility leads to mutual misperceptions, which contribute to the failure of negotiations in cases of power asymmetry.For example, while a stronger state’s increase in resolve – which originates from changes in its perception of the threat presented by a weaker target – may be clear to itself, this may remain unclear to the opponent. Consequently, the coercer may overestimate its own credibility (because it knows its true resolve) while the target underestimates its credibility (because it sees the coercer’s resolve as weak). These differences in credibility perception lead to asymmetric compellence failures. This logic is illustrated with reference to the 2003 Iraq War.
著者
藤川 博樹 宮下 浩二 浦辺 幸夫 井尻 朋人 島 俊也
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20
被引用文献数
1

【はじめに】野球は全身を使うスポーツであり、ピッチングやバッティングは特に身体の回旋運動が重要となる。この回旋運動には股関節の内旋が関与しており、その制限は腰痛や投球障害などの外傷発生やパフォーマンスの低下につながると考えられている。しかし、野球選手のなかには、非荷重位で股関節内旋可動域に制限がないにも関わらず、荷重位で骨盤を回旋させると股関節内旋に制限が発生し、結果として骨盤回旋運動が制限される者がみられる。そこで、今回は荷重位での骨盤回旋運動制限の影響について3名の選手の例を提示し、その問題点と対応について報告する。<BR>【症例紹介】選手Aは27歳、身長178cm、体重75kg、右サイドスローの投手である。主訴はピッチングのフォロースルーにおける右肩棘下筋の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも10°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で骨盤の左回旋運動に制限がみられた。ピッチングのフォロースルーでも同様に骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に右肩関節の水平内転、内旋運動が過剰になっていた。選手Bは22歳、身長175cm、体重75kg、右オーバーハンドスローの投手である。主訴はピッチングの加速期における右肩関節前方の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも30°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で、骨盤の左回旋運動に制限がみられ、これを代償するように脊柱の左回旋運動が強まっていた。ピッチングの加速期でも骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に脊柱の左回旋運動が大きい、いわゆる「上体の開いた」フォームとなり右肩関節の水平外転、外旋運動が強まっていた。選手Cは29歳、身長176cm、体重78kg、左投、左打の内野手である。主訴はバッティングのインパクト時に生じる右腰部の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも20°であったが、荷重位で骨盤を回旋させると右股関節の内旋が不十分で、骨盤が右に水平移動して脊柱の左側屈が強まっていた。バッティングのインパクト時にも同様の運動がみられた。<BR>【問題点】上記の3選手は、荷重位での股関節内旋が不十分で、これが骨盤回旋運動を減少させていた。その結果、投球動作や打撃動作に変化が生じ、肩関節や腰部への負担が増大し、痛みが発生したと考えた。<BR>【経過】荷重位でのみ股関節内旋に制限がみられたことから、関節可動域ではなく、いわゆる「身体の使い方」に問題があると考えた。これらに対し、股関節を中心とした骨盤回旋運動のエクササイズを実施した。その際、足部の荷重位置、脊柱や骨盤のアライメントも意識して行わせた。その結果、3選手とも荷重位での骨盤回旋運動制限は消失し、主訴であったプレイ中の肩関節や腰部の痛みが解消した。また、パフォーマンス面でも満足感が得られた。<BR>
著者
寺本 大修 スガオ タカヒコ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.596-599, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

文理融合による実学教育のための拠点として開設されたアカデミックシアターには近大独自の図書分類「近大INDEX」を採用した「BIBLIOTHEATER(ビブリオシアター)」という図書空間がある。ここでは学生が図書と触れるきっかけを作る工夫としてAIを活用した書籍とのマッチングサービスを提供している。本サービスは利用者のSNS投稿分析と,書籍のタイトルや説明文の分析によって導き出されたスコアをもとに,関心度の高いと思われる書籍をおすすめするものである。利用者にとって意外性の高い書籍であるケースも多く,普段なら手に取らない「偶発的」な書籍との出会いを生み出すきっかけとなっている。
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.574-579, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

学術論文の数が加速度的に増加する中で,研究活動に必要な最新の情報を逐一入手することは,もはや研究者の手に負えなくなってきている。人工知能は,このような問題への解決の糸口を与えるものと期待される。そこで本稿では,人工知能による学術情報の検索・理解支援に焦点をあてて,(1)大量の論文の中から関連論文を容易に見つけるための検索・推薦技術,(2)論文の内容を素早く的確に把握するためのキーワード抽出・自動要約技術,(3)論文に書かれた知識を抽出して活用するための言語解析・知識獲得技術などについて,現状と課題を概観する。
著者
有村 洋平
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

【目的】アリピプラゾールは、統合失調症や気分障害に頻用される非定型抗精神病薬であるが、アカシジアや不眠、神経過敏等の副作用の発現により、投薬が途中で中止されることが問題となっている。アリピプラゾールは、血液中で大部分(99.8-99.9%)が血漿蛋白と結合しており、ごく一部の非結合型成分が薬理作用を発揮する。他剤との併用により血漿蛋白への結合が競合すると、非結合型のアリピプラゾール濃度が上昇し、副作用の発現につながる可能性が考えられる。しかし、アリピプラゾールの副作用によってどの程度投薬が中止されるのか、その忍容性における併用薬剤の関連性を検討した報告はほとんどない。そこで本研究では、アリピプラゾールの忍容性に及ぼす血漿蛋白結合率が高い併用薬剤の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】2010年4月1日~2014年3月31日の間に、九州大学病院精神科神経科に入院し、アリピプラゾールが新規に開始された患者104名を調査対象として、アリピプラゾール投薬開始から8週間における服薬状況および副作用発現状況について調査を行った。さらに、アリピプラゾールの投薬を8週間継続した患者を投薬継続群、副作用を理由にアリピプラゾールの投薬が途中で中止となった患者を投薬中止群とし、血漿蛋白結合率が高い薬剤の併用率を比較した。【成果】アリピプラゾールの副作用によって投薬が途中で中止された患者は22名(21.2%)であった。また、血漿蛋白結合率が90%以上の薬剤の併用率は、投薬継続群では91.5%で、投薬中止群では77.3%であり、両群間で有意な差は認められなかった。さらに、血漿蛋白結合率が95%以上の薬剤の併用率についても同様に、両群間で有意な差はみられなかった。本研究の結果から、アリピプラゾールの忍容性において血漿蛋白結合率が高い併用薬剤の関与は少ないことが示唆された。
著者
原田 豪人
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外来の初診患者で、大うつ病性障害などの症例に対し抗うつ薬の投与を行った。前方視的に抗うつ薬の投与後の1ヶ月以内のactivation syndrome(AS)(不安、焦燥、パニック発作、不眠、苛々感、敵意、衝動性、アカシジア、軽躁、躁)の発現頻度を調査した。その結果ASの発現頻度は7.4%で第一親等の気分障害の遺伝負因および大うつ病性障害の診断においてASの発現頻度に統計学的有意差がみられた。また遺伝子多型解析のための静脈血採血をAS発現群およびコントロール群に対して行った。
著者
眞田 克典
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

多元環のホッホシルトコホモロジー環のリー代数構造は、コホモロジー環上に-1次のリー・ブラケットが定義され、次数付リー代数であるとともに、コホモロジー環のカップ積との間に次数付微分則が成立しているものです。これはGerstenhaber構造と呼ばれます。これまで、このGerstenhaber構造に加えて、-1次の作用素(BV作用素)の存在に関する研究が進められており、多元環によっては、リー・ブラケットがこの作用素で表現できることが知られています。この構造はBatalin-Vilkovisky構造(BV構造)と呼ばれます。BV構造は多元環に対する導来同値の不変量であることも知られ、その重要性が認識されています。すでに対称多元環のホッホシルトコホモロジー環はBV構造をもつことが知られており、次の目標として、フロベニウス多元環のホッホシルトコホモロジー環はBV構造をもつか、という問題があります。特別なフロベニウス多元環に対しては、ホッホシルトコホモロジー環に加えて、ホットシルトホモロジー、キャップ積、コンヌ作用素の組が満たす構造(Tamarkin-Tsygan calculus)を利用して、ホッホシルトコホモロジー環がBV構造をもつことが示されています。本研究課題の主要な目標は、以上を踏まえて、フロベニウス多元環に対してコホモロジーを全次元に拡張した完備ホッホシルトコホモロジー環におけるBV構造の存在性を研究すること、また具体的なフロベニウス多元環に対するBV構造を決定することです。本年度は東京理科大学の臼井智氏との共同研究でBV作用素の候補となるものを構成しました。一方で、具体的なフロベニウス多元環に関する研究としては、同大学の鯉江秀行氏、板垣智洋氏と共同で、計算例として重要な対象である自己移入的中山多元環のホッホシルト拡大の箙多元環の表示の研究に取り組みました。