著者
光平 有希 Yuuki MITSUHIRA ミツヒラ ユウキ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.10, pp.251-271, 2014-03

太古から現代に至るまで、人間は心身の治療や健康促進、維持する手段として音楽を用いてきた。私はそうした音楽療法の奥深い歴史の中で生み出された大いなる遺産を紐解くことが、現代の音楽療法理解にも繋がると考えており、その1例として、本論文ではリチャード・ブラウンの『医療音楽』(1729)を取り上げた。というのも、薬剤師であるブラウンは、これまでは主として哲学者や聖職者が取り上げてきた音楽療法について、初めて医療の立場から『医療音楽』という1冊を割いて、音楽の持つ治療的作用について言及しており、このことは、音楽療法の歴史を考える上で先駆的なものであると考えられるからである。 しかし、同書についての先行研究に関しては、『医療音楽』全体に焦点を当てた著作や本格的な論文は未だ見当たらない現状にある。そこで本論文は『医療音楽』について、ブラウンによって匿名でその2年前に書かれた『歌唱・音楽・舞踊機械論』も参考にしながら、1.書誌学的考察、2.ブラウンの人物像、3.『医療音楽』の内容、4.『医療音楽』に見られる機械論的身体観、5.『医療音楽』で重視された治療原理、と稿をすすめながら、ブラウンの音楽療法を解明することを研究目的とし、それと共に音楽療法の歴史における『医療音楽』の位置づけも試みた。 その結果、ブラウンの音楽療法には、ピトケアン学派の影響が顕著に見られ、その中で治療原理として「アニマル・スピリッツ」と「非自然的事物」という2つの概念を重視していたことが明らかとなった。『医療音楽』は理論書であり、実践書ではないものの、現代の音楽療法と同様に、「歌唱」、「音楽」、「舞踊」を通じてもたらされる生理的、心理的、社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上を図ることを目的として書かれている。その点で、『医療音楽』はやはり、音楽療法史上、現代音楽療法の萌芽とも言うべく、重要な著作であると考えられる。Since primeval times, people have used music as a component of physical and mental therapy and as a means of promoting and maintaining good health. To fully understand music therapy in its contemporary form, it is crucial to reveal the rich heritage of music therapy in the course of history. This study analyzes Medicina Musica (1729) by Richard Browne. Browne was an apothecary who worked on music therapy, a subject historically taken up primarily by philosophers and clergymen. His contribution in Medicina Musica made him the first to offer insight into music therapy from a medical perspective. Browne's description of the therapeutic effects of music is believed to be a pioneering work in the history of music therapy. In previous studies that treat this book, neither books nor scholarly articles focusing on Medicina Musica in its entirety have been found. This article investigates Browne's music therapy by analyzing Medicina Musica itself. Making reference also to a work that Browne wrote anonymously two years before the publication of Medicina Musica called A Mechanical Essay on Singing, Musick and Dancing (1727), this article includes (1) a bibliographical review, (2) an account of Browne's life and times, (3) a description of the content of Medicina Musica, (4) a description of the mechanistic view observed in Medicina Musica, and (5) a summary of the therapeutic principles found in Medicina Musica. Finally, I have tried to position Medicina Musica in the history of music therapy. Browne's approach to music therapy was significantly influenced by Pitcairn and his students. Furthermore, Browne emphasized two concepts which constitute his therapeutic principles: "animal spirits" and "non-natural things." Even though Medicina Musica is not a practical book but a theoretical one, like modern music therapy it highlights the theme that singing, music, and dancing can aid in the recovery of physical and mental health.
著者
菅原 敏
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.79-87, 2008

都市域の大気中CO2濃度の空間構造を明らかにするために、可搬型CO2濃度観測システムを開発し、仙台市中心部において自動車を用いた移動連続観測を実施した。その結果、都市の中心部に集中する自動車の燃料消費に伴うCO2排出によって、仙台駅付近を中心としてCO2濃度の高い領域が存在していることが明らかになった。To investigate spatial variations of atmospheric CO2 concentration in an urban area, a portable CO2 measurement system was developed. Mobile and continuous CO2 measurements were carried out in Sendai city by using a car equipped with this system. High concentration area in the central part of Sendai was clearly observed, which is interpreted as being due to the CO2 emissions from car fuel combustion.
著者
田中 誠之
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.472-479, 1977-12-20
著者
林 秀治 山本 和英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.83, pp.51-56, 2013-06-07

Q&Aサイトには日々新しい質問が投稿されているが、回答がつかないことも多い。本論文では回答者が自分の答えられそうな質問を見つけるための支援として、質問文を質問者の意図毎に事実、根拠、意見、提案、経験の5種類に自動で分類する方法を提案している。自動分類はキーワードと、語の頻度を使ったスコアの2つの手法で行った。その結果、根拠や提案の質問は他の種類の質問にはみられない表現があるため分類はしやすいが、事実や意見では他の種類の分類にはみられず、その種類の質問全体でみられるような表現がないため分類が難しいことがわかった。
著者
林 秀治 山本 和英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.83, pp.51-56, 2013-06-14

Q&Aサイトには日々新しい質問が投稿されているが、回答がつかないことも多い。本論文では回答者が自分の答えられそうな質問を見つけるための支援として、質問文を質問者の意図毎に事実、根拠、意見、提案、経験の5種類に自動で分類する方法を提案している。自動分類はキーワードと、語の頻度を使ったスコアの2つの手法で行った。その結果、根拠や提案の質問は他の種類の質問にはみられない表現があるため分類はしやすいが、事実や意見では他の種類の分類にはみられず、その種類の質問全体でみられるような表現がないため分類が難しいことがわかった。
著者
米川 あかり 長岡 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.389, pp.87-91, 2014-01-16

本研究では、代表的なソーシャルメディアのひとつであるTwitterを用いて、膨大なユーザーの意見を自動的に分類し、可視化することを目的とする。例えば、ある話題に対するユーザーの意見を肯定・否定等に分類し、その割合を可視化することで、世論調査などに利用できるのではないかと考えられる。本システムでは、まず無作為抽出したツイートから、ツイートに含まれる形態素それ自体と、形態素の直後の語との組み合わせである連続した形態素の、肯定・否定・その他のツイートへの出現確率を有する教師データベースを作成する。そしてその教師データベースを元に、ツイートに含まれる形態素及び連続した形態素が肯定・否定・その他である確率から、ツイート全体が肯定・否定・その他である確率を求めることで、ツイートを判定、分類する。一般的なツイートを自動判定した結果、特に肯定・否定の二つのみに分類した場合において、ある程度正確な判定が得られた。また、限定的な話題に関するツイートに対しての分類を行った結果、話題によっては、判定の難しい事例がみられた。
著者
下村 良 三川 健太 後藤 正幸
出版者
Japan Industrial Management Association
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.51-60, 2014

近年の情報化により,企業は大量のテキストデータを蓄積可能となった.これらのデータからは様々な情報を抽出できる可能性があるため,データの効率的な分析手法が望まれている.これらのデータから情報を効率的に把握する方法としてその構造化が考えられ,既に様々な手法が提案されているが,全作業が人手によるため,その数が膨大な大規模テキストデータには適用できないという欠点がある.そこで本研究では,人手による分類手法に大規模テキストデータを扱う自動文書分類の技術を組み合わせ,大規模テキストデータの効率的な解析を支援する手法を提案する.また,ソフトウェア開発に関わる企業が保有する実データに適用し,その有効性を示す.
著者
米川 あかり 長岡 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.389, pp.87-91, 2014-01-23

本研究では、代表的なソーシャルメディアのひとつであるTwitterを用いて、膨大なユーザーの意見を自動的に分類し、可視化することを目的とする。例えば、ある話題に対するユーザーの意見を肯定・否定等に分類し、その割合を可視化することで、世論調査などに利用できるのではないかと考えられる。本システムでは、まず無作為抽出したツイートから、ツイートに含まれる形態素それ自体と、形態素の直後の語との組み合わせである連続した形態素の、肯定・否定・その他のツイートへの出現確率を有する教師データベースを作成する。そしてその教師データベースを元に、ツイートに含まれる形態素及び連続した形態素が肯定・否定・その他である確率から、ツイート全体が肯定・否定・その他である確率を求めることで、ツイートを判定、分類する。一般的なツイートを自動判定した結果、特に肯定・否定の二つのみに分類した場合において、ある程度正確な判定が得られた。また、限定的な話題に関するツイートに対しての分類を行った結果、話題によっては、判定の難しい事例がみられた。
著者
下村 良 三川 健太 後藤 正幸
出版者
Japan Industrial Management Association
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.51-60, 2014

近年の情報化により,企業は大量のテキストデータを蓄積可能となった.これらのデータからは様々な情報を抽出できる可能性があるため,データの効率的な分析手法が望まれている.これらのデータから情報を効率的に把握する方法としてその構造化が考えられ,既に様々な手法が提案されているが,全作業が人手によるため,その数が膨大な大規模テキストデータには適用できないという欠点がある.そこで本研究では,人手による分類手法に大規模テキストデータを扱う自動文書分類の技術を組み合わせ,大規模テキストデータの効率的な解析を支援する手法を提案する.また,ソフトウェア開発に関わる企業が保有する実データに適用し,その有効性を示す.
著者
水野 稔 GHAEMMAGHAMI S. Mahmoud 内藤 和夫
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.31, pp.19-28, 1986-06-25

ふく射暖房の省エネルギ性を論じるとき,ふく射パネルに対する人体の位置によって評価が変わってくる.一般に人がパネルに近づくほど,設定室温が低くできることから,ふく射暖房は有利になってくる.この点に関し,室からの貫流損失の大小を対象として,熱環境の質を空間中の微小物体の温度で評価することにより,この問題に対する基本的な考察を行った.この評価物体の温度を一定に保つとき,変更面(ふく射パネル)からのふく射の射出量を変えても,室全体からの貫流損失が変わらない熱環境評価物体の位置が存在する.この位置の集合を省エネルギ境界面と定義し,この面の諸性質および近似的な求め方などについて明らかにした.
著者
内藤 和夫 水野 稔 山分 弘之
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.25, pp.29-40, 1984-06-25
被引用文献数
4

かなり広大な公園緑地において,地上1.5mの気温分布を主として,平均ふく射温度・風速の分布を測定した.測定方法は,本研究の目的に合わせて工夫したものを採用した.その結果,気温分布は公園内で日中には明確ではないが,夜間には明確に存在することが確認された.この空間分布に及ぼす地表面構成状況,および風向・風速の影響を回帰分析などで考察し,局所気温に及ぼす周辺の土地の寸法に関し,幾つかの知見を得た.平均ふく射温度および風速の測定結果は,それぞれ樹木による遮へい効果を表す係数を用いて表示した.落葉の前後による差などを示した.
著者
市來 健吾
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.584-641, 2001-07-20
被引用文献数
1 1

水の中を重力で落ちる粒子の挙動を21世紀の科学は完全に予言できるか、あるいはこんな古典的な現象でも現代の科学は完全に解明できていないのか?この現象を重力だけで水を無視して考えると、粒子は加速運動することが分かる。しかし実際には粒子はある程度の速度でほとんど一定に落下する。速度に比例するような水の抵抗力を考えればこの振舞は定性的に記述できる。しかし更に現実には、この抵抗力がまわりの粒子全ての影響を持つため、多粒子系ではその挙動は複雑である。「流体を直接数値計算してしまえ」という立場もあるが、ここでは流体の粘性が支配的な状況であるStokes近似に徹底的にこだわり、それ以上の人工的な、あるいは仮想的な近似を排し出来るだけ妥協せずにその性質を実感したい。その正確な数理的な情報を得るために数値計算を使おう、というのが本論文の立場だ。物理のカリキュラムの中で「流体力学」は大きく取り上げられないし、microhydrodynamicsと呼ばれる粘性流体中の多体問題は通常触れられない。専門の異なる研究者にこのmicrohydrodynamicsの面白さと難しさも併せて紹介したい。この論文は半分は(独断や偏見に満ちた)レビューで、半分は最近の私の仕事の紹介である。ここで紹介する計算手法は流体力学に限らず一般の多体問題に応用可能であると期待し、「多体問題の数値解析」という広いframeworkを示唆する。Stokes流れの多粒子問題に興味の無い方もこの手法の応用を少し考えて、もし使えそうなら是非チャレンジして欲しい。ここではもっとも単純な、つまり高級な技巧を使っていない計算道具を議論しているだけで、Stokes流れの多粒子問題に対してすら面白い物理現象への応用は示していない。本来私自身がこの道具を使って物理を取り出し尽くした後に「どうだ、まいったか」という論文を書くべきなのだが、逆に読者にチャレンジするspaceが残っている、と挑発しておく。
著者
中村 航
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

最新の観測および理論計算の結果をもとに、新しい軽元素合成シナリオを提案した。Ib/c型超新星になるような星の周りには、その星が進化の過程で放出した物質が密度の高い星周物質を形成しているはずである。爆発で加速された星の外層が、星周物質と相互作用することによって軽元素が合成されるであろう。特に、星の表面にHe/N層が残っていれば、破砕反応による^9Be生成やHe+Heの融合反応による^<6,7>Li合成が効率的に起こることが期待される。Hirschi博士(キール大学)から提供を受けた金属欠乏星のモデルを初期条件として超新星爆発の数値計算を行い、外層の加速を調べた。また、そのモデルに対応する質量放出のデータをもとに星周物質の分布を求め、加速された粒子が星周物質を通過する際のエネルギー損失をモンテ・カルロ法によって算出した。計算の結果、爆発で加速された粒子の大部分は星表面近くの密度の高い星周物質領域でエネルギーを失い、従って軽元素合成反応もその領域でほぼ完結してしまうことがわかった。これより、合成される軽元素の量や比は、星表面と表面近くの星周物質の化学組成に強く依存することが予想される。この結果を受けて、銀河ハロー中の金属欠乏星の表面に存在する軽元素は、その星が形成される引き金となった超新星の特性を反映しているのではないかと推測した。軽元素の相対比から表面組成を、軽元素と酸素などの重元素との比から爆発エネルギーを算出することが可能である。^6Li量が測定されている最も金属量の少ない星LP815-43の観測から、この星は、質量比にして(He,C,N,0)=(0.95,0.01,0.03,0.01)という表面組成を持つ星が1.2×10^<52>ergsの爆発エネルギーでlb型の超新星爆発を起こしたときに、星間空間に放出されたガスから形成されたと結論付けた。