著者
久保田 紀久枝
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

近年、ショウガの機能性について多くの研究がなされ、ジンゲロールなどのような不揮発性成分だけでなく、ショウガの爽やかな風味に寄与する香気成分のゲラニアールとネラール(シトラールと総称)についても抗菌、抗腫瘍活性や解毒酵素誘導活性などが認められている。一方、香気成分組成において、ショウガの品種や貯蔵期間によりシトラール量の割合が変化することが知られているが、その生成機構については不明である。本研究では、未成熟のいわゆる新ショウガと成熟ショウガ貯蔵中におけるシトラール絶対量の経時的変化を調べるとともに、その生合成機構について検討し、ショウガ根茎中にプロテアーゼ以外の新たな酵素系の存在を確認した。ショウガより調製した粗酵素系において、グルコースおよびガラクトース配糖体に特異性を有するグリコシダーゼの存在を確認した。また、NADP依存性のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の存在も確認し、その至適pHが9.0であること、ゲラニオールおよびネロールに基質特異性をもつことを確認した。ゲラニオールについては、その配糖体よりグルコシダーゼの働きで生成されることも確認され、配糖体よりゲラニオール、さらにシトラールへの生成経路が示唆された。また、2種類の栽培種の根茎を用いて、収穫70日前、成熟後貯蔵0、14、30〜90日の試料について、グルコシダーゼおよびADH活性とシトラール量を測定した結果、貯蔵2週間において両酵素活性ともに極大となり、それとともにシトラール量が顕著に増加する傾向を確認した。以上のことより、両酵素系が機能性成分であるシトラール生成に関与していることが強く示唆された。両酵素とも、本研究によってショウガ中ではじめて存在が確認された。現在ADHの精製を進めているが、今後さらに精製酵素を用いて機能性成分の生成メカニズムを解明し、機能性に優れたショウガの開発または利用法に資するデータを提供したい。
著者
藤川 和男
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.685-692, 1986-09-05
被引用文献数
2

無限個の自由度を扱う場の理論においては, 古典的な対称性が必ずしも量子化した理論では保たれず, いわゆる量子異常 (アノマリー) 現象が生ずる. この現象は一方では場の理論が持つ新しい可能性とか物理的内容を意味しており, 他方では基本的な対称性 (例えばアインシュタインの一般座標変換) が量子論では破れるといった結果にも導く.
著者
田澤 薫
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-28, 2013

保育所制度の変革が進んでいる。改革をめぐり措置制度と保育の公的責任の関連が論点の一つであるが,児童福祉法制定前後の経緯を繙くと,保育所保育が措置制度と結びついたのはSCAPIN775への対策に過ぎず,また保育所運営への公金支出が必ずしも保育の公的責任を意味したわけではないことが明らかになった。この点を踏まえれば,変革への賛否両論が保育所利用方法のシステム論に偏ることは本質を欠く。一方で保育の内容については,児童福祉法制定当初から「託児」ではない「保育」の模索が始まり今日までに相応の充実を見ている。保育責任をシステム論からではなく,乳幼児に対する保育内容保障の点からこそ論じる視点が求められる。
著者
柿木 稔男 山口 仁
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成20年度電気関係学会九州支部連合大会(第61回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.190, 2008 (Released:2010-04-01)

小半径軌道を走行可能な小型軽量で省エネルギー型の常電導磁気浮上装置の開発をすすめている。電磁石の鉄心を分割した分割鉄心のヨークに永久磁石を組み込んだ複合構造を採用しているので、案内力が大きく急カーブ走行時に大変有利である。さらに永久磁石により大部分の吸引力が賄えるので、省エネルギーで浮上安定状態を保持することが可能である。起動時や軌道不正等の変動時に対する吸引力及び案内力は直流電源より供給するが、安定浮上した後はほぼ永久磁石による吸引力のみを使用するので、使用電力を小さくできる。本論分では安定浮上時において荷重を変化させた際の浮上特性及び案内力特性についての実験結果について報告する。
著者
柿木 稔男 山口 仁
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成21年度電気関係学会九州支部連合大会(第62回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.331, 2009 (Released:2011-01-20)

小型軽量で永久磁石を組み込んだ省エネルギー型の常電導磁気浮上装置の開発をおこなっている。電磁石の鉄心を分割した分割鉄心のヨークに永久磁石を組み込んだ複合構造を採用しているので、案内力が大きく急カーブ走行時に大変有利である。さらに永久磁石により大部分の吸引力が賄えるので、省エネルギーで浮上安定状態を保持することが可能である。本論分では応用範囲を広げるため、従来の直流電源を二次電池に代替することでコードレス化し、その際の安定浮上時における荷重変化時の浮上特性及び案内力特性等の実験結果について報告する。
著者
Ki Jin Hwang Young Uk Ryu
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.473-477, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
43
被引用文献数
6

[Purpose] This study applied whole body vibration (WBV) at different vibration frequencies to chronic stroke patients and examined its immediate effect on their postural sway. [Subjects and Methods] A total of 14 (5 males, 9 females) stroke patients participated. The subjects were randomly assigned to one of the two vibration frequency groups (10 Hz and 40 Hz). Right before and after the application of WBV, the subjects performed quiet standing for 30 seconds, and COP parameters (range, total distance, and mean velocity) were analyzed. [Results] The 10 Hz WBV did not affect the postural sway of stroke patients. The 40 Hz WBV increased postural sway in the ML direction. [Conclusion] The results suggest that WBV application to stroke patients in the clinical field may have adverse effects and therefore caution is necessary.
著者
橋本 順光 ハシモト ヨリミツ Hashimoto Yorimitsu
出版者
Edition Synapse
巻号頁・発行日
pp.3-22, 2012

Pearson's prediction: yellow peril or white hope?(Primary sources on yellow peril ; ser. 2 . Yellow peril, a collection of historical sources / edited & introduced by Yorimitsu Hashimoto ; v. 1)
著者
田中 浩朗
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は,第二次世界大戦中に化学工業統制会会長を務めた石川一郎(1885-1970)の個人文書『石川一郎文書』(東京大学 経済学部図書館所蔵,マイクロフィルム版,全279リール)を中心史料として用い,「産業界からみた科学技術動員」の実態を解明することである。平成29年度は,本年度購入した5リールを含め,本研究に必要と判断した156リールについて一応のサーベイを完了し,昨年度と同様に科学技術動員に関連する資料の探索と目録作成を進めながら,化学工業統制会が科学技術動員にとって果たした役割について検討した。本年度の調査では,科学技術動員史の観点からの石川文書の全体像がおぼろげながら明らかになった。まず,全279リールという膨大な資料のうち,戦時中の資料を含むものは意外に少なく,全体の約半分程度であるということである。また,化学工業統制会の活動において,技術的隘路を克服することの重要性は相対的に低く,むしろ資材不足などが生産増強の重要な隘路と考えられており,統制会の技術関係の活動に関する資料は当初期待したほどには見出せなかった。特に,民間企業と軍・学・官との協力関係に関する資料は,断片的には存在するものの,まとまった資料はほとんど見出せなかった。当初の予定よりも購入リールの本数は少なくて済んだため,科学工業統制会の監督官庁である軍需省の資料(『軍需省関係資料』全8巻,復刻版;通産政策史資料オンライン版)を購入し,化学工業統制会をとりまく産業関係組織との関連を考察し始めた。
著者
Hyo Taek Lee Hyo Lyun Roh Yoon Sang Kim
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.641-645, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
19
被引用文献数
6

[Purpose] Efficient management using exercise programs with various benefits should be provided by educational institutions for children in their growth phase. We analyzed the heart rates of children during ski simulator exercise and the Harvard step test to evaluate the cardiopulmonary endurance by calculating their post-exercise recovery rate. [Subjects and Methods] The subjects (n = 77) were categorized into a normal weight and an overweight/obesity group by body mass index. They performed each exercise for 3 minutes. The cardiorespiratory endurance was calculated using the Physical Efficiency Index formula. [Results] The ski simulator and Harvard step test showed that there was a significant difference in the heart rates of the 2 body mass index-based groups at each minute. The normal weight and the ski-simulator group had higher Physical Efficiency Index levels. [Conclusion] This study showed that a simulator exercise can produce a cumulative load even when performed at low intensity, and can be effectively utilized as exercise equipment since it resulted in higher Physical Efficiency Index levels than the Harvard step test. If schools can increase sport durability by stimulating students’ interests, the ski simulator exercise can be used in programs designed to improve and strengthen students’ physical fitness.
著者
高嶋 和毅 藤田 和之 横山 ひとみ 伊藤 雄一 北村 喜文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.176, pp.49-54, 2012-08-11
被引用文献数
2

本研究では,複数人会語中に話者が感じる場の盛り上がり「場の活性度」を自動的に推定する手法の確立を目指し,会話中の発話量,手の動き,頭部方向や身体の移動などの非言語情報と,場の活性度との相関を実験的に調査した.実験では,初対面で同世代の6人(男3,女3)による会話を扱い,非言語情報は各種センサにより取得した.重回帰分析を用いて,参加者が主観的に評定した場の活性度と取得した非言語情報との関連を調査したところ,発話時間,クロストーク,手の加速度,会話の輪の大きさ,等が強く場の活性度に影響することが分かった.また,これを用いてモデル化を行い,3人会話におけるモデルと比較を行った.
著者
工藤 一彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.1410-1419, 1982-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
6

近年,本邦中心として心尖部肥大を呈する心筋疾患が注目され,特に深さ10mmを越す巨大陰性T波との関連において幾つかの報告を見るが,その病理組織像から見た肥大形式についての検討は殆どない.今回の研究は,心内膜心筋生検法を用いて病理組織学的検討を中心に,いわゆる心尖部肥大型心筋疾患の肥大様式につき検討を加えた.対象は37例(内訳は, HCM16例,高血圧性心疾患13例,プロの競輪選手8例)で,心尖部肥大の程度を左心室造影像により4型に分類し,心尖部肥大を示す群として20例,非心尖部肥大群17例とした.心尖部肥大群の中で17例(85%)は,心電図上深さ10mmを越す巨大陰性T波を伴つていた.一方,非心尖部肥大群では,僅か4例(23%)に巨大陰性T波を伴うのみであつた.心筋生検は,右心室ないし左心室より行ない,光顕下に観察した.心筋の横径では,心尖部肥大群と非心尖部肥大群との間に有意な差は認めなかつた.心筋の配列の乱れおよび間質の線維症では,心尖部肥大群は非心尖部肥大群に比べて穏やかであつた.心筋の変性あるいは核の変化については両群間に有意な差はなかつた.病理組織上,心尖部肥大型心筋疾患における肥大様式は穏やかな肥大であり,高血圧や運動などの既知の原因に伴う二次性肥大に適合した肥大様式であるといえる.また,心尖部肥大では,著明な乳頭筋の肥大の存在が特徴的であり,この事は巨大陰性T波の出現の一つの説明にもマッチする.