著者
張 兵 丸池 信弘 仲間 秀典 山本 美由紀
出版者
信州大学
雑誌
信州大学教育システム研究開発センター紀要 (ISSN:13419714)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-75, 2000-03

現代は共生・共存が多くの分野で共通課題であるが,現実は専門指向の分析科学的発想のため,社会現場と学問現場の関心が共有できてないことが多い。この問題意識を解決するため,本稿は従来の公衆衛生の基礎知識を踏まえながら,価値観の転換を教育的にどう計るか10年間の試行錯誤の経過と成果を報告する。共生の願いを生かすには,文化と科学技術を融合する文化規範を取り入れ,WHOの新しい健康の定義の試案を理論仮説とすると,住民参加の時代の保健政策の理念を形成できる。次に,それに見合った新しい経済観を作業仮説とすると,新しい保健経済の理論と事例研究の方法論を提案できることを討論する。この人間中心の現代ニーズを受け入れるには,講師と学生が前向きな対話による問題解決指向の教育形態が必要になり,その基本精神が社会現場での学際・職際・国際的な共同作業を可能にするので,これは二十一世紀的な価値転換の共通課題となるだろう。
著者
鷹木 達
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.306-327, 1986 (Released:2010-10-27)
参考文献数
42

A previous report has shown the anticariogenic effects of combined topical fluoride application in school dental health programs (Isozaki, 1984). The aim of the present study was to evaluate the cariostatic effects on each tooth surface in school children given topical fluoride treatments by using Cohort analysis.The subjects of this study were 827 school children (437 boys and 390 girls) who were in the 1-6 grade in 1975. Topical fluoride application was given once a year using an acidulated phosphate fluoride solution (0.9% F-, pH 3.6), and fluoride mouthrinsing was practiced 5 times a week after every school lunch with a phosphoric acid-acidfied sodium fluoride solution (0.05% F- pH 5.0). Cohort observations on each tooth surface were carried out for anticariogenic effects from 1976 to 1980 according to the school grade levels of the subjects.Cohort analysis on the DMFS of each tooth type showed a statistically significant anticariogenic effect in the groups which started these programs from the lower grade levels. The results were as follows: The proximal- and lingal-surface of central and lateral incisor, and occlusal surface of first and second premolar of maxilla, and occlusal surface of second premolar of mandibula showed a decrease in the DMFS rate. Especially, the group which started from the first grade showed high anticariogenic effect on the occlusal surface of the maxillar and mandibular first molar.These results study indicate that combined topical fluoride treatments have a high anticariogenic effect on each tooth surface.Regarding the measures of caries prevention applied to school dental health program, it is suggested that combined topical fluoride treatments are usefull, and that it is necessary to start from the lower school grade and to carry out this program continuously through the primary school years.
著者
伊藤 公一 荒井 法行 菅野 直之 戸村 真一 金子 和夫 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.642-651, 1990-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

健全な歯根を用いルートプ. レーニングを施した象牙質片を作製し, その象牙質片に2%NaF, 2および8% SnF2を塗布したものを口腔内に7および28日間装着させ, これらの薬剤塗布が象牙質面のプラーク形成にどのような影響を与えるか, 併せてブラッシングの影響をも組織学的に観察し, 以下の結論を得た。1. 非ブラッシング試片の7日目において2および8% SnF2群はコントロール群に比べプラーク形成量は小さかった。2. ブラッシング試片では7および28日目いずれにおいても各処理群はコントロール群と比較しプラーク形成量に差は認められなかった。3. 非ブラッシングおよびブラッシング試片を比較するとブラッシング試片が, いずれの条件においてもプラーク形成量は小さかった。4. 露出歯根象牙質面のプラーク抑制にSnF2の局所塗布が有効であることが示唆された。
著者
Naoko Kaida Nguyet Anh Dang
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.187-194, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

This study reports field survey results on current tourist activities and perception regarding marine ecosystem conservation in the Nha Trang Bay Marine Protected Area (NTB-MPA), Vietnam. Structured questionnaire surveys to visitors (n=166) revealed that, comparing Vietnamese and foreign tourists: (1) About half of the Vietnamese respondents were aware of the NTB-MPA while only 9.6% of foreign respondents recognized this, (2) average respondents visited more than two islands out of the total nine islands during their stay and Vietnamese and foreign respondents tended to visit different islands with different marine activities, and (3) of six marine conservation program components presented in the present survey, both groups showed stronger support for physical enhancement of marine ecosystems rather than for sustainable local community development with slight differences in components between the two respondent groups. These results suggest that the NTB-MPA needs to fulfill both the diverse demands of tourists as well as sustainable marine ecosystem management. However, at the same time, NTB-MPA could also offer diverse opportunities to familiarize tourists with different backgrounds in both environmental and socio-economic issues in marine ecosystems and to facilitate their support for the MPA.
著者
夏堀 睦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.334-344, 2002-09-30

本研究では,学校内での子どもが創作した物語の評価についての人々の信念を検討した。調査1では,短大生,大学生および大学卒業者40名が,評価者が教師である場合に創作される物語,評価者が仲間である場合に創作される物語,民話,ミステリー,恋愛小説,ノンフィクションの6つの物語のジャンルについて,25の物語評価項目の重要度を評定した。調査2では,専門学生,短大生,大学生および大学卒業者64名が,展開性と意味内容が異なる児童が創作した4つの物語を,教師の視点と被調査者自身の視点から評定した。その結果,学校での評価の特徴として,「物語の技巧性」と「物語の道徳性」の2つの観点から評価されること,他の物語の評価と比較すると「物語の技巧性」はあまり重視されないが「物語の道徳性」は重視する傾向があることが見出された。また,「教師の視点」における評価と「被調査者自身の視点」における評価のずれは,物語の展開性ではなくその物語が内包する意味内容や特徴的な表現に対して生じることも示された。さらに被調査者たちは物語の意味論的レベルを中心に評価するが,教師の評価はそうではないと考えていることが明らかになった。
著者
鈴木 誠
出版者
麗澤大学中国研究会
雑誌
中国研究 (ISSN:09194177)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-75, 2008-12-25
著者
ホッペ グンナー 岩田 修二
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.85-92, 1981

せまい地域から地球的規模までの自然の理解や環境悪化の監視のための重要な方法であるリモートセンシング技術の最近の発展はたいへんめざましい。この技術がもっとも有効に利用されているのは低緯度地域においてであるが, 高緯度地域においても有効な技術であることはいうまでもない。<BR>米・ソの二大国が主導的な位置をしめるリモートセンシングの技術開発のなかにあって, スウェーデンは, ハッセルブラッドのカメラシステムとAGA赤外テレビシステムの開発という2つの重要な貢献をしている。<BR>スウェーデンにおける空中写真の利用は80年前に始まり, 氷河調査, 地形図・土地利用図の作製, 森林管理, 地形・地質の調査などに役立つてきた。空中写真利用の最近の興味深い例には, 北西スウェーデン山岳地域の開発計画のための組織的な空中写真判読作業や, 赤外カラー写真を利用した沿岸地域における海底地形図の作製, 森林帯における樹木の活性度の判定がある。空中写真の情報を数値化する試みも古くからおこなわれ, いくつかの映像読みとりシステムが開発された。また, 可視光と近赤外以外の波長域をカバーする装置も開発された。1973年には, リモートセンシング5力年計画として以下のものがとりあげられた。各種のセンサーを用いる全天候型のオイルもれ検知システム, 各国との協力で多様な方法を用いる海氷探知計画, マルチスペクトルスキャナーを用いた完全自動植生図化作業, レーザーを用いたばい煙検知システム。<BR>スウェーデンは人工衛星によるリモートセンシングにも古くから関心をもっていた。気象衛星の利用, ランドサットの映像の地質調査への応用などに始まって, 最近ではマルチスペクトルデーターを森林管理のために利用するためのコンピューターシステムが開発された。さらに, 土地利用地図のための自動図化装置の開発, バルチック海の生態系の解明のための技術開発などがおこなわれている。最近の重要な前進は, スウェーデン北部に衛星受信基地の建設が決定されたことである。あらたに始まろうとしている第二次5力年計画では, 将来打ちあげられる人工衛星からの情報の高度な利用が計画されている。なかでも, 1984年にフランスから打ちあげられる予定の衛星に対しては, スウェーデンも費用を負担しており, 高度な利用が期待されている。
著者
Doyle Frederick J.
出版者
Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.26-30, 1977

NASAは, 現在焦点距離30.5cm, フィルムサイズ23cm×46cmを有する地形図作成用高性能カメラを製作中である.このカメラは, スペースシャトルの初めの方の飛行に搭載される子定になっている。設計高度300km上空から, 225km×450kmの範囲をカバーし, 使用フィルムにより地上解像力は14mないし25mである。フィルムが飛行方向に長手サイズになるようにしてあるので, 基線長/高度の比を1.2まで上げられる。したがって20mないし30mの等高線間隔の地形図の作成が可能である。<BR>もし, 実験飛行から得られた写真が期待どおり良好な場合には, ほゞ円軌道で自由飛行する宇宙船にこのカメラが搭載され, 何ケ月にもわたって撮影が行われる。フィルムはシャトルにより回収される。<BR>ジェミニ計画で手持ちのハッセルブラッドカメラにより最初の宇宙写真撮影が行われた時から, 写真測量技術者は, 軌道衛星により, 空中写真測量から宇宙写真測量へと理論を拡張できるものと考えていた。LANDSAT計画の広範な成功にもかかわらず, 写真測量技術者は, LANDSATの映像が低解像力でかっ実体視ができないために, 実体図化が不可能であることに不満をもってきた。<BR>1967年の昔に, 国立科学アカデミーの『地球観測衛星の有効利用に関する委員会』は, 世界中の地形図作成が可能なカメラシステムの開発を答申した。この答申によれば, システムは標定のための地形図用フレームカメラと, 平面的な詳細図化のためのパノラマカメラで構成されていた。この方法の可能性を検討するために, アポロ15号, 16号, 17号に似たようなシステムが導入され, 月軌道で実験された。これらの写真の測定にもとずいて, 月面上の点が三次元座標で30mの間隔の密度で標定され, 2万5千分の1の縮尺のオルソフォトマップが作成された。このようなシステムが地球観測軌道に採用されるよう何度か提案されながら, 種々の理由により, このシステムは実現されなかった。