著者
深見 純生
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.101-115, 2017-10

The Babad Tanah Jawi (Meinsma edition) mentions Mt. Merapi 10 times, of which the first4 cases constitute a series of stories culminating in a battle at Prambanan between Pajang andMataram. From the story we find that Mt. Merapi houses spirits that originate from the sameancestor as that of the Mataram kings, that Mt. Merapi and human society correspond with eachother, that Mt. Merapi to the north of the Mataram kingdom seems to be an equal partner of theSouthern Sea as protector of the kingdom, and lastly that the ruler of the spirits of Mt. Merapi is,however, not mentioned in the babad, unlike Ratu Rara Kidul in the Southern Sea, who isdescribed elaborately as the protector of the kingdom.
著者
村上 祥子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.101-121, 2018-02-20

巫俗儀礼で巫堂が口承する「バリ公主」は,死霊祭で語られる女神の始祖物語である。内容は捨てられた七番目のバリ公主が,両親の病気を治すために薬水を求めて冒険,帰ってきて両親の病気を治癒し,家族と共に神として祀られる話である。ここでは次の二点を考察した。①「バリ公主」の内容は,世界的な英雄譚と共通の要素を持つことを八つの項目について考察し,一致することを確認した。この物語が死霊祭で語られるのは,死者が祖先神への転換のために必要な儀礼であり,祖先神は現在に生きる子孫の繁栄と平安を守ると信じたからである。②長く「バリ公主」が儒教の規範で規制されたにもかかわらず,消えることなく信仰されたのは,女性の力があったからである。儒教の世界観は人間が生きていく価値観と規範は教えたが,死への恐れやあの世への不安,現実の苦悩や苦痛について語ることはなかった。だから女性は儒教では語ることのない信仰を守ってきた。それを可能にしたのは,高麗時代から続いた輪回奉祀と男女均分相続である。輪回奉祀とは息子や娘が祖先の祭祀を交代で担当・挙行するものであり,朝鮮王朝時代も続いた。男女均分相続は内容的に変更点があるが,朝鮮王朝時代の『経国大典』(1485年)に男女均分相続すると記されている。女性は婚姻に関係なく個人の財産を持ち,運営に当たった。以上,「バリ公主」は英雄譚的要素をもち,祭祀権と経済的な権利を有する女性により,今日まで信仰の対象として継承されてきたといえる。
著者
中〓 由佳里
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.129-145, 2004-09-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

環境はその地域の文化に直接的, 間接的な影響を及ぼし, 同時に生業の成立を決定する重要な要因となる。単一の生業では生存し得ない環境条件の厳しい地域では, 住民は複数の生業を組み合わせることによって不足分を補い, 独自の複合的な生業を形成させ継承してきた。また, 生業と地域の文化とは相互に影響し合いながら成立している。この生業と文化の関わりを基盤として住民の空聞認識が形成される。住民とは, 生活空間を日常の活動範囲によって理解し, 区分し, 意識的に土地分類を行い, 土地分類に従った空間認識を作り上げるものであると考える。本論文では, 東京都奥多摩町日原を事例として,「ブラク」「ミノト」「サワ」「ウエノヤマ」「ムコウヤマ」という土地分類呼称に表れる住民の空間認識を, 複合化された生業と年中行事や自然崇拝などの地域の文化との関係において模式化した。この模式化の汎用性については, 今後海外を含めた諸地域での認証を必要としよう。