著者
中西 淳
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

作文教育を改善していくためには、文章生成過程の心的様相を発達的に捉える基礎研究が必要である。本研究は、この問題意識に基づき、題のつけ方に関する心的様相を発達的に捉え、そこから作文指導のあり方を探っていくことを目的としている。そのために、愛媛大学教育学部附属小学校、3年、4年、5年、6年、同学部附属中学校1年、2年の各1クラスを対象に、ある作文(小学校5年生の生活文=題「小さな私見つけた」、調査対象者には学年・氏名・題名を伏せて提示)を読みそれに題をつけるという活動を行わせる教授調査を実施した。資料を分析した結果、1.題名は、話題に関するもの(例:小さなくつ下など)から、主題に関するもの(例:小さな私、私の成長など)に変わっていく傾向があること、2.題をつけるときには、文章を統一するものを探ろうとする心的作用が働くこと(ただし小学校3年生はそれが十分でないこと)、それを探る観点は、学年があがるにしたがって豊かになっていくこと、3.小学校の高学年になると、題名の読み手に与える効果も考えるようになること、また個性的な題をつけようとする意識が働くようになること、3.題のつけ方に関与する主題把握の有り様は、小学校の高学年に変換点が見られることが確認された。さらに、4.題名に関する作文指導は、何が文章を統一しているのかを考えることになるため、明確な文章を産出する力の育成に重要な役割を果たすことが確認された。
著者
猩々 英紀 馬淵 正 安達 登
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では細胞内小器官の生活反応を指標とした新たな法医診断法を開発するために、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析により細胞内小器官の形態を可視化し、脳損傷の痕跡が生活反応としてミトコンドリアの形態に保存されているか検討した。脳組織標本において、頭部外傷後の大脳皮質でミトコンドリアの形態が変化する事が示唆された。また、培養細胞ではミトコンドリアの形態は細胞が死に至る過程を反映しており、死後の細胞においても生活反応として保存されている可能性が示唆された。以上の結果から、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析はミトコンドリアの生活反応を指標とした法医診断の開発に有用である事が示唆された。
著者
高橋 遼平
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

太平洋の島々への先史人類の移動と適応を探るため、先史人類に食料として運搬される機会が多かったイノシシ・ブタのDNAを解析した。琉球列島の野生イノシシであるリュウキュウイノシシは全ての島の個体が遺伝的に近く、同一系統に由来する事が示唆された。しかし琉球列島の先史遺跡を対象とした古代DNA解析では、リュウキュウイノシシと異なる系統に属す個体が検出された。これらから、琉球列島では先史時代にイノシシ属を伴う人類の移動があった可能性が考えられた。先史人類の移動の経路や時期を探るため琉球列島の周辺地域の遺跡出土試料の古代DNA解析も試みたが、試料の状態が悪くDNAを増幅できなかった。
著者
渡部 陽介
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-88, 2010-11-30

本稿は,これまで筆者が農村地域において地域アイデンティティの観点から行ってきた2つの景観研究の紹介を通じて,トランザクションを踏まえた景観研究のあり方について検討を行なうことを目的とした。本稿は4つの節から構成されている。第1節では,「生活景」と「地域アイデンティティ」に対する関心の高まりを背景に,主客不分離の発想に基づく景観研究が求められているおり,トランザクションを踏まえた景観研究が今後重要になっていくことを論じた。第2節と第3節では,地域アイデンティティの観点から行った2つの景観研究の事例を紹介した。具体的には,研究事例1では,従来の景観研究で否定的に評価されてきたビニールハウス景観を,地域アイデンティティの観点から再評価した研究を紹介した。研究事例2では,「生育環境を共有する者同士が語り合う」というグループインタビューの手法を用いて,農村地域居住者が地域アイデンティティとして認識する景観と行為の関係を解明した研究を紹介した。これら2つの研究事例の特徴としては,「地域固有の価値観」,「質的研究手法」,r観と主体の関係性」の3点を重視したことが挙げられる。第4節では,今後の研究の展望を踏まえつつ,トランザクションを踏まえた景観研究とは,地域固有の価値観に基づき主体と景観の動的で深い関わり合いの解明を目的とする研究であると結論づけた。
著者
俵国一 著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
1910
著者
高橋 雅英 徳留 康明
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、本手法の高い汎用性を最大限に活用したメソポーラスシリカ膜への外部刺激応答性の付与に着目し、外部刺激により駆動するナノ-マイクロデバイスの創製を目指した。これにより、高い比表面積を有するメソポーラスシリカ材料にμmサイズの外部刺激応答構造を付与し、物理的特性の変調を用いた外部刺激応答性がnm領域においても発現するような、nm~μmに渡る広範なサイズ領域での機能性界面構造創製へとつながる成果を得た。具体的には、メソ孔の開口部径を機械的刺激により制御し、選択的な吸脱着特性を有する多孔性薄膜を実現した。
著者
山本 誠司
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

1. 研究目的日本刀の製法は「焼入れ」が重要な工程の一部となっている。刀は硬さと靭性の両方を兼ね備えるように工夫されており、強度および匂い口に連なる刃紋は美術工芸品を志向する現代には特に重要である。実際の焼入れでは、地鉄の性質、土置、焼入れ温度等の要素が複雑に影響している。本研究では、鉧から作った鋼および市販の炭素鋼ならびに炭素工具鋼を用い、土置を施して焼入れ冷却速度の影響を調べる。また、小型炉を用いた「たたら」を行い「ものづくり教育」の一環とする。2. 研究方法たたら炉は炉内寸法を390×520mm高さ1100mmとし外側は耐火煉瓦を積み上げ、炉内は600mmまでV字型に釜土を張付けて製作し、浜砂鉄を磁気選鉱により採取して供した。たたらで製作した鉧は鍛錬後厚さ4㎜の鋼に加工した。比較のため市販のS55CおよびSK85(A)を用い焼入れ温度760℃、800℃、830℃と変え、加熱保持時間15minで行い、焼戻しは150℃×1hrの熱処理を行った。また、冷却速度の影響を調べるため厚さを変え土置をした。試料は研磨した後に5%ナイタールで腐食したのち金属顕微鏡で観察し、硬さはマイクロビッカース硬度計を用いた。3. 研究結果および考察2回の操業を行った結果それぞれ30kgの鉧を作ることができた。市販の鋼材およびたたらで製作した鋼を熱処理した結果、焼入温度を高くすると硬度は高くなり、土置した場合は厚さにより硬度が下がった。これは薄く土置した場合には組織はマルテンサイトとなり、厚くすると冷却速度が遅くなりトルースタイトになるためである。日本刀では炭素量が異なる材料の組合せ、冷却速度による組織の違いにより刃紋を作り美術工芸品としての価値を高めることができると思われる。たたら製鉄を行うことで「ものづくり」の歴史、金属学を学ぶことができた。(772字)
著者
古澤満宏
出版者
財務省
雑誌
ファイナンス
巻号頁・発行日
no.462, 2004-05