著者
斎藤 英雄 持丸 正明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,多視点画像から,あらかじめ取得済みの数百人程度の3次元人体形状データベースを利用して人体の3次元形状を1mm程度の計測精度で測定する手法の確立であった.本研究では,まず,あらかじめ固定されキャリブレーションされた多視点カメラシステムにより撮影された多視点画像からの足形状形状復元手法の確立を行った.そして,多視点画像から,頭部形状の3次元形状計測を簡単に行うことが可能なプロトタイプシステムを開発した.一方,同様の考え方を発展させ,フリーハンドのハンディカメラにより撮影された多視点画像から,人体頭部の形状推定を行うことができる手法を確立した.また,顔の真正面から撮影した1枚の画像から,同様に顔形状を復元できる手法を確立した.さらに,これらの成果を発展させ,複数の監視カメラなどにより非同期で撮影された「非同期多視点画像」から頭部形状を復元可能な手法を提案し,有効性を検証した.その結果,提案した多視点固定カメラにより足形状を高精度に計測可能手法の有効性を検証し,さらに実用化に向けたプロトタイプシステムの検討を行うことができた.また,提案したフリーハンドのハンディカメラにより撮影された画像列や正面画像から顔形状の高精度形状計測を行う手法の有効性が検証できた.同様に,提案手法を利用することにより,非同期多視点カメラにより撮影された画像列からも顔形状の高精度形状計測が可能なことを実験により検証した.
著者
原田 孝一 川人 祥二 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.95, no.177, pp.61-68, 1995-07-22
被引用文献数
1

顎の退化が問題視されている現代の子供たちに、そしゃくの大切さを伝えることができれば、子供たちの健康の向上につながるものと考えられる。筆者らは、そしゃく回数を計測するシステムをできるだけ簡単に実現することを目的として、その検討を行なっている。本稿では、これまでのストレインゲージを用いたあごひも方式による、そしゃく回数検出の問題点を解決するために、ボタン型圧力センサを用いた耳栓方式、ならびにヘアーバンド方式を提案し、その精度を明らかにする。本システムを用いてそしゃく回数の計測実験を行なった結果、耳栓方式では誤差±8[%]以内、またヘアーバンド方式では±5[%]以内の精度でそしゃく回数が計測できることを確認した。また、ヘアーバンド方式を用いたシステムでは、そしゃくの強弱を表すそしゃく力の測定もできることを確認した。
著者
新保 祐光
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.43-56, 2011-02-28

本稿は,利用者と専門職の協働による合意形成について検討した.具体的には,退院支援における「状況的価値」形成を目的とした合意形成の事例検討を行った.「状況的価値」形成は,(1)状況の定義のすりあわせ,(2)価値の媒介,(3)根拠の精度にとらわれない選択,(4)そのつど性の保証,という4つの過程を重視する.研究方法は,「状況的価値」形成を行った自験例を,シングル・システム・デザインを用いて検討した.協働については「ネットワーキングの総合性及び包括性」(福山2009)の枠組みを用いて検討した.その結果,「状況的価値」形成は,相互理解に関わる新たな気づき,価値と行動の変容,目的の共有,相互協力,連帯感の強化をもたらした.これらは,利用者支援システムのリスクや個別の機能の限界を軽減するだけでなく,その機能を高める良循環をもたらし,多様な価値を包含する利用者と専門職の協働を促進することが示された.
著者
OKAMOTO Hanjiro
出版者
松村 松年
雑誌
INSECTA MATSUMURANA (ISSN:00201804)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.62-86, 1927-11
著者
牛首 文隆 成宮 周 吉田 進昭 平田 雅一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

8種類のプロスタノイド受容体遺伝子のエクソン内にネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだターゲティング・ベクターをそれぞれ129ola由来胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、相同細換えを起こした。C57BL/6マウスの胚にES細胞を注入後、擬妊娠したICRマウスの子宮に戻してキメラマウスを作出した。キメラマウスをC57BL/6マウスと交配し、F1マウスを得た。組換えalleleをもつF1ヘテロ接合体同士を交配し、F2ホモ接合体を得た。結果、8種類の各プロスタノイド受容体欠損マウスが得られた。また、遺伝的背景を均一にする目的で、各プロスタノイド受容体欠損マウスをC57BL/6マウスに繰り返し交配する戻し交配を行った。現在、一部のプロスタノイド受容体欠場マウスで房し交配が完了し、他のものは継続中である。また、balb/cやDBA1マウスなどへの戻し交配も予定している。IP欠損マウスの解析により、PGI_2は心血管系での抗血栓作用以外に炎症反応の場での血管透過性の亢進や疼痛の伝達等非常に重要な役割を持つことが示された。FP欠損マウスの解析では、分娩時にPGF_<2α>がまず黄体退縮を引き起こし、これが血中プロゲステロン濃度を低下させ、続いて子宮でのオキシトシン受容体の発現を誘導するという一連の機構が解明された。EP4受容体欠場マウスの解析により、PGE_2はEP4受容体を介して出生直後の動脈管の閉鎖に重安な役割を果たすことが示された。以上、本研究によりプロスタノイド受容体欠損マウスの作成がなされ、その解析を通してプロスタノイドの重要な生理・病態生理的役割の一端が解明された。今後、これらの結果が各プロスタノイドの示す多彩な作用を選択的に制御する薬物の開発とその適用の指標に資することが期待される。
著者
高須 深雪 田中 信弘 坂井 晃 粟井 和夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多発性骨髄腫と対照間で骨梁幅、骨異方性度、フラクタル次元に有意差を検出した。胃切除後症例と対照間、および肝動脈塞栓療法除後症例と対照間で続発性骨粗鬆症有病率、骨梁パラメータおよび有限要素解析による破壊荷重、スティフネスに有意差を検出した。横断的検討では多発性骨髄腫骨折群と非骨折群間で、骨梁パラメータおよび機械特性に有意差を検出した。平成23年度よりcalibration phantomを用い、CTによる体積骨密度および組織骨密度で評価している。上述の各検討において組織骨密度に有意差を検出している。
著者
浅井 武 瀬尾 和哉 笹瀬 雅史
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、サッカーのインフロントカーブキックを対象に、高速VTRカメラを用いて上方から撮影し、蹴り足やボールの速度、ボール回転数、フェイスベクトルとスイングベクトルのなす角度(迎え角)について検討した。その結果、蹴り足速度の平均値は24.2m/sであり、ボール速度の平均値は27.1m/sであった。インフロントカーブキックにおけるボール回転数の平均値は7.8回転であった。全てのインフロントカーブキックの試技において迎え角がみられ、その平均値は35.4deg.であった。迎え角の最小値は21.9deg.、最大値は45.4deg.となっており、かなり広いレンジに渡っていた。インフロントカーブキックでは、蹴り足のフェイスベクトルとスイングベクトルとの間にある迎え角を作ることが、ボールに回転を発生させることの原因の一つになっていると考えられた。また、下腿の有限要素骨格モデルを作成し、インフロントカーブキックのコンピュータシミュレーションを行うことによって、迎え角とボール回転数、及びボール速度の関係を検討した。その結果、迎え角とボール速度との関係をみると、迎え角が大きくなるに従ってボール速度は小さくなっていた。一方、迎え角とボール回転数との関係は、迎え角が大きくなるに従って回転数は増大するが、約70度を越えると急激に減少していた。実際のフリーキック時におけるこの迎え角をみると、ボール回転数が最大になる角度より小さいと考えられ、ボール速度を重視したカーブキックを行なわれていたと推察された。さらに、回転及び無回転のサッカーボールに対して風洞実験を行い、ボールに働く力を測定した。無回転の場合にはオイルフローによる可視化実験を行い、その空力特性を調べた。その結果、回転時の抗力係数は、0.35から0.4程度、無回転時の抗力係数は0.2程度であることが明らかになった。
著者
清水 純一 大江 徹雄 坂内 久
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

米国については、農産物貿易は全般的にNAFTA域内貿易と対アジア、特に対中国貿易、に大きく依存している実態が明らかになった。食肉に関しては、日本を最終消費地とするNAFTA域内の分業体制が構築されている点が明らかになった。ブラジルでは、世界最大級の食肉企業2社に注目して分析した。両企業とも、近年国外で活発にM&Aを行い、短期間で多国籍食肉企業に変貌した。現時点でブラジルにおいては、米国のように、食肉に関する産業内貿易はほとんど認められない。しかし、我々の研究からは国外での加工・輸出拠点の多元化が進展すれば、ブラジルにおいても食肉の産業内貿易が増加する可能性が高いことが明らかになった。
著者
飯田 俊郎 イシ アンジェロ
出版者
北海道大学大学院教育学研究院教育社会学研究室
雑誌
『調査と社会理論』・研究報告書
巻号頁・発行日
vol.28, pp.217-234, 2009-03-24

日系ブラジル人のトランスナショナルな移動と定住. 小内透編著. (外国人集住地域の社会学的総合研究 ; その8)
著者
FARRER GRACIA 川上 郁雄 イシ アンジェロ 田嶋 淳子 超 衛国
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、日本における移民と、移民国家であるオーストラリアにおける中国、韓国、ブラジルからの移民またベトナム難民の第1と第2世代の人々が、受け入れ社会に対してどのような市民意識と帰属感を持つかを比較研究することによって、日本社会が「移民国家」となりうるのかを検討することを目的とした。インタビューとアンケート調査を通して、同じ国からの移民が受け入れる環境が異なると、違った市民意識とアイデンティティーが形成されることがわかった。その結果、多様な背景をもつ市民を受け入れる日本側の課題が明らかになった。
著者
松山 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.921-926, 2001-12-31
被引用文献数
2
著者
中島 正博 アハマド モハメド リズワン 申 亞京 小嶋 勝 本間 道夫 福田 敏男
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp."2P1-A30(1)"-"2P1-A30(3)", 2010

In this paper, the novel evaluation of local stiffness distribution for biological organism is presented using comb-nanoprobes. The local stiffness values are important to reveal and evaluate the cell condition depending on health, diagnosis, growth phase, and so on. We have been developed the nanorobotic manipulation system inside an Environmental-Scanning Electron Microscope (E-SEM). The deformation of the biological organism can be observed by E-SEM with real-time imaging. In this paper, the local stiffness distribution of Caenorhabditis elegans (C. elegans) is evaluated using comb-nanoprobes. We fabricated the comb-type silicon nanoprobes to measure the local stiffness distribution in each C. elegans. We also test the viability of C. elegans inside E-SEM from the motion of C. elegans before and after setting inside the E-SEM.
著者
松浦 晋也
出版者
日経BP社
雑誌
D&M日経メカニカル
巻号頁・発行日
no.582, pp.110-113, 2003-03

2003年2月1日。スペースシャトル「コロンビア」は,16日間の宇宙実験ミッションを終え,地上に帰還すべく軌道を離脱した。悪夢が起きたのは,それから約40分後,大気圏に突入した直後だった。速度マッハ18で高度62kmの上空を飛行していたコロンビアからの通信が途絶えるや,空中分解。コロンビアに乗り込んだ7人の宇宙飛行士が,再び地上に降り立つことはなかった。
著者
Ryo TAKAHASHI Ken UMENO
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences (ISSN:09168508)
巻号頁・発行日
vol.E97-A, no.7, pp.1619-1622, 2014-07-01

In this study, a performance of a synchronous code division multiple access (CDMA) using the chaotic spreading sequences with constant power is estimated in indoor power line fading channels. It is found that, in the fading channels, as the number of simultaneous users increases, the chaotic spreading sequences realize better performance than the Walsh-Hadamard sequences in the synchronous CDMA.
著者
柴田 裕介 山口 和紀
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1395-1411, 2011-03-15

本論文では,命題の是非を論争するタイプの議論を分析するための新しいフレームワークSPURIを提案する.SPURIは,従来,議論の支援を第1の目的に研究されていた議論フレームワークを,議論の分析という観点から活用することで,議論の論理的構造に着目した分析手法を提案するものである.SPURIが従来の議論フレームワークと異なる特徴として,議論を発言の繰返しとしてとらえることで議論の展開過程を表現したこと,議論の論理構造を巨視的に把握するための論を導入したこと,記述力と推論力のバランスの良いDAGに近いグラフ構造を採用したことがあげられる.また,SPURIは意味論を定義しており,主張の是非を推論することができる.SPURIによる分析の実用性を確かめるために,対面で厳密な論証を行う法制審議会と,オンラインで意見を交わすSNSフォーラムの2つのタイプの異なる実際に行われた議論を対象にSPURIを適用し分析した.その結果,いずれの場合も議論の争点は何か,議論が十分尽くされてない論点は何か,議論の流れを転換した発言は何か,議題に賛成(反対)している発言者は誰かがなどが抽出でき,議論の内容とも合うものであった.これらの分析は従来研究の手法では困難であったものである.これは,特定の議論様式(対面,オンラインの区別),議論の厳密さの程度にかかわらずSPURIが活用できることを示しており,SPURIの優位性・実用性が明らかになった.