著者
藤澤 伸介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.158-167, 2003-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
52

1999年後半から,「学力低下」が国民的関心事となった。学習指導要領の改訂と関連して, 初めのうちは「ゆとり教育推進派」対「基礎学力徹底派」の対立として議論が展開しそうになったが, 教育心理学者の働きかけもあり, 現在は比較的多面的な認識が世論の主流を占めているように見える。教育心理学の立場からは, これまで教育観に含まれる誤概念が数々指摘されており, これが日本の教育を変質させて学習の質的低下を招き, 学力が低下してきている可能性を見てとることができる。そこでは, 自己を成長させるはずの学習が単なる「労役」と化し, 学習者に意義の感じられないものとなり, 学びからの逃走が発生しているのである。教育心理学の「実践化」の動きとして, 学習の質的向上への働きかけが直接学習者になされ, 教育の質的向上を目指した試みが教員養成活動としてなされている。その他学校への働きかけまで含めると, 教育心理学の「実践化」は加速している。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1790, pp.70-72, 2015-05-11

「ロボットスーツHAL(ハル)」で知られるサイバーダインは、家庭や職場で使えるモバイルタイプの心電・動脈硬化計を開発した。心電図や動脈硬化度を手軽に測定できる。2015〜16年に発売する考えだ。
著者
浅田 悠幹
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.153, 2016

<p>【背景】</p><p>現在,児童の生活を見ていると,外遊びをしていて他の子と衝突してしまう子や運動会の練習で体を支持できず転倒し骨折してしまう子など身体の使い方やバランス,姿勢の乱れに起因する怪我等が後を絶たない,改めて,体幹やバランス,瞬発力,体力面などを計画的に鍛える指導の必要性を感じている.また,教職員への体つくり運動の指導の在り方や必要性から児童の主体性を育む指導法の工夫について検討し,教職員の資質向上,指導の充実等を高める必要があると考える.そこで,平成27年度佐賀県の取り組みとして佐賀県武道等指導・充実資質向上支援事業へ当院が携わる機会があった為以下に報告する.</p><p>【目的】</p><p>児童に対し,体つくり運動を行うことで基礎体力の向上,身体の柔軟性の向上を目的に行う.また,実際に武道等及び課題が見られる領域の指導を担う資質向上,さらに指導の充実等を図るため,指導力向上のための研修の実施や専門性のある外部指導者と連携した実践研究を行う.</p><p>【方法】</p><p>対象者,佐賀県鳥栖市立弥生が丘小学校に所属する小学5年生(男子:71名,女子:79名 合計:150名),小学6年生(男子:77名,女子:77 合計:154名).期間H27年10月8~11月13日.(うち各学年各クラスにオリエンテーション,体つくり運動は各学年2クラスずつ90分2回実施).</p><p>【結果】</p><p>授業前後の結果を比較するとアンケート結果から,1,体を動かすのは好きですかに対して,「はい」56→60%と向上.「あまり」11→6%と減少を認めた.また、柔軟性のテストでは,立位体前屈は「つく(あがらない)」61%→92%.腸腰筋(背臥位での股関節屈曲)は31→77%.大腿四頭筋(腹臥位での膝屈曲)は58→85%,と向上を認めた.</p><p>【考察】</p><p>アンケート結果より,体つくり運動を通して,体を動かすことや体育の授業,体つくり運動に対する意識の向上がみられた.また,休み時間児童が積極的に外で運動を始めたりと運動に対して児童の変化も見受けられた為,これからの日常生活にも影響していくことが考えられ,運動への意識の変化があることで運動の機会が増え,児童の体力向上へ繋がることが推測される.柔軟性のテストでは,各ストレッチ動作全て向上がみられた.これは,外部講師が入ることで適切なストレッチ方法,ストレッチで意識する事を伝え取り組んだ結果,筋が適切に伸長され,筋の柔軟性向上ができたのではないかと考える.しかし,今回は90分間の体つくり運動を各学年2回ずつしか行えていない.2回の頻度では,児童への継続的な働き掛けは困難だと考える.そのため,継続的に効果を出すためには教職員へのレクチャーが必要不可欠である.</p><p>【まとめ】</p><p>今回の取り組みより,体つくり運動を実施した後児童の身体への影響として柔軟性の向上を獲得することができた.また,運動への意識の変化がみられ日常生活への働き掛けが可能となった.教職員に対しては,児童への体つくり運動を通し,適切なストレッチ方法,トレーニングの際に気を付ける点を伝えることで指導力向上を図ることができた.今後,さらに,図示等によりそれぞれ筋の役割や実施したトレーニングの効果等を示しながら実施していく事で児童及び教職員に対しても更なる効果が得られるのではないかと考える.このような取り組みを継続していくために佐賀県また鳥栖市との連携をどのように築いていくかが今後の課題として取り組む必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本件の計画立案に際し、事前に佐賀県より当院・佐賀県鳥栖市立弥生が丘小学校へ依頼あり.小学5・6年生へ教職員より説明.共々承認。児童への運動実施は十分な説行い同意を得た。</p>
著者
周 家興 廣瀬 幸 柿崎 淑郎 猪俣 敦夫
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.11, pp.1-6, 2018-09-20

ランサムウェアが実行される時,ファイルを削除したり,暗号化したり,または他の動作を行うために,必ず API を使う.更に,同じファミリーに属するランサムウェア亜種であれば,実行された時ランサムウェアの親プロセスに使用された API の種類が同じである.本稿ではランサムウェアが実行された時の親プロセスにより呼び出された API の頻度に着目し,API 同士間の相関係数を求め,その相関係数を特徴量として機械学習を用いてランサムウェア亜種のファミリーを区別する方法を提案する.
著者
今岡 進 舩江 良彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.23-31, 1998 (Released:2007-01-30)
参考文献数
45
被引用文献数
4 6

Arachidonic acid is metabolized to biologically active substances by three major enzyme systems including cyclooxygenases, lipoxygenases and cytochrome P450s. The third pathway, P450-dependent pathway, includes allylic oxidation, ω-hydroxylation, and epoxidation of arachidonic acid. Of these metabolites, the physiological role of 20-hydroxyeicosatetraenoic acid (20-HETE) produced by CYP4A isoforms has been extensively studied. 20-HETE affects ion transport, constricts blood vessels and participates in tubuloglomerular feed back. Increased production of 20-HETE is a major factor in elevating blood pressure in spontaneously hypertensive rats (SHR). We have found that CYP4A2 level in SHR is much higher than that of normotensive rat. Recently, factors of endothelial origin other than nitric oxide and prostaglandins were reported. Inhibitors of P450-dependent arachidonic acid metabolism greatly reduce the vasodilator effect and this factor is speculated to be an epoxide of arachidonic acid. We have isolated CYP2C23 from rat kidney and have found that it produces arachidonic acid epoxides. We have investigated changes in the CYP2C23 levels in physiological and pathophysiological conditions. Multiple pathways of arachidonic acid metabolism by P450 have been reported and the diverse properties of these metabolites and the wide distribution of the P450 system make them prime candidates for participation in regulatory mechanisms of the circulation and transporting epithelia.
著者
本多 孝史
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1-2, pp.111-118, 2012-04-26 (Released:2014-01-14)
参考文献数
4

近年,花粉症やアトピー性皮膚炎などの多種のアレルギー疾患の増加が問題となっている.歯科用金属アレルギーも同様に,クラウンブリッジや義歯用金属などに含まれる金属成分,特にニッケルクロームやコバルトクロームがアレルギー誘発成分となり,口腔内に悪影響を及ぼすことが明らかになっている1).今回は,コバルトクローム(Co-Cr)金属床を用いた上顎シングルデンチャーを装着後,アレルギーを発症した患者の治療経過について報告し,今後の対応策につき検討を加える.症状:Co-Cr 金属床の接する口蓋粘膜に白色の角化の亢進した凹凸の腫脹と発赤がみられた.経過:パッチテストにより塩化コバルトと塩化亜鉛に陽性反応がみられたため,レジン床義歯を作製し,患者に装着.結果:レジン床義歯によって症状は回復した.検討:パッチテストの結果と照らし合わせた使用材料の検討が必要.
出版者
巻号頁・発行日
vol.[61],
著者
高田 洋子
出版者
敬愛大学・千葉敬愛短期大学
雑誌
環境情報研究 (ISSN:0919729X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.57-72, 2003-04

The purpose of this paper, (the second part of an aricle first published in 2000), is to make clear the social characteristics of the area in and around Narita and Sakura (Shimousa), comparing "the opening process" with that of the Mekong delta. The writer discusses how the epoch-making development of the Shimousa plateau during the Meiji period came about due to its natural environment despite difficulties with land use and government settlement policies. The writer focuses principally on Tomisato, an area southeast of Inba lake near Narita and Sakura. In contrast with the Mekong delta, a large amount of archaeological and historical evidences tracing the process of deforestation has been discovered in this low land and plateau region. Based on historical documentation, the social structure of medieval (12th century) Tomisato is examined including that of Shimousakoku Intousyo Goujison Kyoumyo. The writer notes that Kenchi was undertaken in this area at the end of the 16th century and contrasts the Kenchi-cho with Dia ba of the 19th century Vietnam. The writer further evaluates the advanced policies of the Japanese authorities in their more direct control of land and people. In 1722 Edo Bakuhu advanced the so-called Kyoho-Kaikaku project to clear land and increase taxation. The writer notes that once local residents had finished completely opening low lands to rice cultivation in their village, they found that they could not clear the adjoining diluvial plateau due to serious troubles with its soil. This was despite the fact that the Edo government allowed cultivation of its public land, Makiba. At the beginning of Meiji period, the villages of Nanae and Tokura were established on the Tomisato plateau. This was part of a relocation project by the new government to help reduce social tentions in Tokyo where unemployment was becoming a problem. The writer details methods used to recruit laborers for the project, listing demographic information sucn as age, former occupation and influence on the area's development. (continued)
著者
谷所 基行 大久保 克彦 江原 鉄男 中山 典保
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.9, pp.1-6, 2018-09-20

SDN / NFV 環境の品質確保のためには,低コストかつ高精度な遅延測定環境が必要であるが,専用測定器は高価であり,ソフトウェア測定器は精度が得られないといった問題がある.これらの問題を解決するため,Network Processing Unit (NPU) を搭載した SmartNIC を用いて,サブマイクロ秒の高精度な転送遅延計測装置を開発した.本稿では,その実現方法 ・ 実装について示すとともに,本装置を用いて測定した遅延の測定結果について報告する.
著者
坂﨑 絢子
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.355, pp.24-33, 2012-06

恒例の個人投資家調査、今年も分析を担当した経済評論家の勝間和代さんは「2011年は欧州債務不安に日本では大震災が重なり、回答者の半数が損をして(マイナス1%以下の運用成績)報われない年だった」と振り返る。とはいえ、どんな相場でもコンスタントに利益を出したいのが個人投資家のホンネだろう。
著者
中西 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.530-531, 2006-10-20 (Released:2017-06-30)

大学で学んだことがそのまま実社会で役立つことは少ないが,広い視野でものごとを考える能力はいろいろな場面で役に立つ。広い視野でものごとを考える能力は,いろいろな教科及び科目の学習で得た知識を総合的に駆使する訓練から生まれる。このような能力を養う学習法は高校でも教えることができる。
著者
松本 直人
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.8, pp.1-4, 2018-09-20

20 世紀末から続くインターネットの普及に伴い,情報システムを支えるデータセンターも規模拡大が続いている.そのような中でデータセンターでは,サーバー技術の発展に伴う単位面積あたりの熱密度増加も顕著になり,これらが持続可能なデータセンターのサービス提供とサーバー収容の課題となってきている.本稿では,これら高密度化するデータセンターにおけるサーバー等計算機向けの冷却方式について,今後も持続可能に成長を続けるために必要とされる方策について考察する.
著者
江口 泰正
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.557-565, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
34

近年、「ヘルスリテラシー」が医療や保健、教育等の分野で注目されてきている。世界的に見ても、ヘルスリテラシーに関する研究が飛躍的に増加している。背景として、2000年に米国における健康政策の指標であるヘルシーピープル2010で解説された影響もある。わが国においても厚生労働省が2015年に発表した「保健医療2035」の中でヘルスリテラシーという言葉が使われている。しかしながら、ヘルスリテラシーについて理解している人はまだ決して十分とは言えない。一方近年、日本人のヘルスリテラシーは欧州と比較して低いとする報告もあり、今後の議論が求められる。ヘルスリテラシーが不十分だと、さまざまな健康課題が増加し、また高めていくことで人々の豊かな生活へ結び付けていくことが可能となる。本稿では、この新しいキーワードとしてのヘルスリテラシーについて、その定義や要素分類、評価法について、そしてヘルスプロモーションや健康教育との関連性等について総説することを目的とした。
著者
徳田 信子
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.23-29, 2016-02-01 (Released:2018-03-08)
参考文献数
29

近年,摂取脂肪酸の多寡やバランスが種々の炎症性疾患やアレルギー性疾患に与える影響が注目されている.しかし,栄養学的な知見が数多く報告されているのに対し,機序の詳細には不明な点が多い.多価不飽和脂肪酸は水に不溶であるため,細胞内でその機能を発揮するためにはキャリアーが必要となる.我々は多価不飽和脂肪酸を可溶化する細胞内キャリアーである脂肪酸結合タンパク質(Fatty Acid Binding Protein:FABP)に着目し,免疫系支持細胞での発現や機能について検討している.免疫系の組織では,細網細胞と呼ばれる支持細胞が自身の産生する線維とともに網状構造をつくり組織を維持していることが従来から知られてきた.しかし近年,支持細胞は免疫細胞の移動や機能,恒常性の維持にも重要な役割を持つことが明らかになってきた.また,それぞれの免疫組織に特異的な支持細胞があり,同じ組織の中でもそれぞれの場に応じた機能を持つ細胞が存在していることがわかってきた.特に,リンパ節のT細胞領域の線維芽細胞はfibroblastic reticular cell(線維芽細網細胞,FRC)と呼ばれ, T細胞の移動や分化などに重要な役割を担っている.我々は,神経系に特異性が高いと考えられてきた脳型脂肪酸結合タンパク質FABP7がFRCに発現し,T細胞の恒常性に寄与していることを明らかにした.また,脾臓のT細胞領域にも同様の細胞が存在することを示した.FABP7は肝臓固有のマクロファージであるKupffer細胞にも発現し,サイトカイン産生や,スカベンジャー受容体を介した死細胞の貪食を調節し,急性肝障害および肝線維化の病態に関与していた.また,FABPは表皮の恒常性の維持や中枢神経系の傷害からの回復など,生体防御に広く寄与していた.これらのことから,支持細胞を中心としたさまざまな免疫細胞がそれぞれに固有の脂肪酸のキャリアーを持ち,他の細胞の機能を調節することで免疫応答を制御していることが示唆された.
著者
鈴木 淑剛 長南 孝司 桝井 嘉子 原 忠行 吉永 冬子 土居 丈志 川本 優姫 戸塚 裕久
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.85-88, 2004

2ヶ月前からの跛行で上診した2歳齢メスのグレートピレニーズに左上腕骨近位の腫脹を認めた。病理組織学検査において, 低分化型の骨肉腫と診断された。肩甲骨を含む前肢の断脚とシスプラチン (総投与量420 mg/m<sup>2</sup>) を用いた化学療法を併用したところ, 転移も起こらず7年4ヶ月の長期寛解が得られた。