著者
古閑 恭子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.84-89, 1999-11-30 (Released:2015-02-03)

朝鮮語と日本語は、構造的によく似た言語である。そのため、構造的に日本語との違いの大きい英語などの言語に比べ、日本語への機械翻訳にはかなりの精度が期待できそうである。しかしながら、実際に市販の翻訳ソフトを用いて朝・日翻訳を試みると、その性能は決して高くはないことが分かる。本稿では、言語学的に誤訳の種類を①単語そのもののレベルに関わる誤訳、②単語の共起関係レベルの誤訳、③文法レベルの誤訳、④テクスト論レベルの誤訳に分類し、数種類のテクストを用いて実験し、その種類別の誤訳の割合を調べてみた。実験の結果、誤訳の過半数は共起関係レベルのものであることが分かった。
著者
鈴木 勇祐 桜谷 保之
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.43, pp.81-90, 2010-03-01

In this study we investigated ground beetles living in the Nara Campus of Kinki University, central Japan. In threeenvironments (pound edge, grassland, forest), ground beetles were collected using pitfall traps. A total of 1641 beetleswere collected, representing 18 families and 74 species. Of these, 298 beetles, representing, 11 families and, 39species, werecollected at the pound edge. The dominant species at this site were Onthophagus nitidus, Eusilpha japonica, Carabusyaconinus yaconinus, Amara chalcites, Pheropsophus jessoensis and Platydracus inornatus. A total of 248 beetles, including 12 families and 47species, were collected in the grassland. The dominant species of this site were Synuchus congruous, Pheropsophus jessoensis, Harpalus niigatanus, nisodactylus punctatipennis, Agrypnus scrofa and Bradycellus subditus. A total of 1097 beetles, representing 13 families and 42species, were collected in the forest. The dominant species of this site were Onthophagus nitidus, Synuchus congruous, Nebria chinensis and Nebria chinensis. The Shannon-Weaver diversity index (H') was 5.23 at the pound edge, 4.85 in the grassland and 3.55 in the forest. The Simpson diversity index (SID) was 11.14 at the pound edge, 18.28 in the grassland and 7.87 in the forest. The Kimoto similarity index (Cπ) was 0.654between the pound edge and the grassland, 0.495 between the forest and the grassland and 0.455 between the pound edge and forest. Ochiai similarity(OI) was 0.375 between the pound edge and the forest, 0.349 between the pound edge and the grassland and 0.236 between the grassland and the forest. The disturbance degree index( ID) was 1.81 at the pound edge, 1.42 in the grassland and 1.28 in the orest. These plots are subject to disturbance; that at the pound edge and in the grassland is similar to that reported for riversides, and that in the forest is similar to that reported for mountain forests.
著者
長谷山 美紀
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.37, no.144, pp.24-29, 2017 (Released:2018-01-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本稿では,発想支援型画像検索の応用により実現されたバイオミメティクス画像検索エンジンについて紹介する.バイオミメティクスは,生物の構造や機能、製造プロセスからものづくりの着想を得る新しい技術体系である.バイオミメティクス画像検索エンジンは,データベース中に蓄積された生物の走査型電子顕微鏡画像を可視化し,検索可能とすることで,異なる種類の生物や材料の表面構造に共通性を発見し,工学の研究者が生物から新たな知識を獲得することを想定して構築されている.本稿において示されるバイオミメティク画像検索エンジンは,知識の蓄積としての異分野データベースの連携を通して,産業の創出を支援する産学連携プラットフォームの実現と位置づけられる.
著者
大和 祐子 玉岡 賀津雄 熊 可欣 金 志宣 YAMATO Yuko TAMAOKA Katsuo XIONG Kexin KIM Jeeseon
出版者
名古屋大学言語文化研究会
雑誌
ことばの科学 (ISSN:13456156)
巻号頁・発行日
no.31, pp.39-58, 2017-12

本研究では,韓国人日本語学習者31名を対象に,語彙テスト36問および漢字読み取り・書き取りテスト各24問(合計48問)の結果から,韓国人日本語学習者の語彙知識と漢字の読み書き能力との因果関係を検討した。日本語の語彙知識が漢字の読みと書きに同時に貢献する並列モデルと日本語の語彙知識がまず漢字読み取り能力に貢献し,読み取り能力を介して漢字書き取り能力に貢献するとする逐次モデルを想定して,それぞれのデータとモデルの適合度を構造方程式モデリングの手法で調べた。その結果,逐次モデルテストの結果を最もよく反映していることが分かった。韓国人日本語学習者は,日本語の基本的な語彙知識から漢字語の読み(音韻的表象群の形成)を習得し,その記憶の蓄積から,漢字語の書き取り能力(書字的表象群の形成)を向上させるという因果関係をみいだした。本稿は,科学研究費補助金・若手研究(B)「非漢字圏学習者の漢字語彙学習の成功に影響する要因の解明:効果的な学習支援のために」(課題番号:16K21145,研究代表者, 大和祐子),科学研究費補助金・挑戦的萌芽研究「動詞と共起する名詞群の検索エンジンの構築と読解および聴解に対する共起知識の貢献」(課題番号:16K13242,研究代表者, 玉岡賀津雄)および日本学術振興会特別研究員奨励費(熊可欣:15J03617)の助成を受けた研究成果の一部である。
著者
鳥越 皓之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.482-495, 2016 (Released:2018-03-31)
参考文献数
35

沖縄は地域を研究する社会学的研究にとって見過ごすことができない2つの特徴をもっている. 1つは, そこはながらく独立国であって, 日本併合に対する不信が存在する. それは政治的イデオロギーを超えて, 小さな村の住民にも, 「沖縄世」への憧れとして存在している. それが現在の米軍基地反対につながっている.もう1つは日本民俗学を中心にした南島研究の研究者たちが沖縄を日本の原郷として位置づけ, 膨大な資料を蓄積し, 数多くの注目すべき論文を発表しつづけてきた. それは日本民俗学の巨人, 柳田国男と折口信夫が沖縄研究に多くの労力を割いたことが大きい.このような事実をふまえて, 社会学が沖縄にどのような貢献をし, どのような限界をもたざるをえなかったのかを本稿では示した. 基本的には, 社会学を狭義に位置づけて, 歴史的・政治的課題および南島論に示された文化的課題をとりあげないようにしたこと. そのように自己の課題を狭めたことによって, かろうじて社会学を成立させてきた経緯がある.
著者
難波 孝志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.383-399, 2016 (Released:2018-03-31)
参考文献数
28

本稿の目的は, 沖縄の郷友会について概念的な再整理を行うこと, そしてこれまで扱われることが少なかった軍用地との関わりをもつ郷友会について, 軍用返還跡地再利用の過程を通してその現実と今後の行方を考察することにある. 2015年4月, 沖縄県北中城村にオープンした全国資本の巨大ショッピングモールは, 沖縄の軍用跡地再開発の最新の事例である. この事業に大きな役割を果たしたのが, この地区の地権者の多くが加入する郷友会であった. このように軍用地などの共有財産の管理のための地縁的組織を, ここではアソシエーション型郷友会と呼ぶことにする. これまでの沖縄における郷友会研究は, 社会学における都市移住者コミュニティ研究そのものであった. これに対してここで扱う郷友会とは, 利益集団であって, アソシエーションである. そして, アソシエーションであるからこそ, 社会学の研究対象になりにくかったといってもよい. ただ, 沖縄社会では, この両者が同じ「郷友会」というフォークタームで混同して使われているのも事実である. 本稿では, 巨大ショッピングモールの再開発を事例に, その経過を分析することによって, 軍用跡地利用の合意形成と沖縄社会の行動原理の根本ともいえる郷友会のシマ結合について考察した. 結果として, (1)経済的機能を失ったアソシエーション型郷友会の存続可能性, (2)経済的機能以外の他の機能の消滅への危惧, (3)郷友会解体過程におけるシマ結合のゆるぎない存続, などのポイントを摘出した.